2008年01月08日

夢の守り人


夢の守り人
著者名:上橋菜穂子(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.12
ISBN :9784101302744


 「守り人」シリーズ第3弾。

 今回もなかなか面白かった。上質なエンタメ系(でもないか)ファンタジー。ハリ○タ(はるか昔に3巻目で離脱)より、よっぽどイイと思うが。。。


・内容
人の夢を糧とする異界の“花”に囚われ、人鬼と化したタンダ。女用心棒バルサは幼な馴染を救うため、命を賭ける。心の絆は“花”の魔力に打ち克てるのか?開花の時を迎えた“花”は、その力を増していく。不可思議な歌で人の心をとろけさせる放浪の歌い手ユグノの正体は?そして、今明かされる大呪術師トロガイの秘められた過去とは?いよいよ緊迫度を増すシリーズ第3弾。
(「BOOK」データベースより)


 “いよいよ緊迫度を増すシリーズ第3弾”と書かれているけど、物語そのものはほぼ完全に独立したモノ。もちろん、主人公のバルサを始め、レギュラーのタンダやトロガイ、第1弾に登場したチャグム、シュガ、ジンなども再び登場するので、シリーズの頭から読む方が良いが。

 夢(“将来の希望”じゃなくて睡眠中に見るヤツ)=ファンタジーと現実の関係 ― 現実にはファンタジーが、ファンタジーには現実が絶対に必要であること ― を、ファンタジーに仮託して描いている(ように思える)。

 そして、選んだ人生(望んだモノであれ望まぬモノであれ)と選ばれなかった人生。分岐点に戻ってやり直すことはできないし、そのチャンスがあってもその場ではまた同じ選択をするだろう。あったかも知れない別の人生に思いを馳せて嘆いても仕方がない。

 しかし、僕の読書はシリーズものが多いな・・・。楽しいけど、新しい作家、新しい作品に出会う機会を削っているような気もして、痛し痒しなんである。

精霊の守り人
闇の守り人


 次は『チーム・バチスタの栄光(上・下)』(海堂尊・著/宝島社文庫)。
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2007年07月20日

おれがあいつであいつがおれで


おれがあいつであいつがおれで
著者名:山中恒(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.05
ISBN :9784041417034


 今は亡き(たしか)旺文社の「小六時代」にコレが連載されていた頃、リアルタイムで読んだ。

 当時はちょっとHで、ハレンチ(?)な物語をドキドキ半分、嫌悪感半分(上品な坊ちゃんではなかったのだが)で読んでいたものだ。

 先日、コレが原作の映画『転校生』(リメイク版の方)を観て懐かしくなり、改めて読んでみた。

 ・・・なんだ。

 爽やかで、瑞々しい物語じゃないか。

 さり気にジェンダーを扱った作品でもある。もちろん、当時はそんな言葉、一般的ではなかったわけだが。

 僕も「男らしさ」や「女らしさ」の呪縛から100%フリーとは言い切れない面はあるが、それ以上に「自分らしく」あること、「人間らしく」あること(僕にとっては「=恥を知る人間」であることの意)がずっと大事だと信じているので、この作品に共感すること大である。

 著者の山中氏にも、「男(女)らしさ」というレッテルへの反発があるようだ。

 でも、そんな話には興味がない人でも、楽しめる小説。


 次は、『卵のふわふわ 八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし』(宇江佐真理・著/講談社文庫)。
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2007年07月18日

水の伝説


水の伝説
著者名:たつみや章(著)
出版社:講談社
出版年:2007.07
ISBN :9784062757904


 たつみや章氏もちょっと前から気にかかっていた作家だが、今回晴れて(?)初読みとなった。

 結論から言うと、読んで良かった。児童文学って、ホント馬鹿にできない。


“自分で言うのは変かもしれないけど、ぼくはグズでドジな弱虫男だ。みんながそう言ったからってだけじゃなくて、自分でもそう思う。何か意地悪なことを言われても言い返せないし、何をやってものろのろおそいし、成績もよくない。”

 女性的な(中性的な)風貌もあって、東京の小学校では苛められていた6年生の光太郎。

“ぼくは毎日、ぼくってなんてだめなやつなんだろうと思いながら暮らしてて(略)”

 アァ分かるなぁ、この気持ち。俺も中1のときの1年間だけ苛められたことがあったから。長く続くと、そのうち劣等感のカタマリになっちゃうんだよな。

 で、光太郎は学校ではどうすることもできず、心配する両親と顔を突き合わせなきゃならない家庭も辛くて、ド田舎の白水村に山村留学してきた。

 幸いにして村の下宿先の一ノ関家の長男で同級生のタツオとは結構仲良くなって、わりに楽しい日々。でも、自分に自信のない光太郎は、内心「嫌われたらどうしよう、嫌われたくない」とビクビクしてる。

 村ではしばらく大雨が続いていたが、一ノ関家の山が土砂崩れを起こして、木材として一家の収入源となるはずだった杉林がダメになってしまう。それでもなお降り止まない雨は、村を危険に晒す。

 そんなある日、タツオに頼まれて2人だけのヤマメ釣りの穴場・乙女ヶ淵が無事かどうかを確かめに行った光太郎は、増水した川で流木に挟まれて動けなくなったカッパを助ける。どうやらカッパに見込まれた光太郎は、そうとは知らずカッパの引き合わせにより、乙女ヶ淵で美しい盃のようなものを見つけて持ち帰る。

 その盃は、村が祀る龍神様の「嫁」=生け贄となる人が持つ印で、昔々乙女ヶ淵には「嫁」が放り込まれていたらしい。そうと分かった日から、なぜかタツオが光太郎に冷たくなる。

 タツオの態度に絶望した光太郎は思い悩んだ末、これまで仲良くしてくれたタツオやお世話になった一ノ関家の人々、大好きな村のために生け贄になり、龍神様に雨を止めてもらおうと決意する。


 弱虫だった少年の成長物語をメインに、人間と自然の共生のあり方までを問う、爽やかなファンタジー。

 これは他の文庫化作品(『ぼくの・稲荷山戦記』『夜の神話』)も読まねば。


 次は、またまた児童文学で『おれがあいつであいつがおれで』(山中恒・著/角川文庫)。
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2007年07月12日

闇の守り人


闇の守り人
著者名:上橋菜穂子(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.06
ISBN :9784101302737


 『守り人』シリーズの第1作『精霊の守り人』も面白かったけど、これはさらに良かった。優れたファンタジーには「よくこういう設定を考えるなぁ」と感心するのが常だが、あとがきを読む限りでは、頭の中でこねくり回して書いたのではなく、自然に湧き上がるものを書きとめたに過ぎないみたいだ。

 いわば“シャーマン”、“憑依”状態といったところか。

 そんなことホントにあるんだろうか・・・といつも思う。でも、村上春樹氏も度々そうなるみたいだし、生まれるべくして生まれる物語とはそんなものなのかも。

 ストーリーをちゃんと紹介したいが、背景説明も含めてかなり長くなりそうだし、それなら実際に読んでもらう方が早いし・・・。1作目を読んでおくのは必須としても、予備知識なしで読む方が良いと思う ― どんな本でもそうかも知れないが ― 特にこの作品は。


女用心棒バルサは、25年ぶりに生まれ故郷に戻ってきた。おのれの人生のすべてを捨てて自分を守り育ててくれた、養父ジグロの汚名を晴らすために。短槍に刻まれた模様を頼りに、雪の峰々の底に広がる洞窟を抜けていく彼女を出迎えたのは―。バルサの帰郷は、山国の底に潜んでいた闇を目覚めさせる。壮大なスケールで語られる魂の物語。読む者の心を深く揺さぶるシリーズ第2弾。
(「BOOK」データベースより)


 ・・・という文庫本ウラの説明文から想像するより、ずっと読み応えがあるよ。

 ぜひ!

精霊の守り人

 次は、『卵の緒』(瀬尾まいこ・著/新潮文庫)。
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2007年05月03日

精霊の守り人


精霊の守り人
著者名:上橋菜穂子(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.03
ISBN :9784101302720


 今回の新潮文庫版は大人向けに漢字の量などを増やしてあるそうだが、元々は児童文学。上橋氏の作品は『狐笛のかなた』を単行本で読んだのが初めてで、他の作品も文庫になったら読みたいと思っていた。


 ゆえあって、亡き武術の師ジグロと幼い頃から放浪しつつ腕を磨き、今は用心棒としての稼ぎで生きる30歳の女性、バルサ。偶然、新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムが牛車から川に転落する場面に遭遇して助け出したことから、チャグムの母・ニノ妃から皇子を護って欲しいと懇願される。川に落ちたのは事故ではなく、これまでにも何度か危ない目にあっているというのだ。

 ニの妃の話によると、星の運行から全てを読み解く星読博士のガカイがチャグムの体に得体の知れないものが宿っていることに気付き、そのようなモノに宿られた人間が神の子たる帝の子孫であるはずがなく、威信を護るため帝自らが暗殺を命じているらしい。

 チャグムを連れて逃げるバルサ。秘密を知ったバルサを殺し、皇子を奪い返すために放たれた追手「狩人」たち。

 チャグムの体に産み付けられたものは、かつて新ヨゴ皇国の開祖トルガル帝が倒したはずの水妖なのか?その正体と意味するところを探る薬草師のタンダ(バルサの幼馴染)と師匠の呪術師トロガイ、そして星読博士のシュガ。

 どうやら、新ヨゴ皇国創世の神話とこの地の先住民ヤクーの伝承にカギがあり、事はチャグムの命はもちろん、新ヨゴ皇国全体の危機にも繋がっている。

 やがて辿り着く真実。バルサ、タンダ、トロガイ、シュガ、狩人たちは、チャグムと新ヨゴ皇国を救えるか ― 。


 エンデの『モモ』や『ネバー・エンディング・ストーリー』、ル・グウィンの『ゲド戦記』のような深遠な哲学や思想ではなく、エンタテインメント寄りの作品。チャグムという少年と成長物語(としては弱いか)としても読める。

 なかなか面白かった。日本ならではの世界観・舞台設定の異世界ファンタジー。『ハリポタ』よりはよっぽど優れてる。

“なぜ、と問うてもわからないなにかが、突然、自分をとりまく世界を変えてしまう。それでも、その変わってしまった世界の中で、もがきながら、必死に生きていくしかないのだ。だれしもが、自分らしい、もがき方で生きぬいていく。まったく後悔のない生き方など、きっと、ありはしないのだ。”


 次は『静かな黄昏の国』(篠田節子・著/角川文庫)。
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2007年04月10日

バッテリー6


バッテリー 6
著者名:あさのあつこ(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.04
ISBN :9784043721061


 単純に児童文学とは呼びたくないが、元々は児童文学として刊行された作品なので、その通りカテゴライズ。

 最近、続編にあたる『ラスト・イニング』(読まなくっちゃ)が出版されたが、一応シリーズ最終巻である。

 絶対的な剛速球。誰にも迎合しない心。己を信じ切る力。マウンドで投げるためだけに生まれてきたような天才ピッチャー・原田巧。

 巧のボールに惚れ込み、巧の凄さを誰よりも信じ、彼の信頼を勝ち取ったキャッチャー・永倉豪。

 「超中学級」の1年生バッテリーを擁する新田東中学だが、第3巻終わりから第4巻初めにかけて行われた、同じ県の代表で全国大会準優勝の強豪・横手第二中学との練習試合ではなぜか(その理由は自分で読んで!)自滅してしまう。しかも、天才4番打者の門脇を完璧に抑えたその直後に・・・。

 第4巻・第5巻では敗戦をきっかけに巧と豪のそれぞれの気持ちが揺らぎ、関係が揺らぎ、再試合までの時間の中で2人は変化していく(そう、「成長」というより「変化」という言葉がふさわしい)。

 そして、第6巻では遂に試合に突入かと思いきや・・・。

 巧と豪を、その結び付きの強さゆえに心配する新田東の前キャプテン・海音寺。

 高校進学後のことより、巧との再対決にのめり込む門脇。

 門脇の幼馴染で横手二中のキープレーヤー、どこか軽薄にも見えるのに、巧たちと関わりあってからというもの、門脇や海音寺、自分への苛立ちを抱える瑞垣。

 予定調和な青春物語や成長物語とは全く無縁の、少年達の葛藤や焦燥や情熱がひたすら綴られる。

 そして、巻の終盤、ようやく舞台は再試合へ。

 う〜ん。やっぱり最終シーンはこんな感じかぁ・・・。これが野球小説(とか、漫画とか、映画とか)の難しいところで、最後はコレかアレしかないよなぁ・・・。

 でも、良い小説だった。

 児童文学だからって、甘く見てたらヤケドする。激しく、冷たく、熱く、ヒリヒリするような作品。


 お次は本日読了、『蹴りたい背中』(綿矢りさ・著/河出文庫)。
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2007年02月17日

ほたる館物語2


ほたる館物語 2
著者名:あさのあつこ(著)
出版社:ジャイブ
出版年:2007.01
ISBN :9784861763717


 あさのあつこさんのデビュー作、シリーズ第2弾。

 第1弾の感想では、「一子の真っ直ぐさが眩しい」と褒めたのだが。

 今回は「一子の真っ直ぐさがうっとおしい」と思ってしまった(苦笑)。

 真っ直ぐというより、単なる依怙地のようで。


おばあちゃんが急に「ほたる館を継げ」と言い始め、自分で将来を決めたい一子は反発する。でも、悲しそうなおばあちゃんの顔を見るのはつらい―。はっきりとした性格の一子の心にも、素直に気持ちを伝えられないもどかしさが募っていく。どうすることもできない葛藤の中で、大切なものを見つけ出そうとする少年少女を描いた大好評シリーズ、待望の第二弾。
(「BOOK」データベースより)


 まあ、小学校5年生で将来を決められちゃあ、腹も立つよな。だから一子の気持ちも分かるんだけど。でも、周囲のいろんな人達への接し方全般、もうひとつスッキリしないというか。子供なんだから、あんまり大人びた配慮もどうかとは思うが(笑)。

 同じ著者の代表作『バッテリー』の原田巧に通ずる、媚びない真っ直ぐなキャラクターなんだけど、巧のような魅力は今回僕には感じられなかった。

 あと、巻末の解説では、あさのあつこさんのデビューに至るお話が綴られていて、これはなかなか興味深かった。やっぱ、世に出る人は違う。

 にしても、このシリーズ、やっぱりすぐに1冊読み終わるなぁ。時間単価高い・・・。


 次は、これまたあっという間に読み終わった『GO‐ONE』(松樹剛史・著/集英社文庫)。
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2006年11月20日

ほたる館物語1


ほたる館物語 1
著者名:あさのあつこ(著)
出版社:ジャイブ
出版年:2006.11
ISBN :4861763576


もう読んじゃった。

だって、あとがき入れて156ページしかないんだもんなぁ。

行間も空いてるし。

これで500円(税別)は高いと思う。

3部作で、1月に第2巻が出るようだけど、3部で1冊にしてもらいたかった。

関西は湯里温泉郷(架空の地だと思う)の老舗旅館「ほたる館」の女将の孫娘=若女将の娘・一子(いちこ/小学校5年生)を主人公とした作品だが、物語自体は清々しい感じでなかなか良い。

あさのあつこ氏のデビュー作(親本は15年前の出版)で、いわゆる児童文学である。

しかし、僕がわざわざ言い立てるまでもなく、良い児童文学は大人の鑑賞にも堪えるのだ。

一子の真っ直ぐさが眩しい。

次は『水滸伝・二 替天の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。
posted by ふくちゃん at 22:45| Comment(2) | TrackBack(1) | 児童文学