| 半島を出よ 上 |
 | 著者名:村上龍(著) 出版社:幻冬舎 出版年:2007.08 ISBN :9784344410008 |
2011年春、9人の北朝鮮の武装コマンドが、開幕ゲーム中の福岡ドームを占拠した。さらに2時間後に、約500名の特殊部隊が来襲し、市中心部を制圧。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。慌てる日本政府を尻目に、福岡に潜伏する若者たちが動き出す。国際的孤立を深める日本に起こった奇蹟!話題をさらったベストセラー、ついに文庫化。
(「BOOK」データベースより)
| 半島を出よ 下 |
 | 著者名:村上龍(著) 出版社:幻冬舎 出版年:2005.03 ISBN :9784344007604 |
さらなるテロの危険に日本政府は福岡を封鎖する。いまや九州は反乱軍の占領下となった。逮捕、拷問、粛清、裏切り、白昼の銃撃戦、被占領者の苦悩と危険な恋 ― 。絶望と希望が交錯する中、若者たちの決死の抵抗が始まる。現実を凌駕する想像力と、緻密な描写で迫る聖戦のすべて。各紙誌で絶賛を浴びた、野間文芸賞、毎日出版文化賞受賞作品。
(「BOOK」データベースより)
村上龍氏は自分でも意外なことに初読みである。この本は単行本が出たときから、文庫化されたら読もうと決めていた。
2011年を舞台にした近未来小説。
経済的に没落してアメリカやアジア諸国から見放され、世界の孤児と成り果てた日本。街には失業者やホームレスが溢れ、政治的には軍備拡張主義が台頭している。
そんな中、体制維持が困難となった北朝鮮の金正日は、韓国との統一を果たした祖国の英雄として中国で安泰に引退生活を送るために、特殊戦部隊員の精鋭を選抜して福岡市を占拠させる。
たった9人で福岡ドーム占拠なんて・・・と思うかも知れないが、読んでいると優秀なプロの手にかかれば意外に簡単かもなぁと思えてくる。怖い。
福岡ドームの観客を人質に捕られた政府が手も足も出せず右往左往している間に、500人の後続部隊が到着。他都市、とりわけ東京へのテロを恐れる政府は福岡市を封鎖し、自ら北朝鮮特殊戦部隊による福岡市占領を完成させることになる。
彼ら特殊戦部隊は、自分達は母国・北朝鮮の腐敗を糺すために立ち上がった「反乱軍」であり、その拠点として福岡市民と共存して新しい国を打ち立てると宣言。軍の規律を守りつつ、ソフトな政策を用い、脱法行為で儲ける悪徳経営者・政治家や暴力団を逮捕して資産を接収し、市の運営費に当てるなど、一見平和裏に統治を進めて行く。
そして、さらに12万人の北朝鮮軍が福岡市を目指して海を渡りつつあるのだ。
実はこの12万人は韓国との統一やアメリカとの融和協調路線に反対し、金正日へのクーデターの噂も絶えない、対外最強硬派の幹部達が率いる軍であり、南北統一のために彼ら12万人を北朝鮮から追い出すことがこの福岡制圧作戦の真の意図なのである。
政府は北朝鮮に抗議し、アメリカなどに応援を求める。
だが、北朝鮮は、彼らが「反乱軍」であることを対外的に認め、日本からの要請があれば、自らの手で処分しても良いという(だが、その場合、戦場になるのは福岡で、到底そのような要請はできない)。また、今回の件は「反乱軍」が勝手にしでかしたことであるから、非は認めない。
アメリカも表向きはともかく、本音は日本よりも南北朝鮮の統一と中国との協調の方が戦略的に重要なのだ。それどころか、福岡を拠点とする物流が止まっていることの損害の大きいので、福岡の占領統治を容認して物流を再開させる空気さえある。政府の対応のまずさもあり、アメリカも中国も日本に協力しない。
後続の500人や12万人は知らないが、9人の先遣隊コマンドは占領軍司令部として、これら全てが作戦名「半島を出よ」のシナリオ通りであることを理解した上で行動しているのだ。
設定された日本の状態や、占領軍に対抗する少年達の集団 ― しかも普通の(とあえて言っておこう)少年達ではなく、過去に人殺しなどの罪を犯したり、変わった嗜好や特定の分野で突出した技能を持っていたりする、特殊な(とあえて言っておこう)少年達 ― が、リアルに感じられなかった。また、背景が細かく書き込まれているわりには、少年達や北朝鮮の先遣隊コマンド達やその他の登場人物のキャラが立っていない気がして、最初はなかなか入り込めなかった。
中途半端に投げ出されたキャラやエピソードも多いし。プロローグに登場するだけのノブエ(♂)という特異なキャラや、美貌のチョ・スリョン中尉とNHK福岡のアナウンサーの「危険な恋」のエピソードとか。
だが、十分な取材に基づいた先遣コマンド達の心中の変化や葛藤の描写は興味深く、少年達の占領軍を一網打尽にする作戦や、占領軍が異変に気付いて対応し始めてから作戦遂行までの時間との闘いはスリリングで、徐々に引き込まれていった。
これ実写映画化したら、結構面白いエンターテインメント作品になるんじゃないかなぁ。
・・・ていう感想に落ち着くところが、平和ボケの証か・・・。実際、この作品に登場するほとんどの日本人が愚かだが、こういう事態で自分が絶対そうならないという自信はないな。
次は『クレイジーカンガルーの夏』(誼阿古・著/GA文庫)。
posted by ふくちゃん at 16:43|
Comment(0)
|
TrackBack(0)
|
その他