2008年09月07日

銀河英雄伝説10落日篇


銀河英雄伝説 10 落日篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2008.08
ISBN :9784488725105


 “君主の堕落は、不快な情報を遮断して悦楽にふけるところからはじまることは、歴史が教えることだ。「そのような話、予は聞きとうない」とは、亡国の君主がかならず口にすることである。”

 銀英伝本編10巻、これにて完結。あとは外伝5巻(だったっけ?)の刊行を待つのみ。


・内容
腹心の部下ヒルダを皇妃に迎え、世継ぎの誕生を待つばかりとなったラインハルト。旧同盟領に潜む地球教残党のテロ、元自治領主の暗躍、度重なる病の兆候など懸念は尽きないが、数々の苦難を経て、新王朝はようやく安泰を迎えたかに見えた。一方、“魔術師ヤン”の後継者ユリアンは、共和政府自らが仕掛ける最初にして最後の戦いを決断する。銀河英雄叙事詩の正伝、堂々の完結。
(「BOOK」データベースより)


 しかし、主人公2人(ヤン・ウェンリーとラインハルト・ローエングラム)が片や途中で、片や最後に、こんな風になるなんて・・・。いや、それだけじゃない。キルヒアイスやロイエンタールといった人気キャラも。

 北方水滸伝に比べれば大人しいとはいえ、ある意味、それ以上に大胆だ。

 って、訳の分からない話で恐縮至極。

 この第10巻もそれなりに楽しめるけど、やっぱりヤンとラインハルトの一大決戦をもう一度見たかった。どこかエンジンの回転数が落ちてくるというか、マグマが冷え固まってくるというか、ややテンションが下がってくる(あくまでピーク時に比べてということだが)のが寂しい。

 アニメのDVDセットにも食指が動きそうになるのだが、いかんせん高いので・・・。

 ところで余談だが、北方氏。三国志、水滸伝、続水滸ときて、『史記』に挑戦しているとは!文庫になるのはかなり先だろうけど楽しみ。

銀河英雄伝説1黎明篇
銀河英雄伝説2野望篇
銀河英雄伝説3雌伏篇
銀河英雄伝説4策謀篇
銀河英雄伝説5風雲篇
銀河英雄伝説6飛翔篇
銀河英雄伝説7怒涛篇
銀河英雄伝説8乱離篇
銀河英雄伝説9回天篇


 次は『信長の棺(上・下)』(加藤廣・著/文春文庫)。
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2008年08月23日

NO.6 #4


NO.6 #4
著者名:あさのあつこ(著)
出版社:講談社
出版年:2008.08
ISBN :9784062761208


 #3が出てかなり時間が経ってるよなぁ・・・と思って、自分の記事を検索してみたら、昨年の9月1日に#3のレビューを書いていた。

 ほぼ1年振りか・・・。

 よっぽど加筆・修正に時間がかかったのかな。


・内容
どうやったら矯正施設の内部に入れるのか。中はどうなっているのか。どんな手を使っても探りだし、侵入しなくてはならない。それが沙布を救う唯一の方法なのだから。紫苑のまっすぐな熱情にネズミ、イヌカシ、力河が動かされる。そして軍が無抵抗な人間を攻撃し始めた。「人狩り」だ。いったい何のために…。
(「BOOK」データベースより)


 紫苑とネズミの関係が友情というより、ボーイズ・ラブっぽくて、なんか落ち着かない(笑)。


 さて、いよいよ矯正施設へ入り込んで、なんやかんやあるのかと思いきや。それはこの巻の終盤でようやく。

 物語の進行は丁寧だが、#3から待たされた時間が長いせいか、展開が遅いような気がしないでもない。

 聖都市NO.6の市長とそのパートナーらしき研究者が何を企んでいるのかは相変わらず謎。

 さらにネズミの身体に現われた変調と彼の頭をよぎるイメージは何の記憶なのか?

 また謎だよ。

 単行本は次の#5までしか出てないし(文庫本の#1が出た時点でも単行本は#5まで・・・苦労してんだね)、この先を読めるのはまたかなり先になりそうだな。

NO.6 #1
NO.6 #2
NO.6 #3


 次は、『落下する緑』(田中啓文・著/創元推理文庫)。
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2008年08月10日

消滅の光輪(上・下)


消滅の光輪 上
著者名:眉村卓(著)
出版社:東京創元社
出版年:2008.07
ISBN :9784488729028


 傑作SF「司政官 全短編」の続編。

 前作は、宇宙の他の星系・惑星に進出した地球人類が、独自の生態・文化・文明を持つ先住生命体と融合・協調しつつ、自らの植民と先住生命体の教導をスムーズに行うために送り込んだ“司政官”と“ロボット官僚群”の活躍を、司政制度の草創期から確立期、さらには衰退期まで様々な時代・惑星を舞台に描いた連作短編。

 で、今作は、司政制度の形骸化・崩壊がさらに進み、司政官の権威・権力も相対的に低下した時代の、ある植民惑星を舞台にした1000ページの長編。


・内容(上巻)
植民星ラクザーンでは、人類と瓜二つの穏和な先住民と、地球人入植者が平和裡に共存していた。だがその太陽が遠からず新星化する。惑星のすべての住民を、別の星に退避させよ ― 。空前ともいえるこの任務に、新任司政官マセ・PPKA4・ユキオは、ロボット官僚を率いてとりかかかるが・・・。《司政官》シリーズの最高作にして眉村本格SFの最高峰。泉鏡花文学賞、星雲賞受賞作。

・内容(下巻)
司政官マセは太陽の新星化を公表し、緊急指揮権を確立する。だが退避計画の遂行は困難をきわめた。移住先を決定する住民投票、脱出のための宇宙船運行の手配・・・。しかも計画が進むにつれ住民たちの反撥も高まってゆき、ついには大規模な暴動となってマセを襲う ― 。さらに奇妙にも先住者たちは、誰ひとりとして退避勧告に従おうとしない。空前の計画は完遂されるのか?


 司政官マセは、まず太陽の新星化=惑星ラクザーンの消滅を公表してから、退避に必要な全ての計画を実行するという方法は取らない。新星化を発表した時点でパニックが起こり、金のある連中から勝手に逃げ出し、そうでない人は取り残されるからである。

 そこで、ギリギリまで新星化の事実は伏せたまま、退避費用捻出のため、住民に重税を課する(地球連邦にもその費用を拠出する余裕はない)。

 また、退避先での新生活に必要な資金を配賦するため(という理由も当然伏せたまま)、他惑星で高く売れるラクザーンの海藻を、採取業者を束ねて大量採取する(これまで海藻の取扱を牛耳ってきた連邦直轄企業との対立を覚悟で)。

 この他にも熟慮を重ね、目的を秘し、あえて周囲の反発・非難も織り込んだ上で、次々と細かく、手練手管を尽くし、ある意味非民主的に(民主的に事を進める時間などないのだ)手を打つ。すなわち、太陽の新星化と惑星の消滅を明らかにした時点では、退避計画は完璧に準備され、あとはその通りに進めば良いという状況を作り出すことでパニックを防ぎ、全員を平等に退避させようと。

 とにかく緻密に作りこまれた物語。

 地味と言っても良い作品なのだが、マセ(とロボット官僚)の仕事ぶり、次々と立ちはだかる問題と障害、様々な謎・・・。果たしてマセの計画は実現されるのか?人々の頂点に立つ為政者の矜持と重圧と孤独。読み応えあったわぁ〜。


 次は『闇の子供たち』(梁石日・著/幻冬舎文庫)。
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2008年07月26日

マイナス・ゼロ


マイナス・ゼロ 改訂新版
著者名:広瀬正(著)
出版社:集英社
出版年:2008.07
ISBN :9784087463248


 この作品は、日本のタイムトラベルSFの金字塔ということで、名前ぐらいは昔から知っていたのだが・・・。

 今年、本屋大賞5周年特別企画「この文庫を復刊せよ!」で第1位となり、再発。こうして手に取って読めるようになった。“広瀬正・小説全集”として、この後他の作品も順次復刊される。いい企画じゃないか、本屋大賞。5周年と言わず毎年やってほしい。


・内容
1945年の東京。空襲のさなか、浜田少年は息絶えようとする隣人の「先生」から奇妙な頼まれごとをする。18年後の今日、ここに来てほしい、というのだ。そして約束の日、約束の場所で彼が目にした不思議な機械 ― それは「先生」が密かに開発したタイムマシンだった。時を超え「昭和」の東京を旅する浜田が見たものは?
(文庫本裏表紙紹介文より)


 ちなみに解説は星新一氏。

 実に良く出来てる。そうか、Aさんは実はBさんで、Cさんは実はDさんで、コレはアレと繋がっていて・・・と物語全体のループが見えてくるところは快感(疑問の余地はなしとしないが、タイムトラベルものに疑問はつきもの)。

 あまりに良く考えられていて、情けないことに、こちらの脳ミソが付いていけないところも(笑)。全部の出来事と登場人物を年表や相関関係図にして整理しないと。

 いや、しないけど。

 残念なのは「先生」が序盤にしか登場しないこと。何万年もの未来から来た人ではないか、という推測が物語中で為されるが、その正体やなぜ物語内現在にやってきたのか、知りたかった。

 まあ、そんなところまで書いたら、長くなり過ぎるし、散漫になってしまうだろうけど。長生きして、スピンオフを書いてほしかったな。


 次は、『レイコちゃんと蒲鉾工場』(北野勇作・著/光文社文庫)。
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2008年07月13日

老ヴォールの惑星


老ヴォールの惑星
著者名:小川一水(著)
出版社:早川書房
出版年:2005.08
ISBN :9784150308094


 今日は遂にあの本棚がやって来た。


・内容
偵察機の墜落により、おれは惑星パラーザの海に着水した。だが、救援要請は徒労に終わる。陸地を持たず、夜が訪れない表面積8億平方キロの海原で、自らの位置を特定する術はなかったのだ―通信機の対話だけを頼りに、無人の海を生き抜いた男の生涯「漂った男」、ホット・ジュピターに暮らす特異な知性体の生態を描き、SFマガジン読者賞を受賞した表題作ほか、環境と主体の相克を描破した4篇を収録。著者初の作品集。
(「BOOK」データベースより)


 いやぁ、これはいい作品集だ。

「ギャルナフカの迷宮」
平穏な顔した圧制国家から、反社会的な政治犯の烙印を押された者に与えられる無期限の「投宮刑」。治安部門の高官ギャルナフカ博士が作り出した脱出不可能な広大な地下迷宮の牢獄に放り込まれ、与えられるのは自分専用の「餌場」と「水場」が載った簡単な地図だけ。「餌場」と「水場」は互いに遠く離れ、地図があっても探し出すのは容易ではなく、探し出しても安心できない。生き延びるためには自分の「餌場」と「水場」を守り、他の囚人の「餌場」と「水場」を奪わなければならないのだ。さらに、人間を食う人間=「生肉喰い」共がいる。絶望と疑心暗鬼に満ちた世界で、テーオは囚人全員が平和共存する道を模索し始める。

「老ヴォールの惑星」
特異な惑星に奇跡的に生まれ育った特異な知的生命体たち。この星に他の生命はあるゆる意味で存在せず、彼らは同じ大きさの個体群で過ごし、時に他の大きさの個体群を捕食し、また別の個体群に捕食される。一方で、激しい嵐の季節には、全ての個体群が飛ばされないように協力して陣形を組む。そして、光学的コミュニケーションや捕食により、互いの経験や知識を共有し、種全体としてはより賢くなっていくのだ。しかし、巨大な天体との衝突により、この星は壊滅することが判明。脱出したり、他の惑星で住むことができない彼らは、自分たちの高度な知識を譲り渡したいと、周囲の星々に光通信を送り、他の惑星の知的生命体を探し始める。

「幸せになる箱庭」
ある日、人類を遥かに凌駕する高度な文明に裏打ちされた自動機械による木星大気の大規模収集が発覚する。300年以上前から続けられていたらしいその行為の問題点は、大気を超光速で運ぶための発射台が自動機械たちにより次々と建造され、そのために木星の質量が削り取られていることであった。このままでは、木星の軌道が変化し、他の惑星にも影響を及ぼす。320年後には地球も、可住日照帯を逸脱してしまうのだ。地球人類は、この自動機械を作った異星の生命体と直接コンタクトを取ることを決め、交渉団を送り出す。そこで遭遇したものは・・・。

「漂った男」
上の「・内容」を参照ということで(手抜き)。

 SFは難解とか暗いとか怖いとかいまだに思い込んでいる人たちのイメージを裏切る、明るく楽しい前向きな作品群。まぁ、「幸せになる箱庭」は現実と全く区別の付かない高度なヴァーチャル・リアリティを扱っていて、小難しく言えば“人間の実存”とか“生命の意味”とか、重たくなるテーマを孕んでいるが・・・。でも面白い。

 ファンタジーや寓話、星新一が好きな人なら、きっと楽しめると思う。


 次は・・・これから近所の書店で見繕ってくる。

 それはそうと、本棚に棚を入れて、本を入れないと!
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2008年07月07日

銀河英雄伝説9回天篇


銀河英雄伝説 9 回天篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2008.06
ISBN :9784488725099


 ここまで来ると、ネタバレなし紹介するの難しいなぁ。


・内容
前指導者の遺志を継ぎ、共和政府を樹立した不正規隊の面々。司令官職を引き受けたユリアンは、周囲の助力を得て、責任を全うすべく奔走する。帝国では皇帝暗殺未遂事件が発生、暗殺者の正体を知ったラインハルトは過去に犯した罪業に直面し、苦悩する。そして新領土総督ロイエンタール謀叛の噂が流れるなか、敢えて彼の地に向かうラインハルトを、次なる衝撃が待ち受けていた。
(「BOOK」データベースより)


 “前指導者の遺志”・・・そう、不敗の魔術師ことヤン・ウェンリーは前巻にて死んだのだ。戦争においては不敗のまま、地球教の魔手により・・・。

 これ、最初にアニメ・シリーズで観たときは驚いたものだ。対立する陣営の一方の中心人物が途中で消えるのだから。

 地球教の目的は、この銀河世界における地球の復権。

 次のターゲットは、ラインハルトより新領土(旧同盟領)を託されたロイエンタール。彼を巧妙に叛乱せざる得ない状況に追い込む。

 叛乱の事実も嫌疑もないのに許しを乞うことなどしたくない。その相手が尊崇するラインハルトならともかく、軍務尚書オーベルシュタインになど。その矜持と偉大な相手と戦ってみたいという武人としての欲求から、銀河帝国に挑むロイエンタール。

 ライハンルトからロイエンタール討伐を命じられたのは、銀河帝国宇宙艦隊司令長官ミッターマイヤー。

 かくして互いを自身より高く評価しあう親友であり、“帝国軍の双璧”と謳われた用兵の天才と天才が激突する・・・。

 新指導者ユリアン・ミンツ率いるイゼルローン共和政府と銀河帝国に、地球教やかつてのフェザーン自治領の領主・黒狐のルビンスキーの深慮遠謀が絡む、その行き先は?

 次巻で完結。

銀河英雄伝説1黎明篇
銀河英雄伝説2野望篇
銀河英雄伝説3雌伏篇
銀河英雄伝説4策謀篇
銀河英雄伝説5風雲篇
銀河英雄伝説6飛翔篇
銀河英雄伝説7怒涛篇
銀河英雄伝説8乱離篇

 次は、『心霊探偵八雲2 魂をつなぐもの』(神永学・著/角川文庫)。
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2008年07月02日

空の中


空の中
著者名:有川浩(著)
出版社:角川書店
出版年:2008.06
ISBN :9784043898015


 単行本の新聞広告を見たときからずっと気になってたんだよね、コレ。

 今ではすっかり有名作家の有川浩氏だが、初読みである。


・内容
200X年、謎の航空機事故が相次ぎ、メーカーの担当者と生き残った自衛隊パイロットは調査のために高空へ飛んだ。高度2万、事故に共通するその空域で彼らが見つけた秘密とは?一方地上では、子供たちが海辺で不思議な生物を拾う。大人と子供が見つけた2つの秘密が出会うとき、日本に、人類に降りかかる前代未聞の奇妙な危機とは ― すべての本読みが胸躍らせる、未曾有のスペクタクルエンタテインメント。
(「BOOK」データベースより)


 上の「内容」もそうだが、当時の広告でもすっかりハードSFだと思っていた。実際読んでみるとファンタジーに近い。いや、著者ご本人が言う通り、「大人ライトノベル」と呼ぶのがいちばん相応しいのかも。

 異種生命体遭遇譚。

 かなり面白かった。いささか深みには欠けるし、読んで学ぶことも無いが(悪口・批判に非ず)。

 でもいいじゃないか、面白けりゃ。とにかく導入部は非常に魅力的。最高のプロローグ。あとの展開も悪くない。

 ただ、多くのブログから察するに、この人の作品の魅力のひとつは主要キャラの恋愛模様にあるようだが、春名高巳(♂メーカーの担当者)と武田光稀(♀生き残った自衛隊パイロット)の不器用なソレには別に萌えんかった。このあたり、高校生か大学生の頃に読んでたらねぇ〜。でも、どこかで既に見たようなキャラと関係性なんだよな。まぁ、40過ぎても、こういうの好きな人は好きなんだろうけど(決して馬鹿にしてない)。それにしても、光稀の性別を途中まで隠しておくのって、意味がないと思うけどな。

 で、登場キャラの中では、宮じいがいちばん好きだ。村上春樹氏の『海辺のカフカ』のナカタさんを連想した(ナカタさんはある意味もっと壊れてるけど)。相手が子供であっても見下さずに対等に接する。少年少女を静かに暖かく見守り、自らの人生体験に裏打ちされた説得力のある(でも説教臭くない)言葉で語る。こういう大人、というか爺になりたい。

 当文庫には、特別書き下ろしとして『仁淀の神様』を収録。短編だが、瞬と佳江、宮じいのその後が長いスパンで描かれており、淡い余韻を残す。そうか、宮じいにはモデルがいるんだね。


 次は『散歩もの』。
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2008年06月28日

司政官 全短編


司政官全短編
著者名:眉村卓(著)
出版社:東京創元社
出版年:2008.01
ISBN :9784488729011


 長い、高い(笑)。
 
 700ページ、1500円(税別)。

 文庫で、1500円って・・・。

 眉村卓といえば『なぞの転校生』、『ねらわれた学園』。

 それ以外は読んだことなかったけど、この『司政官』シリーズは著者24年のライフワークらしい。


・内容
星々に進出した地球人類。だが連邦軍による植民惑星の統治が軋轢を生じさせるに及び、連邦経営機構が新たに発足させたのが司政官制度である。官僚ロボットSQ1を従えて、人類の理解を超えた原住者種族を相手に単身挑む若き司政官たちの群像。著者を代表する、遠大な本格SF未来史の短編全7作を年代順に配し、初の一巻本として贈る。巻末には詳細な作品世界ガイドを収録した。
(「BOOK」データベースより)


 収録されているのは次の7話で、1)〜7)は当文庫収録順、( )内は発表年月。

1)長い暁(1980年2月)
2)照り返しの丘(1975年2月)
3)炎と花びら(1971年10月)
4)扉のひらくとき(1975年7月)
5)遥かなる真昼(1973年5月)
6)遺跡の風(1973年5月)
7)限界のヤヌス(1974年1月)

 で、3)5)6)7)は、『司政官』として1974年に単行本、1982年に文庫本。1)2)4)は『長い暁』として1980年に単行本、1982年に文庫本で早川書房から刊行されている。

 これらが1冊にまとめられて創元SF文庫から復刊されたというわけである。

 1)は地球連邦が軍事力による植民星統治から、司政官と官僚ロボット群という行政機構による統治に切り替えた直後の物語。まだ、植民星は駐屯軍と司政官の二重権力状態で、しかも表面上は軍の方が優位である。

 そこから、2)3)・・・と舞台となる星を変えながら時代を下っていきつつ、司政官制度の確立・進展・変遷を描く。

 そして、7)では司政官制度発足約70年が経過。原住者の文化・習慣・生活を尊重しつつ、原住者世界の文明発展を善導し、さらに植民者(地球人)との融和を図る・・・という理想は崩れつつある。

 高邁な理想や自負心に裏打ちされて始まったはずの司政官制度、着実に効果を上げつつ、それがゆえに根本的な矛盾(司政官は原住者と植民者のどちらを利するのか)を拡大し自壊していく・・・地味なSFと思いきや、複雑な読後感と人間存在に対する一種の虚しさを残す短篇集である。

 この後、『消滅の光輪』(1979早川書房/1981ハヤカワ文庫/2000ハルキ文庫)、『引き潮のとき(全5巻)』(1988〜1995早川書房/2006黒田藩プレス)と長編の続編が刊行されているらしいが、絶版である(黒田藩プレスは第2巻でストップ)。

 しかし、『消滅の光輪』は創元SF文庫から7月に出るらしいので、楽しみ。しかも、新たな続編執筆の構想もあるらしい。

 創元さんには『引き潮のとき』も出してもらいたい。司政官制度が、地球連邦が、宇宙世界がどうなっていくのか、最後まで付き合いたいと思う。


 次は『空の中』(有川浩・著/角川文庫)。
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2008年06月18日

ひとめあなたに…


ひとめあなたに…
著者名:新井素子(著)
出版社:東京創元社
出版年:2008.05
ISBN :9784488728021


 日本SFの名作と言われている(のか?)有名作品。『グリーン・レクイエム』と同様に、読書家でなかった頃の僕でも名前を知っていた。


・内容
女子大生の圭子は最愛の恋人から突然の別れを告げられる。自分は癌で余命いくばくもないのだと。茫然自失する圭子の耳にさらにこんな報道が―“地球に隕石が激突する。人類に逃げ延びる道はない”。彼女は決意した。もう一度だけ彼に会いに行こう。練馬から鎌倉をめざして徒歩で旅に出た彼女が遭遇する4つの物語。来週地球が滅びるとしたら、あなたはどうやって過ごしますか。
(「BOOK」データベースより)


 で、やっぱ、あれだな。

 どうも、この文体にムズムズする(笑)。

 巨大隕石の衝突により地球滅亡・・・という設定だけはSFだが、SFという感じがしない。

 日本人形のように清楚で美しい貞淑な妻・由利子が実行した浮気夫への究極の愛の行為。それは静かな狂気漂うスプラッタ・ホラー。

 ひたすらに大学受験の勉強に打ち込む優等生・真理の抱える圧倒的な虚無と滅亡への喜び。

 現実を拒否して夢に逃げ込む幼い智子。

 お腹の子供を助けるため、愛する夫を捨てて、昔の恋人が開発した2人用核シェルターへ逃げ込もうとする恭子。

 圭子が出会う4人の女性(女の子)の物語。あんまり楽しくない(笑)。

 そして、基本は圭子の恋人への思いを中心とした“小さな世界”。“アルマケドン”とか“日本沈没”とか壮大な終末モノとは全然違う視点は面白いと思う。

 でも、エンタメとして面白いか・・・と聞かれると、僕には合わないな。


 次は、『白澤 人工憑霊蠱猫』(化野燐・著/講談社文庫)。
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2008年05月09日

クレィドゥ・ザ・スカイ


クレィドゥ・ザ・スカイ
著者名:森博嗣(著)
出版社:中央公論新社
出版年:2008.04
ISBN :9784122050150


 刊行順は、『スカイ・クロラ』、『ナ・バ・テア』、『ダウン・ツ・ヘブン』、『フラッタ・リンツ・ライフ』、『クレィドゥ・ザ・スカイ』。

 物語の時系列は、『ナ・バ・テア』、『ダウン・ツ・ヘブン』、『フラッタ・リンツ・ライフ』、『クレィドゥ・ザ・スカイ』、『スカイ・クロラ』で、文庫カバーの見返しにはこの順序で作品が掲載されている。

 読むほどに謎だらけの『スカイ・クロラ』シリーズだが、『クレィドゥ・ザ・スカイ』を読めばスッキリ!。

 ・・・と期待したが、謎は謎のまま。

 恐らくは、森氏の企みに付いていけるほどに、高度に知的な読者が読めば、全ての伏線やヒントを見逃すことなく、シリーズの全貌が理解できるのだろう・・・か?

 僕の頭脳では到底・・・これで完結なのに理解できんとは・・・と思っていたら、単行本『スカイ・イクリプス』が6月25日に発売されるそうだ。

 これを読めば今度こそ、全てを理解できるのか?

 それともまた(森ミステリィ・サーガのように)“分かる人だけ分かればいい”と突き放されるのか(そこがクールで良いのだが)。

 ま、文体が好きだから、そして登場人物達の感性が好きだから、もう読めるだけで満足なんだけどね。

 それにしても、読んでいない人に、このシリーズの魅力を語るのは本当に難しい。少なくとも僕には無理だ。各巻のストーリーを説明しても全然良さは伝わるまい。読んだ人も、人によっては激しくハズレ!と感じるであろうし。

 ・・・て、前も同じこと書いたな。

 むむむ。

ダウン・ツ・ヘブン
フラッタ・リンツ・ライフ


 次は、『河岸忘日抄』(堀江敏幸・著/新潮文庫)。
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2008年05月06日

銀河英雄伝説8乱離篇


銀河英雄伝説 8 乱離篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2008.04
ISBN :9784488725082


 “専制政治が一時の勝利をしめたとしても、時が経過し世代が交替すれば、まず支配者層の自律性が崩れる。誰からも批判されず、誰からも処罰されず、自省の知的根拠をあたえられない者は、自我(エゴ)を加速させ、暴走させるようになる。”

 全くその通り。

 だからこそ、自国の腐った政治家よりも敵国の専制者ラインハルトに対して、多くの敬意と共感を感じつつも、ヤンは徹底抗戦するのである。


・内容
宿敵ヤン・ウェンリーと雌雄を決するべく、帝国軍の総力をイゼルローン回廊に結集させた皇帝ラインハルト。ついに“常勝”と“不敗”、最後の決戦の火蓋が切って落とされた。激戦に次ぐ激戦の中、帝国軍、不正規隊双方の名将が相次いで斃れる。ようやく停戦の契機が訪れたその時、予想し得ぬ「事件」が勃発し、両陣営に激しい衝撃を与えた。銀河英雄叙事詩の雄編、怒涛の急展開。
(「BOOK」データベースより)


 この巻では、ホントに“予想し得ぬ”驚きの展開が待っている。

 ・・・て、もう昔アニメで観て知ってるから、僕自身は今さら驚かないのだが、初めてこの物語に接して、愛読してきた人にはビックリだろう。

 大胆なことをするものだ。

 北方水滸伝も真っ青である。

 昔アニメで観たが、次も意外な(でも今回に比べれば予想のつく)展開があったはず。

 昔アニメで観たが(しつこい)、物語のラストは忘れたなぁ・・・。

 読書の上では、良いことだ。

銀河英雄伝説1黎明篇
銀河英雄伝説2野望篇
銀河英雄伝説3雌伏篇
銀河英雄伝説4策謀篇
銀河英雄伝説5風雲篇
銀河英雄伝説6飛翔篇
銀河英雄伝説7怒涛篇


 次は、『クレィドゥ・ザ・スカイ』(森博嗣・著/中公文庫)。
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2008年03月15日

銀河英雄伝説7怒涛篇


銀河英雄伝説 7 怒濤篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2008.02
ISBN :9784488725075



 レンネンカンプ総督の圧力の下、自らを逮捕しようとした同盟政府と退役生活に別れを告げ、かつての部下達と共に“不正規隊”(イレギュラーズ)として、惑星エル・ファシルの独立革命政府と合流するヤン。

「・・・予は自らの不明と帝国政府の不見識を認める。(略)」

「だが同時に、予は、同盟政府の無能と不実を看過することはできぬ。故レンネンカンプ高等弁務官がヤン元帥の逮捕を要求したことは不当であった。同盟政府はその不当なることを予にうったえ、同盟にとって最大の功労者たるヤン元帥の正当な権利を擁護すべきであったのに、強者にこびてみずからの法をすらおかしたのだ。しかも、その策動が失敗すると、報復をまぬがれるために、高等弁務官の身柄をさしだすとは!」

「一時の利益のためには国家の功労者も売る。直後にはひるがえって、予の代理者を売る。共和政体の矜持とその存在意義はどこへいったか。(略)」

 清冽な精神を持つ銀河帝国の絶対君主にして、征服者ラインハルトの怒りをかった同盟政府。和約は破棄され、ラインハルトは同盟政府の完全粉砕を宣言する。

 ヤンの尊敬する同盟軍の前宇宙艦隊尾司令長官であり、既に退役生活に入っていた老将ビュコックは、勝ち目がないことも、同盟政府の存在意義が潰えたことも承知で、同盟の軍人として最後の抗戦を試みる。かつてのヤンの部下や30歳以下の者については、ヤンの下に去らせた上で。

 一方、まさかビュコックが自ら死地に赴くことはないと考えていたヤンは、同盟軍と帝国軍の間隙を縫って、2度目のイゼルローン要塞奪取を試みる・・・。

 終戦後は、ヤンを臣下に迎えようとしたラインハルト。2人の、そして民主制と絶対王政の存在意義を賭けた新たな戦いが始まろうとしている。

 その陰に蠢く、地球教(かつて宇宙の盟主であった地球の復活を目指す狂信集団。前巻で本拠は殲滅)、ルビンスキー(銀河帝国に征服されるまで、独立経済国家であった惑星フェザーンの自治領主。現在潜伏中)。そして、ラインハルト麾下の“帝国の双璧”のひとり、ロイエンタールの心の裡に芽生え始めた不穏な想い。

 束の間の和平は終わり、新たなる混乱と争乱の世が訪れる・・・。

 では、今巻の印象的なフレーズ。

“名君にとって最大の課題は、名君でありつづけることなのである。名君として出発して暗君または愚君として終わらなかった例は、ごく珍しい。君主たる者は、歴史の審判をうける以前に、みずからの精神の衰弱にたえねばならないのだった。”

 ・・・いずこも同じ也哉。

銀河英雄伝説1黎明篇
銀河英雄伝説2野望篇
銀河英雄伝説3雌伏篇
銀河英雄伝説4策謀篇
銀河英雄伝説5風雲篇
銀河英雄伝説6飛翔篇


 次は、『犬はどこだ』(米澤穂信・著/創元推理文庫)。
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2007年12月29日

銀河英雄伝説6飛翔篇


銀河英雄伝説 6 飛翔篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.12
ISBN :9784488725068


 ヤン・ウェンリーとの直接対決では敗北寸前にまで追い込まれたラインハルトであったが、優秀な部下たちの機転により、国と国の戦いには勝利。全宇宙は新銀河帝国として統一される。

 新銀河帝国の皇帝となったラインハルトは内政改革に努め、その属国と化した自由惑星同盟ではヤンが念願叶ってようやく望み通り退役。元副官フレデリカとの優雅な年金&新婚生活を送っていた。

 だが、新銀河帝国の全権代表として、自由惑星同盟首都ハイネセンに在るレンネンカンプ提督は、自身を含めてこれまで戦場で散々煮え湯を飲まされてきたヤンを警戒して監視を強化。将来の禍根とならぬようヤンの排除さえ画策する。

 一方、そのヤンに何度も危急存亡の機を救われたはずの同盟首脳は、智略と人望あるヤンが単調な引退生活に耐えられず、いずれその才能にふさわしい野心(=同盟を掌中に納めて帝国と戦う)に突き動かされる時が来るのでは・・・と疑心暗鬼に駆られ、やはり監視を付ける。

 確かにヤンは後日に備え(個人的野心のためではなく自由民主主義を回復するため)、密かに手を打っていたのだが・・・。

 レンネンカンプの圧力に耐えかねた同盟政府により、遂に証拠もないままヤンは逮捕・監禁される。だが、まさに処刑前の間一髪、かつての部下達の実力行使により救出される。

 ヤンは、同盟首脳には「私たちはレンネンカンプを人質として、惑星ハイネセンを離れます。同盟政府は、脅迫されたというかたちで、私たちを追わずにいただきたい。帝国にたいしては、私が争乱のすべての責任をおいます。同盟から帝国にたいして、どうかヤン・ウェンリーを討伐、逮捕してほしいと頭をさげれば、帝国にたいしても弁解が立つのではありませんか」と策を授け、その言葉通りにレンネンカンプを拘束、ハイネセンを脱出し、秘密裏に温存しておいた同盟軍艦隊に合流する・・・。


 一連の事件について、帝国首都オーディーンに参集した帝国軍幹部たちが、ヤンや同盟政府よりもレンネンカンプに対して批判的であるところが面白い。わざわざ和平を打ち壊して、徒に争乱の火を付けたと酷評するわけである。

 当シリーズにおいては、度々民主主義陣営の政治家たちの自己保身や権力に爛れた姿と、専制国家に生きる軍人たちの清新さが対比される。かと言って、専制体制を賛美するものではもちろんない。

 この巻でも、ヤンの考えが、次のように書かれている。

新皇帝ラインハルトがその強力な政治力によって宇宙に平和と繁栄を招来し、維持させたとき、人々が政治を他人まかせにすることに慣れ、市民ではなく臣民となってしまうのが、ヤンにとってはたえられない気分なのだ。専制君主の善政というものは、人間の政治意識にとってもっとも甘美な麻薬ではないだろうか、と、ヤンは思う。参加もせず、発言もせず、思考することすらなく、政治が正しく運営され、人々が平和と繁栄を楽しめるとすれば、誰がめんどうな政治に参加するだろう。(略)だが、人々が政治をめんどうくさがるとすれば、専制君主もそうなのだ。彼が政治にあき、無制限の権力を、エゴイズムを満足させるために濫用しはじめたらどうなるか。権力は制限され、批判され、監視されるべきである。ゆえに専制政治より民主政治のほうが本質的に正しいのだ。

 あ。

 何だか、小難しい小説だと思った?

 本質的にはエンタメ作品。


 では、最後に、今回の印象的な場面。

「法にしたがうのは市民として当然のことだ。だが、国家がみずからさだめた法に背いて個人の権利を侵そうとしたとき、それに盲従するのは市民としてはむしろ罪悪だ。なぜなら民主国家の市民には、国家のおかす罪や誤謬にたいして異議を申したて、批判し、抵抗する権利と義務があるからだよ」そうユリアンにヤンは語ったことがあった。(略)不当な待遇や権力者の不正をうけいれ、それに抵抗しない者は、奴隷であって市民ではなかった。自分自身の正当な権利が侵害されたときにすら闘いえない者が、他人の権利のために闘いうるはずがない。

 ・・・あぁ、耳イタ。

 でもエンタメ作品。

銀河英雄伝説1黎明篇
銀河英雄伝説2野望篇
銀河英雄伝説3雌伏篇
銀河英雄伝説4策謀篇
銀河英雄伝説5風雲篇


 次は、『少女には向かない職業』(桜庭一樹・著/創元推理文庫)。

 年内の投稿はこれにて終了。

 皆さん、良いお年を!
posted by ふくちゃん at 21:53| Comment(2) | TrackBack(0) | SF

2007年12月09日

グリーン・レクイエム/緑幻想


グリーン・レクイエム,緑幻想
著者名:新井素子(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.11
ISBN :9784488728014


 1980年に刊行された新井素子氏の代表作『グリーン・レクイエム』とその続編で1990年に刊行された『緑幻想』を1冊にまとめた新装版である。良い装丁だ。

「BOOK」データベースの紹介文(=文庫本裏表紙の紹介文)はこう。

子供の頃の記憶。まよいこんだ夕刻の山道。ピアノの音を頼りに辿りついた草原の先には古びた洋館と温室があり、そこで彼は“緑色の髪をした少女”に出会った―。彼は長じて植物学者への道を歩み始めた。そして彼女との再会は、彼らを思いもよらない悲劇へと導く。著者の初期代表作にして星雲賞を受賞した「グリーン・レクイエム」と続編「緑幻想」を併せ、初の一巻本として贈る。

 新井素子氏による新たな「あとがき」が付いている。ちなみに、今年の5月に日本標準というところから刊行された『グリーン・レクイエム』の紹介文は、こう。

信彦が七つのときに出会った緑の髪の少女。十八年後、信彦が公園で見かけた、陽のあたるベンチに坐っている明日香がその少女にそっくりだった…!緑の長い髪をもつ明日香と、彼女を愛してしまった信彦。明日香の正体は?二人の恋の行方はどうなるのか…?!美しいピアノの調べにのって展開する切ないラブストーリー。小学校高学年から。
(「BOOK」データベースより)

 ・・・別に意味はない。とりあえず載せてみた(笑)。

 新井素子氏は初読みである。

 その存在自体は高校生の頃から知っていたのだが。

 当時、角川の角川による角川のための月刊誌、または角川3人娘(薬師丸ひろ子・原田知世・渡辺典子)および角川映画の宣伝誌、『バラエティ』を愛読していた。そもそもは原田知世嬢が好きで、途中から渡辺典子派に移行したのだが、それ以上に角川とは何の関係もない各種雑多な連載記事が好きだった。

 今でも読めるものなら、また読みたい(古本・古雑誌でなく)。南伸坊、泉昌之、関川夏央、呉智英、糸井重里、鏡明などなど、連載陣やら、そのゲストやら、今思えば知る人ぞ知る豪華メンバーによるヨタ記事(?)が楽しかった。

 その中に、新井素子氏が日常の出来事を書き、それを題材に吾妻ひでお氏が漫画を描く『吾妻ひでおと新井素子の愛の交換日記』という連載があったのだ。これもわりに好きだった。

 新井氏のイメージは、今でも吾妻氏の漫画で描かれたものから更新されていない。

 で、何となく旧知の作家だったのだが、1980年当時(13歳)も高校生の頃も読書家でなかった僕は、そして長じて読書好きになってからも最近までSFをあまり読まなかった僕は、彼女の作品を全く読んでいなかったのだ。

 それに、あの何とも言えない独特の文体を敬遠する気持ちもあった(エッセイはともかく、小説としては)。

 だが、今回を機に中身を読まずに(普段、初読み作家は立ち読みして、その文章が受け入れられそうか確認して買う)レジへ持って行った。

 で、感想。

 やはり、文体はちょっと辛い。時に脚本のト書きみたいだったり、繰り返しが多かったり。『グリーン・レクイエム』が、こんな短い作品だと知らなかったので、そこにもビックリ。

 とにかく、新井氏が、コバルト文庫(中学生の頃、周りでも流行った。僕もドキドキしながら読んだ^^;)などジュニア小説界で人気を博し、ラノベの元祖的存在とも言われることには、何となく納得。

 SFというよりファンタジーと呼んだ方がピッタリ来る。

 僕は、「男性だから・・・」「女性だから・・・」という物言いはしない主義の人間なのだが、殊この2つの作品に関しては、少女的感性(良い意味で)を保ち続けている女性には(もちろんその全員にとはいえないが)受けそうだ。

 やんさんには誠に申し訳ないながら、僕には・・・ちょっと。

 しかしながら、『緑幻想』には、人間が引き起こす環境問題・自然破壊に対する、現代にも通じる指摘があり、膝を打つこと数度(いや、心の中で)。

 「自然破壊」など無い。自然はいつでもどんな状態でも自然である。人間が破壊しているのは自然ではなく、自分達が安全・安心・快適に生存しつづけられるはず環境である・・・とかね。ほかにも・・・まあいいか。興味のある人をお読みを。『チグリスとユーフラテス』も読んでみるか。


 次は、『誰か Somebody』(宮部みゆき・著/文春文庫)。
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2007年12月02日

フラッタ・リンツ・ライフ


フラッタ・リンツ・ライフ
著者名:森博嗣(著)
出版社:中央公論新社
出版年:2007.11
ISBN :9784122049369


ずっと二人で空を飛んでいても、決して触れることはない。彼女の手を、彼女の頬を、僕の手が触れることはない―「僕」は濁った地上を離れ、永遠を生きる子供。上司の草薙と戦闘機で空を駆け、墜ちた同僚の恋人相良を訪ね、フーコのもとに通う日々。「スカイ・クロラ」シリーズ急展開。
(「BOOK」データベースより)

 『スカイ・クロラ』シリーズ第4弾。

 戦争代行会社のトップ・パイロットであったクサナギ(♀)は、今や大尉で、とある基地の管理職であり、自らが飛ぶことは少なくなっている。シリーズ2作目『ナ・バ・テア』以来の部下・クリタ(♂)は、相変わらず飛んでいるが、ボンネットに猫マークの敵機とだけは交戦せずに退避するよう指示されていた。その機体は、クサナギ以前のトップで、今は敵の会社のエース・ティーチャのもの。クサナギは自らの手で倒したいのか?

 この巻では、遺伝子制御剤によって生まれたキルドレ(永遠に自然死しない子供)を普通の人間に戻す技術が開発されたことが明らかになる。だが、クサナギは既にキルドレではなくなっていた。

 で、えーと。

 説明が困難だな・・・。ストーリーをなぞるだけじゃ何も伝わらんしなぁ。

 大体話の全貌が分からない。ま、次の最終巻『クレィドゥ・ザ・スカイ』を待とう。そして、全部読み返すのだ。ま、単行本やノベルズ版を既に読んでいる人達の話では、これ読んでも結局謎だらけのようだ。誰か謎解き本出してくれぇ。

 ・・・いつか、作者本人に種明かしをしてほしいが、そんなことはありえやろうなぁ。

 押井守監督による『スカイ・クロラ』を映画化が楽しみだ。

ダウン・ツ・ヘブン


 次は、『おまけのこ』(畠中恵・著/新潮文庫)。
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2007年11月13日

時砂の王


時砂の王
著者名:小川一水(著)
出版社:早川書房
出版年:2007.10
ISBN :9784150309046


“私は2300年後の世界から来た。だが、ここの未来からではない。多くの滅びた時間枝を渡ってきた。”

 西暦248年、宮を抜け出して散策する耶馬台国の女王・卑弥呼は、この世のものとは思えぬ強力な物の怪に襲われるが、間一髪のところを突然現われた男に救われる。

 卑弥呼は常人離れした力を持つその男を、この世界のあらゆる民族に伝わる書「使令(つかいのおきて)」を記した“使いの王”に違いないと確信する。「使令」には、世に必ず災いが襲いかかるが、人が力を合わせて戦えば、必ず強力な援軍が現われて、その災いを退けられると記されていたのだ。

 “使いの王”の正体は“メッセンジャー・O”、本名はオーヴィル。彼は26世紀の人類世界からやって来た精密・優秀・強靭な人型人工知性体である。26世紀の未来において、謎の増殖型戦闘機械群=ET(Enemy of Terra/the Evil Thing)により地球は壊滅。その後、人類の反撃によって劣勢となったETは、過去の時点での人類抹殺を狙って時間遡行を行い、メッセンジャー部隊もまたETを追って時間遡行を行う。

 地球上における様々な時代の様々な場所で、戦いを繰り広げてきたETと人類&メッセンジャーであるが、戦況はETの優勢。そこで、メッセンジャー側は一気に10万年前に飛ぶ。各時代の人類と協力してETを殲滅しながら未来へ時間を下るメッセンジャー、人類とメッセンジャーを殲滅しながら過去へ時代を上ってくるET。ちなみに、時間遡行戦により歴史が様々な時点で改変・分岐され、パラレルワールドが発生している。

 そして、3世紀の耶馬台国(時間遡行戦の影響で、我々読者が知る邪馬台国とはかなり異なる歴史を刻んでいる)こそが、全人類史の存亡を懸けた最終決戦地だったのだ。

 ・・・って、うまく説明できんぞ。

 ま、詳しくは読んでおくれ。面白いから。 

 26世紀におけるオーヴィルと人間の女性サヤカとの短い幸せな日々。しかし、この世界ではETの勝利と人類の滅亡が確定、またオーヴィル達メッセンジャーの戦いが過去の歴史を変えるため、オーヴィルが生まれた26世紀世界は消え、サヤカも生まれなかったことになってしまう。しかし、サヤカという女性の記憶は、オーヴィルの記憶媒体からは消えてくれない・・・という切ない要素もあり。

 ETの正体は何か?なぜ執拗に人類殲滅にこだわるのか?メッセンジャーと3世紀の人類は勝つことができるのか?

 そう長い作品でもないし、映画化したら相当イケると思うけどな。CGが大変だろうけど。

 小川一水氏は初読みだったが、こりゃ『老ヴォールの惑星』(ベストSF2005国内篇第1位/第37回星雲賞日本短編部門受賞作)も読まないと!


 次は、SFミステリ『風の歌、星の口笛』(村崎友・著/角川文庫)。
posted by ふくちゃん at 00:05| Comment(4) | TrackBack(1) | SF

2007年11月11日

銀河英雄伝説5風雲篇


銀河英雄伝説 5 風雲篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.10
ISBN :9784488725051


“忠誠心というものは、いわば鏡に映った自己陶酔であるから、鏡の役目を果たす主君には、美しい像を映してだしてほしいというのが、宮仕えする人間の願望であろう。”

 物語も折り返し地点だ。

 銀河帝国軍最高司令官兼宰相ラインハルトは、占領地フェザーンから空前絶後の大艦隊を率いて、自由惑星同盟領内に乗り込む。

 現状では自由惑星同盟の敗北は必至と見たヤンは、眼前のロイエンタール軍との戦いを捨て、民間人を保護しつつ、配下の全艦隊を率いてイゼルローン要塞を離脱、同盟首都ハイネセンへ向かう。

 かくして、自由惑星同盟領内において、ヤンのいない同盟軍と銀河帝国軍との戦闘が開始される。ヤンの尊敬する宇宙艦隊司令官ビュコックの下、劣勢の中でも善戦する同盟軍だが、帝国軍の猛攻の前に、命脈は尽きようとしていた。

 しかし、イゼルローンから駆けつけたヤンが危機的状況を打開し、戦いは仕切り直しとなる。

 ヤンの考える同盟唯一の勝利法は、帝国軍の智将達を各個撃破、ラインハルト自らを引き摺り出して、正面決戦を挑み倒すこと。これによって、もはやラインハルト個人の卓越した能力とカリスマ性およびラインハルトへの忠誠心で成り立っている銀河帝国は一気に弱体化し、当分の間は戦争を回避できる。

 神出鬼没、その実、綱渡りの奇策によって、次々とラインハルト麾下の驍将を打ち破るヤン。そして、ヤンの狙いを分かっていながら、最高の好敵手を倒すために、遂に自ら戦いに臨むラインハルト。

 今回は巻のほとんどが戦闘場面で、中でも巻の4分の1を占めるヤンとラインハルトの戦いが最大の見せ場。「不敗」と「常勝」の対決に相応しい、一進一退、逆転また逆転、手に汗握る勝利と敗北紙一重の戦いである。

 だが、遂にヤンはラインハルトを追い詰める。

 しかし・・・。

 はい、後は自分の眼で!

銀河英雄伝説1黎明篇
銀河英雄伝説2野望篇
銀河英雄伝説3雌伏篇
銀河英雄伝説4策謀篇


 次は、『時砂の王』(小川一水・著/ハヤカワ文庫)。
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2007年09月05日

銀河英雄伝説4策謀篇


銀河英雄伝説 4 策謀篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.08
ISBN :9784488725044


 あぁ・・・最近ミステリを読んでいない。いかん。


 銀河帝国では、第3勢力フェザーンの協力を受けた旧体制派貴族の生き残りが、ラインハルト打倒のため幼い皇帝を“救出”。自由惑星同盟へ逃れ、その庇護の下、帝国正統政府と自称する亡命政権を発足させる。

 だが、フェザーンの帝国駐在弁務官ボルテックは、あらかじめ帝都防衛指令部に、この“誘拐”を密告。誘拐者である門閥貴族と彼ら犯罪者を匿う自由惑星同盟への懲罰を口実に大規模攻勢をかけることをラインハルトに提案する。これまで両陣営のバランスの中で、独立した経済国家として繁栄してきたフェザーンであるが、自治領主・ルビンスキーが銀河帝国側に付くことに決めたのだと。つまり、貴族どもはただ駒として利用されただけ。

 ・・・もっとも、フェザーンの真の目的は別のところにあり、そのバックには人類のかつての盟主・地球において隠然たる力を持つ宗教勢力「地球教」の存在があるのだが・・・。

 地球教の存在を明確には掴んでいないものの、裏があることを承知でフェザーンの策に乗せられたフリのラインハルトは、イゼルローン要塞には帝国軍の双璧・ロイエンタールの大艦隊を派遣して、最大の強敵ヤンを足止め。

 と同時に、これは帝国と同盟を結ぶ唯一の回廊(とされている)イゼルローンさえ守っておけば大丈夫と同盟政府に思わせるための陽動。実は、ルビンスキーを追い落として自治領主に据えてやるとラインハルトに約束されたボルテックの裏切りにより、これまでフェザーンを拠点とする独立商人しか使えなかったフェザーン回廊を通過して電撃的に同盟に攻め入る作戦だったのだ。

 ラインハルトは、まんまとフェザーンを占領。同盟に攻め込むための充実した補給基地を手に入れた。しかし、ルビンスキーもそこは一筋縄ではいかない男、帝国軍の捜査の網を抜けて雲隠れ。そして、同盟政府の嫌がらせでヤンの元を離され、フェザーンに駐在武官として赴任していたユリアンも、なんとか逃げ出す。

 一方、相変わらず卓越した洞察力で、ラインハルトの作戦の全貌を見抜いていたヤンであったが、フェザーン回廊に注意!という警告は弛緩しきった政府には無視され、イゼルローンからは動きたくても動けず・・・。

 同盟最大のピンチは目前。


 いやぁ・・・このほかにも『策謀篇』というタイトルに相応しく、権謀術数の乱れ打ち状態である。どういう展開になっていくのか・・・楽しみ。

 ・・・って、大体昔観たアニメで知ってるけど・・・でも楽しい。

 では、印象に残ったフレーズを。

 “権力の座というものは、それじたいが精神上の病巣であって、そこに安住しているかぎり、視野の狭窄と思考の利己化とは必然の病状となるのだろうか。”

銀河英雄伝説1黎明篇
銀河英雄伝説2野望篇
銀河英雄伝説3雌伏篇


 次は『居眠り磐音 江戸双紙 花芒ノ海』(佐伯泰英・著/双葉文庫)。

 あぁ・・・最近ミステリを読んでいない。
posted by ふくちゃん at 23:59| Comment(0) | TrackBack(1) | SF

2007年09月01日

NO.6 #3


NO.6 #3
著者名:あさのあつこ(著)
出版社:講談社
出版年:2007.08
ISBN :9784062758017


 紫苑(しおん)と同じエリートコースを生き、紫苑がネズミとの出会いからエリートの住む街《クロノス》を追放された後も、友人として紫苑と変わらぬ態度で接してきた唯一の少女・沙布(さふ)。

 交換留学から戻った沙布は、紫苑が犯罪者として矯正施設に収容されたという報道を信じられず、彼の母・火藍(からん)の元を訪れ、紫苑が今は《西ブロック》にいることを知る。

 紫苑を想う沙布は、彼に会いに行こうと決意するが、火藍の家からの帰途、何ゆえか治安局に捕らえられ、矯正施設に送られる。

 ・・・というのが#2の終盤で、その事を知らせる火藍のメモを受け取ったネズミと共に、紫苑が矯正施設へ乗り込んでいく話になるのかと思いきや、ネズミはそのメモを紫苑には見せない。

 矯正施設に乗り込むなど無謀極まりないことであり、にも関わらずメモを見せれば紫苑が後先考えず行動に移ることは明らかだからだ。

 だが、紫苑の無防備な真っ直ぐさは、ネズミを始めとして、己以外は信じられない、他人に情けはかけられない、他人に弱みは見せられない、そんな生き馬の目を抜くような《西ブロック》に生きる住人達 ― 《NO.6》の高官相手に売春で生計を立てる元新聞記者の力河(りきが)、犬を毛布代わりに貸し出す商売のイヌカシ ― の心を少しずつ揺さぶっていく。

 ・・・ここが#3の読みどころか。

 やがて、沙布の件に偶然気付いた紫苑は、このことを知らないであろう(本当は知っている)ネズミに黙って1人で矯正施設に赴こうとするが、追ってきたネズミに引き止められる。

 力河やイヌカシの集めた情報(イヌカシは闇で囚人の持ち物を流したり、残飯や食物を買ったりするなど矯正施設の役人とのつながりがある)を元に矯正施設へ潜り込む方策を検討する紫苑とネズミ。

 チップを埋め込まれ、24時間完全監視下にある矯正施設で、自由に動き回れる唯一の例外・・・それは「人狩り」に遭うことだった。

 で、「人狩り」って何?というところで、#3は終了。

 #4の文庫はいつ出るの?

NO.6 #1
NO.6 #2


 次は、『クレイジーフラミンゴの秋』(誼阿古・著/GA文庫)
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2007年07月16日

幻詩狩り


幻詩狩り
著者名:川又千秋(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.05
ISBN :9784488726010


 親本は1984年の発刊。しかし、古さを全く感じさせない。

 無名の青年が書き上げた不可思議な詩が持つ驚異の力。読む者を幻惑し、時間と空間を超越させ、この世への執着を奪い、精神を破壊する、強力な麻薬のような、いや、それ以上に危険な詩・・・。

 作品として成功させるには、もの凄い力業を必要とする意欲的な設定だと思う。


1948年。戦後のパリで、シュルレアリスムの巨星アンドレ・ブルトンが再会を約した、名もない若き天才。彼の創りだす詩は麻薬にも似て、人間を異界に導く途方もない力をそなえていた…。時を経て、その詩が昭和末期の日本で翻訳される。そして、ひとりまたひとりと、読む者たちは詩に冒されていく。言葉の持つ魔力を描いて読者を翻弄する、川又言語SFの粋。日本SF大賞受賞。
(「BOOK」データベースより)


 ・・・で、成功しているか?と聞かれると、頑張りと志は認めるけど、やはりハードルが高すぎた、という印象。

 登場する詩にそこまでの魔力があるとは実感できないし。

 ま、本当に魔力を感じられるような詩だったら、ヤバイわけだが・・・。


 次は、『水の伝説』(たつみや章・著/講談社文庫)。
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2007年07月04日

銀河英雄伝説3 雌伏篇


銀河英雄伝説 3 雌伏篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.06
ISBN :9784488725037


 現在から見れば遥か未来の物語であり、体裁としてはそのさらに未来から確定した過去の歴史として記述された歴史書。『銀英伝』の第3巻である。

 腐敗した貴族を実力で排除し、幼い皇帝の下、22歳にして中央集権国家・銀河帝国の宰相となり、軍事・政治の双方の最高位を手に入れ、事実上の支配者となったラインハルト。

 最大の理解者である、最愛の姉と無二の親友兼腹心を失い(注:死んだとは限らない・・・)、孤独に苛まれながらも、少数の貴族を支えるために長年搾取され続けてきた大多数の平民のために、国家の旧弊を改めていく。

 一方、先年の大敗戦や軍事クーデターの騒乱で疲弊した民主主義国家・自由惑星同盟にあって「不敗の魔術師」の異名を取るヤン・ウェンリーは、突然査問委員会に召喚され最前線にして最大の要衝地であるイゼルローンから首都星へ赴く。

 そして、卓越した指揮官を欠くイゼルローンを、銀河帝国が思いも寄らぬ方法で急襲し、あわや陥落の危機を迎える。イゼルローンの陥落は、すなわち自由惑星同盟全体の敗北に繋がりかねない。

 クーデターの後、国家元首としての立場を巧妙に強化したトリューニヒトとその一派で占められた軍部新首脳たちの自己保身に由来する身勝手な嫉妬と恐怖=ヤンがその人気と実力で自由惑星同盟の支配者になろうと画策するのではという疑念が招いた愚かな事態であった。

 自由民主主義を標榜するはずの自由惑星同盟における、まるで中央集権国家のようなトリューニヒト派の専横ぶりがなんとも皮肉である。

 それにしても、このシリーズのおける登場人物の多彩さは本当に素晴らしい。三国志や水滸伝ほどではないにしても数は多いし、キャラの書き分けでは北方中国歴史小説より上である。そして、組織と個人、権力者・為政者、戦争、歴史に対する、時に辛辣なほど冷徹な視線にも感心&同意する。この雌伏篇が最初にトクマ・ノベルズから刊行されたのは1984年で、著者が30歳を少し越えた頃なのに、ここまで書けるなんて・・・。

 さて、およそ高級軍人らしからぬ性格・言動のヤンと周囲の人物たちの関わりは、この小説にユーモアを添えているのだが、今回はヤンの保護下にある少年ユリアン(戦争孤児)が初陣を飾る。

 ヤンの被保護者でありながら、生活面では逆にヤンの保護者であるかのようなユリアンはヤンを敬愛し、自分も軍人になりたいと考えていた。実は後年、ヤンやラインハルトにも匹敵する能力の持ち主であることが明らかになるのだが、軍人でありながら軍人を嫌うヤンは、彼が軍人になることには反対していたのだ。このあたりのヤンの葛藤と2人の遣り取りは微笑ましい。

 ユリアンの成長物語としても今後が楽しみなのである。

銀河英雄伝説1 黎明篇
銀河英雄伝説2 野望篇

 次は、『真夜中の五分前 side-A』(本多孝好・著/新潮文庫)。
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2007年05月16日

銀河英雄伝説2 野望篇


銀河英雄伝説 2 野望篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.04
ISBN :9784488725020


 どうやら、正伝だけではなく、外伝もすべて刊行されるらしい。楽しみ。


 中央集権国家・銀河帝国。その宇宙艦隊司令長官・元帥まで上り詰めた「常勝の天才」ラインハルトは、腐敗した旧権力=貴族の実力による排除に乗り出す。

 一方、民主主義国家・自由惑星同盟では、反戦平和主義者や堕落した政治家の排除と秩序の回復、そして銀河帝国打倒のため、一部軍人による首都制圧=クーデターが勃発する。

 実は、このクーデター=内紛は、銀河帝国内の権力闘争に集中するべく、ラインハルトが巧妙に仕掛けたもの。そうとは気付かずに「自らの意思」「自らの崇高な愛国心」による行動だと思い込んでいる軍人たち。民主国家の専制国家への勝利のために民主主義を破壊し、軍事力による専制体制を敷く自己矛盾、その滑稽さ。

 以前から今回のクーデターを予測していた、自由惑星同盟が誇る「不敗の魔術師」ヤン・ウェンリーは、任地イゼルローン基地から首都星ハイネセンへ、自らの艦隊を率いて鎮圧へ向かう。

 最終的には銀河帝国内ではラインハルトが勝利して自らの権力を固め、自由惑星同盟内ではヤンが勝利して民主体制が復活するのだが・・・。

 ラインハルトは、貴族への平民の離反を決定的にするため自らの意に染まぬ作戦を決行したことにより、幼馴染+無二の親友+最高の腹心=キルヒアイスとの間に微妙な距離が生じ、遂には悔やんでも悔やみきれない後悔を背負うことになる。

 ヤンは、大義名分のもと暴走する軍部というものに、自分も軍人であることに、そして美辞麗句を並べる政治家に、改めて辟易することになる。

 歴史小説スタイルで書かれたSF『銀英伝』。

 銀河帝国と自由惑星同盟、その両方に武器を供給して漁夫の利を得つつ、実質的に全宇宙を牛耳ろうとする経済国家フェザーンの三国志。さらに、かつての人類の故郷・地球を復興させて全宇宙の盟主たらんと画策する怪しげな宗教団体「地球教」。

 戦略・戦術。知略・謀略。理想・信念。組織と人間。戦争と平和。

 ラインハルトとヤン。2人の周囲に集まる優秀な人材。魅力的なキャラが多くて楽しいし、読み応えがある。

 あと、身に沁みる、身につまされる印象的なセリフや記述も実に多い。

 例えば“善行をする者はひとりでやりたがり、愚行をおこなう者は仲間をほしがる”とか。確かにそうかも・・・自戒、自戒。

銀河英雄伝説1黎明篇


 次は、『Q&A』(恩田陸・著/幻冬社文庫)。
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2007年04月30日

ゆらぎの森のシエラ


ゆらぎの森のシエラ
著者名:菅浩江(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.03
ISBN :9784488724016


 かの名作SF『永遠の森 博物館惑星』の著者・菅浩江氏の処女長編の復刊。

 バイオSFの衣を纏ったファンタジー。あるいはファンタジーの衣を纏ったバイオSF。

 ま、どっちでもよい。

 理系人間でもなくても、すいすい読めるSFファンタジー。


塩の霧で立ち枯れした木々と、狂暴化した動植物に囲まれた地、キヌーヌ。創造主パナードの手で最強の異形へと変えられ、殺人を強制されていた青年・金目は、彼を騎士と呼び慕う少女シエラと出会ったことで自我を取り戻す。主への復讐のため、異形のものたちに戦いを挑む金目。しかしシエラに内在する、進化に繋がる世界の秘密が、二人を想像もし得ない運命に導こうとしていた。
(「BOOK」データベースより)


 この作品の壮大とも言えるキモの部分については、ネタバレになりそうなので説明を控えるが、解説でも触れられているとおり、1989年発表の作品でありながら、あの一世を風靡した『利己的な遺伝子』論の先駆けのようなヴィジョン。

 結末にはSFらしい論理的帰結は感じられないが、ファンタジーでもあると思えば何の問題もない。

 もの凄い作品!とは言わないが、なかなかの佳作である。


 次は、『水滸伝・七 烈火の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。
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2007年04月20日

バビロニア・ウェーブ


バビロニア・ウェーブ
著者名:堀晃(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.02
ISBN :9784488722012


 1989年の星雲賞受賞作の初文庫化。そいうや『銀英伝』も星雲賞。


太陽系から3光日の距離に発見された、銀河面を垂直に貫く直径1200キロ、全長5380光年に及ぶレーザー光束―バビロニア・ウェーブ。いつから、なぜ存在するのかはわからない。ただ、そこに反射鏡を45度角で差し入れれば人類は膨大なエネルギーを手中にできる。傍らに送電基地が建造されたが、そこでは極秘の計画が進行していた。日本ハードSFを代表する傑作。星雲賞受賞。
(「BOOK」データベースより)


 ・・・ド文系アタマでは付いていけんかった・・・。

 無念。

 ところで、先日新潮文庫の新刊『青雲はるかに』(宮城谷昌光・著)を上下巻セットで買ったら、昔読んだことある本だった。復刊というか、版元変更なのね・・・(元は集英社文庫)。時々こういうことがある。注意しないと(泣)。

 
 気を取り直して、『猿曳遁兵衛 重蔵始末3』(逢坂剛・著/講談社文庫)を読もう。
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2007年03月14日

NO.6 #2


NO.6 #2
著者名:あさのあつこ(著)
出版社:講談社
出版年:2007.02
ISBN :9784062756358


 あさのあつこ氏のSF『NO.6』の第2巻。

 物語の導入部となる第1巻の内容は以前の記事を参照して頂こう。

 選ばれた者だけが住むことのできる清らかで快適な、しかし、どこか嘘の薫りプンプンの人工都市<NO.6>。

 そこを牛耳る人物2人が登場するが、その素性や何を目指しているのか(企んでいるのか)は、まったく不明。うち1人は、生物系の研究者で、<NO.6>を逐われた紫苑(しおん)の母・火藍(からん)とも、そして紫苑の相棒(?)で<NO.6>への復讐を誓うネズミ(←あだ名)とも、何か繋がりがあるらしい。

 第1巻で発生した<NO.6>の住民の奇怪な死(紫苑が殺人の容疑者とされた事件)は、この研究者の人体実験と関連があるようだ。実験の目的も内容も不明だが。

 そして、もう1人、紫苑とネズミが暮らす<NO.6>の排泄口のような街<西ブロック>で、<NO.6>の高官に売春を提供して儲けている、元新聞記者(かつては<NO.6>の仮面を暴こうとした)も、火藍とは知り合いらしい。

 第2巻に入っても、物語はまだまだ導入部。謎は謎のまま、というか謎が増えていく。この後が気になるね。

 で、今は話題沸騰中の『ロング・グッドバイ』(レイモンド・チャンドラー著/村上春樹訳/早川書房)を読んどりま。通勤時読書には不向きな分厚さ・・・。
posted by ふくちゃん at 23:58| Comment(4) | TrackBack(0) | SF

2007年03月10日

銀河英雄伝説1 黎明篇


銀河英雄伝説 1 黎明篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.02
ISBN :9784488725013


銀河系に一大王朝を築きあげた帝国と、民主主義を掲げる自由惑星同盟が繰り広げる飽くなき闘争のなか、若き帝国の将“常