2008年09月23日

魔王


魔王
著者名:伊坂幸太郎(著)
出版社:講談社
出版年:2008.09
ISBN :9784062761420


 ドラマの『魔王』とは無関係。

 文章上手いなぁ。

 会話やちょっとした描写のセンス。思わずニヤリとしてしまい、電車の中で笑いを噛み殺す。巧まざるユーモア。

 絶対にありえない一種SF的な、ファンタジックな設定も違和感なく読ませる。

 ああ、この筆力が海堂氏にあれば・・・(笑)。


 この本に納められた『魔王』とその5年後を描く『呼吸』が書かれたのは、2004年と2005年。小泉氏が郵政選挙で圧勝する前のこと。

 にも関わらず、まるでその時の、そして今の日本を書いているような作品である。

 ムードに流され、自分の頭で考えない国民(自分含む)。威勢の良い言葉、小気味の良い言葉、耳に心地よい言葉に酔い。

 喉元過ぎれば熱さを忘れ。


 世の中をダメにする『魔王』とは・・・。

 筋の通った(ある意味危険な)直言を述べる人気の政治家・犬養なのか。その言葉に流される国民全体なのか。それとも、犬養が作り出そうとする世の中の流れに、独り己の特殊能力で抵抗を試みる普通の会社員・安藤なのか。5年後、自分の特殊能力に気付いた安藤の弟・潤也なのか。

 洒脱で安穏とした心地よさに包まれながらも、ここに書かれていることは、実に怖い話である。国もそこで暮らす人間も、時に「正論」や「正義」や「誇り」や「自尊心」のために暴走してダメになっていくのだ。そうと気付かぬうちに、何気ない日常に紛れながら。

 この作品から50年後の日本、“検索”によって監視される社会を描く続編『モダンタイムス』が10月下旬に発売される。読みたい!でも文庫本になるまでガマン(笑)。

 あ、そうそう。この作品には『死神の精度』のあの人が登場するのだ。これにもニンマリ。


 次は、『居眠り磐音江戸双紙 探梅ノ家』(佐伯泰英・著/双葉文庫)。
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2008年08月14日

闇の子供たち


闇の子供たち
著者名:梁石日(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2004.04
ISBN :9784344405141


 映画に触発されて原作を読む。梁石日氏は初読み。


・内容
貧困に喘ぐタイの山岳地帯で育ったセンラーは、もはや生きているだけの屍と化していた。実父にわずか八歳で売春宿へ売り渡され、世界中の富裕層の性的玩具となり、涙すら涸れ果てていた…。アジアの最底辺で今、何が起こっているのか。幼児売春。臓器売買。モラルや憐憫を破壊する冷徹な資本主義の現実と人間の飽くなき欲望の恐怖を描く衝撃作。
(「BOOK」データベースより)


 映画と原作、どちらがいいか。そこは、まあ同じぐらいの評価。どちらも筋を追うのにいっぱいいっぱいで、人物が書き割りみたいに生彩がない。

 いずれにせよ、幼児売春は汚らわしい。映画では具体的な映像を見るのが辛かった。小説もそういう場面は読むのが辛い。全くおぞましい。こんな嗜好はやっぱり理解できない。ビョーキとしか思えん。恥を知れ。

 自分の子供の命を助けるために、生きたままの他人の臓器による移植を受けようとする日本人家族。金持ちは命を買い、貧乏人はその犠牲に。自分の子供を救いたい気持ちは分かる。ベストを尽くすべきだろう。でも、こんな方法はいただけない。これしか手がないのなら、血の涙を流すほど辛くても、寿命として受け入れるしかないだろう。

 だが、最大の問題は、金持ち先進国と貧乏(でも一部は利権で潤う)な発展途上国の経済格差である。これを解決しないことには・・・。

 そして、経済格差は何も海外との問題だけじゃない。今や日本国内にも同様の問題がある。

 企業は利益を上がるためにコスト削減に走る。

 消費者は安いモノを喜ぶ。

 ただ安ければ良いのか?その向こうに苛酷な労働環境(安い賃金でこき使われる)にあえぐ国内外の労働者がいるのだ。

 本当に良いモノには正当なコストがかかる(安いモノにはそれ相応の理由がある)。そういうちゃんとした商品を消費者が買わないと・・・。

 しかし、ここでまた問題が。

 高くても良心的なモノを買い、そういう商品を作る企業が儲かる・・・そんな世の中の方が労働者全体にとってもプラスだが、高いモノばっかり買うと家計を圧迫する。高邁な理想より現実の生活・・・である。

 企業は労働者に利益を還元してもらいたい。じゃないと景気もよくなんないよ。


 次は『容疑者xの献身』(東野圭吾・著/文春文庫)
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2008年06月02日

優しい音楽


優しい音楽
著者名:瀬尾まいこ(著)
出版社:双葉社
出版年:2008.04
ISBN :9784575511932


 カテゴライズ不能。瀬尾ワールドとしか言いようが無い。好きだなぁ〜。

『優しい音楽』
永居タケルは、ある日突然、鈴木千波に声をかけられる。ナンパ?特にイケメンでもないのに。毎朝、駅で顔を合わせるたびに、彼女は近寄ってくる。いつしか、タケルは千波を好きになり、告白する。キョトンとする千波。向こうは別にタケルに惚れていたわけではないらしい。だが、彼女は『永居さんと確実に一緒にいる』ために、付き合うことを了承する。徐々に本当の恋人らしくなる2人。ところが、千波はタケルが彼女の実家を訪れることだけは頑なに拒否する。なぜ・・・?

『タイムラグ』
私は都合のいい女。会社の同僚・平太とは不倫関係。奥さんと2人で旅行に行く彼から8歳の子供を預かることになってしまう。心ならずも子守りの1日・・・のはずが、心が通い出して・・・。

『がらくた効果』
ある日、妻のはな子が元大学教授のホームレス佐々木さんを拾ってきた。バツイチで穏やかで紳士的で、古風な知識に通じた佐々木さん。この闖入者が、少々倦怠期気味の夫婦にもたらした効果とは・・・。

 読む者をアッという間に物語世界に誘う不可思議な導入部。奇妙にズレた会話。やがて辿り着く、寂しくも優しい気持ち。

 ええで。

 瀬尾まいこは天才?


 次は『夜市』(恒川孝太郎・著/角川ホラー文庫)。
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2008年05月18日

ベルカ、吠えないのか?


ベルカ、吠えないのか?
著者名:古川日出男(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.05
ISBN :9784167717728


 これはフィクションだってあなたたちは言うだろう。
 おれもそれは認めるだろう。でも、あなたたち、
 この世にフィクション以外の何があると思ってるんだ?

 想像力の圧縮された爆弾。

 ・・・作品の冒頭とあとがきに記された著者の言葉である。

 フィクション、エンターテインメントに対する覚悟のような、自負のようなものがヒシヒシ伝わってくる。


・内容
キスカ島に残された四頭の軍用犬北・正勇・勝・エクスプロージョン。彼らを始祖として交配と混血を繰りかえし繁殖した無数のイヌが国境も海峡も思想も越境し、“戦争の世紀=20世紀”を駆けぬける。炸裂する言葉のスピードと熱が衝撃的な、エンタテインメントと純文学の幸福なハイブリッド。文庫版あとがきとイヌ系図を新に収録。
(「BOOK」データベースより)


 20世紀の近現代史=1943年〜1990年の資本主義世界と共産主義世界との争いの歴史(だけじゃないけど)。現在(物語内現在)のロシアン・マフィア、チェチェン・マフィア、ヤクザ、その他の国際犯罪組織、ムジャヒディンの聖戦(ジハード)、元KGBエリート率いる犬部隊の織り成す混沌。それらを人間ではなく、犬たちの視点から、軍用犬(だけじゃないけど)の視点から描く野心作だ。

 文句なしに面白い!

 読んだ後も大切に残しておきたい1冊、というタイプの本ではない・・・という評価が最高の褒め言葉となるような100%のエンタメ(だから“純文学とのハイブリッド”という謳い文句はどうかなぁ)。


 次は、『警察庁から来た男』(佐々木譲・著/ハルキ文庫)。
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2008年04月29日

替天行道 北方水滸伝読本


替天行道
著者名:北方謙三(編著)
出版社:集英社
出版年:2008.04
ISBN :9784087462838


 著者からのメッセージ、各種紙・誌に掲載された書評、編集者のエッセイ、著者と各界著名人(?)との対談(最後の大沢在昌氏・担当編集者の山田裕樹氏との三者対談がいちばんオモロイ)などを満載したファン本。

 これを読めば北方水滸伝が100倍楽しめる!

 ・・・かどうかは別にして、創作の裏側を垣間見ることはできる。

 そして、意外ではあるが、おそらく最初から続編を書くことを意図していたのではないか、と思えてくる。

 てっきり楊令というオリジナルキャラが目立ち始めた頃から構想したのでは・・・と思っていたのだが。

 で、その楊令。著者自身がこの本の中で述べているように、子午山から帰ってきた後の彼は少年でありながら、あまりに“出来すぎた人間”である。そこんとこ、読みながら引っかかっていたのだが、『楊令伝』では一度泥にまみれさせるそうである。

 だよなぁ。

 で、結局この読本で最も感じ入ったのは、北方氏とそのデビュー当時(正確には純文学路線からエンタメ路線に変更した時)からの担当編集者である山田氏との、戦友のような、同志のような関係性だったりするのだった。


 次は『東京バンドワゴン』(小路幸也・著/集英社文庫)
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2008年04月01日

食い逃げされてもバイトは雇うな/「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い


食い逃げされてもバイトは雇うな
著者名:山田真哉(著)
出版社:光文社
出版年:2007.04
ISBN :9784334034009


 この人、タイトルつけるの上手い。気になるもんな。手に取りたくなる。前著『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』も面白かったので、まとめて2冊購入。

 「禁じられた数字<上>」「同<下>」とも表記されている通り、一応上下巻。会計学なんて分からない、興味もないという人(オレだ!)にも分かりやすく、楽しくサクサク読める。

 上巻では、プレゼンや文書(文章)作成など、ビジネス(に限らないが)で上手に数字を使うコツを、実例を踏まえて教えてくれる。

 例えば「タウリン1g配合!」より「タウリン1000mg配合!」の方がインパクトがあるとか。「ほとんどは仮説」より「99.9%は仮説」、「若者はなぜすぐに辞めるのか」より「若者はなぜ3年で辞めるのか」の方が心に訴えてくるとか。

 ただ、これらのことも含めて、上巻で説明されていることは自分でも日頃意識していることで、新鮮味はなかった(←偉そう)。

 内容よりも、著者の文章の上手さに感心。文学的に優れている・・・ということではもちろんないが、とにかく平易で簡潔で読みやすい。なかなかこういう文章は書けないよ。うん。

 最も印象に残ったのは、下巻の「脱予算経営」。企業というのは年間の予算計画(売上目標など)を立てるわけだが、環境変化のスピードの速い現代においては、その意義が薄れているというのだ。

 「計画」に縛られるのは、弊害の方が大きい。「計画」は、「作られた数字」や「根拠のない数字」を産み出す土壌になっている。「計画」よりも、環境に変化に応じて切ることのできる「カード」をどれだけ持っておくかが大事。

 ・・・というのである。

 同感。

 海外では、従来の「計画信仰」から脱却し、例えば最終目標としてよく使われる「売上高」「利益率」「成約件数」などではなく、「在庫水準」「品切れ率」「製品化までの時間」「解約件数」「顧客訪問回数」「従業員離職率」などの中間的な数字をチェックすることによってビジネス・プロセスを管理するKPI(重要業績達成指標)というものを導入する企業も出ているらしい。

 面白い。

 山田さんが紹介している『脱予算経営』という本、読んでみようかな。

 あと、「会計がわかる=ビジネスができる」という最近の風潮を、バッサリ否定しているのも爽快。


 次は『蠱猫 人工憑霊蠱猫』(化野燐・著/講談社文庫)。
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2008年02月17日

死神の精度


死神の精度
著者名:伊坂幸太郎(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.02
ISBN :9784167745011



 千葉の職業は死神である。レトリックではなく、正真正銘、本物の死神である。

 彼ら死神=調査部スタッフは、情報部の指示に基づいて対象者となる人間に接触する。

 彼らの容姿・年齢は、対象者に合わせて、その度ごとに決定される。

 そして、7日間の調査の後、対象者を死なせるべきであれば「可」、そうでなければ「見送り」と情報部に報告する(大抵の場合「可」)。「可」と判定された人間は8日目に死ぬ。その死を見届けるまでが、死神の仕事である。

 彼らの姓は、自治体の名称から取られる。

 彼らは人間の作り出す「音楽」が好きで、仕事で派遣された7日間、暇さえあればCDショップの試聴コーナーに入り浸る。

 彼らの中には、あと7日間で(おそらく)死ぬ人間のために、サービスに励む者もいる(例えば恋人になるとか)。だが、千葉は人間そのものには全く興味がなく、至ってクール。ハードボイルドな趣きさえある。それでいて妙なオカシミもある。それは彼ら死神が人間の姿・形をして、人間の言葉を話してはいても、人間ではないゆえに生ずる、対象者との会話のギャップのためである。

 仕事をするときはなぜかいつも雨に降られる千葉が、接触・調査する6人の老若男女の人生。

 冒頭の表題作を除き、千葉は対象者全てに関して「可」と報告する。表題作はもちろん、決して幸福なストーリーではない他の5篇も、なぜか爽やかな読後感だ。

 意外な着地点に辿り着く『死神の精度』。閉ざされた雪の山荘での連続殺人ミステリ・・・風の『吹雪に死神』。『死神の精度』、『恋愛で死神』と鮮やかに繋がる最終篇『死神対老女』が特にお気に入り。

 金城武主演の映画(3/22公開)も楽しみだ。


 次は、『かたみ歌』(朱川湊人・著/新潮文庫)。
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2008年01月16日

仕掛け花火


仕掛け花火
著者名:江坂遊(著)
出版社:講談社
出版年:2007.11
ISBN :9784061825642


“ショートショートのあっけらかんと短いという制約が気に入っています。奇妙で愉快な話をあっけら缶にギュウギュウ詰め込みました。是非ともお求めいただきご開缶下さい。開けた途端に、仕掛けておいた花火が星まで届けと、実際まことに見事に打ち上がることになっています。”
(著者のことば)

 その昔、ショートショート界の大巨人・星新一氏が選者を務めるショートショート・コンテスト(もしくはショートショート・コンクール)というものがあり、その優秀作をアンソロジーにした『ショートショートの広場』という本がシリーズで出てた。

 “その昔”と書いたが、星氏の没後は阿刀田高氏が引き継いでおり、コンテストも『ショートショートの広場』の刊行も継続中である。

 が、僕は星氏が選者の時代のモノしか読んでいない。

 阿刀田氏選によるものはなんか違うな、と感じたのだ。もう昔のことで、何をどう感じたか思い出せないが。

 星氏の著作は今も手元に十数冊あるが、ショートショートの新作って最近めっきり読んでなかった。だいたい星氏以降、ショートショート専業作家なんていないと思っていたし。

 そしたら、最近ひょんなことから江坂遊氏の存在を知った。

 初期のコンテストの入選者であり(だから多分僕も読んでいたハズ)、コンテスト出身者では唯一のショートショート専業作家、しかもこれまた唯一、星氏が自分の弟子であると公言していた人だそうだ。

 星氏には長編もあるが、江坂氏はホントにショートショート・オンリーらしく、2007年正月現在でその作品数は745編。星氏の1,001編を抜くのはこの人しかいないかも(それとも他にもう抜いている人いる?)。しかし、ショートショート専業では食えないようで、別に仕事を持っておられるようだ。

 知っている人は知っている通り、ショートショートはあんな短いのに、いやあんなに短いからこそ、書くのに時間がかかる。しかも、ボリュームがないから原稿料は安い。本にまとめるで時間がかかる。とにかく割に合わないのだ。

 そして、星氏がいない今、完全にマイナー・ジャンルである。

 この『仕掛け花火』も、1992年に講談社ノベルズから刊行されたモノを“綾辻・有栖川 復刊セレクション”として再刊したモノだし、そのほかの江坂作品は講談社文庫から『あやしい遊園地』『短い夜の出来事』の2冊があるだけ(Amazonでは中古品しかないから絶版だろう)。

 民話風、時代物風、中国故事風、会話だけの掛け合い漫才風など、星氏とは微妙に異なる味わいだが(星新一風もあり)、久々にショートショートの妙味を味わえて楽しかった。

 私のオツムでは理解できないオチの作品も若干あったけど(笑)。

 巻末にはノベルズには珍しく解説付き(最初に刊行された際の星氏による解説と復刊に際しての最相葉月氏による解説)。


 次は、『君を乗せる船 髪結い伊三次捕物余話』(宇江佐真理・著/文春文庫)。
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2008年01月14日

自己紹介バトン

 このブログでは、読んだ本の紹介以外の投稿は一切しないと決めていたのだが、『お菓子を片手に、日向で読書♪』のマメリさんから、バトンが回ってきた。

 スルーも愛想なしなので、バトンはいただき。ルールは・・・

1:バトンを回す大好きな5人の方々のブログのタイトルを書いて驚かせましょう。
回してみたい方はいるけど、一応アンカーになっておくことにする。
拾いたい方はご自由にどうぞ!

2:回ってきた質問には素直に等身大の自分で答えましょう。
はい。

3:このルールは必ず掲載して下さい。

 じゃあ、始め!

★お名前は?
ふくちゃん。
いい年こいて、もう少し考えるべきだったか(苦笑)。

★おいくつ?
1967年生まれの40歳。
年を重ねてだいぶ丸くなったような。

★ご職業は?
会社員。
まさかこんなに長くサラリーマンやるとは・・・自分が一番驚いている。

★資格持ってる?
そろばん7級(小学生)、英検3級(中2)。
失笑モノだが、必要なこと以外、わざわざ勉強するの、嫌い。
趣味や仕事に関して調べものしたり、勉強するのは苦にならないけど。

★今悩みありますか?
仕事・会社のこと。

★あなたの性格を一言で言うと?
穏やか。
誰であれ、どんな立場・関係であれ、相手に対して偉ぶらない。

★誰かに似てるって言われたことある?
香港人全般。

★社交的?人見知り?
人見知り。
仕事上ではそれ用のペルソナ被るからそうでもないけど。

★ギャンブルは好き?
基本的にやらない。
でも、マジにやったらハマって金をすりそう。
だからこそやらない。

★これの為なら一食抜けるゴハン
食べることより大事なことなんて、この世にはほとんどない。

★好きな食べ物・飲み物、嫌いな食べ物・飲み物は?
<好きな食べ物・飲み物>
和食、中華、イタリアン全般。高級であればなお良し(笑)。
インデアン・カレー。
スイーツ(量は食べられない)。
日本酒、焼酎。
完全無添加食品(でも本当はジャンクフードも大好き)
<嫌いな食べ物・飲み物>
嫌いなものは少ない方。
ゲテモノ以外は大丈夫だと思うが、白子、蟹みそは苦手。

★恋人はいる?
いない。

★彼氏、彼女にするならどんな人が理想?
理想は特にないが、一緒に穏やかに過ごせる人。
昔は引っ張りまわしてくれる元気な人が良かったが、年とったか。

★彼氏、彼女とケンカした時に自分から謝れますか?
自分に非があれば、自分から謝る。
50:50でもとりあえず謝る。
意地の張り合いに意味なし。

★バトンを回してきたあの人は○○である
読書好きで、お菓子を作る人に悪い人はいない!

★今までの自分の経歴で面白い事や自慢できる事は?
楽しいことは沢山あったが、面白いことは・・・。
さもツマラナイ人生を送っていると思われそうでイヤだが(笑)。
自慢(?)は高卒後、浪人(予備校)、大学(私大)と、経済的にほぼ誰にも(親にも)頼らずに(頼れずに)生きてきたこと。
自分で進んでではなく、やむなくだが、わりにしぶとい雑草野郎。

以上!
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2007年12月24日

自分の感受性くらい


自分の感受性くらい 新装版
著者名:茨木のり子(著)
出版社:花神社
出版年:2005.05
ISBN :9784760218158


 詩集なんて久し振りに買った。

 表題作の『自分の感受性くらい』。

 この素晴らしい一編の詩を手元に置いておきたい。

 ただ、その理由だけで。

 全文を引用して紹介したいところだが、著作権法上、問題がある。なので自粛するが、ぜひ一度立ち読みすることをお勧めしたい。

 ぱさぱさに乾いてゆく心を
 ひとのせいにはするな
 みずから水やりを怠っておいて

という冒頭から、最後までシンプルで無駄のない、力強い言葉が胸に突き刺さる。

 いくじなしは いくじなしのままでいいの
 泣きたきゃ 泣けよ
 意気地なしの勁さを貫くことのほうが
 この国では はるかに難しいんだから
(『夏の声』より)

とか、他の詩も良いが(『知命』という詩が先日金八先生の授業シーンで使われていた)、やっぱり『自分の感受性くらい』が、断トツで最高である。

 もうひとつ有名な『倚りかからず』も手元に置いておきたいな。


 次は『PLUTO(5)』(浦沢直樹・著/小学館ビッグコミックス)。
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2007年10月16日

M8


M8
著者名:高嶋哲夫(著)
出版社:集英社
出版年:2007.08
ISBN :9784087462005


 月9の『ガリレオ』の1回目を観た。イマイチだった。やっぱ原作の方が良い。

 さて、『M8』。

 こちらはかなり面白かったぁ〜。約550ページと結構長いが、一気読みである。


 瀬戸口誠治。28歳。東都大学理学部地球物理学科大学院博士課程を修了したポストドクター(博士研究員)。高校時代に阪神・淡路大震災で親兄弟を亡くした震災孤児で、現在は地震予知を専門とする。

 彼のコンピュータ・シミュレーションは、1ヵ月以内に東京直下でマグニチュード8クラスの巨大地震が起こることを示していた。この危機を何とかしたいと思う瀬戸口だが、同僚の研究者もボスである教授(地震学の重鎮)も、同じく親兄弟を亡くした高校時代の同級生 ― 防災に熱心な議員の秘書を務める亜紀子、災害救助にあたる自衛隊施設大隊の尉官・松浦 ― も本気では取り合わない。

 ある日、瀬戸口は1人の男と偶然出会う。それは、瀬戸口のシミュレーションの基となる理論と公式を構築したかつての地震学の世界的権威でありながら、阪神・淡路大震災を予知することができず、震災後袋叩きに合い、神戸大学教授の地位を追われ、失踪していた遠山であった。

 遠山の協力・指導の下、さらに精密なシミュレーションを続ける瀬戸口だが、その精度が上がる度にXデイは現在時点に近付き、あと3日以内にほぼ100%の確率で東京直下型大地震の発生することが判明する。

 あらゆるルートを使って、この「事実」を政府や東京都に伝えようとする瀬戸口と遠山。遂には東京都知事が動く。しかし、もはや「その時」は目前に迫っていた・・・。


 「いつか来るとは思っていたが、今日来るとは知らなかった」というコピーの映画が昔あった(1980年『地震列島』)。現実に、東京直下型、東海、東南海、南海地震はいつかは必ず起こると言われている。

 だが、阪神・淡路大震災から時は流れ、酷い被害を直接受けなかった僕らの危機感は早くも風化しつつある。それに、小説内の表現を借りるなら、仮に東海地震の「警戒宣言」が発令された場合、あらゆる経済活動はストップし、それだけで実際に地震が来なくても、1日に3450億円の経済損失が生まれるという。実際に大地震が来た場合の損失はそれどころではないはずだが、もし来なかった場合のことを考えると、容易に「警戒宣言」は出せない・・・。でも、やっぱり地震が来たら・・・。このジレンマは悩ましい。

 だから、政治家も科学者も、小説内のほとんどの人物が ― 地震の恐ろしさを身に沁みて理解し、防災や被災者救済のために働きたいと考えている亜紀子や松浦でさえ ― 地震が本当に来る可能性から目を逸らそうとする気持ちは分かる(一方で、もどかしさが募り、先が気になって、ドンドン読んじゃう)。かつての遠山もまた、己の名誉も含めて、予知が外れた場合のリスクに囚われ、阪神・淡路大震災の発生を十分に察知しながら、そのことを断言することが出来なかった(そのために震災で妻と子と数人の教え子を喪い、今も深い後悔に苛まれると同時に、同じ過ちは繰り返さないという強い気持ちを抱えている)。

 地震が起こった後の、自衛隊や消防の必死の闘いには、思わず目頭が熱くなったりした。ただ、主要人物がほとんど死なないのは、出来すぎかも(笑)。

 それにしても、エンタメとして十分面白く(現実化はしてほしくないが・・・いや、その考えこそ現実逃避か)、しかも考えさせられる本。地震予知は難しいらしいけど、諦めずにもっとお金をかけて研究すべきじゃないだろうか。そして、地震予知が外れても喜びこそすれ、嘘つきやがって!なんて怒っちゃいけないな。

 根底に著者の熱い気持ちを感じる一冊。


 次は、もちろん『走ることについて語るときに僕の語ること』(村上春樹・著/文藝春秋)。
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2007年10月08日

反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパークX


反自殺クラブ
著者名:石田衣良(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2007.09
ISBN :9784167174125


 石田衣良氏は、このシリーズの第1作でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。確かにシリーズ初期にはミステリ的要素がないわけでもないけど、今となってはなんだか不思議な感じだなぁ。

 今作も、池袋西口公園近くの実家果物屋の店番であり、コラムニストであり、池袋のトラブルシューターでもあるマコトが、ストリートギャングのGボーイズの王様タカシ(高校時代の同級生)や、羽沢組系氷高組本部長代行のサル(中学時代の同級生)、凄腕のハッカー・ゼロワンなど、お馴染みのメンバーの力を借りつつ、いろんな事件に関わり合い、あれよあれよと(短編だもんな)解決していく。

 まあ、ご都合主義的というか、結局いつもうまく行き過ぎるというキライもあるにはあるけど、新しい社会風俗や現代社会の歪みを巧みに織り込んだストーリー、レギュラーだけでなくその回にしか登場しない主役級ゲスト(=トラブルをマコトに持ち込む連中)など、登場人物の魅力で、軽快に読ませる。

 集団自殺とか、日本企業による中国労働者への搾取とか、同じ題材や設定で大沢在昌氏あたりが書いたら、きっともっとヘヴィな作風になるだろうな(笑)。それも読んでみたい気がするけど。


 次は、久し振りに小説を離れて、『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一・著/講談社現代新書)。
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2007年08月21日

半島を出よ(上・下)


半島を出よ 上
著者名:村上龍(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2007.08
ISBN :9784344410008


2011年春、9人の北朝鮮の武装コマンドが、開幕ゲーム中の福岡ドームを占拠した。さらに2時間後に、約500名の特殊部隊が来襲し、市中心部を制圧。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。慌てる日本政府を尻目に、福岡に潜伏する若者たちが動き出す。国際的孤立を深める日本に起こった奇蹟!話題をさらったベストセラー、ついに文庫化。
(「BOOK」データベースより)


半島を出よ 下
著者名:村上龍(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2005.03
ISBN :9784344007604


さらなるテロの危険に日本政府は福岡を封鎖する。いまや九州は反乱軍の占領下となった。逮捕、拷問、粛清、裏切り、白昼の銃撃戦、被占領者の苦悩と危険な恋 ― 。絶望と希望が交錯する中、若者たちの決死の抵抗が始まる。現実を凌駕する想像力と、緻密な描写で迫る聖戦のすべて。各紙誌で絶賛を浴びた、野間文芸賞、毎日出版文化賞受賞作品。
(「BOOK」データベースより)


 村上龍氏は自分でも意外なことに初読みである。この本は単行本が出たときから、文庫化されたら読もうと決めていた。

 2011年を舞台にした近未来小説。

 経済的に没落してアメリカやアジア諸国から見放され、世界の孤児と成り果てた日本。街には失業者やホームレスが溢れ、政治的には軍備拡張主義が台頭している。

 そんな中、体制維持が困難となった北朝鮮の金正日は、韓国との統一を果たした祖国の英雄として中国で安泰に引退生活を送るために、特殊戦部隊員の精鋭を選抜して福岡市を占拠させる。

 たった9人で福岡ドーム占拠なんて・・・と思うかも知れないが、読んでいると優秀なプロの手にかかれば意外に簡単かもなぁと思えてくる。怖い。

 福岡ドームの観客を人質に捕られた政府が手も足も出せず右往左往している間に、500人の後続部隊が到着。他都市、とりわけ東京へのテロを恐れる政府は福岡市を封鎖し、自ら北朝鮮特殊戦部隊による福岡市占領を完成させることになる。

 彼ら特殊戦部隊は、自分達は母国・北朝鮮の腐敗を糺すために立ち上がった「反乱軍」であり、その拠点として福岡市民と共存して新しい国を打ち立てると宣言。軍の規律を守りつつ、ソフトな政策を用い、脱法行為で儲ける悪徳経営者・政治家や暴力団を逮捕して資産を接収し、市の運営費に当てるなど、一見平和裏に統治を進めて行く。

 そして、さらに12万人の北朝鮮軍が福岡市を目指して海を渡りつつあるのだ。

 実はこの12万人は韓国との統一やアメリカとの融和協調路線に反対し、金正日へのクーデターの噂も絶えない、対外最強硬派の幹部達が率いる軍であり、南北統一のために彼ら12万人を北朝鮮から追い出すことがこの福岡制圧作戦の真の意図なのである。

 政府は北朝鮮に抗議し、アメリカなどに応援を求める。

 だが、北朝鮮は、彼らが「反乱軍」であることを対外的に認め、日本からの要請があれば、自らの手で処分しても良いという(だが、その場合、戦場になるのは福岡で、到底そのような要請はできない)。また、今回の件は「反乱軍」が勝手にしでかしたことであるから、非は認めない。

 アメリカも表向きはともかく、本音は日本よりも南北朝鮮の統一と中国との協調の方が戦略的に重要なのだ。それどころか、福岡を拠点とする物流が止まっていることの損害の大きいので、福岡の占領統治を容認して物流を再開させる空気さえある。政府の対応のまずさもあり、アメリカも中国も日本に協力しない。

 後続の500人や12万人は知らないが、9人の先遣隊コマンドは占領軍司令部として、これら全てが作戦名「半島を出よ」のシナリオ通りであることを理解した上で行動しているのだ。


 設定された日本の状態や、占領軍に対抗する少年達の集団 ― しかも普通の(とあえて言っておこう)少年達ではなく、過去に人殺しなどの罪を犯したり、変わった嗜好や特定の分野で突出した技能を持っていたりする、特殊な(とあえて言っておこう)少年達 ― が、リアルに感じられなかった。また、背景が細かく書き込まれているわりには、少年達や北朝鮮の先遣隊コマンド達やその他の登場人物のキャラが立っていない気がして、最初はなかなか入り込めなかった。

 中途半端に投げ出されたキャラやエピソードも多いし。プロローグに登場するだけのノブエ(♂)という特異なキャラや、美貌のチョ・スリョン中尉とNHK福岡のアナウンサーの「危険な恋」のエピソードとか。

 だが、十分な取材に基づいた先遣コマンド達の心中の変化や葛藤の描写は興味深く、少年達の占領軍を一網打尽にする作戦や、占領軍が異変に気付いて対応し始めてから作戦遂行までの時間との闘いはスリリングで、徐々に引き込まれていった。

 これ実写映画化したら、結構面白いエンターテインメント作品になるんじゃないかなぁ。

 ・・・ていう感想に落ち着くところが、平和ボケの証か・・・。実際、この作品に登場するほとんどの日本人が愚かだが、こういう事態で自分が絶対そうならないという自信はないな。


 次は『クレイジーカンガルーの夏』(誼阿古・著/GA文庫)。
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2007年08月17日

カシオペアの丘で(上・下)


カシオペアの丘で 上
著者名:重松清(著)
出版社:講談社
出版年:2007.06
ISBN :9784062140027


 お盆休みに実家に帰ったら置いてあったので、『半島を出よ』を上巻でストップして、こちらを先に読了。

 重松清氏は上手い作家だと思う。

 だが、この作品に関しては、上手いけど深みがない。良い話だけど、全ての登場人物が良い人過ぎて、リアルじゃない。子供を含めて、物分りが良すぎる。美しい物語だが、漂白されて、味気のない美しさだ。

 しかも、主人公は40歳にして、末期ガンで死ぬ。かつての親友や恋人に、憎み続けた祖父に、残される妻と息子に何を残してやれるのか・・・というテーマには普遍性はあると思うが・・・。如何せん、主人公が不治の病で命を落とす作品が多すぎる、小説も、ドラマや映画も。

 もう食傷気味である。

 そこそこ感動させるなら、こんな楽な手法はないと思うが、それならノンフィクションの方がはるかに強いだろう。小説でそれと同等、あるいはそれ以上のものを書くのは簡単なことじゃない。


 ただいまは『半島を出よ』の下巻を読破中。
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2007年07月15日

卵の緒


卵の緒
著者名:瀬尾まいこ
出版社:新潮社
出版年:2007.07
ISBN :9784101297729


“僕は捨て子だ。子どもはみんなそういうことを言いたがるものらしいけど、僕の場合は本当にそうだから深刻なのだ。(『卵の緒』)”

 僕(育生)には父親がいない。「僕は捨て子なの?」と聞いたときの祖父・祖母の反応も怪しい。学校で先生から「へその緒」の話を聞いて、お母さんに「見せて」と頼んだら、割れた卵の殻が入った箱を持ってきて、「卵で産んだのよ」なんて言う。

 このお母さんのすっとぼけたキャラがなんとも良くて、自分が捨て子かどうか気を揉む育生との会話が微笑ましくも可笑しい。物語の後半で2人には血の繋がりがないことや、その事情が明らかになるが、むしろお母さんがいかに育生を深く愛しているかが鮮明になって、ほっこり。

 お母さんと再婚した職場の上司・朝ちゃんと育生が、赤ちゃんが生まれるまでの間、子育てを「卵」で予行演習する奇妙なエピソードは余計な気もするけど、ラストの言葉はすぅ〜と胸に沁みてくる。

 この表題作が瀬尾まいこ氏のデビュー作だそうだ。そして、もう一篇。


“七子と七生。父さんがつけた。(略)見る人が口を揃えて、「本当にそっくりね」と驚くほど、顔つきも同じだ。だけど、私と七生は正しい兄弟じゃない。出所が違う。七生は父の愛人の子どもだ。(『7's blood』)”

 「愛人の子」のイメージを大きく裏切る、素直でしっかりもので、愛らしい男の子・七生。彼の母親が人を刺して刑務所に入ったのを、「七生の周りにいる大人で自分がいちばんまともそうだったから」という理由で七子の母親が引き取ったのだが、その母親が入院し、高3の七子と小6の七生、異母兄弟2人の生活が始まる。

 懸命に七子に近付こうとする七生。あまりに出来すぎた11歳に違和感を抱く七子。2人の間は初め、七子のその違和感が原因でぎくしゃくするが、七生の処世術の理由や七子に向ける本当の想いを知るにつれ、心を寄せ合わせていく。

 2人の生活は七生の母が刑務所から出てくるまでの期間限定で、七子が感じるようにこの先2人はもう会えないのかも知れない。でも、きっとお互いの中に大切な相手の存在は残り続けて、心を温め続けるのだろう。そう感じさせてくれる小説。


 どちらも、父親不在の話。そして母親の強さや深さを感じる話。血が繋がってなかったり、異母兄弟だったり、頭の古い政治家のオヤジが「これぞ理想の家族像です」などというステレオタイプな家族像からは遠く離れた家族のお話。しかし、紛れも無く暖かな家族の絆の物語である。


 次は『幻詩狩り』(川又千秋・著/創元SF文庫)。
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2007年06月29日

グラスホッパー


グラスホッパー
著者名:伊坂幸太郎(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.06
ISBN :9784043849017


 嫌味なほどに上手い(笑)。

 かなり面白い。

 でも、何も残らない(笑)。


「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに―「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説。
(「BOOK」データベースより)


 類稀なるリーダビリティは保証。

 教訓も思想も理屈も文学性も必要ない、ただどこに転がるか分からない物語を楽しみたいときにどうぞ!


 次は、やっと出た(ような気がしてしまう。待ち遠しくて)『水滸伝・九 嵐翠の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。
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2007年06月17日

みんな元気。


みんな元気。
著者名:舞城王太郎(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.05
ISBN :9784101186320


 なんじゃ!こりゃー!!

 訳が分からん!

 とんでもないことが次々と、とんでもなくないように淡々と描かれるのがとんでもない。

 深いのか浅いのかもよく分からない。

 相変わらず多少スプラッタ。

 こんな無茶苦茶な話でもいいなら、自分にも書けるのではないかと一瞬思ってしまった。


夜中に目ざめると、隣の姉が眠りながら浮かんでいた―。あの日から本当に色んなことが起きた。竜巻が私たちの町を襲い、妹の朝ちゃんは空飛ぶ一家に連れさられてしまう。彼らは家族の交換に来たのだった(表題作)。西暁町で繰り返される山火事と殺人の謎(「矢を止める五羽の梔鳥」)。単行本『みんな元気。』から3篇をセレクト。
(「BOOK」データベースより)


 ・・・と紹介されているが、こんな説明で何が分かる。

 ・・・と文句を言っても仕方がない。ストーリーの説明のしようがないし、仮に説明できても何ことやら読まなければ分からない小説だ。それどころか、読んでもやっぱりよく分からない(笑)。読んで時間の無駄だったと怒り出す人もいるのではないか。

 でも、なんか読ませるんだよなぁ。

 単行本『みんな元気。』の残りの作品に書き下ろしを加えて、6月末に文庫本が出る。また買っちゃうだろう。


 次は時代小説で、『首を斬られにきたの御番所 ― 縮尻鏡三郎』(佐藤雅美・著/文春文庫)。
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2007年06月11日

小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所


小説こちら葛飾区亀有公園前派出所
著者名:大沢在昌(著)
     秋本治(原著)
出版社:集英社
出版年:2007.05
ISBN :9784087804669


 別に『こち亀』の熱心な読者でもないのだが、面白い企画だなと思って読んでみた。

幼な馴染み(大沢在昌)
『新宿鮫』シリーズの鮫島、恋人の晶(しょう)、鑑識課の藪が両津勘吉とコラボ。『新宿鮫』シリーズ本家の緊張感は微塵もない(笑)。ま、別に悪くはないのだが、この作品集の中ではこれがいちばん低評価かな・・・。

池袋−亀有エクスプレス(石田衣良)
僕も好きな『池袋ウエストゲートパーク』(IWGP)シリーズの主人公マコトが登場。本家IWGPシリーズそのままの雰囲気ながら、両さんとのコラボも違和感なく読める。

キング・タイガー(今野敏)
両さんは最後の最後でほんのちょっと登場するだけだが、短篇小説としての完成度はこれが一番。かつて「男の子」だった人なら誰でも心ときめくものがある。今野敏氏の作品は読んだことがないが、一度読んでみたいと思った。

一杯の賭け蕎麦―花咲慎一郎、両津勘吉に遭遇す(柴田よしき)
柴田よしき氏も読んだことがない作家。『RICO 女神の永遠』を少し立ち読みして買わなかった過去がある(笑)。両さんの意外に深みがあるような、やっぱりないようなキャラが上手く出ていると思う。

ぬらりひょんの褌(京極夏彦)
さすがは京極氏(未読やけど)というべき、妖怪がらみの一篇。『こち亀』フリークならより一層楽しめるんだろうなと思わせる小ネタ(愛あるツッコミ)がチラホラ。両さんの上司・大原と両さんの過去の意外な因縁が明らかに。

決闘、二対三!の巻(逢坂剛)
プロローグとエピローグの使い方というか、構成の上手さに感心した。それにしても金が絡んだときの両さんの策略は天才的で、『こち亀』にありそうな話である。

目指せ乱歩賞!(東野圭吾)
両さんが乱歩賞で一攫千金を目指す。その手法は無茶苦茶(笑)。『こち亀』だから許される話で、ハチャメチャ度は1。


 『こち亀』の熱心な読者ではないと最初に書いたが、どの作品も両津というキャラの様々な側面をちゃんと活かして書かれていてさすがである。作家たちの『こち亀』への愛情も伝わってくる。

 ただ、『こち亀』を全く読んだことがない人には楽しめるかな・・・?


 次は『村田エフェンディ滞土録』(梨木香歩・著/角川文庫)。
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2007年06月04日

チルドレン


チルドレン
著者名:伊坂幸太郎(著)
出版社:講談社
出版年:2007.05
ISBN :9784062757249


 昨日「GシリーズとXシリーズは、なぜ『G』や『X』なのか分からない」と書いたところ、未衣名さんより「X」は「イナイ×イナイ」の「×」ことだとコメントを頂いた(シリーズ次巻のタイトルは「キラレ×キラレ」)。

 ・・・なるほど、そうだったのか。

 ちなみにGシリーズの「G」はGreek(ギリシア語)に由来するらしい。シリーズ各巻のタイトルにギリシア文字が使われているからだ。

 ・・・なるほど、そうだったのか。

 言われてみれば簡単なことだ(恥)。こんなことにも気が付かないなんて、ミステリ読んでるわりには、いつまで経っても犯人を当てられないし、トリックも見破れないハズだ。頭がカタイ・・・。

 ちなみに森博嗣氏は他人の作品を読んでいても、たいてい途中で真相が分かっちゃうらしい。ミステリ作家って、皆そうなんだろうか。


「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。
(「BOOK」データベースより)


 ・・・上手いなぁ。幸太郎(敬称略)!

 第1話『バンク』は陣内19歳(大学生)、銀行強盗に遭遇した時の話を、一緒に巻き込まれた友人・鴨居の視点で。のっけから、陣内の自己チューな傍若無人ぶり全開。人質として出会った永瀬が推理する銀行強盗事件の意外な真相も面白い。この銀行強盗の方法は使えるかも!(おいおい)

 第2話『チルドレン』は、非行少年を更正させる家裁調査官として働く陣内31歳を、後輩調査官・武藤の視点から。こんなメチャクチャな家裁調査官って・・・。しかし、主任調査官曰く、「陣内君くらい調査官に向いている人はいないよ。けれど彼のやり方をまねしては駄目だよ」、武藤自身も調査官の中で「陣内さんほど少年達に慕われている人は見たことがない」と。何となく納得できるから不思議。

 第3話『レトリーバー』は陣内22歳、大学4年生で家裁調査官目指して勉強中。永瀬と恋人(?)の優子、そして陣内が遭遇する不可解な状況とその真相を優子の視点で。

 第4話『チルドレン2』は陣内32歳。「俺たちは奇跡(=少年の更生:ふくちゃん注)をやってみせるってわけだ。ところで、あんたたちの仕事では、奇跡は起こせるのか?」、「そもそも、大人が恰好良ければ、子供はぐれねえんだよ」・・・何か知らんけど恰好ええがな陣内・・・。音楽小説としても読める、ええ〜話。

 第5話『イン』は陣内20歳。これは説明しがたい話だなぁ・・・。永瀬と優子、鴨居ももちろん登場して、永瀬の視点から。『チルドレン2』の中で、陣内が父親への軽蔑や憎しみを吹っ切るために、父親を「真正面から」「正体がばれないように殴った」と語るが、その経緯と方法が明らかに。

 年齢順ではなく、20代と30代の話が交互に描かれるのは、最後にまた何かとんでもないドンデン返しがあるからに違いない・・・と思いながら読んでいたら、そうでもなかった(笑)。

 「五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ」という説明文はどうかと思うが、面白いと思うなコレ。「活字離れのあなたに効く、小説の喜び」という帯の言葉がピッタリくる。

 ・・・ところで、19ページから20ページにかけての“平にご容赦を、と鴨居に頭を頭を下げる思いだった”は“平にご容赦を、と鴨居は頭を下げる思いだった”の間違いだよね?


 次は、『空を見上げる古い歌を口ずさむ』(小路幸也・著/講談社文庫)。
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2007年05月17日

Q&A


Q&A
著者名:恩田陸(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2007.04
ISBN :9784344409361


 恩田陸は好きな作家の1人で、文庫本のほとんどを読んでいる。単行本が発売されると必ずチェックして、文庫本になるのを楽しみに待っているのだ。

 『Q&A』もしかり。


都下郊外の大型商業施設において重大死傷事故が発生した。死者69名、負傷者116名、未だ原因を特定できず―多数の被害者、目撃者が招喚されるが、ことごとく食い違う証言。防犯ビデオに写っていたのは何か?異臭は?ぬいぐるみを引きずりながら歩く少女の存在は?そもそも、本当に事故なのか?Q&Aだけで進行する著者の真骨頂。
(「BOOK」データベースより)


 ・・・ということだが、全く面白くなかった。初めの数章はどこに行くのか分からないドキドキ感があったのだが、結局どこにも行かなかった。

 今まで読んだ恩田陸作品の中で、最低。

 どころか、これまでの読書生活の中でもワーストを争う作品。

 ナンなのコレは・・・。


 次も恩田陸で『黄昏の百合の骨』(講談社文庫)。
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2007年04月18日

村上かるた うさぎおいしーフランス人


村上かるたうさぎおいしーフランス人
著者名:村上春樹(著)
     安西水丸(画)
出版社:文藝春秋
出版年:2007.03
ISBN :9784163689401


 「バカ本」とカテゴライズしようかと考えたけど、思いとどまった。

 好き嫌いは別として(僕は好きだ)、同時代を生きる世界的な日本人作家ということは誰もが認めるであろう村上春樹氏。

 そんな春樹氏のもうひとつの顔が「脱力企画系(?)作家」。

 今回も人生には全く役に立たない、人によっては金返せ!時間返せ!とマジで怒っちゃいそうな『脳減る賞』(copyright by Haruki Murakami)モノのおバカ作品集(僕は好きだ)。

 意味のないフレーズ満載の「村上かるた」。


私、フランス人。日本のことよくわかりませんが、村上かるたは山猫ルンバですよ。はい、うさぎ丼におしんこつけてください。
(「BOOK」データベースより)


 ほら、内容紹介からして無意味(笑)。

 登場するかるたフレーズは、例えば

あ:あしか、浜辺をさまよえば
お:大タコに道を教えられてしまった
ち:知恵の輪ブラジャーにはお手上げ
ち:チルチルミチルは見る見る散った
に:ニラレバの世界にタラレバはない
ね:猫にジェームズコバーン、豚に牧伸二
ま:まったく不幸中のわいわいだった
り:理由なきはんこは押すな
れ:レノンに腕押し、ラブ・アンド・ピース

などなど。

 ・・・・。

 で、全てのかるたには、春樹氏による短い物語(というか散文)と安西水丸画伯によるヘタウマなイラストやら4コマ漫画がついている。

 読んでいると、なんだか色々真剣に悩んでいる行為そのものがちっぽけに思えてきたりして・・・。


 今は『バビロニア・ウェーブ』(堀晃・著/創元SF文庫)を読んでいる最中。
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2006年11月13日

ZOKU


ZOKU
著者名:森博嗣(著)
出版社:光文社
出版年:2006.10
ISBN :4334741371


 犯罪未満の、しかし大規模で迷惑な悪戯を世間に仕掛ける「悪」の組織<ZOKU>=Zionist Organization of Karuma Undergroundと、それを阻止しようとする「正義」の組織<TAI>=Technological Abstinence Instituteの戦い?を描く物語。

 なんだこの小説?

 いったい何を目的に書かれたのだ?

 森博嗣氏は、一体何を考えているのか?

 読書に「感動」を求める人。

 読書に「教訓」を求める人。

 読書に「有意義な時間」を求める人。

 とにかく、読書に「何がしかの意味」を求める人。

 そういった方には、まったく読む価値のない小説。

 読むだけ時間の無駄。

 ・・・こんなことを書くと、まるでこの作品を嫌っているように聴こえると思うが、さにあらず。

 なんせ、僕は森氏の作品が好きなんである。

 彼のキャラクタ造形、文章・文体は個性的でキュートである。

 時に登場人物のセリフや地の文章にハッとさせられたり、新鮮な視点を提供されたりするところも刺激的である。

 でも、これは何を置いてもよまなきゃダメ!という作品ではないな。

 何か軽いもの、肩の凝らないものを読みたいときにどうぞ。

 次は、『カラマーゾフの兄弟1』(ドストエフスキー・著/光文社古典新訳文庫)。
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2006年10月31日

真相


真相
著者名:横山秀夫(著)
出版社:双葉社
出版年:2006.10
ISBN :4575511005


 日曜日には読み終わっていたのだが、なんだかんだで・・・。

 横山秀夫氏の警察小説(あるいは警察「内部」小説とでも呼ぶべきか)『動機』、『陰の季節』はとても面白かった。

 御巣鷹山の日航ジャンボ機墜落を取材・報道する新聞社の内部を描いた『クライマーズ・ハイ』もなかなか良かった。

 だが、評判の高い『第三の時効』、『半落ち』はピンと来なかった。

 横山氏の小説を読んで、僕が面白いと感じるのは、追い詰められた人間の懊悩・焦燥・葛藤や綺麗事だけでは済まされない組織社会の人間関係が描かれている作品だ。

 独立した5つの短篇を収録したこの『真相』も、全ての作品にヒリヒリするような切迫感や狂気が滲み、それが一種の切なさを感じさせて、読み応えがある。

 全く救いのない結末を迎える『18番ホール』。そして、一見ささやかながらも救いのある結末(実はそんなことない)にも思える『真相』、『不眠』、『花輪の海』、『他人の家』。

 いずれも、上手く余韻を持たせる終わり方をしているから、読後感は悪くないのだが、この5作品の主人公のような人生は、絶対に送りたくないと思う。

 残酷で怖い作品集である。読むのは楽しいが、フィクションの世界だけにしておきたいものだ。


 だだ今は『水滸伝・一 曙光の章』(北方謙三・著/集英社文庫)を読破中。
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2006年10月15日

手紙


手紙
著者名:東野圭吾(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2006.10
ISBN :4167110113


 今日は「幸福のスイッチ」という映画を観るつもりだったのだが、上映時間を勘違いしていて、劇場に着いたのはギリギリ。「立ち見になります」と言われてスゴスゴ引き返した(泣)。

 その行き帰りの電車で、この『手紙』を読み終えた。
 
 東野圭吾氏は、多作の上に作風も幅広く、ハズレが少ない。ストーリーテリングが巧みで、文章は平易で読みやすく、長いものでもあっという間に読めてしまう。

 僕にとっては、深く感銘を受けて「いつまでも忘れられない」とか、「本棚にいつまでも残しておきたい」というタイプの作家ではないが、圧倒的なリーダビリティでページをめくる手が止められない、読んでいる最中は「次はどうなるんだろう?」と楽しませてくれる存在である。


 幼い頃に両親を次々と亡くした2人の兄弟。兄・剛志(つよし)は、弟・直貴の大学進学費用のために肉体労働で稼ぐが、無理が祟って体を壊してしまう。

 一転して、普段の生活費さえ苦しくなった中、何としても弟のためのお金が欲しいと思い詰めた剛志は、独り暮らしの資産家の老婆の家に盗みに入るが、老婆に目撃されてしまい、突発的に殺人を犯してしまう。

 刑務所に入った剛志からは、毎月1回だけ、弟を想う手紙が直貴の元に届く。

 だが、直貴は高校こそなんとか卒業できたものの、バイト先で、就職先で、やっと生きがいを見つけたと思ったバンドで、苦労して進学した大学で、恋愛で、そして再び就職した職場で、「強盗殺人犯の弟」ということがバレる度に、目の前の幸せが逃げ、人間関係も崩れていく。


 罪とは何か、刑とは何か、罪を購うとはどういうことなのか、犯罪者の家族はどのように生きていけば良いのか、身内に犯罪者を抱えるとはどういうことなのか。

 直貴が強盗殺人犯の弟だと分かったときに周囲の人間が取る態度を、読者である我々が安全な場所から「卑怯だ」「冷たい」と非難することは容易い。だが、この小説は、そんな安易で薄っぺらな正義感を拒否している。

 重たい小説である。

 しかし、読んでいる間は面白いし、切迫感もあるし、それなりに感動的なシーンもあるのだが、読み終わるともうひとつ心に引っかからない。何でだろう?

 もし、同じ作品を宮部みゆき氏や高村薫氏や天童荒太氏が書いていたら、どうだっただろうか。別に東野氏が、宮部氏・高村氏・天童氏より劣るとは思わないのだけど。

 この作品は映画化され、11月に公開される。兄・剛志は玉山鉄二君、弟・直貴は山田孝之君、もう1人の重要な登場人物・由美子は沢尻エリカさんが演じるということで、この3人を頭に思い浮かべながら読んだのだが、しっくりこなかった(笑)。

 小説のラストシーンは、映画では使えないだろう。映画はどんな風に終わらせるのか、ちょっと気になる。観に行こうかな。

 「幸福のスイッチ」は来週観よう。

 次に読むのは、『枯葉色グッドバイ』(樋口有介・著/文春文庫)。
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