2008年08月19日

弥勒の月


弥勒の月
著者名:あさのあつこ(著)
出版社:光文社
出版年:2008.08
ISBN :9784334744564


 『バッテリー』のあさのあつこ氏、初の時代小説。


・内容
小間物問屋遠野屋の若おかみ・おりんの水死体が発見された。同心・木暮信次郎は、妻の検分に立ち会った遠野屋主人・清之介の眼差しに違和感を覚える。ただの飛び込み、と思われた事件だったが、清之介に関心を覚えた信次郎は岡っ引・伊佐治とともに、事件を追い始める…。“闇”と“乾き”しか知らぬ男たちが、救済の先に見たものとは?哀感溢れる時代小説。
(「BOOK」データベースより)


 藤沢周平氏に憧れて、時代小説を書いたというあさの氏。初期の藤沢作品を思わせるような、どちらかといえば暗い色彩の時代小説だ。

 主人公の信次郎は、若いながらも優れた同心だが、心のうちに渇いた虚無を抱え、いつもどこか尖っている。少しでもバランスを崩せば、破綻しそうな危うさも感じさせる。はっきり言って、僕には共感しにくいキャラ。

 その手下の岡っ引き・伊三次・・・じゃなくて、伊佐治(いさじ)は、信次郎の父・右衛門(えもん)にも仕えていた大ベテラン。人間味に溢れていた右衛門と信次郎の落差に戸惑いながらも、信次郎をしっかり支える。伊佐治と信次郎の時に軽妙な(しかし、どこか緊張を孕んだ)遣り取りが、この作品の重たさを辛うじて緩和してくれるのだ。

 そして、妻の死の調べを信次郎に頼む遠野屋主人・清之介は、実は凄絶な過去を抱えた“修羅”である。闇の世界から普通の世界へと自分を導いてくれた大切な人を、過去の亡霊に奪われた彼は何処へ行くのか・・・。

 気になる終わり、続きがありそうな終わり方・・・と思ったら、案の定。この後、『夜叉桜』という続編があり、さらに続くようだ。

 あさの氏曰く、まだ信次郎、伊佐治、清之介たちの全貌が掴めない、だから書きたいということらしい。

 なかなか面白い。

 既にして、他の時代小説とは異なる個性がある。好き嫌いは分かれそうだが(って何でもそうだが)大したものだ。


 次は『六とん2』(蘇部健一・著/講談社文庫)。
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2008年06月24日

赤絵の桜 損料屋喜八郎始末控え


赤絵の桜
著者名:山本一力(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.06
ISBN :9784167670078


 シリーズ2作目。1作目も読んだはずだが、ほとんど覚えていない(笑)。ただ、なかなか面白かったハズ・・・という記憶を頼りに購入。


・内容
上司の不始末の責めを負って同心を辞し、刀を捨てて損料屋を営む喜八郎。不況の嵐が吹き荒れる江戸に新しく普請された、大人気の湯屋「ほぐし窯」の裏側を探るうち、公儀にそむく陰謀に気づく…。喜八郎と仲間たちの活躍、そして江戸屋の女将秀弥との、不器用な恋の行方は?傑作時代小説シリーズ第2弾。
(「BOOK」データベースより)


 やはり、なかなか面白かった。前作の内容や人間関係は朧げにしか思い出せないが、それでも十分。

 損料屋とは江戸時代のレントオール屋さん。でも喜八郎のそれは(一応ちゃんと営業もしているけど)表向きの商売。札差・米屋の先代政八への恩義から、当代政八(喜八郎より年上だが人間的に未熟で商才がない)を助けるかたわら、かつての上司・与力の秋山や18名の配下と共に悪を挫く。

 義理と人情に厚く正義感の強い喜八郎。だが、その彼を始め、登場人物の描き方は抑えた筆致、乾いた筆致で、心情に深く入り込み過ぎない。書き過ぎない。喋らせ過ぎない。

 そこが気持ち良い。


 次は『司政官 全短編』(眉村卓・著/創元SF文庫)。
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2008年06月14日

居眠り磐音 江戸双紙 無月ノ橋


居眠り磐音 江戸双紙 無月ノ橋
著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2004.11
ISBN :9784575661859


 すっかりお気に入りの当シリーズだが。


・内容
萩の花が江戸に秋の気配を告げる頃、深川六間堀、金兵衛長屋に住む浪人、坂崎磐音は身過ぎ世過ぎに追われていた。そんな磐音が、包平の研ぎを頼んだ鵜飼百助邸を訪れた折り、旗本用人の狼籍を諌めたことで、思わぬ騒動に…。春風駘蕩の如き磐音が許せぬ悪を討つ。
(「BOOK」データベースより)

 この巻に限って言えば、最後の章の磐音の活躍はちょっと安っぽいヒーロー時代劇のようで、イマイチだった。まぁ、こういうの、喜ぶ人もいるかも知れんが。

 僕としては、もっと書き込んで現実性を持たせて欲しかったな。カタルシスの度合いは下がるかも知れんが。

 それにしてもこのシリーズ、巻のタイトルは常に「○○ノ△」、各章のそれは全て漢字5文字で、頑張ってるなぁ(笑)と思っていたのだが、今回は各章タイトルでその原則が遂に崩れる。

 それとも既にどこかで崩れてたかな?

 引越後、まだ本棚を購入してないので、書籍類はダンボールの中。7月に本棚を買って整理するまでは確認できないな・・・。

 何で7月まで本棚を買わないのかって?

 それはまた今度。


 次は、『賢者はベンチで思索する』(近藤史恵・著/文春文庫)。
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2008年05月13日

居眠り磐音 江戸双紙 遠霞ノ峠/朝虹ノ島


居眠り磐音 江戸双紙 遠霞ノ峠
著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2004.05
ISBN :9784575661705


 最近の新刊本の中に読みたい本があまり無かったので、2冊続けて読む。

 今回も大小様々な事件があり、江戸の暮らしがある。

 博徒の権造一家の代貸し・五郎造との青梅・秩父への旅があり、江戸最大手の両替商・今津屋との熱海への旅がある。

 もちろん磐音は、旅先でも事件に巻き込まれ、チャンチャンバラバラ、八面六臂の大活躍であることは言うまでもない。

 これらの巻あたりまで来ると、レギュラー陣はいずれもキャラがしっかり立ち、実に活き活き躍動しており、非常に楽しい。

 例えば用心棒として熱海に同行する友人・品川柳次郎と竹村武左衛門。2人とも浪人者の磐音とは違い、歴とした御家人であるが、当時の世相に漏れずド貧乏。母と2人暮らしの柳次郎は、内職暮らしに飽き飽きしているものの真面目で誠実、母思いの友思いで、正義感も強い。一方、妻と幼い子供たちを抱える武左衛門は、酒好きの怠け者の横着者(笑)。

 今回も高い給金で雇われながら、道中の酒を禁止されて、不満たらたら。ダメダメの武左衛門には読んでいてムッとすることもあるが(笑)、どこか憎めない。もちろん、彼の給金は酒に消えぬよう、柳次郎が受け取り、武左衛門の妻に直接渡すのであった(笑)。

 大勢の登場人物が織りなす、互いを思いあう人間関係もこのシリーズの大きな魅力だな。レギュラー陣にはみんな幸せになってもらいたいなぁ、などと、ついつい感情移入しながら読むのであった。


 やっとリアルタイムの読書に追いついた!只今『ベルカ、吠えないのか?』(古川日出男・著/文春文庫)を読破中。
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2008年04月27日

水滸伝・十九 旌旗の章


水滸伝 19
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2008.04
ISBN :9784087462821


 遂に終わってしまった。

 全19巻に及ぶ長い物語だが、読み終わってみると、長かったような、あっという間のような。

 いずれにせよ、緊密なテンションを維持しつづけ、梁山泊の好漢だけで108人、敵側やその他のキャラクタを入れて多くの人物を書き分けた筆力は驚嘆&賞賛に値する。

 この最終巻は、童貫との決戦で丸々1冊。

 読む前から結末は分かっている。

 だから、読んでいてちょっと息苦しかった。

 読む前から結末は分かっている。

 なのに、ひょっとしたらと期待した。

 大勢の人間が死んだ。

 だが、生き残った人間もまた多い。

 物語は、北方完全オリジナルの“続・水滸”『楊令伝』へと続いていく。

 文庫本になるのは単行本が完結した後だろうから、まだまだ先だ。

 待ち遠しい!

水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章
水滸伝・十一 天地の章
水滸伝・十二 炳乎の章
水滸伝・十三 白虎の章
水滸伝・十四 爪牙の章
水滸伝・十五 折戟の章
水滸伝・十六 馳驟の章
水滸伝・十七 朱雀の章
水滸伝・十八 乾坤の章


 次は、実際に読んだ順番とは違うけど『替天行道 北方水滸伝読本』(北方謙三・編著/集英社文庫)で。
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2008年04月25日

居眠り磐音 江戸双紙 朔風ノ岸


居眠り磐音 江戸双紙 朔風ノ岸
著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2004.03
ISBN :9784575661651


・内容
初春の陽光を水面に映す深川六間堀。金兵衛長屋に住む坂崎磐音は身過ぎ世過ぎに追われる浪人暮らし。そんな磐音が新年早々、南町奉行所年番方与力の笹塚孫一に請われ、屠蘇気分も抜けぬ御府内を騒がす大事件に関わることに…。春風駘蕩の如き磐音が許せぬ悪を討つ、著者渾身の書き下ろし痛快長編時代小説第八弾。
(「BOOK」データベースより)


 35年で30巻を越える『御宿かわせみ』も凄いが、6年で25巻を数える当シリーズも凄い。

 刊行ペースに合わせてリアルタイムで読めるよう早く追いつきたいのだが、他にも読みたい本が色々出るのでなかなか・・・。

 関前藩で暮らす妹・伊代に祝言の話が持ち上がる。

 小浜藩の医師・中川淳庵らを付け狙っていた“鐘ヶ淵の御屋形様”や“血覚上人”とはようやくケリが付く。

 吉原の花魁のトップ=太夫を選ぶ投票に絡んで、かつての許婚・奈緒=現在の白鶴太夫(この太夫は地位を表すものではなく単なる呼称)を描いた美人画の浮世絵師・北尾重政が脅迫される。

 江戸暮らしの師匠・幸吉少年は、奉公に出る年を迎える。

 流れる時の中で、三崎町の道場に通い、宮戸川で鰻を割き、品川柳次郎や竹村武左衛門と用心棒稼業に精を出す坂崎磐音。

 祝言の席に磐音を呼べぬことを詫びる国家老の父・正睦からの手紙、今津屋の援けを借りて祝いの品を送った磐音への伊代からの御礼の手紙もなかなか感動的だったけど、今回の一番好きなシーンは、鐘ヶ淵の御屋形様の正体を探り出してきた南町奉行の与力・笹塚と話し合った後。

“今津屋に戻るかどうか迷った末に、深川の金兵衛長屋に帰ることにした。となると米、味噌は残っていたか。
(問題は菜だな)
 と考えながら数寄屋橋を渡って、町屋に入った。”

 生活感があってとても良い(笑)。


 次は、遂に瞠目の最終巻『水滸伝・十九 旌旗の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。
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2008年04月21日

小判商人 御宿かわせみ33


小判商人
著者名:平岩弓枝(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.04
ISBN :9784167710088


・内容
長助の近所の質屋に空巣が入った。犯人を捕えて取り戻した銭箱に、メキシコ・ドルラルと呼ばれる洋銀が一枚…。日米間の不公平な通貨両替を利用し、闇の両替で私腹を肥やす小判商人を追って、東吾や源三郎、そして麻太郎と源太郎の少年コンビが活躍する表題作をはじめ、騒然とした幕末の世情と揺れる人の心を描く七篇を収録。
(「BOOK」データベースより)


 昭和48年(!)から連載されてきたという、江戸時代編の『御宿かわせみ』も残すところ次の第34巻のみである。で、そこからは明治時代の『新・御宿かわせみ』となるのだ。その明治編では神林東吾も畝源三郎も登場せず、20代となった麻太郎(東吾の兄・与力の神林通之進の養子で実は東吾の息子)と源太郎(源三郎の息子)が主人公である。

 なんだか寂しいなぁ。。。

 それはさておき。

 時代小説好きで、まだこのシリーズを読んでいない方は、ぜひ第1巻から読もう。

 え?今さら30巻以上の作品を読むのは腰が引ける?

 何をもったいないことを!

 これから新たに30巻もこんな世界に触れられるなんて羨ましい!

 35年間、愛されてきたのはダテではない。

 読みなはれ!


 では、次。『心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている』(神永学・著/角川文庫)。
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2008年04月09日

水滸伝・十八 乾坤の章


水滸伝 18
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2008.03
ISBN :9784087462722


 今年の本屋大賞が決まった。好きな作家だし、面白そうな作品ではある。が、しかし、昨年も思ったが、もう売れている作家の売れている作品ではなく、まだメジャーになっていない作家の「でもコレが面白いんです!読んで下さい!」という作品にこそ、売るプロとして賞をあげてほしいな。

 閑話休題。

 さて。

 1年半に渡って趙安と対峙してきた秦明の二竜山は陥落する。

 宋の超巨大戦艦が梁山泊とその水軍を脅かす。

 仕切り直しとなった童貫軍と梁山泊軍は、またしても一進一退の攻防の後、長い睨み合いに入るが、じわじわと童貫軍が押す。

 青面獣・楊志の名を継ぐ楊令は、梁山泊の全英雄をも越える可能性を秘めて、子午山から梁山泊に復帰、その類稀なる器量を発揮する。

 梁山泊は奇策を以って、三度北京大名府を占拠し、童貫軍は引き上げる。

 そして、再度の仕切り直しの後、いよいよ最終決戦へ。

 その緒戦、窮地の扈三娘を救おうとする林冲。

 ラスト一巻。心して待つ。

水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章
水滸伝・十一 天地の章
水滸伝・十二 炳乎の章
水滸伝・十三 白虎の章
水滸伝・十四 爪牙の章
水滸伝・十五 折戟の章
水滸伝・十六 馳驟の章
水滸伝・十七 朱雀の章


 次は、『四畳半神話大系』(森見登美彦・著/新潮文庫)。
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2008年03月08日

白い息 物書同心居眠り紋蔵


白い息
著者名:佐藤雅美(著)
出版社:講談社
出版年:2008.02
ISBN :9784062759632


 約3年ぶりのシリーズ第7弾。刊行間隔が長いんだよなぁ・・・。

 佐藤雅美氏はメジャー作家といえるかどうか微妙な位置にいると思うが(失礼)、昔TVドラマ化された本シリーズは代表作(NHK。主演は舘ひろし)。時代物が好きな方で、未読の方はぜひ!他の作家とはまた全く違う独自の魅力がある。

 シリーズ当初から前作まで、紋蔵の所属は一貫して奉行所の例繰方(れいくりかた)である。すなわち、過去の様々な民事・刑事事件の顛末や判例を記録・収集・管理している部署だ。華やかな捕物とは縁がない。

 元々は花形の常廻りを志望ながら、本人の意思や性向とは無関係に突然居眠りしてしまう奇病 − 巻末の解説によると「ナルコレプシー」=「日中において場所や状況を選ばず起きる強い眠気の発作を主な症状とする神経疾患(睡眠障害)」<Wikipedia> − のために、若くして閑職に回された紋蔵。

 しかし、のっけから閑職に追いやられた挫折経験から報われぬ人の心の痛みを知り、まじめにキャリアを積んで誰よりも過去の事件に精通した紋蔵は、今の江戸で起きる数々の厄介なトラブルに対して関係者全員が納得できる解決法を提示し、やがて上司や同僚、果ては御奉行にさえ一目置かれる存在になる。

 そして、遂には前巻の終わりで、定廻りへの転属が決まったのだった。

 このシリーズを読み進むうちに、なんとなく物書同心=例繰方と思い込んでいたので、定廻りになったらタイトルはどうするの?と思っていたが、「物書同心」とか「年寄同心」とかいうのは、「役目」ではなく身分を現すに過ぎないのだそうだ。なるほど。

 他の捕物帳には登場しないような独創的な事件。当時の法令である「御定書」の法解釈や過去の事件や判例を参考にした解決など、独特の魅力は楽しい。ただし、ミステリ・チックな鮮やかな結末を期待する人には不向き。でも、当時の現実の捕物って、こんなもんだったんじゃないかな。

 ただ、定廻りになったことで、手下の岡っ引きとの捕物が中心になり、役所という組織の理不尽や紋蔵の鬱屈、しかしながら常に静かにベストを尽くす紋蔵・・・という魅力がやや減少。準レギュラーたちの登場も減り、寂しい。

 と思っていたら、巻末では再び例繰方に戻されることに。定廻りとして大方の予想を越える活躍ぶりを示していた紋蔵だが、彼が抜けた後の例繰方がどうにも頼りなく、やはりあの部署には紋蔵がいなければ・・・と上が判断した次第。今度は左遷ではない。

 ようやく長年の希望が叶って定廻りになり、実入りも良くなって、一家の暮らしも楽になったのに・・・。しかし、例繰方を離れたことによって、紋蔵もそのあり方を改めて考えたらしい。泣き言を言わずに異動を受け入れ、理想の例繰方を作ろうと考えている。

 いや、なかなかどうしてカッコよいのだ、紋蔵は。


 次は、『ティファニーで朝食を』(トルーマン・カポーティ著/村上春樹訳/新潮社)。 
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2008年03月06日

忍冬 梟与力吟味帳


忍冬
著者名:井川香四郎(著)
出版社:講談社
出版年:2008.02
ISBN :9784062759694


 これ、購入間違い。

 本当は『物書同心居眠り紋蔵 白い息』を買うつもりで、書棚の平積みの2冊目を手に取ってレジへ。

 しかし、おそらく、そこはこの『忍冬』(“すいかずら”と読むそうだ)の平積み棚であって、誰かが間違ってその上に『白い息』を置いたのであろう。

 おのれェ〜!。

 とはいえ、レジで気付かない自分も自分である。

 読み始めて・・・アレ?

 まあ、せっかく買ったんだし、新たな作家との出会いになるかも・・・と読む。


・内容
正義感が強く、町人からお白洲で裁きを行なう吟味方与力となった藤堂逸馬。“くらがり(迷宮)”入りした町娘殺しを探索し直していた逸馬に、正体不明の影が迫る。北町奉行・遠山金四郎と南町奉行・鳥居耀蔵の対立が事件の背後に見え始めた時、新たな殺しが―。痛快にして胸に迫る文庫書下ろし連作時代小説。
(「BOOK」データベースより)


 町人ながら、幼い頃から人望あるガキ大将。剛毅な態度と威風堂々とした容貌、寺子屋での優秀な成績、神道無念流の道場で鍛えた剣の腕前を見込まれて、藤堂家の養子となった逸馬。幼馴染の2人、勘定吟味方改役・毛利八助、寺社奉行吟味物調役・武田信三郎と様々な事件に挑む。

 う〜ん。

 なんというか、時代物に欠かせない風韻というモノがない。味わいに乏しい。もっと面白くなりうそうな設定だが・・・。

 4月スタートのNHK土曜時代劇枠にて、「オトコマエ!」というタイトルでドラマ化されるそうだ。原作選考の基準は何だ?でも上手くやれば原作より面白くなるだろう。ま、タイトルからして期待はせんけど。

 これ、シリーズ物の第3巻だそうで。読み終わってカバー折り返し部分の作品一覧を読むまで気付かんかった。

 で、最初の2巻を読むか?

 読まんやろなぁ・・・。


 次は、間違えずに『物書同心居眠り紋蔵 白い息』(佐藤雅美・著/講談社文庫)
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2008年03月04日

水滸伝・十七 朱雀の章


水滸伝 17
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2008.02
ISBN :9784087462616


 童貫軍強し!董平の奮戦・善戦も虚しく、梁山泊からの援軍も間に合わぬうちに、双頭山が陥落。敵の強さを認め、それゆえに長期戦を避けたい童貫は、一気呵成に梁山泊を踏み潰そうとする。だが、主戦派の盧俊義が講和派の宋江に処断されたという偽装まで施した工作が実り、講和が成立。梁山泊は一息つく。

 しかし、2ヵ月間の停戦後、講和が偽りのものであることが露呈、梁山泊の窓口となっていた侯健は・・・。

 そして、再び禁軍が動き出し、趙安軍を中心に二竜山を厳しく攻め立てる。童貫は畢勝軍と共に、流花塞付近で呼延灼・関勝・張清・史進・林冲ら梁山泊軍主力とぶつかる。一進一退、一瞬にして攻防が入れ替わる激しい戦い。

 一方、梁山泊の致死軍・飛竜軍と宋の高廉軍、闇の軍同士の最終決戦でも激烈な闘いが。

 今回もまた当然のように、多くの好漢が死んでいく。

 戦から離れ放浪していたあの男、シリーズ初期から圧倒的な存在感を放っていたあの男も・・・。子午山の王進に元に現われ、梁山泊の漢(おとこ)達の全てを、替天行道の志を、楊令に語り尽くし、焼き付けて。

水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章
水滸伝・十一 天地の章
水滸伝・十二 炳乎の章
水滸伝・十三 白虎の章
水滸伝・十四 爪牙の章
水滸伝・十五 折戟の章
水滸伝・十六 馳驟の章

 あぁ、あと2巻で終わりかよ〜。


 次は『忍冬 梟与力捕物帳』(井川香四郎・著/講談社文庫)。
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2008年02月29日

居眠り磐音 江戸双紙 狐火ノ杜


居眠り磐音 江戸双紙 狐火ノ杜
著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2003.11
ISBN :9784575661569


・内容
晩秋の風情が江戸を包む頃、深川六間堀、金兵衛長屋に住む坂崎磐音は相も変らぬ浪々の日々を送っていた。そんな折り、両替商・今津屋の心遣いもあり、働きづめのおこんの慰労を兼ねて、品川柳次郎らと紅葉狩りにでかけたが、悪行をなす不埒な直参旗本衆に付け狙われて…。春風駘蕩の如き磐音が許せぬ悪を薙ぐ、大好評!痛快時代小説第七弾。
(「BOOK」データベースより)

 ああ忙し(仕事が)。

 帰りが遅くなるし、独り者だから家事もあるし、ブログが書けぬ。

 でも、この作品、改めて書くほどのコト無いんだよな(貶しているのではない)。

 もの凄く高い確率で事件に遭遇する男(笑)、磐音。今回も章ごとに大小(小小?)様々な事件に出会い、快刀乱麻、爽やかに解決していく。

 長いシリーズには緩急が必要だと思うが、この巻は“緩”。

 許婚を何処までも追いかけたり、無二の親友を斬る羽目になったり、大切な恩人の死を看取ったり・・・というような痛切な物語は無く、安心して磐音の活躍を楽しめる。

 磐音は、剣の腕も、謙虚で穏やかで礼儀正しい人柄も素晴らしいが、決して完全無欠のヒーローではなく、人間らしいところが良い。こんなヤツ、なかなかいないけど、いて欲しいと思わせる。

 で、この巻では、第4巻『雪華ノ里』、奈緒を追いかける道中で知り合った中川淳庵を、その時も今も狙い続ける異形の僧たちのバックに“鐘ヶ淵の御屋形様”と呼ばれる人物のいることが分かる。一体何者?

 ちなみに、中川淳庵は、杉田玄白らと『ターヘル・アナトミア』を『解体新書』に翻訳した実在の医師。架空の人物と実在の人物の共演は、時代小説の楽しさのひとつだ。

 で、“鐘ヶ淵”といえば、池波正太郎『剣客商売』(超オススメ)の主人公・小兵衛の隠居所のある所。何だかニヤニヤしてしまった。時代も重なるしなぁ。小兵衛が出てきたら面白いのに。

 ・・・とりとめのない文章(笑)。

 やっぱ、書くことないなぁ。


 次は『水滸伝・十七 朱雀の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。
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2008年02月08日

水滸伝・十六 馳驟の章


水滸伝 16
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2008.01
ISBN :9784087462517


 登場人物一覧の梁山泊戦死者リストも随分増えた第16巻。

 限界まで戦い抜いたあの戦から1年半。偽りの講和工作で時を稼ぎながら、順調かつ急速に態勢を回復しつつある梁山泊。

 武松(ぶしょう)と李逵(りき)は、隣国・遼の反政府勢力・女真族から武器などを購入するために、蔡福・蔡慶と共に潜入する。

 梁山泊が運営する街・済州では、肉屋と食堂を営みながら物流監視・情報収集に当たる孫二娘(そんじじょう)のもとに、段亭と名乗る男が現われる。元は、人身売買や闇の妓楼・金貸しの経営者であったが、それを承知の上で、今の段亭は信用できると認めた孫二娘は、彼が済州内で肉を卸すことを許可、梁山泊の主要メンバーの一部とも引き合わせる。だが、この男はあの暗殺者Sの完璧なる変装。そして、孫二娘の亭主で済州を仕切るH、兵站の総責任者Sが命を落とす。

 だが、暗殺者Sも、あの日以来、彼を探し続けてきた梁山泊飛竜軍の劉唐に倒される。Sの臨終間際の2人の会話が良い。もし、敵同士でなかったなら・・・。

 暗殺なら梁山泊も負けてはいない。公孫勝は遂に青蓮寺のE(隠したことにならんなコレ)を仕留める。そして、ほぼ同時、少し離れた他の場所での、燕青<梁山泊>と洪清<青蓮寺>、体術の達人同士の息詰まる勝負。

 公孫勝とE、燕青と洪清の遣り取りもまた良し。

 敵・味方を超えた「漢」と「漢」の心の・・・。

 一方、先の大戦で疲弊したのは宋も同じ。地方軍を適切な人員削減と綱紀粛正で建て直し、担当の各軍管区の守りを徹底させる。軍費の捻出にも余念がない。

 禁軍(中央軍)の元帥・童貫は、梁山泊が自ら屠るに相応しい強さを得るまで待ち続けていたが、遂に腰を上げる。わずか5千の軍で移動中、6千の梁山泊―史進率いる調練中の遊撃隊―を捕捉。一方、史進も童貫軍を一足先に捕捉(と思っていた)。まさか自分達の存在に気付いてはいないと踏んだ史進は、千載一遇のチャンスとばかりに襲撃するも完敗。

 童貫軍は宋軍最強と言われながら、君側の軍として、梁山泊との戦いの最前線には全く出てこなかった。そのため実際の強さは未知数、ひょっとしたら意外に大したことないのでは・・・との憶測もあったが、梁山泊の誇る精鋭が一敗地にまみれたのである。軽いぶつかり合いとはいえ・・・。落ち込む史進。しかし、童貫もまた彼の軍の強さを認めていたのだが。

 Eの遺志により、青蓮寺の総帥には李富が就き、帝とEの約束に基づき、帝の耳目として暗躍してきた李師師(りしし)という女が李富のパートナーとして下げ渡される。絶世の娼妓でもあるが・・・「青蓮寺の使命を李富殿と果たします」「(青蓮寺に)考える者はいない。私は、李富殿の共に考えます」「私が加わることで、青蓮寺は以前よりも厚みを増します」「梁山泊は、宋にとって憂慮すべき存在です。しかし、考え方を変えれば、国が再生するいい機会でもあります」「梁山泊を、この世から消しましょう」・・・得体の知れない女である。

 巻末の解説は、なんと吉川晃司氏。下手な文芸評論家よりずっと宜しい。報われる苦労なんて苦労じゃないんだと。いいこと言うやん。

水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章
水滸伝・十一 天地の章
水滸伝・十二 炳乎の章
水滸伝・十三 白虎の章
水滸伝・十四 爪牙の章
水滸伝・十五 折戟の章

 次は、『隠蔽捜査』(今野敏・著/新潮文庫)。
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2008年01月18日

君を乗せる舟 髪結い伊三次捕物余話


君を乗せる舟
著者名:宇江佐真理(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.01
ISBN :9784167640088


・内容
伊三次の上司である定廻り同心の不破友之進の嫡男、龍之介もついに元服の年となった。同心見習い・不破龍之進として出仕し、朋輩たちと「八丁堀純情派」を結成、世を騒がせる「本所無頼派」の一掃に乗り出した。その最中に訪れた龍之進の淡い初恋の顛末を描いた表題作他全六篇を収録したシリーズ第六弾。

・目次
妖刀
小春日和
八丁堀純情派
おんころころ…
その道行き止まり
君を乗せる舟
(「BOOK」データベースより)

 お文とは子供が生まれて夫婦生活も軌道に乗って、不破との関係も安定して、シリーズ初期のような伊三次とお文、伊三次と不破の切なくなるような関係性・・・という魅力はすっかり薄れてしまった。

 しかし、龍之進の成長過程や、彼と伊三次、その弟子・九兵衛(いずれ不破と伊三次のようになるだろう)との関係など、シリーズものならではの新たな愉しみもある。

 「八丁堀純情派」「その道行き止まり」「君を乗せる舟」では、龍之進の淡い初恋とほろ苦い顛末が描かれる。彼に注がれる伊三次の眼差しが優しい。

 それにしても「八丁堀純情派」って・・・。まあ、作中人物達も、特別気に入ってるわけでもないようで何よりだ(笑)。

 残りの2編。「妖刀」はちょっと怪奇風味の怖い話。「おんころころ…」は、不思議な出来事を通じて、幼い我が子を想う親(伊三次)の気持ちが手際よく描かれる。

 様々なテイストを味わえる作品集。

 地味だけど、きっとずっと読んでいくだろう。


 次は『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ・著/文春文庫)。
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2007年12月27日

水滸伝・十五 折戟の章


水滸伝 15
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2007.12
ISBN :9784087462395


 20万の宋の大軍を相手に驚異的な粘りで応戦する梁山泊。量に質で対抗する戦いである。しかし、物量の差は如何ともしがたく、限界が近付く。すでに多くの将兵を失い、どの寨が崩れてもおかしくはない。そして、どの寨が崩れても、そこから梁山泊は潰滅する。

 ここで、元は関勝の軍師、今は梁山泊の実戦での軍師・宣賛が乾坤一滴の大勝負に出る。すなわち、梁山泊総攻撃のため、がら空きになっている北京大名府を占拠することで宋軍を引かせ、終戦に持ち込むのである。大量の軍費を消費し、戦争継続が苦しいのは、宋も同じなのだ。

 そして、終戦後は講和の余地もありと見せかけて、態勢回復への時間を稼ぐ。

 問題は、梁山泊には北京大名府へ派遣できる、まともな軍勢が無きに等しいこと。そこで、宣賛が考え出した秘策とは・・・。


 長く苦しく、激しい戦闘はこの巻でいったん終息する。しかし、梁山泊本隊のあの男(B)が戦場で鮮烈に散る(好きなキャラだった)。あの男(S)も、あの男(G)も、兵站を守る戦いの中でギリギリまで戦い抜いて、世を去ってしまう。そして、北京大名府攻城戦では、あの男(R)が。流花寨を巡る攻防では、あの男(S)とあの男(O)も。

 ああ、辛ッ。

 宋側でもBとの戦いの中、紙一重の差で、生の世界に踏みとどまる男がいる(生死が逆でもおかしくなかった)。S将軍も果敢に死ぬ。

 ああ、熱ッ。

水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章
水滸伝・十一 天地の章
水滸伝・十二 炳乎の章
水滸伝・十三 白虎の章
水滸伝・十四 爪牙の章

 次は、『銀河英雄伝説6飛翔篇』(田中芳樹・著/創元SF文庫)。
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2007年11月29日

銀座開化おもかげ草紙


銀座開化おもかげ草紙
著者名:松井今朝子(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.09
ISBN :9784101328713


 今、話題の直木賞作家・松井今朝子氏。何だかとっても面白そうな受賞作は文庫になるのを待つとして(セコい)、既刊文庫本の中から、初読み作品として何をセレクトするか・・・。

 ということで、「WEB本の雑誌」で書評員各氏の評価が高かった本作を購入。単行本時のタイトルは『銀座開化事件帖』。若干ネタバレ。

 激変の「御一新」からまだ間もない明治7年。かつては旗本=バリバリの幕臣の家の次男坊・久保田宗八郎、30歳。明治の御世に未だ馴染めず世捨て人のような自分とは対照的に、すっかり新しい時代に適応した兄の仲介により、易断が得意な大実業家・高島嘉右衛門の知己を得た彼は、高島と兄の依頼で銀座煉瓦街で暮らすことに。

 元は大垣藩の分家の若様で洋物を扱う九星堂の主人・戸田。耶蘇教(キリスト教)書店の十字屋を営む元与力の原。薩摩藩出身・警視庁二等巡査の市来。宗八郎は、自分よりもずっと若く、新時代を積極的に生きる個性的な隣人達に囲まれて、図らずも殺人などの事件解決に協力することになる。

 実は、宗八郎は維新後しばらく、ほとぼりが冷めるまで北海道に潜んでいた。何のほとぼりかというと、維新で勝利した薩摩藩の将校で石谷という男が、幕府側の彰義隊士の死体を切り刻んで面白おかしく蹂躙する様に行き会って、腕に覚えのある宗八郎が成敗したのだが(峰打ち)、なんとこの石谷が新政府で市政裁判所権判事に出世し、追われる立場になってしまったのだ(素性は割れてない)。で、東京に戻ってからも、内縁の妻とひっそり暮らしていたわけ。

 しかし、関わる事件の先々で石谷の影がチラつく。遂には義憤に駆られた宗八郎はかつての気概を取り戻し、新政府から死刑に処される覚悟で、石谷と対決する道を選ぶ。


 やっと、盛り上がってきたぁ〜!



 って、ここで終わりかい!

 ・・・みたいなラストを迎えるのだが、どうやら続きがあるらしいので、文庫になったらまた読もう。

 全体的に地味な作品だったが、宗八郎をなぜか敬慕する武骨な薩摩隼人・市来が彼の前で見せる態度、宗八郎と石谷(というか新政府)の間で苦慮する姿は誠実かつ滑稽で、実に宜しい。つい、吹き出すこと数度。あと、宗八郎よりほぼ一回り年下で、まさに新時代の令嬢として登場する女学生・綾との微妙な関係も、この先気になる。

 ま、とりあえず先行作品というか前日譚の『幕末あどれさん』を近々読もうっと。ちなみに「あどれさん」とは、フランス語のadolescente。「青年期」という意味らしい。

 高島、戸田、原は歴史上の実在人物だそうだ。高島は“アレ”を作った高島で(もう上に答あるけど)、戸田と原は十字屋をアノ十字屋にした人らしい。へぇ〜。


 次は、『The MANZAI 4』(あさのあつこ・著/ピュアフル文庫)。
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2007年11月24日

水滸伝・十四 爪牙の章


水滸伝 14
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2007.11
ISBN :9784087462296


「いい人生だったよ。ほんとうに。戦友と呼べる人間が何人もできた」

 宋は梁山泊の完全殲滅を決意。梁山泊の全ての拠点に、禁軍(中央軍)・地方軍・水軍合わせて20万もの兵力を投入する。梁山泊も各拠点の全軍が総力を挙げて迎撃するが、どの拠点でも数百〜数千で数万の宋軍と相対することに。

 いかに梁山泊に優れた将軍・将校・軍師、精強な歩兵、迅速果敢な騎馬隊が揃っているとはいえ、圧倒的な物量差の前には、真正面からの戦はできない。大軍の弱点は兵站の確保にあるが、今回の宋は約1年をかけて周到に準備し、巨大な兵力で守りながら、兵糧を運搬するので、梁山泊も相手の兵站を切ることができない。とにかく、それでも20万の兵を長く動かせば、宋という国が傾くほどの軍費を浪費することになるから、梁山泊としては勝てないまでも、智謀の限りを尽くして、相手に時間をかけさせるしか無いわけである。

 十四巻では、まだ総力戦・乱戦・激戦前の小競り合いといか中競り合い(?)だが、既に梁山泊側は相当苦しい。秦明を総隊長とする二竜山・桃花山・清風山では、北京大名軍の董万による防御を一枚一枚剥がしていくような慎重かつ粘り強い攻撃により、清風山が奪取されかねない事態に。三山のトライアングルの一角を奪われたら、残りの二山への攻撃も容易になってしまう。秦明の軍師・解珍と清風山の戦闘部隊長・燕順は、あえて清風山を捨てることで他の二山を守るという戦術を取るのだが・・・。

 十九巻もあると思っていた北方水滸伝もあと5巻を残すのみ。十五巻はきっと凄まじい戦いになるのだろう。読み続けるのが辛い展開になっていくんだろうなぁ。だって、原典でも最後は・・・(北方水滸伝は原典を大幅に換骨奪胎してるけど)。

 でも、待ち遠しい。

水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章
水滸伝・十一 天地の章
水滸伝・十二 炳乎の章
水滸伝・十三 白虎の章


 次は『銀座開花おもかげ草紙』(松井今朝子・著/新潮文庫)。
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2007年11月22日

居眠り磐音 江戸双紙 龍天ノ門/雨降ノ山


居眠り磐音 江戸双紙 龍天ノ門
著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2003.05
ISBN :9784575661460


 またまた2冊連続で読んでしまった。ついつい、刊行済みの23巻まで一気に行きたくなるな。困ったもんだ。著者は、このシリーズ50巻まで書くつもりらしいけど。ゆっくり読もう、ゆっくり。

『龍天ノ門』
かつての許婚・奈緒は吉原随一の花魁・白鶴となる。1000両の値が付いては、磐音のごとき素浪人に身請けは不可能。懇意の両替商・今津屋は金子(きんす)を用立ててくれようとするが、返す当てのない借金で奈緒を取り戻しても幸せにはなれないと考える磐音は断る。私事で今津屋の善意に甘えることはできないと。そして、一生妻を娶らず、吉原の外から奈緒の息災を祈り見守りながら生きていこうと決意する。一方で、磐音はかつて自分が仕えていた豊後関前藩とその国家老となった父のため、逼迫した藩財政を立て直すため、今津屋の協力を仰ぎつつ、国元の物産の江戸での販路を開拓しようと奔走する。

『雨降(あふり)ノ山』
今津屋のお内儀・お艶の体調が思わしくなく、しばらく実家に戻って療養することに。今津屋主人で夫の吉右衛門、奥向きを取り仕切る女中・おこん(磐音にホの字・・・死語か)、小僧の宮松、そしてこのために職場である鰻の宮戸川から休みを貰った磐音が付き添う。しかし、お艶の本当の病状は・・・。


 正月早々、初湯に誘われた磐音と幸吉の会話。

幸吉「浪人さん、お捻り(おひねり)を用意したかい」
磐音「お捻りとはなにかな」
幸吉「まだ深川暮らしが半端だな。(中略)十二文を半紙に包んで番台に積み上げるのが習わしだ」

幸吉「浪人さん、今年の願いはなんだい」
磐音「息災に過ごせればそれでよい」
幸吉「息災ってのは、元気に暮らすということかい。夢がねえな」
磐音「幸吉どのの願いはなんだな」

 幸吉はまだ少年である(笑)。だが、江戸暮らしの先輩であり、先生でもあるから、磐音の接し方はどこか低姿勢。こういうところに気さくで偉ぶらない彼の性質が出ている。長屋の女房連には「子供に江戸暮らしを教わっているようじゃ。今年も前途多難だねぇ」などと言われるが、それもまた愛嬌なのである。

 剣の腕前は超一流、人品は卑しからず。ついでに男前。そんな御武家が訳あって、貧乏長屋でその日暮らしの浪人暮らしで、用心棒稼業に精を出す・・・のは「藤沢周平」風。

 江戸庶民の日々の暮らしが活写される中、主人公が町民や町方、他の貧乏侍に慕われながら、メインのストーリーとは平行して大小様々な事件を解決していく・・・のは「池波正太郎」風。盗賊稼業を表す池波正太郎氏の造語“おつとめ”という言葉も出てくるし。

 「パクリだ!」

 ・・・と言いたいのではなく、偉大な先達が築いた良き伝統を受け継いでいると言いたいのだ。池波正太郎氏「剣客商売」、藤沢周平氏「用心棒日月抄」「よろずや平四郎活人剣」が好きななら、ぜひこのシリーズも!その逆もまたしかり。

 なにせ、剣客モノでは、諸先輩の作品と比較しても、主人公の造型はピカイチだと思うな、個人的には。『雨降ノ山』で、用心棒稼業で睡眠不足に陥り、鰻の宮戸川の仕事を寝坊してしまったりするのは人間味あるし、お艶を思って、磐音が旅先で取るある行動には素直に感動する。こんなイイ男、なかなかおらんで。

 んで、いろんな強敵との剣戟シーンも、(磐音が勝つと分かっていても)なかなか良い(多少、パターン化されてる部分もあるけど)。大体が悪逆非道な相手が多いが、『雨降ノ山』では、下士の身分ながら強すぎて、家老の息子(これも相当の剣客)を試合で殺してしまい(ただ真面目に闘っただけ)、藩にいられなくなった男・釜崎の挑戦を受ける。この場合は、磐音の強さを認め、尊敬するからこそ尋常な勝負を挑まれるわけだ。この釜崎、いつかまた出てきそうだな。

 とりとめない話になってしまった。

居眠り磐音 江戸双紙 陽炎ノ辻/寒雷ノ坂
居眠り磐音 江戸双紙 花芒ノ海/雪華ノ里

「居眠り磐音 江戸双紙」公式サイト
http://inemuriiwane.jp/


 次は『水滸伝・十四 爪牙の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。
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2007年10月23日

水滸伝・十三 白虎の章


水滸伝 13
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2007.10
ISBN :9784087462203


 林冲、秦明、花栄、呼延灼、関勝などなど、多くの優秀な武将が梁山泊に流れ込んだが、宋でも若い優秀な将軍が台頭し始める。

 梁山泊が宋の首都・開封府の喉元に築き上げた流花寨には、禁軍(中央軍=宋の最精鋭軍)元帥の秘蔵っ子・趙安の率いる3万が、北京大名府軍2万と共に押し寄せ、呼延灼、関勝、穆弘と対峙する。

 梁山泊の軍師・呉用は流花寨の防衛に執心するが、宋の真の狙いは梁山泊の北の要地・双頭山の殲滅にあった。聞煥章が抜擢した北京大名府の新将軍・董万の指揮下にある2万が、南部の陽動に3万もの軍を使って梁山泊の目を逸らせつつ、密やかかつ一気に双頭山に迫り、壊滅的な打撃を与える。

 この激戦の中、雄々しく命を散らす者が・・・。

 この巻では、水軍同志の戦いも始まり、彼我の物量差を埋めるため、孔明と童猛は宋の造船所に決死の襲撃を敢行。ここでも、また壮絶な死が。。。

 そして、致死軍は青蓮寺の中心人物の暗殺の可能性を探る。

 頭脳戦、野戦、水上戦、暗殺。あらゆる形の闘い、まさに総力戦の様相を呈しつつある宋と梁山泊。目が離せないぞぉ〜!!

水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章
水滸伝・十一 天地の章
水滸伝・十二 炳乎の章


 次は、『最後の願い』(光原百合・著/光文社文庫)。
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2007年10月21日

やさしい男 慶次郎縁側日記


やさしい男
著者名:北原亞以子(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.09
ISBN :9784101414218


 連作短篇時代小説『慶次郎縁側日記』シリーズの第7弾。

 主人公は、かつては「仏の慶次郎」と謳われた血も涙もある腕利き同心、今は家督を義理の息子・晃之助に譲った気楽な隠居で商家の寮番、森口慶次郎。

 とはいえ、慶次郎メインの話ばかりではなく、彼は背景に退いて周囲の人物がメインの話もあるし、どころか直接的には登場しないのに、慶次郎の存在感を感じさせる話もある。

 上手いなぁ・・・。

 事件や捕物よりも「人」の哀しさや優しさを描き、明確な起承転結よりも日常の流れを切り取ったかのようにすぅっと話が始まり、ストーリーや心情や結末を言葉で説明し尽くしてしまうような野暮はせずに終わる。それでいて、書かれなかったところに何があるのか確かに伝わるし、「はい、オシマイ」という閉じた終わり方ではなく、その後の展開に自然と思いを馳せてしまう開かれた終わり方に、何とも言えぬ余韻がある。・・・心楽しい結末ばかりではないけれど。

 本当に上手い・・・。時代小説が好きなら、外せない人だと思う。


 次は、『水滸伝・十三 白虎の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。
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2007年09月25日

水滸伝・十二 炳乎の章


水滸伝 12
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2007.09
ISBN :9784087462081


 日本でもわりに最近まで塩の専売制が残っていたように、古来、塩というものは国家の財源確保の重要なツールであり、それゆえ国家権力の象徴でもあった。

 ・・・らしい(知ったかぶり)。

 だからこそ、梁山泊が蜂起の準備段階から力を入れて張り巡らせた「闇塩の道」は、宋という国の権力・権威を脅かすものであり、梁山泊を宋に対抗する「国」として運営していくために不可欠なのである。

 その全貌を知るのは、頭領の晁蓋でも宋江でもなく、ただひとり北京大名府の商人・盧俊義(ろしゅんぎ)のみ。全体像を知る者が多いほど、情報漏洩の可能性も高まるからだ。

 青蓮寺は徹底した調査で、闇塩の頭目の可能性のある北京大名府の人間を盧俊義を含む18名まで絞り込むが、そこから先へは進めない。しかし、ここで思い切って、その18名全員を捕縛し、拷問にかけるという荒業に打って出る。

 そして、拷問に対する反応などから、遂に盧俊義ひとりに的を絞った。過酷な拷問に身も心も毀れかける盧俊義・・・。闇塩の道はとうとう暴かれるのか。

 一方、盧俊義捕縛の報を受けた梁山泊。

 盧俊義の従者・燕青(えんせい)は大急ぎで北京大名府に戻り、飛竜軍の王英らと共に捨て身の奪還作戦を敢行。そして、梁山泊は盧俊義の救出と闇塩に関わる全ての痕跡を消し去るべく、北京大名府占拠のため、ほぼ全軍で出動する。

 しかし、北京大名府奪回の命を受けた将軍・関勝率いる3000の軍が、防備の手薄となった梁山泊に密やかに侵攻し・・・。

 ・・・というのがメイン・ストーリー。

 関勝は、秦明や花栄、呼延灼と同様、地方軍の優秀な将軍で、これまた登場人物一覧表では初めから梁山泊側になっているから、いつどんなきっかけで官軍を離れて梁山泊に合流するか・・・と思っていたら、なかなか味のある展開。

 さて、前巻で梁山泊に大打撃を与えた史文恭(しぶんきょう)。どうやら、今度は金貸し&闇の妓楼の経営者として、梁山泊が宋から奪って運営している街に紛れ込むつもりらしい。理想や志に燃える梁山泊の兵を「欲望」の力で堕落させること、そして中心人物をまたも暗殺することを考えているのだ。そのイヤラシイ怖さ・・・。

 北方水滸伝の楽しさは、敵味方問わず、数多くの登場人物ひとりひとりの心や人生模様にキチンとスポットライトが当たること。次の巻は誰の物語かな?

水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章
水滸伝・十一 天地の章


 次は、豊川悦司主演で映画化の『犯人に告ぐ(上・下)』(雫井脩介・著/双葉文庫)。
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2007年09月10日

居眠り磐音 江戸双紙 花芒ノ海/雪華ノ里


花芒ノ海
著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2002.10
ISBN :9784575661347


 また2冊続けて読んでしまった・・・。

 1冊読んだら、購入済みの『カラマーゾフの兄弟』の4巻&5巻に突入するつもりが、たまたま昼休みに『花芒ノ海』をほぼ読み終わって、帰りの電車で読む本が無くなったのと、もうしばらくこの世界に浸りたい気持ちで、会社帰りに『雪華ノ里』を買ってしまった。

 ドラマ放映をきっかけに読み出して、ハマる山本耕史(磐音役)ファンの女性も増えているそうだ。

 第1巻で磐音と親友たち、そして許婚の奈緒を不幸のどん底に追い遣った事件は、やはり偶然ではなく、磐音たちの藩政改革を潰すために国家老・宍戸一派が仕組んだことだった。で、第3巻『花芒の海』では、江戸の知己たちの手を借りて宍戸一派の不正と陰謀を暴き、改革派の藩士たちと共に国許に戻って、宍戸派を権力の座から除くまでの磐音の活躍を描く。

 第4巻『雪華ノ里』では、磐音が国許に戻る前に、病に斃れた父親の治療代を工面するために女衒に身を売り、長崎の遊郭に連れた行かれたという奈緒を追いかける。しかし、長崎から小倉、赤間関(下関)、京都、金沢と『転売』されていく奈緒とは、いつも一足違いで会えない(このあたり出来すぎと思いつつも磐音が不憫に思えてくる)。

 途中様々な事件に巻き込まれつつ、奈緒の足跡を追って江戸へ舞い戻る磐音。しかし、転売される度に奈緒の「値段」は吊り上り、ついに江戸の吉原では一千両。もとより藩に戻るつもりのない貧乏浪人の磐音には、身請けできるような金額ではない。

「奈緒どのがこの吉原で生き抜こうというのなら、(中略)里の外からその身を案じて見守ります。ですが、奈緒どのが吉原からいつの日か抜け出たいと申すなら、それがし、なんとしてもその金子を作りたいと思うております。(後略)」

 あらすじだけ取り出すと重いが、そこはそれ、磐音のキャラのおかげでわりに軽妙に読める。小藩とはいえ元は中老職の嫡男である磐音の育ちの良さ(?)からくる丁寧な物腰 ― 長屋暮らしの“師匠”幸吉少年、大家の金兵衛、鰻屋の宮戸川(ここが貴重な定職の場)の親方など普通の町民はもちろん、博徒であれ、敵であれ、どんな相手に対しても ― が、時に爽やかで、時に巧まざるユーモアを醸し出すから。

 飯を食っているときは、誰の話も耳に入らず、何も見ず、ただ食べる幸せだけに集中しているのも笑える。今回はこれに関して、『花芒ノ海』で思わず吹き出す絶妙のシーンがあった。電車の中なので、傍から見ると気持ち悪かったろう・・・。

居眠り磐音 江戸双紙 陽炎ノ辻/寒雷ノ坂


 で、昨日から『カラマーゾフの兄弟4』(ドストエフスキー・著/光文社古典文庫)を読み始めたところ。
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2007年08月29日

水滸伝・十一 天地の章


水滸伝 11
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2007.08
ISBN :9784087461978


 相変わらず続く宋と梁山泊の虚々実々の激しい争闘。

 これまでどちらかと言えば、梁山泊の勢いと戦略に翻弄され気味だった宋だが、裏を牛耳る青蓮寺だけでなく、その青蓮寺の努力によって、表の力=軍の梁山泊への対応も急速に変わりつつある。

 梁山泊軍も総勢2万数千人に膨らんだとはいえ、戦で一方的に勝ち切るということが難しくなってきた。腐ってはいても、まだまだ何十万という軍を抱える強大な宋という国の底力。

 そんな中、兵力3万を越えたら、一気呵成の全面攻勢で叛乱の火を全国に拡げるべきだと主張する晁蓋と兵力10万に達するまで慎重に事を進めるべきだと考える宋江の対立が深刻化していく。

 常に戦の最前線に立つ晁蓋と梁山泊中枢でどっしり構える宋江。タイプの異なる2人の指導者のバランスでここまで来た梁山泊に不協和音が生じてしまうのか。

 そんな心配をしつつも、「今回は久々に誰も死なん巻やなぁ」と思いながら読んでいたら、最後の最後で。

 ええええええええええ!

 てっきり、○○○は△△の器=人間的魅力の前に、仲間になるのでは・・・と思ってたのに。

 ええええええええええ!

 超弩級の衝撃・・・。

水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章

 次は『NO.6 #3』(あさのあつこ・著/講談社文庫)。
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2007年08月07日

居眠り磐音 江戸双紙 陽炎ノ辻/寒雷ノ坂


陽炎ノ辻
著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2002.04
ISBN :9784575661262


 佐伯泰英氏は今最も売れている時代小説作家。といっても時代小説を書き始めたのは99年からで、それ以降“8年半で10シリーズ100冊、合計1500万部間近!”(『佐伯泰英!』〔宝島社〕)、しかもどのシリーズもまだ完結しておらず、並行して執筆しているというから恐れ入る。

 中でもこの『居眠り磐音 江戸双紙』シリーズは一番人気らしく、現在22巻で累計470万部。第1巻の『陽炎ノ辻』はNHKでドラマ化されて、現在放映中である(ドラマでは『陽炎の辻』)。

 しかし、あまりに著作が多い。

 粗製乱造じゃないの?

 どれどれ、どの程度の作品か読んでやろう・・・などとちょっと意地悪な思いを抱えつつ、第1巻を読み始めた。

 字がデカイぞ、双葉文庫。創元推理文庫の1.5倍はあるな。

 サクサク読める。

 第1巻読了後、我慢できず第2巻『寒雷ノ坂』を購入。これまたあっという間に読み終わった。

 ・・・オモロイがな。


 坂崎磐音は江戸藩邸での3年勤務を終えて、幼馴染の小林琴平、河出慎之輔と3人で豊後関前藩に帰着する。磐音は藩の中老の嫡男であり、琴平・慎之輔らと共に若い力で藩政改革に取り組もうと意欲に燃えていた。

 ところが、妻・舞(琴平の妹)に不義の疑いがあるとの流言に惑わされた慎之輔が舞を手打ちに。それに怒った琴平が慎之輔や流言を撒き散らしたその叔父らを斬殺。藩は琴平の上意討ちを決定、磐音が琴平を斬る羽目に。

 こうして兄弟以上の仲だった親友であり、藩政改革を志す同志であった2人を一度に失った磐音。しかも、琴平は許婚・奈緒の兄である。磐音は藩政改革も奈緒も諦めて脱藩する。

 浪人となり、江戸に舞い戻った磐音は貧乏長屋で食うや食わずの極貧生活、人足仕事などで糊口を凌ぐ。剣の腕前は一流、ふとした縁で両替商・今津屋の用心棒を引き受けるが、幕府の屋台骨を揺るがす陰謀に巻き込まれ・・・。

 で、その陰謀を暴き、解決する磐音の活躍を描くのが『陽炎ノ辻』。


 心に傷を抱えつつも、のほほんと穏やかに、庶民の中で飾り気なく生きる(なにせ普段の仕事は「鰻割き」)磐音のキャラが良い。「居眠り」の異名は、日頃の春風駘蕩ぶりだけでなく、春の陽だまりで居眠りする猫のようにつかみどころがなく、相手のどんな豪剣も真綿でくるむように受け流す彼独特の剣技に由来するもの。

 第2巻でも磐音は様々な人間に雇われ(ヤクザ同士の争いでその片方の用心棒になってしまったり)活躍するわけで、しばらくはこのまま延々とそういう話が続くのかな・・・と思っていたら、琴平・慎之輔・磐音の斬り合いは偶発ではなく、藩政改革に抵抗する守旧派勢力の陰謀らしいことが判明。磐音と関前藩守旧派の闘いも始まるようである。

 人物も剣技も優れた主人公が藩の揉め事で脱藩→江戸で用心棒をしながら貧乏暮らし→藩の陰謀との闘い・・・というパターンは藤沢周平氏の『用心棒日月抄』シリーズと同じ。

 ま、藤沢氏や池波正太郎氏よりも優れているとは思えないが、十二分に楽しめる。

 今津屋の奥女中で長屋の大家の娘・おこんと、奈緒、磐音はこの先三角関係になるのではないかな。そこも気になる(笑)。


 3巻も読みたいが、そのままズルズル22巻まで行ってしまいそうなので、いったん置いて『雪沼とその周辺』(堀江敏幸・著/新潮文庫)を読む。
posted by ふくちゃん at 01:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・時代小説

2007年07月25日

水滸伝・十 濁流の章


水滸伝 10
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2007.07
ISBN :9784087461855


 長い物語も折り返し地点。これまで1ページに踏みとどまっていた巻頭の【前巻までの梗概】もついに2ページ体制に(笑)。

 今回のメイン・ストーリーは、呼延灼(こえんしゃく)と晁蓋の激突。

 呼延灼は宋の敵国・遼との国境を守備する代州軍の将軍で、既に梁山泊入りした楊志・秦明に匹敵する地方軍の雄である。

 と同時に、腐敗した中央(帝・政府・軍)への反発や疑問を内心に抱えながら、軍人として命令に従うことを優先している点も、かつての楊志や秦明と共通している。

 そんな呼延灼に中央軍(禁軍)の童貫元帥から、梁山泊本隊と戦うよう命令が下る。呼延灼は「一度だけ勝つということで良いなら、必ず勝てる」と言い、引き受ける。

 向かい合う、呼延灼・代州軍1万と晁蓋・梁山泊軍8千。

 何日もの間、開戦のタイミングを見計らいながら陣立てを動かす2人。その対峙の中で、お互いを認め合い、それゆえに本気で戦うことになる。

 まぁ、第1巻の登場人物表からずっと梁山泊側に名前のある呼延灼との戦いだから、安心して読んでいられる、ひょっとしたら盛り上がらない戦いになるかも・・・と思っていたら・・・。

 全然、そんなことは無かった。呼延灼の独創的かつ果敢な攻撃の前に、梁山泊軍は官軍相手に初めての大敗を喫することになるのだ。

 ・・・書いちゃった。

 でも、事前にそれを知っていても面白さは損なわれないはず。勝ち負けという結果よりも、戦いの最中の描写そのものがキモだから。

 で、なんで勝った筈の呼延灼が梁山泊に加わることになるのか?それは読んでのお愉しみということで。

 もちろん、この戦でも梁山泊の何人かが死ぬ。登場するときは皆それなりに書き込んでもらっても、死ぬときはあっさり死ぬキャラと死に際もがっつり書いてもらえるキャラと・・・落差が激しい(笑)。こんだけ登場人物がいると仕方がないけど。

 ちなみに、今回は本筋とは関係ないところで、印象に残る文章があった。

“風流を好み、さまざまな石を全国から集め、それで国力が疲弊するほどだった。戦になど、もともと関心を持ってはいないのだ。それが