2007年07月30日

DIVE!!(上・下)


DIVE!! 上
著者名:森絵都(著)
出版社:角川書店
出版年:2006.06
ISBN :9784043791033


 『2006年度版おすすめ文庫王国』(本の雑誌増刊)堂々第1位。ということで、気になっていた作品。

 期待に違わぬ面白さ。一気に駆け抜けるように読んだ。

 まず、日本ではマイナーな(世界ではどうか知らん)スポーツ、「飛び込み」を取り上げた点がいい。知らない世界の魅力に触れられるっていうのは読書の楽しみだが、これ読んだら「飛び込み」という競技を観る目が変わる。次の五輪が楽しみになった。

 この作品最大の魅力は、東京の同じダイビング・スクール(ミズキ・ダイビング・スクール=MDC)の中に全くタイプの違う主人公3人を置いたこと。この設定が効いている。

 1人はまだ中学生の坂井知季。物語のスタート時点では平凡な選手だが、実は類稀なる動体視力と柔軟な肉体という先天的な素質を備えている。でも、無邪気というか、無欲過ぎるというか、子ども(って中学生だ)というか、自分の才能に全く気がついていない。

 もう1人は高校生の富士谷要一。MDCのヘッドコーチの息子で、既に実績もあり、押しも押されぬMDCのエース・・・どころか、日本のエース候補。クールで、頭脳明晰で、優れた才能と高いテクニックで完璧なダイブを誇る自信家(でも嫌味なヤツじゃない)。

 いま1人は幻の天才ダイバーの血を引き、故郷の海で飛び込みを続けてきた沖津飛沫。その野生的な風貌と肢体を活かしたダイナミックなダイブには、観る者の目を釘付けにせずにはおかない迫力と吸引力がある。高校生であることをついつい忘れてしまうキャラ。

 この3人がアメリカ帰りのコーチ・麻木夏陽子と出会い、反発したり(飛沫)、距離を置いたり(要一)しつつ、自分の飛ぶ意味を考えたり、苦悩したり、絶望したり、心を揺らしたりしつつ、はたまたお互いを刺激しあいつつ、それぞれの持ち味と才能が引き出されて行く。

 物語は4部構成で、第1部は知季、第2部は飛沫、第3部は要一を中心にストーリーが進み、第4部では他の選手も交えたオリンピック代表選考試合の様子が刻々と描かれる。

 成長したり、後退したり、最初の印象とは違う顔や内面を見せたり・・・変わっていく少年達。周囲の様々な登場人物との関わり ― 例えば要一と父、知季と双子の弟や弟に取られたモトカノ、飛沫の実家・津軽の年上の彼女などなど ― を絡めて描く手管は心憎い。

 いったい誰が選考試合に勝利するのか、3人は悔いなく己のベストを尽くせるのか。この日のために用意したとっておきのダイブを成功させられるのか。1回飛ぶごとに入れ替わる順位・・・誰にも勝ってもらいたいし、誰にも負けて欲しくない、そんな思いを抱きながら、先が気になってページを繰る手が止まらなくなる。それでいて、最後の最後では、この物語に終わって欲しくない、まだ読んでいたいという気持ちになり、ゆっくりじっくり読んだ。

 幸せな読書。


 次は、映画を観たついでに購入した漫画『夕凪の街 桜の国』(こうの史代・著/双葉社刊)。
posted by ふくちゃん at 23:46| Comment(4) | TrackBack(1) | スポーツ小説

2007年02月19日

GO-ONE


GO−ONE
著者名:松樹剛史(著)
出版社:集英社
出版年:2007.01
ISBN :9784087461237


 主人公は、地方競馬のジョッキー(騎手)、日下部一輝。馬の能力も脚質もレース展開も馬場のコンディションもお構いなし。馬に勝たせてもらうのではなく、自分の力で馬を勝たせる、そして全部のレースで勝ちに行くことにこだわり、文字通り鍛え上げた豪腕で馬を強引に走らせる。しかも、自信過剰、傲慢、直情径行。実際に身近にいたら、扱い難いことこの上ないし、「ロスさせることなく、気持ちよく走らせて、馬の能力を最大限に引き出す」ことが絶対視される現実の競馬界には絶対にいない破天荒なジョッキーであるが、そこが最大の魅力。

 ただ、彼がそんなふうになったのには理由があって、かつての一輝は品行方正とまではいかなくても、性格も騎乗の仕方も至ってまとも。その変化の理由は物語の後半で一応明らかになるのだが、もうひとつ説得力が弱い。書き切れていない感じが残った。

 また、第1章は妹であり、厩務員でもある日下部一那、第2章は中央競馬の女性騎手・一之瀬早紀、第3章は一之瀬と同期の中央競馬の騎手・田京康友、そして第4章は一輝本人の視点から物語が紡がれ、一輝の人となりも見えてくるのだが、この手法に関しても十分に効果を上げているとは思われない。

 一那、早紀、田京の3人もそれぞれ魅力あるキャラクターであるが、そこも十分には掘り下げられていないと感じた。

 約240ページの作品で、あっという間に読めるのだが、もっとページを割いて書き込めば、さらに読み応えのある小説になったのではないだろうか?

 現状のままでも面白くないということはないが、いささか軽いというか、ちょっともったいない気がした。


 で、次はもう読み終わった『のだめカンタービレ#17』(二ノ宮和子・著/講談社)。
posted by ふくちゃん at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツ小説