2008年09月29日

レヴォリューションNo.3


レヴォリューションNo.3
著者名:金城一紀(著)
出版社:角川書店
出版年:2008.09
ISBN :9784043852024


 今月の角川文庫最新刊!

 あれ・・・?。

 あ、講談社から角川に版元を変えて再刊行なのか。

 金城氏は、かつて『GO』を単行本で読んで、お気に入りで今も本棚に置いてあるのだが、それ以外は最近になって『対話篇』を読むまでご無沙汰だった。

 タイトルとか装丁がピンと来なかったもので。でも、久し振りに読んだ『対話篇』が面白かったので、とりあえずコレを買ってみた。


・内容
「君たち、世界を変えてみたくはないか?」オチコボレ男子高に通い、死んだような毎日を送っていた「僕たち」は生物教師ドクター・モローの言葉で突如生き返り、世界を変えるために行動を開始する。その方法は―難攻不落のお嬢様女子高の学園祭に潜入してナンパをすること!果たして「僕たち」の潜入作戦は成功するのだろうか!?革命的おバカストーリーが炸裂する、ザ・ゾンビーズ・シリーズ第1弾。
(「BOOK」データベースより)


 いやぁ、良かった。

 上の「・内容」にある通り、『レヴォリューションNo.3』はおバカなストーリー。でも、ゾンビーズの連中が眩しくて、ちょっとグッときてしまう。ゾンビーズのひとり、ヒロシが病気で死んじまうエピソードも良いのだが、つまらぬ「お涙頂戴」じゃない。

 で、その後を描く『ラン、ボーイズ、ラン』(ヒロシのお墓のある沖縄にゾンビーズ47名でお墓参りに行くためバイトに励む)、その前を描く『異教徒たちの踊り』(女子大生を狙うストーカーを割り出し撃退するゾンビーズ)もとても良い。

 こんな高校生いるんだろうか?

 いるかもしれない。いないかもしれない。

 少なくとも表層的な部分では僕の高校生時代とは全然違う。でも底辺に流れている「青春!」って感じは何も変わらない。なんだか胸が熱くなる。楽しい。

 これの続編が映画にもなった『フライ,ダディ,フライ』なわけだ(時間軸上は『レボNo.3』の前だそうだ)。当然、次に角川文庫から出たら読む予定。


 次は、角川文庫“今月の編集長”金城一紀氏の推薦により復刊なった『ソー・ザップ!』(稲見一良・著/角川文庫)。
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2008年04月11日

四畳半神話大系


四畳半神話大系
著者名:森見登美彦(著)
出版社:角川書店
出版年:2008.03
ISBN :9784043878017



第一話「四畳半恋ノ邪魔者」

大学3回生となった私は、「充実」「青春」「恋」「勉学」とは全く無縁の来し方を振り返る。新入生の春、多くのクラブ・サークルの新歓ビラの中で、私が興味を惹かれたのは、映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」という奇想天外なビラ、ソフトボールサークル「ほんわか」、秘密機関「福猫飯店」の4つであった。いずれの場所にも、その先に“幻の至宝”「薔薇色のキャンパスライフ」があると夢見ていた私が選んだのは「みそぎ」であったが、馴染めず脱退。他の3つのサークルのどれかを選べば良かったと後悔しつつ、人の不幸をおかずに飯が食える疫病神の同級生・小津だけを友として、「みそぎ」を牛耳る先輩・城ヶ崎との不毛な抗争に明け暮れる孤独な四畳半生活であった・・・。

第二話「四畳半自虐的代理代理戦争」

大学3回生となった私は、「充実」「青春」「恋」「勉学」とは全く無縁の来し方を振り返る。新入生の春、多くのクラブ・サークルの新歓ビラの中で、私が興味を惹かれたのは、映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」という奇想天外なビラ、ソフトボールサークル「ほんわか」、秘密機関「福猫飯店」の4つであった。いずれの場所にも、その先に“幻の至宝”「薔薇色のキャンパスライフ」があると夢見ていた私が選んだのは「弟子求ム」に応じて、樋口師匠の弟子となることであった。他の3つのサークルのどれかを選べば良かったと後悔しつつ、人の不幸をおかずに飯が食える疫病神の同級生で兄弟子・小津だけを友として、「みそぎ」の城ヶ崎と樋口師匠との不毛な抗争のために働く四畳半生活であった・・・。

第3話「四畳半の甘い生活」

大学3回生となった私は、「充実」「青春」「恋」「勉学」とは全く無縁の来し方を振り返る。新入生の春、多くのクラブ・サークルの新歓ビラの中で、私が興味を惹かれたのは、映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」という奇想天外なビラ、ソフトボールサークル「ほんわか」、秘密機関「福猫飯店」の4つであった。いずれの場所にも、その先に“幻の至宝”「薔薇色のキャンパスライフ」があると夢見ていた私が選んだのは「ほんわか」であったが、馴染めず脱退。他の3つのサークルのどれかを選べば良かったと後悔しつつ、人の不幸をおかずに飯が食える疫病神の同級生で兄弟子・小津だけを友としながら、偶然のきっかけで始まった見ず知らずの女性との文通に慰められる孤独な四畳半生活であった・・・。


 ということで、最初の3話は、いずれも大学3年生の「私」が過去2年を振り返りつつ話が進む。1年生のときに選んだサークルこそ違うが、悪友の小津、謎の自由人・樋口師匠、「私」が思いを寄せる孤高の乙女・明石さん、「みそぎ」の城ヶ崎先輩、怪しげな占い師など登場人物は共通し、エピソードや主人公の「私」の語りもその順序は微妙に異なるものの、ほぼ完全に同じである。「私」の高慢な、しかし、その向こうに孤独や純情や哀しみが透けて見える口調(文体)は、リズムもよく非常に面白い。

 だが、パラレルワールド的展開ではあるものの、結局どのサークルを選んでも、「私」の大学生活には劇的な違いはない。コピペされた(ほぼ同じ)文章を3話続けて読むとなると、さすがに飽きてきて、斜め読みになってくる(笑)。

 そして、第4話「八十日間四畳半一周」でも、やはり大学3年生の「私」は無為に過ぎた過去2年を思う。1年生のときに「福猫飯店」を選んだもの馴染めず脱退、小津だけを友としているのである。

 しかし、ここで、細かい点は違えど同じ話と言っても良い前3話が効いてくるのである。

 なるほどねぇ。

 まあ、“男汁溢れる”四畳半物語という点では松本零士の『男おいどん』の方がはるかに上かな(笑)。

 で、結局のところ、「私」は意外に幸せなんじゃないだろか、と思ったりするのであった。

 ちなみに樋口師匠と酒豪顔舐め美女・羽貫さんは『夜は短し歩けよ乙女』にも登場するそうだ。


 次は、『償い』(矢口敦子・著/幻冬舎文庫)。
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2007年12月01日

The MANZAI 4


The MANZAI 4
著者名:あさのあつこ(著)
出版社:ジャイブ
出版年:2007.11
ISBN :9784861764554


 過去3巻で140万部。書き下ろしとはいえ、よく売れている。『ピュアフル』文庫というネーミングは少々気恥ずかしい・・・^^;。

不登校が原因で喧嘩した父親とそれをなだめようと車で一緒に出かけた姉を交通事故で亡くした男子中学生・瀬田歩。160cm・50kgの小さな細身の体、女性的な綺麗な顔立ち。そして、自分に自信が持てず、他人と関わることをどこかで恐れる歩。母の故郷の街の中学校に転校してきたそんな歩に、「お前に一目惚れしたから、一緒に漫才やろ」と熱烈ラブコールを贈る次期サッカー部キャプテン、ゴツイ体の秋本貴史。嫌がる歩だが、強引で、でもどこか憎めない貴史と関わっていくうちに友達の輪が広がり、ほんの少しずつだが確かに変わっていく。そして、文化祭。2人は遂にステージで漫才を・・・。明るく楽しく繊細でほんわかする青春ストーリー。

・・・というのが、最近まったく更新していない、もうひとつの読書サイトで書いた「The MANZAI 1」の簡単レビュー(ちょっと改訂版)。

 自分も思春期の頃イジメにあって、己の存在に自信が持てなくなり、息苦しい世界で生きてきた(1年だけやけど)。でも、ちょっとした自分の勇気(って言葉も気恥ずかし!)と幸運な出会い、そこから始まる新しい人間関係の中で、誰かが自分を認めてくれて、最初は恐々やがて少しずつ自然に自分が出せるようになって、「この世界に居てもいいんだ」と思えた瞬間の幸せ。だから、喜びも戸惑いも、歩の気持ちは自分のことのように理解できる。

 4巻まで来ると、すっかり地元の人気者で、クラスの中心的メンバーとも仲良くなり、秋本との日常会話での掛け合いも(嫌々ながらも)絶好調。「だって、瀬田君がいちばん目立つんやもの」とクラスメイトに言われて、平凡で目立たないことをモットーとしてきたはずの歩は戸惑う。でも、戸惑いながらも、少しずつ成長する歩の姿。友情や初恋(=失恋)。眩しいなぁ・・・と思う。

 もちろん、思春期は生易しいものじゃない。美しいだけじゃない。苦しくて、醜くて、惨めで、不恰好で、滑稽でもある。そこもかなりリアルに押さえられている。

 秋本のボケと歩のツッコミは時にスベッてるところもあるが(でも、プロ級だとリアルじゃないな)、総じてなかなか面白い。僕は電車の中での読書が多いので、笑いを我慢している。能面のように(?)無表情でいることが、時々ツライ(笑)。

 映画化が決定しているらしい。2人を初めとして皆を誰が演じるのか楽しみだ。完結していない作品を映画するのは如何なものか・・・と一方では思うのだが。


 次は『フリッタ・リンツ・ライフ』(森博嗣・著/中公文庫)。
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2007年09月03日

クレイジーフラミンゴの秋


クレイジーフラミンゴの秋
著者名:誼阿古(著)
出版社:ソフトバンククリエイティブ
出版年:2007.02
ISBN :9784797340600


学校なんかバッカみたい。先生もバッカみたい。クラスの子たちもバッカみたい。ママもパパもバッカみたい。そして、そんなことばっか考えてる自分が一番、バッカみたい。…ってなこと思ってる晴ちゃんは13歳、中1の女の子。もちろん、だからって変な子って呼ばれて浮きたくないし、教室の隅っこで地味に一般庶民やってたのに、たった13票で学級委員になっちゃった。文化祭前の騒がしい学校でやる気のなさそな担任と無意味なやる気だけいっぱいのクラスメイトを抱え、新米リーダーは無視され嫌われこき使われて、もう泣きたいことばかり。おまけに、なんだか最近、気分まで変。ずっと昔の中学で、ちょっと変わった1年生の、今も昔も変わらない「おんなのこものがたり」。
(「BOOK」データベースより)

 『クレイジーカンガルーの夏』の続編。とはいえ、主人公は前作の男の子4人ではなく、うち2人の同級生の女の子(その2人の男の子は主要人物として、残りの2人もチョイ役で登場)。ストーリーも直接の関連はないので、姉妹編と呼ぶのが相応しい。

 で、前作はまだしも「ひと夏の冒険」的要素があったが、今作で描かれるのは一層平凡な中学生の日常である。

 しかし、小説としての完成度はこちらの方がずっと上で、不安定で、ミジメで、嫌らしくて、息苦しくて、それでいてかけがえのない思春期という時間をリアルに思い出させてくれる。登場する音楽 ― ビートルズやサイモン&ガーファンクル、サラ・ヴォーンetc. ― も、前作はただ登場するだけで、ストーリーにマッチしないというか、必然性がない感じだったけど、今作は効果的に(言い過ぎか?)使われている。

 文化祭で行われるクラス対抗の合唱コンクールで、なかなか盛り上がらなくて、まじめに練習しないヤツがいて、皆がまとまらなくて、でもスッタモンダの末に最後には良いものができて・・・というエピソードは、僕も中学時代に合唱&合奏コンクールで経験していたので ― 放課後の練習中、小太鼓担当のトっちゃん(今も友達)がダラダラした雰囲気にキレて途中で帰ってしまい、音楽室で残った全員で緊急学級会して、その結果をトっちゃんに僕が電話で伝えて・・・とか ― 他人事とは思えず(笑)、面白かった。

 まあ、主人公の女の子が担任の先生に恋して云々・・・という終盤はやや陳腐な気もしたが、実際そういうこともあるだろうから、一概にリアリティがないとは言えない。

 それにしても、GA文庫という、おそらくは“その筋の人”以外にはマイナーな文庫に、こういう普通の小説がラインナップされているのは、このシリーズにとっていささか不幸な気がするけどな・・・。集英社文庫あたりに入れてもらいたい(なんとなく・・・)。


 次は『銀河英雄伝説4策謀篇』(田中芳樹・著/創元SF文庫)。
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2007年08月26日

クレイジーカンガルーの夏


クレイジーカンガルーの夏
著者名:誼阿古(著)
出版社:ソフトバンククリエイティブ
出版年:2006.11
ISBN :9784797337839


 『DIVE!!』が映画化されることになったそうで(主役の1人は『バッテリー』の巧役の林遣都君)、楽しみだ。

 『クレイジーカンガルーの夏』は、僕が住んでいる街のBook1stで姉妹編の『クレイジーフラミンゴの秋』と共に平積みになっていた。著者もイラストレーション担当の方もこの街の出身&在住で、作品の舞台もこの街・・・ということが理由らしい。

 こういう出会いでもなければ、このソフトバンク系の出版社から出ているらしいGA文庫という(見たことも聞いたこともない)ものを手に取ることはなかったろう。

 なにせ『クレイジーカンガルーの夏』と『クレイジーフラミンゴの秋』以外のラインナップは、かなりオタッキーな薫り漂う少年少女向けのラノベのようであるから(悪口ぢゃないよ)。


田んぼの上を通り過ぎるジャンボジェット。ラジカセから流れる「はっぴいえんど」の歌。中学1年の夏休み。須田広樹が待ちに待った夏休みは、仲の良い秀一や敬道、それに東京から転校してきた、ちょっとあか抜けた感じの従兄弟・冽史を交えてにぎやかに始まった。プールで遊んで、昨日のガンダムの話で盛り上がって、大人のリクツなんかには全然納得したくなくて…いつまでも続けばいいと思っていた。そんなある日、冽史の家の事情をきっかけに、4人はちょっとした冒険を試みることになるのだった。誰しも心のどこかに残している少年時代が色鮮やかに蘇る、ちょっとノスタルジックなストーリー。
(「BOOK」データベースより)


 で、この作品はそんなGA文庫の中にあっては恐らく異色(と推察する)の、幼馴染3人とその中の1人の従兄弟を主人公にしたごくフツーの青春小説。

 彼らの会話には『ガンダム』やら『ヤマト』やら『ザンボット3』やら『マジンガーZ』やら『ゲッターロボ』やら『アニメージュ』やらが頻出するが、なにせ1979年当時の中学1年(俺の1つ上だ)のことだから、ワリにフツーのことで特にオタッキーなわけではない。

 特に大きな事件や事故やドラマがあるわけでもなく、佐野元春の名曲『ガラスのジェネレーション』の歌詞から取った作品タイトルも、作品中でモチーフのように登場するはっぴいえんどの『夏なんです』『風をあつめて』も十分に活かされているとは言い難いけど、関西弁青春小説のそこそこの佳品。

 ところで、この本のあとがきに“この文庫の対象読者の方々のおとうさん、おかあさんの中学時代”を描いた作品と書いてあった。それを読んでいる俺ってなんなんだ・・・と、なんだか軽くショックだった(笑)。


 次は、『フィンガーボウルの話のつづき』(吉田篤弘・著/新潮文庫)。
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2007年06月26日

幸福な食卓


幸福な食卓
著者名:瀬尾まいこ(著)
出版社:講談社
出版年:2007.06
ISBN :9784062756501


 瀬尾まいこ氏は初読み。この作品が原作の同名の映画はなかなか良かった。だからこそ、読む前は少々不安(って大袈裟か)だった。

 先に映像化された作品を観て気に入ると、原作を読んでも「なんか違うな、無駄が多いな」と思ってしまったりする。逆に原作を先に読んで気に入った場合は、映画やドラマを観て「役者がイメージと違う」だの、「おいおい、そこを省略(改変)か」だのと・・・。

 全く勝手なものである。

 今回も多少そういう面があった。でも、主役の佐和子と大浦君の2人は原作と映画でイメージぴったりだ。佐和子の両親は、映画では羽場裕一と石田ゆり子なのに、小説を読んでいる間はなぜか長塚京三と手塚理美だった。

 まあいい。

 他にも、映画と原作では色々細かい違いもあるのだが、それも今回は気に障ることなく、むしろ楽しめた。

 多分、原作そのものがちゃんと心に届く作品だからだ。


佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて…。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。吉川英治文学新人賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)


 一風変わった話だが、家族の絆とか、生き辛さとか、思春期のアレコレとか、愛する者を永遠に失う哀しみとか、越えられそうにない哀しみを何となく乗り越えていく人間の柔らかな強さとか、そういうものが確かに描かれてる。

 恋愛小説としても、『セカチュー』の10倍は良い。

 ただ、エンディングの余韻という点では、映画に軍配。でも、小説ではあの終わり方は無理だから、仕方がない。

 とにかく、また1人、継続して読みたい作家が増えた(増える一方で困ったもんだ。金と時間が足りん・・・)。知っている人も多いと思うけど、瀬尾氏は現役の中学国語教師である。実作者に習う国語の授業って楽しそうで、生徒が羨ましい。


 次は、『グラスホッパー』(伊坂幸太郎・著/角川文庫)。
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2007年04月01日

山ん中の獅見朋成雄


山ん中の獅見朋成雄
著者名:舞城王太郎(著)
出版社:講談社
出版年:2007.03
ISBN :9784062756839


 カテゴライズに迷ったけど、青春小説にしてみた。

 この作品も、舞台は福井県の西暁(にしあかつき)町(架空の町)。14歳の獅見朋成雄(しみともなるお)は、オリンピック候補の逸材と目されるほどの俊足ランナーかつ秀才。だが、祖父や父と同様に、背中にびっしり鬣(たてがみ)が生えている。祖父や父は背中だけだったが、成雄の場合は首周りから肩までも生えている。

 オリンピック代表選手の強化合宿に参加するよう誘われた成雄だが、有名になれば自分の鬣のことも広く知れ渡ってしまう。思春期の彼にとって、それは耐え難いこと。せっかくの誘いを断って陸上を捨て、書道の道に入る。というと、なんだか繊細なキャラのようだが、喧嘩も強いし、気風もいいし、舞城作品の主人公らしく、なかなかワイルドな14歳である。

 書道の師匠は、近所の山ん中に住む、有名な書家・杉美圃モヒ寛(すぎみほもひかん)。本当はモヒ寛ではなく大寛という名前だが、若い頃モヒカン刈りにしていたので、モヒ寛。相撲を取るのが趣味で、家には土俵があって成雄と稽古に励むし、茶を愉しむ風流人だが、茶室に続く路地の入り口の門には「猫騙し門」、待ち合い室には「がっぷり」、茶室には「うっちゃり堂」てな相撲由来の名前を付けている変人。でも、非常に可愛げのあるキャラで、成雄を「ナルちゃ〜ん」と呼び、成雄は「モヒ寛」と呼び捨て。

 で、ある日、モヒ寛が何者かに襲われて、瀕死の重傷を負い、警察から疑われた成雄が犯人探しに乗り出すが・・・。

 でも、ミステリじゃない。

 この後、展開はむちゃくちゃで、訳の分からない話になっていく。難解ではないし、そこに綴られている事象自体は理解できるけど、常軌を逸したストーリー。

 それが面白い。

 成雄がひょんなことから軽いノリで鬣を剃り落とすことに決め、いい考えだと思ったのに、実際に剃り落としたら、涙が出て体中の力が抜けて、少しの間寝込んでしまい、「もう自分は以前の自分ではない。自分は変わってしまった。元の自分には戻れない。再び鬣が生え揃っても、それは以前の鬣じゃないし、以前の自分に戻れるわけじゃない」と考えるところは、純文学的深さがある。

 ・・・無いかも。

 罪とは何か、カニバリズムは悪なのか、という問いかけも深い。

 ・・・浅いかも。

 荒唐無稽かつ楽しいエンタメ小説としても読めるし、爽やかな青春小説とも読めるし、純文学とも読める。ファンタジーと言えなくもない。

 ところで、舞城氏の文章は一文が長い。受験小論文やビジネス文書の世界では悪文もいいところ。でも、活きが良くてどんどん読める。そして、相変わらず多彩で独創的な擬音語の数々には感心するばかり。そうか、そう聴こえるよな、そう聴こえてもおかしくないよなと納得。

 グロい描写は控えめなので、そういうのが苦手(僕も好きではないが)な人にも比較的読みやすいかも。僕はわりと好きだな、この作品。

九十九十九(舞城王太郎)


 次は、あっという間に読み終わった『あらしのよるに 2』(きむらゆういち&あべ弘士・著/講談社文庫)。
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2007年02月24日

スロウハイツの神様(上・下)


スロウハイツの神様 上
著者名:辻村深月(著)
出版社:講談社
出版年:2007.01
ISBN :9784061825062


 辻村深月さんのデビュー作にして第31回メフィスト賞受賞作(ちなみに第1回受賞作は森博嗣・著『すべてがFになる』)、『冷たい校舎の時は止まる』を買ったのは、装丁がとても良かったから(書店で上・中・下巻を並べてみよう!)。

 ミステリとしては反則ながら、ある意味斬新な真相。そして何よりも、仲良しの高校生の男女数名を主人公に据えたこの作品は、哀切極まりない、優れた青春小説だった。学園・青春ミステリは数多いが、悲痛度ではピカイチだろう。

 それ以降、『子どもたちは夜と遊ぶ』、『凍りのくじら』、『僕のメジャースプーン』と全て読んできたのだが、一作ごとに僕の評価は下降・・・。理由は、ミステリらしさが薄まる一方であること、頭の中でこねくり回して「作りました!」という強い作為を感じてしまうこと(凝った話にしようとしすぎてる気がする)。そうやって内容への評価が下がるにつれて、文章の欠点が反比例のように気になりだした。

 尤もブロガー諸氏の書評では、軒並み高評価のようである。涙した、という書評も拝見した。要は、僕自身がこれらの作品を必要とする状態に無かった、ということかも(読書って、出会いのタイミングで評価が変わることも多いハズ)。

 この作品も上巻を読んでいる間は、欠点に意識が行って仕方なかった。特に気になったのは、1人称と3人称の文章が入り乱れる点と間違った日本語表現(例えば「ばかのはさみは使いよう」)。

 こういうのを直すのが、編集者の仕事だと思うのだが、どうだろう?それともこれも個性と認めているのかな?

 しかし、下巻に入ると、これがもうグイグイ読ませる。欠点もさして気にならなくなる(我ながら適当だ)。伏線の張り方と回収の仕方には、無理があるよなぁ・・・というモノと、上手く考えたなぁ・・・というモノがあるが、総合するとよく考えられたお話であり、爽やかな読後感が残る。出来過ぎ・・・という感も多少あるが。

 というわけで、褒めてないようにも思われるかも知れないけど、結構面白かった。僕の中では、辻村作品の1位が『冷たい校舎の〜』で、2位が『子どもたちは〜』とコレかな。

 あと、講談社ノベルズはミステリ・レーベルだし、この作品もミステリ的手法で書かれているのだが、ほとんどミステリという感じはしない。なので、カテゴリとしては「青春小説」としてみた。ま、カテゴリなんて便宜的なもんで、そんなもの超越・越境した作品も多いんだけど。

 あ、そうそう。この作品、『凍りのくじら』の芦沢光が脇役で登場。こういうの、ちょっと嬉しいね。


 んで、今は『黒猫/モルグ街の殺人』(ポー・著/光文社古典新訳文庫)。
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