DIVE!! 上 著者名:森絵都(著)
出版社:角川書店
出版年:2006.06
ISBN :9784043791033
『2006年度版おすすめ文庫王国』(本の雑誌増刊)堂々第1位。ということで、気になっていた作品。
期待に違わぬ面白さ。一気に駆け抜けるように読んだ。
まず、日本ではマイナーな(世界ではどうか知らん)スポーツ、「飛び込み」を取り上げた点がいい。知らない世界の魅力に触れられるっていうのは読書の楽しみだが、これ読んだら「飛び込み」という競技を観る目が変わる。次の五輪が楽しみになった。
この作品最大の魅力は、東京の同じダイビング・スクール(ミズキ・ダイビング・スクール=MDC)の中に全くタイプの違う主人公3人を置いたこと。この設定が効いている。
1人はまだ中学生の坂井知季。物語のスタート時点では平凡な選手だが、実は類稀なる動体視力と柔軟な肉体という先天的な素質を備えている。でも、無邪気というか、無欲過ぎるというか、子ども(って中学生だ)というか、自分の才能に全く気がついていない。
もう1人は高校生の富士谷要一。MDCのヘッドコーチの息子で、既に実績もあり、押しも押されぬMDCのエース・・・どころか、日本のエース候補。クールで、頭脳明晰で、優れた才能と高いテクニックで完璧なダイブを誇る自信家(でも嫌味なヤツじゃない)。
いま1人は幻の天才ダイバーの血を引き、故郷の海で飛び込みを続けてきた沖津飛沫。その野生的な風貌と肢体を活かしたダイナミックなダイブには、観る者の目を釘付けにせずにはおかない迫力と吸引力がある。高校生であることをついつい忘れてしまうキャラ。
この3人がアメリカ帰りのコーチ・麻木夏陽子と出会い、反発したり(飛沫)、距離を置いたり(要一)しつつ、自分の飛ぶ意味を考えたり、苦悩したり、絶望したり、心を揺らしたりしつつ、はたまたお互いを刺激しあいつつ、それぞれの持ち味と才能が引き出されて行く。
物語は4部構成で、第1部は知季、第2部は飛沫、第3部は要一を中心にストーリーが進み、第4部では他の選手も交えたオリンピック代表選考試合の様子が刻々と描かれる。
成長したり、後退したり、最初の印象とは違う顔や内面を見せたり・・・変わっていく少年達。周囲の様々な登場人物との関わり ― 例えば要一と父、知季と双子の弟や弟に取られたモトカノ、飛沫の実家・津軽の年上の彼女などなど ― を絡めて描く手管は心憎い。
いったい誰が選考試合に勝利するのか、3人は悔いなく己のベストを尽くせるのか。この日のために用意したとっておきのダイブを成功させられるのか。1回飛ぶごとに入れ替わる順位・・・誰にも勝ってもらいたいし、誰にも負けて欲しくない、そんな思いを抱きながら、先が気になってページを繰る手が止まらなくなる。それでいて、最後の最後では、この物語に終わって欲しくない、まだ読んでいたいという気持ちになり、ゆっくりじっくり読んだ。
幸せな読書。
次は、映画を観たついでに購入した漫画『夕凪の街 桜の国』(こうの史代・著/双葉社刊)。

