2008年10月02日

心霊探偵八雲3 闇の先にある光


心霊探偵八雲 3
著者名:神永学(著)
出版社:角川書店
出版年:2008.09
ISBN :9784043887033


 神の視点の登場人物の視点が混濁する人称の問題は、前巻に比べるとかなりマシになった。


・内容
八雲にまた新たな相談が持ち込まれた。なんでも、飛び降り自殺を延々と繰り返す、女性の幽霊が出るという。しぶしぶ調査を引き受ける八雲だったが、そんな八雲の前に“死者の魂が見える”という怪しげな霊媒師が現れる。なんとその男の両目は、燃えさかる炎のように、真っ赤に染まっていた!?敵か味方か、八雲と同じ能力を持つ謎の男の正体、そして事件の真相は!?驚異のハイスピード・スピリチュアル・ミステリー第3弾。
(「BOOK」データベースより)


 しかしながら、ミステリとしては全く凡庸。というか、ミステリとして成立しているのか?

 ホラー、心霊モノとしては全くゾクゾク感がない。

 会話の遣り取りや、その間に挟まれる心情表現は、冗長。

 でも、青春小説としては、まあ良いのでは。

 普段はスカしていて口の悪い八雲。彼を慕いつつ、憎まれ口を叩いてしまう晴香。2人は大学生だから当然のこととして、八雲の協力を得て心霊事件(のような普通の事件)の捜査にあたる「未解決事件特別捜査室」(←もちろん閑職)の熱血ベテラン刑事・後藤、その下に配属された頼りない若手刑事・石田も青春してる。

 まっすぐ生きようとする彼らの物語に触れた読後感は、悪くない。

心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている
心霊探偵八雲2 魂をつなぐもの


 次は『金春屋ゴメス』(西條奈加・著/新潮文庫)
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2008年09月21日

ナイチンゲールの沈黙(上・下)


ナイチンゲールの沈黙 上
著者名:海堂尊(著)
出版社:宝島社
出版年:2008.09
ISBN :9784796663588


 『チーム・バチスタの栄光』を読んだときも思ったけど、この著者、小説の文章そのものは下手だ。情景描写、心理描写、洒落た(つもりの)会話、どれもイマイチ。

 会話といえば、眼球の癌を抱える突っ張った物言いの少年・牧村瑞人。上巻168ページで、放射線科のドクター・島津に「誰に向かって物を言ってるんだよ」。171ページ、場の続きで再び島津に「誰に向かって言ってるんだよ」。このあたりセリフ選びに芸がない。

 小児科入院患者が登場する物語ということもあってか、小説内現実として、ウルトラマンと並ぶ(?)オリジナル特撮ヒーローの話が結構細かい設定まで出てくるんだけど、このへんのセンスもなあ・・・。仮に半分ギャグであっても。

 単行本読者は先刻ご承知の通り、この作品と『ジェネラル・ルージュの凱旋』は、小説内時間において対になっているらしい。しかし、その匂わせ方は、森博嗣氏の『幻惑の死と使途』と『夏のレプリカ』には及ばない。まあ、これは『ジェネラル〜』を読んでから判断すべきか。

 瑞人の父親殺しの真相に絡む、伝説の歌手・水落冴子と小児科病棟看護師・浜田小夜の歌唱に秘められた力、加納警視正の捜査手法“デジタル・ムービー・アナリシス”。

 道具立ては面白い。話自体も面白い。

 だからこそ、細かい点が色々気になる。もったいない。

 登場人物それぞれが持つ“愛”の描き方も、真っ直ぐカッコよく書こうとして、かえって鼻につく感じ。著者の想いが悪い意味で強すぎるかな。

 繰り返すけど、話そのものは悪くない。じゃなきゃ、途中で読むの止めてる。


 次は『魔王』(伊坂幸太郎・著/講談社文庫)。
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2008年09月14日

目薬αで殺菌します


目薬αで殺菌します
著者名:森博嗣(著)
出版社:講談社
出版年:2008.09
ISBN :9784061826120


 凄いタイトル(笑)。


内容
神戸で劇物の入った目薬が発見された。目薬の名には「α」の文字が。その頃、那古野では加部谷恵美が変死体を発見する。死体が握り締めていたのは、やはり目薬「α」!探偵・赤柳初朗は調査を始めるが、事件の背後には、またも謎の組織の影が…?「φ」から続く一連の事件との繋がりは!?進化するGシリーズ、第7弾。
(「BOOK」データベースより)


 この作品単体は、ミステリとしてはどうなんだ?フェアなんだろうか?

 前に戻って何度も確かめたが、微妙な気がするんだけどなぁ。

 それはともかく、シリーズ全体は相変わらず謎だらけ。

 探偵・赤柳初朗の正体はいったい誰?

 海月が加部谷に言った「僕には関わらない方がいい」という言葉の意味は?

 天才・真賀田四季の狙いは?

 Gシリーズ一連の事件の背後にあるものは?

 全く分からん!

 このシリーズはあと5作、同時進行のXシリーズ(でも、さっき「ηなのに夢のよう」を見返して気付いたけど、Xシリーズの方が時間的に後やね?違う?)はあと3作。

 前にも書いたけど、このシリーズ、どこに着地するのか?早く残りの8作を読みたい!


 次は『ナイチンゲールの沈黙(上・下)』(海堂尊・著/宝島社文庫)。
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2008年08月31日

ユージニア


ユージニア
著者名:恩田陸
出版社:角川書店
出版年:2008.08
ISBN :9784043710027


 町の尊敬を集める北陸の名家・青澤家。当主の還暦と母親の米寿を祝う宴で起こった大量毒殺事件。

 第一章では、子供時代に事件に遭遇し、大学生になってから事件を振り返るルポルタージュ風小説を執筆して話題となった女性が、事件と作品を振り返って語る。犯人は逮捕されたのだが・・・。どうやら彼女は、青澤家唯一の生き残り緋紗子(ひさこ)を真犯人と疑っているらしい。事件当時は中1の、大人であれ、子供であれ、周囲の人間が特別な畏れや憧れを抱かずにはいられない盲目の美少女。緋紗子は彼女に言ったのだ。「今日は絶対に家に来てはいけない」と。

 第二章は、第一章の彼女=雑賀満喜子の助手として、取材に同行した大学時代の後輩男性の語り。満喜子の書いた作品『忘れられた祝祭』の細部は、取材に応じた人たちの証言と微妙に異なるという。その意図は?「みんなが見るのもので、特定の人にだけメッセージを伝えたい時にはどうする?」彼女はそう言った。事実の改変は、真犯人へのメッセージなのか。

 しかし、2人は誰に向かって語っているのだろう?(後で分かる)

 第三章は、一転して当時に遡って、3人称視点で事件が語られる。“相澤”家で起こる大量毒殺。唯一の生き残りの名は“久代”。

 ・・・あれ?

 ああ、そういうことか。この第3章は何か?気付くのに随分時間がかかってしまった。

 第四章は、青澤家の家政婦を務めていた故人の娘の語り。
 第五章は、事件を追いかけた刑事の話。
 第六章は、満喜子の長兄の語り。
 第七章は、犯人と接触した文房具店の若旦那の話。
 第八章は、子供時代に犯人とされた青年と親しく接していた男の語り。
 第九章は、タイトル通り『いくつかの断片』。誰の会話なのか?(後で分かる)
 第十章は、満喜子の取材日誌と『忘れられた祝祭』編集者の語り。
 第十一章は、再び事件を追いかけた刑事が登場しての語り。
 第十二章は、自殺した満喜子の次兄からの手紙や、満喜子の死を伝える記事。
 第十三章は、語りの“聞き手”と緋紗子の対峙。
 第十四章は、満喜子の回想。

 恐らく、真犯人はこの人で、事件の真相はこうだろう・・・と、ほとんどの人が思うだろう。しかし、意図された殺人なのか、別の解釈が成り立たないでもない。

 「誰がはっきりした小説なんか書いてやるもんか!」という意気込みで書かれたというが、成功してるんじゃないだろうか。

 3人称と1人称、現在と過去。登場人物たちの像が立体的に結ばれてくる。人間というものの多面性が浮かんでくる。

 ミステリとしてどうのこうの言う以前に、僕は好きだ、この作品。

 しかし、最後の「ユージニアノート」は蛇足のような・・・。


 次は『のだめカンタービレ#21』(二ノ宮知子・著/講談社)。
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2008年08月24日

落下する緑 永見緋太郎の事件簿


落下する緑
著者名:田中啓文(著)
出版社:東京創元社
出版年:2008.07
ISBN :9784488475017


 「笑酔亭梅寿謎解噺」シリーズは若手落語家、こちらは若手天才ジャズプレイヤーが探偵役のミステリ。一応、人が死なないので、日常の謎系と言えなくもない。

 表題作「落下する緑」を始め、「揺れる黄色」「反転する黒」「遊泳する青」「挑発する赤」「虚言するピンク」「砕けちる褐色」と、タイトルもお洒落。


・内容
唐島英治クインテットのメンバー、永見緋太郎は天才肌のテナーサックス奏者。音楽以外の物事にはあまり興味を持たない永見だが、ひとたび事件や謎に遭遇すると、楽器を奏でるように軽やかに解決してみせる。逆さまに展示された絵画の謎、師から弟子へ連綿と受け継がれたクラリネットの秘密など、永見が披露する名推理の数々。鮎川哲也も絶賛した表題作にはじまる、日常の謎連作集。
(「BOOK」データベースより)


 僕のジャズ体験と言えば、友人の影響で一時期マンハッタン・ジャズ・クインテットを聴いたり、20代の頃に日本のフュージョンを聴いたり、西梅田に昔あった大阪ブルーノートに数回行ったことがあるだけ。知識も、まあ、超有名アーチストの名前ぐらい知っている・・・という程度。

 音楽を小説や漫画で書くって(上條淳士『TO‐Y』が好きだった)、なかなか難しいよね。でも、サックスの音色の書き方とか、さすが著者自身がジャズプレイヤーってだけあるよなって感じ。

 肝心のミステリとしては出色とは思えない。「落下する緑」と「遊泳する青」は似たパターンだし。

 でも、僕のようにジャズ知識の乏しい人でも完全素人でも、音楽や楽器に興味のある人なら、雰囲気は楽しめる。

 嫌いじゃないね。


 次は『PLUTO 5』(浦沢直樹・著/小学館ビッグコミックス)。
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2008年08月22日

六とん2


六とん2
著者名:蘇部健一(著)
出版社:講談社
出版年:2008.08
ISBN :9784062761284


 あ、念のために言っておくけど、『ガリレオ』TVシリーズ。役者陣そのものがどうこうというわけじゃなく、あくまでTV用のキャラ設定が気に食わんというだけ。


・内容
世紀の迷作、あの『六枚のとんかつ』が帰ってきた!今回はバカミスだけでなく、ラストの絵で謎が解ける半下石警部シリーズや、泣けると評判の「きみがくれたメロディ」、ボーナス・トラック「届かぬ想い・純愛ヴァージョン」など盛り沢山。トリックが見えちゃうので、ページをパラパラしないでくださいね。
(「BOOK」データベースより)


 ミステリ界に物議を醸したという『六枚のとんかつ』。しかし、僕はあの馬鹿馬鹿しさが大好きだった。

 あそこまで開き直って(?)書けるなんて素晴らしいじゃないか!

 で、喜んで『六とん2』を買ったのだが、意外にマトモな作品が多くて、肩透かし(笑)。

 僕としては冒頭の「最後の事件」が一番好きやな。ネタバレになるので書けないが、この短さ(8ページ)、オチの馬鹿馬鹿しさが最高!こんなオチを持ってくるなんて、勇気がある。人によっては「金返せ!」と怒るんじゃないか?

 でも、これだけ立ち読みで済ませてもいいかも(笑)。

 ちなみに解説氏によると、『六とん2』は作風に迷いがあるが、『六とん3』では吹っ切れて勢いがあるという。文庫化されたら、まず最初を立ち読みして買うかどうか決めようかな。


 次は、『6 #4』(あさのあつこ・著/講談社文庫)。
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2008年08月17日

容疑者Xの献身


容疑者Xの献身
著者名:東野圭吾(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.08
ISBN :9784167110123


 「ガリレオ」シリーズ初の長編にして、直木賞受賞作。


・内容
天才数学者でありながら不遇な日日を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)


 読後の感想としては、「まあまあ」というところ。正直、この程度で直木賞か・・・と思う。少なくとも、東野圭吾氏の作品の中で“一番”ではないだろう。そもそも、ミステリとしてはちょっとフェアじゃない。もちろん、作者は意図的にそうしたのだろうが。

 “これほど深い愛情に、これまで出会ったことがなかった。この世に存在することさえ知らなかった。”

 帯の言葉であり、映画のキャッチであり、本文終盤に登場するこのフレーズ。これがストンと胸に落ちるかどうか。

 僕はピンとこなかった。石神がなぜそこまで靖子を想うのか、当然作中で説明されているが・・・。現実性を感じなかったのである。

 石神が靖子を守るための企て − その発想は面白かったのだが。

 10/4から映画が公開されるわけだが、絶対観ない(笑)。ドラマで失望したから。

 まず、湯川が福山雅治ってカッコ良すぎ。原作とイメージが違う。何かを閃いたときに数式を書き出す演出が馬鹿馬鹿しい。

 そして、原作でのパートナー、大学時代からの親友で、警視庁の刑事・草薙(ドラマでは北村一輝)を脇に追い遣り、柴咲コウ演じる女性刑事を登場させたのもいただけない。

 まあ、いかにもフジテレビらしく、安直に華やかさを演出・・・というキャスティング。せめて女性刑事が、もう少し切れ者なら良かったが、単に向こう気の強いバカというのがガックリ。

 ついでに、品川が演じるウザイ刑事(原作にはいない)が本当にウザイ。あんな人物を配する意図が分からん。コメディ・リリーフになってない。

 で、映画の石神は、堤真一。これまたカッコ良すぎ。原作の石神は全く冴えない中年なのだが、だからこそ彼の“純愛”が際立つのというのに・・・純愛の理由を納得できるかどうか別にして。

 やれやれ。


 次は『弥勒の月』(あさのあつこ・著/光文社文庫)。
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2008年07月09日

心霊探偵八雲2 魂をつなぐもの


心霊探偵八雲 2
著者名:神永学(著)
出版社:角川書店
出版年:2008.06
ISBN :9784043887026


 う〜ん。


・内容
恐ろしい幽霊体験をしたという友達から、相談を受けた晴香は、死者の魂を見ることができる八雲のもとを再び訪れる。しかし、八雲は相変わらずのつれない態度。そんなとき、世間では不可解な連続少女誘拐殺人事件が発生。晴香も巻き込まれ、絶対絶命の危機に!?幽霊騒動と誘拐事件―複雑に絡み合う謎を、八雲は解きほぐすことができるのか、そして晴香の運命は!?驚異のハイスピード・スピリチュアル・ミステリー第2弾。
(「BOOK」データベースより)


 人称の問題はちゃんとしてもらいたい。 小説作法の基礎だろう。

 「石田は〜」「石田が〜」と3人称(神の視点)で書かれた地の文の中に、突然「私は〜」と1人称の地の文が混入してくる。しかも、頻繁に。

 文庫化にあたってせっかく加筆・修正しているんだから、作者はもちろん編集者・校閲者は気をつけないと。

 あと、31ページに「上流から流されてきたらしく、彼女の身体には、細かい傷が無数にあった。」ということを事実として地の文に書いてあるのに、332ページでは「もし、上流から流されてきたのであれば、亜矢香ちゃんの遺体には無数の傷がついていたはずです。しかし、それは無かった。」と八雲に語らせている(実際には確かに上流から流されてきていない)のは、矛盾だと思うが。こちらの読み取り方がおかしいのか?

 で、ヒロイン小沢晴香が単独行動で危機一髪!のところへ、八雲が駆けつける・・・というクライマックスは2作目にして早くもワンパターン!?

 と、散々文句を言いつつ。

 次の巻(「闇の先にある光」9/25刊)も読む予定。

 嫌いじゃないんだな(笑)。


 次は、『対話篇』(金城一紀・著/新潮文庫)。
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2008年06月15日

賢者はベンチで思索する


賢者はベンチで思索する
著者名:近藤史恵(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.06
ISBN :9784167716035


 なぜ、7月までは本棚を買わないか?

 もうひとつのブログで既に書いたが、買いたい本棚が決まっているのである。コレである。只今売り切れ中。次の入荷が7月なのだ。高いけど(T_T)、買う。

 では、『サクリファイス』で話題の近藤史恵氏を初読み・・・だったっけ?


・内容
ファミレスでバイトをしているフリーターの久里子。常連にはいつも同じ窓際の席で何時間も粘る国枝という名の老人がいた。近所で毒入りの犬の餌がまかれる事件が連続して起こり、久里子の愛犬アンも誤ってその餌を食べてしまう。犯人は一体誰なのか?事件解決に乗り出したのは、意外なことに国枝老人だった。
(「BOOK」データベースより)


 まぁ、どうかなぁ、これは・・・。

 各章ともミステリとしては、直ぐにネタが割れる。どんなミステリを読んでも殆ど結末を見抜けない僕でもそう思うぐらいだから、誰が読んでも先が分かっちゃうだろな。

 不満が残る。

 ただ、21歳の女性の緩やかな成長小説・家庭小説と読めば、そんなに悪くないかも。


 ここから余談。

 昨日書き忘れたのだが、僕は『リピート』を2冊買ってしまった。以前買ったのを忘れて・・・というパターンではなく。既に1冊持っていることを承知で買ったのだ。

 というのは、帰りに最後の十数ページ(たった十数ページ!)を読むつもりが、会社に置き忘れてきたことに気付いてしまったのである。電車の中で。

 で、我慢できずに乗り換え駅の書店へ・・・。アホだ。

 でも、たまにやってしまう^^;。

 それであの結末かよ〜。


 次は、『ひとめあなたに…』(新井素子・著/創元SF文庫)。
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2008年06月13日

リピート


リピート
著者名:乾くるみ(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2007.11
ISBN :9784167732028


 『イニシエーション・ラブ』で話題の乾くるみ。同じ文春からの本作は全く毛色の異なる作品だが、帯には「あのイニシエーション・ラブより驚けます。」「注意!あまりの面白さに、途中でやめることはできません。あまりの驚きに、読了後、必ずもう一度読み返したくなります」。

 ああ、安直な宣伝文句だなぁ。二番煎じやなぁ。柳の下のドジョウやなぁ。ただ、売りたいだけやん。商売とはいえ、本当に作品を愛してるの?


・内容
もし、現在の記憶を持ったまま十ヵ月前の自分に戻れるとしたら?この夢のような「リピート」に誘われ、疑いつつも人生のやり直しに臨んだ十人の男女。ところが彼らは一人、また一人と不審な死を遂げて…。あの『イニシエーション・ラブ』の鬼才が、『リプレイ』+『そして誰もいなくなった』に挑んだ仰天の傑作。
(「BOOK」データベースより)


 しかし、途中までは本当にメチャクチャ面白い。読むのを止められない。あまりに謎が魅力的だから。

 さらに、しかし。

 この作品に限らず、謎が魅力的過ぎるとそれをどう回収するかが難しい。最後は尻すぼみで高揚感はどこへやら。まあ、終盤までは十分に楽しませてもらったから良いけど。

 余談だが、ケン・グリムウッドの『リプレイ』(新潮文庫)は面白いよ。オススメ。


 次は、『居眠り磐音 江戸双紙 無月ノ橋』(佐伯泰英・著/双葉文庫)。
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2008年06月12日

ハナシにならん!笑酔亭梅寿謎解噺2


ハナシにならん!
著者名:田中啓文(著)
出版社:集英社
出版年:2008.05
ISBN :9784087462982


 あの『ちりとてちん』も登場する第2弾。

・内容
金髪トサカ頭の竜二が飲んだくれの落語家・笑酔亭梅寿の内弟子となって、はや一年。梅駆の名前はもらったものの、相も変わらずどつかれけなされの修業の日々を送っている。そんな中、師匠の梅寿が所属事務所の松茸芸能と大ゲンカ、独立する羽目に―!東西落語対決、テレビ出演、果ては破門騒動と、ますますヒートアップする笑いと涙の落語ミステリ第二弾。

・目次
蛇含草
天神山
ちりとてちん
道具屋
猿後家
抜け雀
親子茶屋
(「BOOK」データベースより)


 実は、竜二は師匠も兄弟子も認める類稀な才能の持ち主(気付かぬは己ばかりなり)。

 なのに。

 毎回毎回、売れっ子の漫才師など他ジャンルの芸人の芸に接する度に「落語は古い笑いなんじゃないか?」と焦ったり、梅寿の噺に触れて「いや、落語はやっぱり凄いんや!」と思い直したり、フラフラするのがもどかしい。

 と思っていたら、竜二に惚れこんだスポンサーが現われ、梅寿の下を飛び出して独立。

 影で涙を流す梅寿。

 借金まみれでヤクザに追われ、竜二の金をアテにする。酔っ払って竜二にゲロを吐き、暴力を振るう。疫病神のような師匠だが、意外にも竜二への愛情は本物・・・と思わせるシーンが随所(でもないか)にあって、なかなか良い。

 結局は、その愛情に気が付いた竜二が戻って、丸く収まるのだが・・・。

 しかし、無謀な独演会のせいで、自身も借金を背負ってしまった竜二。前途多難な師弟コンビの道行きをこの先も楽しみたい。早く次の文庫本、出んかなぁ〜。しかし、単行本と文庫本の表紙、絵柄に落差がありすぎやな。よかったら一度確認してみて(笑)!


 次は、『リピート』(乾くるみ・著/文春文庫)。
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2008年06月11日

ハナシがちがう!笑酔亭梅寿謎解噺


ハナシがちがう!
著者名:田中啓文(著)
出版社:集英社
出版年:2006.08
ISBN :9784087460742


 新刊文庫で『ハナシにならん!笑酔亭梅寿謎解噺2』を見かけて、表紙のテイストには少々引いたものの、落語がらみのミステリには興味があるので(落語は聴かないくせに)、まずは第1弾をと。


・内容
上方落語の大看板・笑酔亭梅寿のもとに無理やり弟子入りさせられた、金髪トサカ頭の不良少年・竜二。大酒呑みの師匠にどつかれ、けなされて、逃げ出すことばかりを考えていたが、古典落語の魅力にとりつかれてしまったのが運のツキ。ひたすらガマンの噺家修業の日々に、なぜか続発する怪事件!個性豊かな芸人たちの楽屋裏をまじえて描く笑いと涙の本格落語ミステリ。

・目次
たちきり線香
らくだ
時うどん
平林
住吉駕篭
子は鎹
千両みかん


 当然の如く、各話のタイトルは落語から。事件解決のカギもその落語にある。

 上方落語の「時うどん」は江戸落語では「時そば」・・・って、これはさすがに初歩の初歩としても、上方落語と江戸落語の違いにも触れられて興味深い。

 探偵役は師匠の梅寿ではなく、弟子の梅駆(ばいく)こと竜二だが、何といっても横山やすしを連想させるような(解説によるとモデルは6代目笑福亭松鶴師匠)梅寿の破天荒・傍迷惑・傍若無人の酔いどれキャラが面白い。こんな人、傍にいて欲しくないけど(笑)。

 しかしながら、噺家としては天下一品の梅寿。その落語の凄さを目の当たりにした竜二は文句を垂れながらも落語に惹かれていくのだが・・・。

 以下続刊。


 ということで、次は『ハナシにならん!笑酔亭梅寿謎解噺2』(田中啓文・著/集英社文庫)。
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2008年06月10日

クドリャフカの順番


クドリャフカの順番
著者名:米澤穂信(著)
出版社:角川書店
出版年:2008.05
ISBN :9784044271039


 人が死なない安心印の青春ミステリ、古典部シリーズ。しかし、楽しく爽やか・・・というよりは、毎回かすかなほろ苦さを感じさせるのが特徴である。明るい中にも屈折した思春期心理。青春の影。違うか(^^)。


・内容
待望の文化祭が始まった。だが折木奉太郎が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲―。この事件を解決して古典部の知名度を上げよう!目指すは文集の完売だ!!盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むはめに…。大人気“古典部”シリーズ第3弾。
(「BOOK」データベースより)


 「10の部活から10の品」を盗む連続窃盗犯「十文字」の狙いと正体とは?その第1ヒントが隠されているのは作中に示された「文化祭のしおり」。描かれざる漫画『クドリャフカの順番』原作者のペンネーム「安心院鐸玻(AJIMUTAKUHA)」に隠されたある名前(おっと)・・・。

 折木奉太郎の視点で語られるパートはスペードの1、スペードの2・・・、千反田えるのパートはハートの1、ハートの2・・・、福部里志のパートはクローバーの1、クローバーの2・・・、伊原摩耶花のパートはダイヤの1、ダイヤの2・・・。

 という記号と数字を利用した古典部メンバー4人による多視点記述。そこに秘められたささやかな仕掛け(というほどのことでもないのだが)も楽しかった。上手く説明できないが、こんな単純なことに気付かない自分と、まんまとすっとぼけた米澤氏に思わずニヤッ。って意味不明だなぁ・・・読んでない人には。


 次は、『ハナシがちがう! 笑酔亭梅寿謎解噺』(田中啓文・著/集英社文庫)。
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2008年06月06日

さまよう刃


さまよう刃
著者名:東野圭吾(著)
出版社:角川書店
出版年:2008.05
ISBN :9784043718061


 東野圭吾は好きな作家のひとりである。

 だが、抜群のリーダビリティは認めつつも、それゆえにどこか“軽い”という気がしないではない。『白夜行』のような重厚な作品や、加賀恭一郎シリーズのように綿密に書き込まれた作品ですら読んだソバから消えていくような・・・。

 ・・・しかし、これは重い・・・。

 胸が締め付けられて息苦しくなるような強烈な作品である。


・内容
長峰の一人娘・絵摩の死体が荒川から発見された。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躪された末の遺棄だった。謎の密告電話によって犯人を知った長峰は、突き動かされるように娘の復讐に乗り出した。犯人の一人を殺害し、さらに逃走する父親を、警察とマスコミが追う。正義とは何か。誰が犯人を裁くのか。世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える―。重く哀しいテーマに挑んだ、心を揺さぶる傑作長編。
(「BOOK」データベースより)


 妻を亡くし、一人娘の成長だけが生きがいの長峰は実直で優しい男である。娘の方にも、高校生という年頃にありがちな父親への反発はそれほどでもない。結構仲の良い親子なのだろう。

 その娘を蹂躙して殺したのは、悪逆非道で人を人とも思わない、低劣で身勝手な己の快感原則だけに生きる少年達。命の大切さ、他人を思う気持ちなどかけらも無い。長峰の娘だけでなく、多くの娘を毒牙にかけている。

 とにかく、この書き分けが徹底している。読者の99%は長峰の心情に同調し、吐き気がするほど少年達を嫌悪するだろう。作品に登場する多くのキャラクタと同様に。

 作者は突きつける。少年法はこんな少年達をすら守るためにあるのか。更生なんて不可能としか思えないような人間まで、(更生の可能性がゼロでない以上)その未来と人権を守るべきだというのか。他人を大事にすることの大切さを教育されなかった少年達もある意味、被害者だというのか。本当の被害者が心の底から救われたと感じることは決して無いのに、加害者を救おうとする。それが正義であり、法なのか?反省さえすれば許して良いのか?殺された命は戻らないのに。

 この作品をもってして東野圭吾が死刑賛成論者と決め付けるのは早計だろうが、100%の悪を前にした理想主義の虚しさを暴き出す。

 誰が長峰の思いや行為を責められる?読みながら、彼の復讐が成就することを願う。

 だが、一方でそれを正面から容認すれば、この世は法治国家ではなくなり、復讐や仇討ちを認める無法の世界になるのだが・・・。

 起こった凶悪犯罪には厳罰が必要だろう。だが、見せしめの厳罰だけでは犯罪抑止は無理だ。犯罪を未然に防ぐには、そうなる前に教育(だけじゃないけど)が必要だろう。でも、人間と人間の世がある限り犯罪はゼロにはならないだろうし・・・と頭の中が堂々巡り。

 最後、密告電話の正体が分かるくだりがあるからミステリと呼べるが、それが無ければ完全に社会派作品。ハードだ。


 次は『クドリャフカの順番』(米澤穂信・著/角川文庫)。
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2008年05月23日

六月六日生まれの天使


六月六日生まれの天使
著者名:愛川晶(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.05
ISBN :9784167717780


 “読み終えたあと、必ずもう一回読みたくなります。”
 “これが、恋愛ミステリーの最高峰です。”

 ・・・とまるっきり『イニシエーション・ラブ』と同じノリ。

 版元も同じだし。

 こういう二番煎じ的な売り方にはメリットもあるのだろうが、作品や作家にとって本当に幸せなことだろうか?


・内容
ふと目覚めると、私は記憶を失っていた。同じベッドには、ゴムの仮面を破った全裸の男が眠っている…。ここはどこ?この男は誰?扉を開けると、意外にも外は雪。そして初老のサンタクロースが、私に手招きをしている!記憶喪失の女と謎の男の奇妙な同居生活、その果ての衝撃!傑作ミステリー長篇。
(「BOOK」データベースより)


 いわゆる叙述トリックであり、面白さを説明しようとすると即ネタバレになってしまうので、読んでみてとしか言えない。

 で、“面白さ”とは書いたものの、叙述トリック成立に奉仕するあまり、不自然かつ強引なところもあり、評価はビミョー。

 労作ではあるけど。

 で、「私」の名前は最後まで明らかにされずに終わる。記憶を取り戻した「私」が、「漢字4文字」の自分の名前を思い出したと呟くシーン。「私」に関する探偵事務所の調査報告書を読む江藤が、「名前が、のも―」と言いかけたところで、相手が「いいよ、名前なんか」と遮るシーン。名前に関わるところはそこだけしかないように思われる。

 だが、巻末の解説を読むと、名前に関するかなりあからさまなヒントが作中にあるそうだ。

 あとでパラパラと読み返してみたが、分からない・・・。

 「私」の名前が分かったという方、ご教示を!


 次は、『蒲公英草紙 常野物語』(恩田陸・著/集英社文庫)。
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2008年04月30日

東京バンドワゴン


東京バンドワゴン
著者名:小路幸也(著)
出版社:集英社
出版年:2008.04
ISBN :9784087462876


 この作品をミステリにカテゴライズすることには異論もあろう。でも、あんまりカテゴリ増やしたくないので(笑)。一応、“日常の謎”的なスパイスも効いてるし。

 舞台は、東京のとある下町に店を構える古本屋兼カフェ「東京バンドワゴン」。

 店を営む堀田家はイマドキ珍しい3世代8人の大家族である。すなわち、

 1)気風のいい江戸っ子の大じいちゃん79歳、古本屋店主・堀田勘一

 2)勘一の息子で金髪の60歳、伝説のロッカー・堀田我南人(がなと)

 3)我南人の娘、画家で未婚の母・藍子

 4)藍子の娘、小学6年生の花陽(かよ)

 5)我南人の息子、古本屋手伝い、フリーライターの堀田紺

 6)紺の妻、カフェを藍子と一緒に切り盛りする亜美

 7)紺と亜美の息子、小学4年生の研人(けんと)

 8)年中違う女性が家に押しかけるモテ旅行添乗員、紺の異母弟の堀田青

 彼らとご近所の賑やかな面々が織り成す春夏秋冬の全4章は、昔なつかし人情ホームドラマの風情が漂う。

 なかなか面白い。

 イマドキこんな大家族はいない(TVでよくやるような現代の子だくさん大家族とは全く雰囲気が違う)という気もするが、そこはそれ、ノスタルジックなファンタジーと思えば良いのだから。

 ちょっとした個人的な難点を挙げるとすれば、語り手である今は亡き勘一の妻・堀田サチ(つまり幽霊)の語り口調があまり好きになれないこと。テンポが阻害される気がするのだ。でも、このノンビリした口調が好きな人も多いんだろな。

 もうひとつは、我南人の口調がロッカーらしくないこと。ま、これも僕自身のステレオタイプなロッカーのイメージが原因だろうけど(笑)。


 次は、『きいろいゾウ』(西加奈子・著/小学館文庫)。
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2008年04月23日

心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている


心霊探偵八雲 1
著者名:神永学(著)
出版社:角川書店
出版年:2008.03
ISBN :9784043887019


 単行本は、自費出版で有名な文芸社から現在7巻まで。シリーズ80万部。初の文庫化である。


・内容
学内で幽霊騒動に巻き込まれた友人について相談するため、晴香は、不思議な力を持つ男がいるという「映画同好会」を訪ねた。しかしそこで彼女を出迎えたのは、ひどい寝癖と眠そうな目をした、スカした青年。思い切って相談を持ちかける晴香だったが!?女子大生監禁殺人事件、自殺偽装殺人…次々と起こる怪事件に、死者の魂を見ることができる名探偵・斉藤八雲が挑む、驚異のハイスピード・スピリチュアル・ミステリー登場。
(「BOOK」データベースより)


 ハイスピード・スピリチュアル・ミステリーって・・・また適当なキャッチだなぁ(笑)。

 死者の霊が見える赤い左眼と死者と交信する能力を持って生まれた斉藤八雲。

 その真っ赤な瞳ゆえに、実の母からさえも忌み嫌われて殺されそうになった過去があり、カラーコンタクトレンズで隠す術を覚えるまで、誰にも近寄られずに孤独に生きてきた。

 例外は、母の弟で寺の住職を務める斉藤一心と母に殺されかけた幼い八雲を救った刑事・後藤だけ。

 父親代わりを自認する一心は、八雲を寺に住まわせてくれている。が、霊の姿が見え、その声が聴こえてしまう八雲は、普段は自分の生活空間確保の為にでっちあげたサークル「映画研究会」の部室で寝起き(!)している。

 一方、後藤とは、その能力を活かして捜査に協力する関係にある。

 そんな八雲の元に、たまたま知人を介して、幽霊に取り憑かれた友人を救うべく、小沢晴香が訪れた・・・。

 で、ここから、八雲、後藤、晴香をレギュラーとする連作ミステリとなってくる。

 心霊・幽霊はあくまで道具立てであって、わりに普通のミステリだ。おどろおどろしくもないので、そういうのが苦手な人も大丈夫。

 辛い過去を持つがゆえに、他人に心を開かず、無愛想で皮肉屋の八雲と後藤・晴香の憎まれ口合戦がなかなか楽しい。

 一心や後藤以外で初めて、八雲の赤い瞳を気持ち悪がらず、「綺麗・・・」と呟いた晴香。彼女と接するうちに徐々に変わり始める八雲の成長小説としても読める。

 なんだかんだ言って、ついつい晴香を助けてしまう八雲。

 八雲の言動にプリプリ怒りながらも、事情を理解するに連れ、心惹かれる晴香。

 青春ですなぁ・・・(←おっさん)。

 ただ、この晴香というキャラが、「女の子女の子」してて、それがちょっと残念ではある。活発なように見えても、イザというときは男に守ってもらわないとダメなかよわい女の子・・・というキャラはあんまり好きじゃないんだよな。

 ま、でも両眼が真っ赤な敵キャラ(?)もチラッと登場して、続刊が楽しみだ。


 次は『居眠り磐音 江戸双紙 朔風ノ岸』(佐伯泰英・著/双葉文庫)。
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2008年04月13日

償い


償い
著者名:矢口敦子(著)
出版社:幻冬舎
出版年:2003.06
ISBN :9784344403772


 「ごめんなさい!今までこんな面白いミステリを紹介していなくて」(紀伊國屋書店新宿本店)という宣伝が効いたか、2003年発売の文庫本ながら、最近になってベストセラーとなった作品。40万部を突破したそうだ。


・内容
36歳の医師・日高は子供の病死と妻の自殺で絶望し、ホームレスになった。流れ着いた郊外の街で、社会的弱者を狙った連続殺人事件が起き、日高はある刑事の依頼で「探偵」となる。やがて彼は、かつて自分が命を救った15歳の少年が犯人ではないかと疑い始めるが…。絶望を抱えて生きる二人の魂が救われることはあるのか?感動の長篇ミステリ。
(「BOOK」データベースより)


 ミステリというよりサスペンスかな?

 謎や推理の部分は弱いと思う。

 大体、いかに過去の因縁があるとはいえ、刑事が一般人である日高に、事件や捜査のことをあんなにペラペラ喋るなんてありえないのでは?

 「肉体を殺したら罰せられるのに、心を殺しても罰せられないのか?」 

 扱っているテーマは重たく、その問いかけは切実なものかもしれないが、僕の胸にはもうひとつ響かなかった。このテーマで説得力を持たせるのは並みの筆力では無理だろう。

 文体や各章のタイトルの付け方も好みに合わなかった。


 次は『震度0』(横山秀夫・著/朝日文庫)。
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2008年03月26日

弥勒の掌


弥勒の掌
著者名:我孫子武丸(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.03
ISBN :9784167717674


 高校教師・辻。教え子との過ちが原因で、数年に渡り家庭内別居状態だった妻が突然失踪。既に冷え切った関係とはいえ、行方不明となった彼女の身を案じ、探し始める(警察は事件性なしと判断して捜査せず)。

 5年前に病で妻に先立たれたベテラン刑事・蛯原。愛する若い後妻を何者かに殺害され、怒りに震える彼は、担当外にも関わらず独力で犯人探しを始める。

 やがて、辻と蛯原も《弥勒様》と呼ばれる女性教組が率いる新興宗教《救いの御手(みて)》に辿り着く・・・。


 第1章・教師、第2章・刑事、第3章・教師・・・と交互の視点で描かれた2つの物語が、怪しげな新興宗教の下にリンクする。

 ということで、大好きな『慟哭』(貫井徳郎)を連想して購入。

 帯には「最終章・284ページをお読みになったときのあなたの衝撃が、そしてラスト7行に辿りついたときのあなたの茫然自失ぶりがまるで目に浮かぶようです」とか、「社会派捜査小説であると同時に、読者を罠にはめようとする壮大な企みが隠された作品」とか、「必ずや前代未聞の驚きを味わっていただけることを、私たちは保証します」とか、「迫真のリアリティ、サスペンス、そして謎解きの美しさ」とか。

 ・・・騙された。期待したのに。

 どこが「社会派捜査小説」やねん!

 このちゃちな罠。明らかになったときは苦笑したわ。
 
 宗教団体の正体!どこにリアリティ?

 誇大宣伝も甚だしいつーの!

 確かに茫然自失としたけど。
 
 やれやれ。


 次は、『のだめカンタービレ#20』(二ノ宮知子・著/講談社)
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2008年03月20日

夏の名残りの薔薇


夏の名残りの薔薇
著者名:恩田陸(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.03
ISBN :9784167729028


 世の小説には「読んでいる最中はとにかく面白いが、結末に至って『なんだかなぁ』という作品」が意外に多い。それでも、ずっと退屈するよりは、まあ、いいんだけど。


・内容
沢渡三姉妹が山奥のクラシック・ホテルで毎年秋に開催する、豪華なパーティ。参加者は、姉妹の甥の嫁で美貌の桜子や、次女の娘で女優の瑞穂など、華やかだが何かと噂のある人物ばかり。不穏な雰囲気のなか、関係者の変死事件が起きる。これは真実なのか、それとも幻か?巻末に杉江松恋氏による評論とインタビューも収録。
(「BOOK」データベースより)


 語り手は章ごとに変わる。ひとつの章で必ず誰かが死ぬ。次の章ではその死んだはずの人物が普通に登場する。

 これはいったい・・・?頭がクラクラ。 

 「第一変奏」から「第六変奏」と各章に銘打たれた通り、少しずつ何かがズレていく。

 語り手たちは、他の語り手の視点で描かれていたときとは、違う顔を見せる。

 面白いなぁ・・・どんな結末に持っていくのかなぁ・・・と最後まで楽しく読んだ。

 読んだが・・・。

 どうなんだろう、この曖昧な結末は。「開かれた」物語ということだが。。。最近の恩田氏とは肌が合わなくなってきたかも。


 次は、『高城高全集1 墓標なき墓場』(高城高・著/創元推理文庫)。
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2008年03月18日

犬はどこだ


犬はどこだ
著者名:米澤穂信(著)
出版社:東京創元社
出版年:2008.02
ISBN :9784488451042


 この人の“古典部シリーズ”と“小市民シリーズ”が、わりに好きだ。

 で、『このミス2006』の第8位の『犬はどこだ』。買うしかないでしょ。


・内容
開業にあたり調査事務所“紺屋S&R”が想定した業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。 ― それなのに舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして…いったいこの事件の全体像とは?犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵、最初の事件。新世代ミステリの旗手が新境地に挑み喝采を浴びた私立探偵小説の傑作。
(「BOOK」データベースより)


 う〜ん。イマイチ。

 よく出来てると思うけど。

 最初に挙げた2つのシリーズ同様、体温の低い主人公なのだが、今回はあまり好きになれなかった。どちらかといえば、紺屋長一郎の高校時代の後輩でフリーター、紺屋の視点ではテキトーな感じなのに、自身の視点で語られるセクションではガラっと印象が変わる、ハンペーの方が好きだな。

 あと、結末、後味悪い。

 シリーズとして続刊が予定されているようだけど、次読むかどうか迷うなぁ・・・。

 ちなみにネット上では概ね良い評判で、僕のような感想は少数派。というか無いかも。

 むむむ。


 次は『夏の名残りの薔薇』(恩田陸・著/文春文庫)
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2008年02月25日

扉は閉ざされたまま


扉は閉ざされたまま
著者名:石持浅海(著)
出版社:祥伝社
出版年:2008.02
ISBN :9784396334062


 以前『月の扉』を読んで、「おいおい、こんなのアリかよ・・・」と最後にガクッときた過去がある。

 そんなわけで迷ったのだが、「06年このミス」第2位ということで購入。

 倒叙モノであるからして、まずイキナリ序章の殺人シーンから始まる。当然、犯人もトリックも明らかにされる。

 その後、時間は遡って第1章。

 大学の軽音楽部で、“アル中分科会”と呼ばれた仲良し6人組が卒業後初めての同窓会に集まる。

 まず、人望あるリーダー的存在の伏見亮輔。ただし、この同窓会を殺害計画実行の絶好機と捉え、実行に移す(移した)犯人である。

 豪奢のペンションを同窓会会場として貸切で提供した同期の安東章吾。1年先輩で、現実的でシニカルな物言いの女性・上田五月。1年後輩で、この中ではある意味最も普通のキャラにも思えるが、伏見に殺害される新山和宏。同じく1年後輩で、気が利いて明るい、世話役的存在の大倉礼子(旧姓・碓氷礼子)。そして、2年後輩のイジラレ役・石丸孝平。

 これに、礼子の妹であり、当時は高校生でアル中分科会のアイドル的存在だった碓氷優佳も加わり、7人の宿泊同窓会は和やかにスタートする。

 間もなく、伏見は新山を事故死に見せかけて殺害する。ペンションの構造や防犯設備を巧みに利用し、外部からの進入を一切拒む完璧な密室殺人。しばらくは誰もが、それまでのやりとりや状況から、新山が軽い運動+前日までの睡眠不足+薬の服用と副作用+アルコールによって、眠っているだけだろうと考える。

 ある理由(動機に絡む)から、警察による新山の死体回収をできるだけ遅らせようとする伏見の意図通りの展開だが、些細な点から疑問を抱いたのは、優佳だった。

 “冷静で熱い”伏見と“冷静で冷たい”優佳。互いに、並外れた観察力と洞察力を持ち合わせた2人。過去に因縁のある2人。

 皆が伏見の誘導にコントロールされそうな中、そのシナリオを突き崩して行く優佳。

 息詰まる頭脳戦。面白い。

 ただ、なぜ仲良しの後輩を殺害したのか?その動機が最後の最後で明らかになるが、相当違和感がある。こんな理由で人を殺すかなぁ・・・と。

 巻末の光原百合氏の解説によると、やはり物議を醸したようだ。それを補うために、文庫化にあたって、「前夜」というタイトルのエピローグ(時系列としては同窓会のずっと前)を追加したようだが、それでもなぁ・・・。

 もう少し敷衍して、この事件を“歪んだ正義感による殺人”と考えれば、この動機も分からないでもないというか、成り立つような気がしないでもないというか・・・。

 いや、でもなぁ。

 あと、碓氷優佳はかなり特異なヒロインで、感情移入できんかった。如何に見目麗しくても。こういう女性には関わりたくない(笑)。

 でも、論理による知的な戦いはとても楽しめる。

 で、これまた巻末解説によると、この作品は“倒叙3部作”の第1弾ということであり、3月12日にはノベルズ版で第2弾『君の望む死に方』が発売されるそうだ。探偵役は再び碓氷優佳。楽しみ。

 さらに、帯によると『扉は閉ざされたまま』が3月29日、『君の望む死に方』が3月30日、WOWOWでドラマ放映されるそうだ。前者では黒木メイサ、後者では松下奈緒が碓氷優佳を演じるらしい。黒木メイサの方が、まだ僕のイメージに近いかな?

 どっちにしても加入してないから、観れんけど。


 次は、『居眠り磐音 江戸双紙 狐火の杜』(佐伯泰英・著/双葉文庫)。
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2008年02月16日

タカイ×タカイ


タカイ×タカイ
著者名:森博嗣(著)
出版社:講談社
出版年:2008.01
ISBN :9784061825789


・内容
「あんな高いところに、どうやって死体を上げたのでしょう?」有名マジシャン・牧村亜佐美の自宅敷地内で発見された他殺死体は、奇妙なことに、地上約十五メートルのポールの上に掲げられていた。被害者は、前夜ファンと牧村の会食中に消えたマネージャだった。事件関係者の調査依頼を受けた“探偵”鷹知祐一朗は、複雑に絡み合う人間関係の糸を解きほぐし、犯人の意図と事件の意外な真相に迫る。ますます好調Xシリーズ第三弾。
(「BOOK」データベースより)

 謎は魅力的だが、その真相は至って散文的。カタルシスが全くない(笑)。

 今作では、西之園萌絵もかなりの割合で登場。やっぱりGシリーズと絡んできそうである(自信なし)。

 ところで、森博嗣氏は人気作家ではあるが、ミステリ文壇?では無視されているような気がする。ご本人は全く気にされないだろうが(^^)。

 ・・・書くことねぇなぁ・・・。

 森氏の過去のシリーズを読まずに、今のXシリーズやGシリーズだけを読んでいる人って、どれくらいいるんだろうか?そして、XシリーズやGシリーズについて、どう感じているんだろうか?あまり面白くないな・・・と思った人、ぜひS&Mシリーズから読んでみて。そうすると、森ワールドの凄さにぶっとぶ(と思う)。

イナイ×イナイ
キラレ×キラレ


 次は、『死神の精度』(伊坂幸太郎・著/文春文庫)
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2008年02月06日

写楽・考 蓮丈那智フィールドファイル3


写楽・考
著者名:北森鴻(著)
出版社:新潮社
出版年:2008.01
ISBN :9784101207230


 いやぁ、この人の頭の構造はどうなっているのか。『瑠璃の契り 旗師・冬狐堂』でも書いたが、何でこんな話を考えられるのか。派手さはないけど、ホント端正、切れ味バツグン。

 冬狐堂シリーズでは古物商、こちらは民俗学。知らない世界を垣間見るのは、楽しい(このセリフも前に書いたな)。

 民俗学上の謎に対する考察・調査が、現実世界の殺人事件に対する推理にリンクする。その鮮やかな着地。

 旧態依然とした権威主義、主流派と目される通説を颯爽と蹴飛ばしながら、独り我が道を行く異端の民俗学者、有能かつクールビューティな助教授・蓮丈那智(♀/TVドラマでは木村多江氏が蓮杖那智を演じていたが、僕のイメージでは天海祐希)。彼女に振り回されて疲労困憊・右往左往しながらも(それが快感?)、心酔して付いていく助手・内藤三國(♂)。この2人をホームズとワトソンとして、シリーズ途中から割り込み、三國のポジションを脅かすもう1人の助手・佐江由美子。かつては、蓮丈那智同様に将来を嘱望されていた民俗学の学徒でありながら、とある事情により、今は同じ大学の事務方に回った狐目の教務主任・高杉(♂)。そして、冬狐堂こと宇佐見陶子らが協力して謎を解き明かす、連作短篇集。

 最後に収められている表題作のこれだけ中篇「写楽・考」。話のメインはフェルメールの絵画であり、どこで東洲斎写楽が関係してくるのか?と思いながら読んでいたら、最後の最後で・・・!。

 へぇ〜。

 門外漢の僕には、蓮丈や高杉の唱える説が民俗学上、どの程度のレベルなのか、信憑性は如何ほどか、全く分からない。分からないが、知的好奇心を激しく刺激されるのだ。大学時代、英文学じゃなくて、民俗学をやればよかったな(単純)。


 次は『水滸伝・十六 馳驟の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。
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2008年01月27日

瑠璃の契り 旗師・冬狐堂


瑠璃の契り
著者名:北森鴻(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.01
ISBN :9784167717582


 店舗を持たず、競り市で仕入れた美術品を、他の骨董品業者や蒐集家に転売して利ざやを稼ぐ「旗師」として、生き馬の目を抜く世界で生きる宇佐見陶子。手元に持ち込まれるいわくつきの品々に秘められた謎や因縁を解き明かしていくミステリ。

 読んでいる途中で、裏表紙の説明を読んだら、「人気シリーズ第2弾」と書いてあった。
 
 え!?まだ2作目?

 もっと読んでる気がするけど・・・。

 と思って、思い出した。

 文春文庫からの連作短編シリーズは確かに2冊目だけど、講談社文庫から長編シリーズ(『狐罠』『狐闇』)が2冊出てて、そっちも読んでたのだ。

 だけじゃなく、冬狐堂シリーズにちょこちょこ登場する下北沢の骨董屋・雅蘭堂店主・越名が主人公の『孔雀狂想曲』も読んでいるし、『蓮杖那智』シリーズにも宇佐見陶子は登場する。

 なので、実際の作品数よりも沢山の冬狐堂シリーズを読んでいるような気がするんだな。

 ついでに触れておくと、『香菜里屋』シリーズのビア・バー<香菜里屋>&池尻大橋のバー<香月>も、実にさりげなく登場。で、僕がまだ読んでいない『親不孝通り』シリーズの登場人物も出てくる。

 こういったシリーズ作品同士のリンクが北森作品の楽しいところ。それでいて、他のシリーズを読んでいなくても、そのシリーズ単体でちゃんと読めるのもイイ。

 今回の収録作は・・・

素晴らしい出来にも関わらず、購入者の家族が怯えるためにいつも返品されてくる和人形の謎を解く「倣雛心中」。

20年前、陶子の美大時代、天才的な技量を持ちながら火災で命を落とした同級生・杉本深苗。その追悼画集の復刻版が陶子の元に送られてくる。有名な画家でもない杉本の画集を、誰が、何のために、今になって復刻させたのか?その答に迫る「苦い狐」。

北九州・小倉の立ち飲み屋で偶然見つけた美しい瑠璃ガラスの切り子椀。その椀を見た相棒のカメラマン・横尾硝子のただならぬ反応。切り子椀に隠された制作者の想いと硝子の想い出を追いかける「瑠璃の契り」。

陶子の美大時代の師にして、かつての夫・Dが巻き込まれた、黒髪の少女の生き人形に込められた怨念の物語。消えたDと人形に秘められた謎を追う「黒髪のクピド」。

・・・の4篇。

 こう紹介すると、ホラーチック(?)に思われるかも知れないが、そういう要素は一切なし。どれを取っても、地味(良い意味で)ながら、端正なミステリ。

 よくもまあ、こんな話を考え付くものだ。日頃は窺い知れない骨董業界の一端も覗けて、楽しい。

 また、長編もやってほしいな。


 次は『アラビアの夜の種族』(古川日出男・著/角川文庫)
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2008年01月22日

イニシエーション・ラブ


イニシエーション・ラブ
著者名:乾くるみ(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2007.04
ISBN :9784167732011


 風邪ひいた。

 春先に引くことが多いのだが、今年の冬は2回目。

 とにかくひき始めが肝心。薬飲んで、栄養取って。

 少し頭痛がするし、ふらつく感じ。

 初期症状としては、いつもより重い。

 今日は長文は書けないぞ。

 そんな日に(たまたま)ピッタリの本だ。


・内容
僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて…。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説 ― と思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。
(「BOOK」データベースより)


 説明のしようのない小説である。説明するその場からネタバレになってしまうのだ。

 物語の外観は冴えないハズの主人公が恋に落ちて、それがアレヨアレヨと上手くいく、甘酸っぱくも凡庸な恋愛小説。

 しかし、その実、物語全体が、読者を騙すためのたくらみに満ちているのだ。くれぐれも「つまらん恋愛モノ」と思って、投げ出さないように。

 ラスト2行のその手前から、あれ?あれ?と違和感に打たれ続けると、最後には「あぁ〜、そういうこと!」

 他にも物語の途中で違和感を感じるところはあったけど、これが答えかぁ。

 そして、巻末の解説「〜再読のお供に〜」を読む。

 まぁ、もう一度読み直したいとまでは思わなかったけど、前に戻って何箇所か確認。

 フムフム。なるほど。

 Side A、SIde Bと大きく2分割された構成には、『真夜中の5分前』(本多孝好)を連想したが、Side AとSide Bにはこういう関係性(ネタバレになるので説明せず)も確かにあるよな。

 物語が1980年代半ばになっていること(まあ、これは1990年代でも書きようがあるかも知れないが)、登場人物がやたらドラマ『男女7人〜』に言及することにも納得(でも、こういう道具に使えるドラマ、90年代にあったかな)。

 それにしても、このマユという女、怖い。


 次は、『瑠璃の契り 旗師・冬狐堂』(北森鴻・著/文春文庫)。
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2008年01月13日

チーム・バチスタの栄光(上・下)


チーム・バチスタの栄光 上
著者名:海堂尊(著)
出版社:宝島社
出版年:2007.11
ISBN :9784796661614


 第4回「このミス」大賞受賞作。この厚さで上・下巻はないんじゃないの?と思いつつ、購入。

 最初の2ページの情景描写の退屈さに、いきなり後悔。

・上巻内容
東城大学医学部付属病院の“チーム・バチスタ”は心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門の天才外科チーム。ところが原因不明の連続術中死が発生。高階病院長は万年講師で不定愁訴外来の田口医師に内部調査を依頼する。医療過誤死か殺人か。田口の聞き取り調査が始まった。第4回『このミス』大賞受賞、一気にベストセラー入りした話題のメディカル・エンターテインメントが待望の文庫化。
(「BOOK」データベースより)

・下巻内容
東城大学医学部付属病院で発生した連続術中死の原因を探るため、スタッフに聞き取り調査を行なっていた万年講師の田口。行き詰まりかけた調査は、高階病院長の差配でやってきた厚生労働省の変人役人・白鳥により、思わぬ展開をみせる。とんでもない行動で現場をかき回す白鳥だったが、人々の見えなかった一面が次第に明らかになり始め…。医療小説の新たな可能性を切り拓いた傑作。
(「BOOK」データベースより)

 謎を解くカギが読者に完全開示されているわけでもないし、アクロバティックな論理展開で真相と犯人に辿り着くわけでもないし、探偵役の白鳥の推理(というか調査)手法は意外に地味である。

 彼の異名がロジカル・モンスターだということは読む前から知っていたし、もちろん作中でも本人の登場と同時に語られるのだが、てっきり常人には及びもつかないような(それこそモンスター級の)切れ味鋭いロジカル・シンキングを見せ付けてくれるのかと思い込んでいた。

 論理的であることは確かだが、モンスターは“変人”というニュアンスだったんだな。

 で、最初の2ページを我慢して通り過ぎたら、高階院長が田口公平に内部調査を依頼する導入部(ミステリとしての謎の提示)から、すぐに引き込まれて最後まで一気に読んだ。

 大学病院という門外漢には全く分からない世界を垣間見ることができるのも興味深いし(どこまでがリアルかは判断しようがないが、現役医師の執筆作品ということが真実味を増幅させる)、キャラクタ造型も良い。

 これまたミステリというよりも、サスペンスだな。というか上の紹介文通り“メディカル・エンタテインメント”と呼ぶのがいちばんピッタリ来るか。

 ご存知の通り映画化されるが、不満が2つ。

 まず田口を女性に置き換えたこと(竹内結子氏)、そして白鳥が男前過ぎること(阿部寛氏)。俳優2人に恨みはないが、原作の世界観ぶち壊しやん!


 次は、『仕掛け花火』(江坂遊・著/講談社ノベルズ)。
posted by ふくちゃん at 23:44| Comment(0) | TrackBack(1) | ミステリ

2008年01月06日

少女には向かない職業


少女には向かない職業
著者名:桜庭一樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.12
ISBN :9784488472016


 謹賀新年!

 文庫読みの宿命というか何というか、どうしても読書界最先端のトレンドには遅れがちである。

 そんなわけで、ようやく初読みの桜庭一樹氏。

 ミステリor推理というより、サスペンス。面白かった。


・内容
あたし、大西葵13歳は、人をふたり殺した…あたしはもうだめ。ぜんぜんだめ。少女の魂は殺人に向かない。誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。だけどあの夏はたまたま、あたしの近くにいたのは、あいつだけだったから―。これは、ふたりの少女の凄絶な“闘い”の記録。『赤朽葉家の伝説』の俊英が、過酷な運命に翻弄される少女の姿を鮮烈に描いて話題を呼んだ傑作。
(「BOOK」データベースより)


 血の繋がった父は既になく、「自分の人生はこんなハズじゃなかった」という想いに取り付かれた母の愛情は薄い。そして、漁師として働けなくなってからは酒に溺れ、暴力を振るう“怪物”と化した義父。

 そんな窮屈な家庭を忌避しつつ、道化を演じ、空気を読み、争いを避けることで、学校での居場所をかろうじて保っている・・・。それが、先生からも同級生からも人気のひょうきんなお調子者・葵の本当の姿。

 学校では全く目立たない黒髪・眼鏡の図書委員。町一番の金持ちの孫娘。プライベートではゴスロリ・ファッションで異様かつクールな妖気を漂わせる“あいつ”宮乃下静香。

 葵はひょんなことから、その黒髪が本当は茶色の髪を染めていること(天然茶髪は校則上OKなのに)、眼鏡がダテであることに気付く。その意味は・・・。そして、彼女の口から語られる、彼女自身に関する驚くべき秘密、恐るべき計画。

 離島、田舎、学校、家庭。狭い世界に閉じ込められた少女達の生きるための戦い。

 この作品には、息苦しくも眩しい、思春期という時間の輝き(それが刹那の幻想でも)が確かに息づいている。

 ・・・こういうのに弱いのだ。

 葵と静香の2人には、この先どんな人生が待っているのだろう。苛酷な時間のその先に救いがあることを祈る。


 次は、『夢の守り人』(上橋菜穂子・著/新潮文庫)。