2008年07月12日

対話篇


対話篇
著者名:金城一紀(著)
出版社:新潮社
出版年:2008.06
ISBN :9784101351513


 良かった!


・内容
本当に愛する人ができたら、絶対にその人の手を離してはいけない。なぜなら、離したとたんに誰よりも遠くへと行ってしまうから―。最初で最後の運命の恋、片思いの残酷な結末、薄れてゆく愛しい人の記憶。愛する者を失い、孤独に沈む者たちが語る切なくも希望に満ちたストーリーたち。真摯な対話を通して見出されてゆく真実の言葉の数々を描いた傑作中編集。
(「BOOK」データベースより)


「恋愛小説」
大学3年のとき、僕はふとしたことで、それほど親しくもなかった、いや誰とも親しくなく、影の薄い同級生の家に招かれ、彼の思いもよらぬ告白を聴くことになる。彼は幼い頃から、親しくなった相手が必ず死ぬという体験を繰り返し、周囲から「死神」と呼ばれるようになり、その運命から逃れるために他人と距離を取ってひっそり生きてきたのだ。ところが、前年、そんな彼の過去を全て受け入れ、彼の運命を恐れもしない素晴らしい女性が現われる。2人は結ばれ、この上もなく幸せで充実した時間を過ごし、彼は初めて生きる喜び、愛する喜び、他人と心を交わす喜び知る。だがやがて、お決まりの運命が彼女の頭上にも・・・。

「永遠の円環」
尊敬する美しく聡明な先輩。僕はプラトニックな思いを抱いていたが、彼女は大学の教授と不倫の挙句に自殺。自殺の前日、彼女から不倫のことで相談を受けていた僕も、直後にガンで入院。死を待つベッドの上で、教授への恨みを果たしたいと願い続けていた。そんなある日、実は「殺し屋」だという大学の同級生Kが見舞いに現われて・・・。

「花」
脳腫瘍がもとで会社を辞めた僕にアルバイトが舞い込んだ。冤罪事件の被告のために25年間闘い続けついに勝利した老弁護士に雇われ、東京から鹿児島までドライブするのだ。25年前に別れた彼の妻が2人の思い出の地・鹿児島のホスピスで亡くなり、遺品を受け取りに行くという。新婚当時の2人がそうしたように、1号線〜2号線〜3号線と下っていく。「絶対に手を離さない」という約束を守れずに別れてしまった妻、「絶対に忘れない」と誓いながら今や顔さえも朧げな妻の元へ。かつてと同じ道を往きながら、大切な記憶を取り戻すために。


 ああ、全く魅力が伝わらないド下手な要約。

セカチューなぞ吹っ飛ぶ、切なさと美しさの「恋愛小説」。ちょっと不思議な手触りの「永遠の円環」。心温まる「花」。

 どの作品にも人を愛することの喜びや哀しみが溢れている。各70ページほどの作品だが、小説を読んだなぁ・・・という満足感があった。

 “大切な事柄はひどく脆い氷の像のようなもので、言葉はノミみたいなものだ。よく見せようとノミを打っているうちに、氷の像は段々と痩せ細り、いつの間にか砕けてしまう。(「恋愛小説」)”


 次は『老ヴォールの惑星』(小川一水・著/ハヤカワ文庫)。
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2008年06月01日

蒲公英草紙 常野物語

蒲公英草紙

著者名:恩田陸(著)
出版社:集英社
出版年:2008.05
ISBN :9784087462944


 実は5月25日に引っ越した。

 その準備で忙しく、PCになかなか向かえず、新居でのネット接続工事も結局今日になってしまい・・・。

 ご無沙汰でした。 

 読み終わった本が溜まってしまったので、毎日(?)簡単に振り返ろう。


・内容
青い田園が広がる東北の農村の旧家槙村家にあの一族が訪れた。他人の記憶や感情をそのまま受け入れるちから、未来を予知するちから…、不思議な能力を持つという常野一族。槙村家の末娘聡子様とお話相手の峰子の周りには、平和で優しさにあふれた空気が満ちていたが、20世紀という新しい時代が、何かを少しずつ変えていく。今を懸命に生きる人々。懐かしい風景。待望の切なさと感動の長編。
(「BOOK」データベースより)


 『光の帝国』『エンドゲーム』に続く常野(とこの)シリーズ第3弾。予知、千里眼、長命・・・超常的な力を持つゆえに、定住せず、群れず、権力を求めず、密やかに穏やかに生きる常野一族。『光の帝国』は常野一族の様々な人を描いた短篇集(だったっけ?)、『エンドゲーム』は確かちょっと怖い長編(多分そうだった)。

 で、この『蒲公英草紙』は、今はもう戻らない古き良き時代を、端正な日本語で振り返るノスタルジックな物語。

 超能力者が出てくるとはいっても地味というか静かなストーリーだが、不思議に美しく、切なく、懐かしく、もの哀しい。

 理路整然と納得させてくれる物語を求める人には向かんかなぁ・・・。


 次は『優しい音楽』(瀬尾まいこ・著/双葉文庫)。
posted by ふくちゃん at 20:26| Comment(2) | TrackBack(0) | 恋愛小説

2007年07月10日

真夜中の五分前 side A/side B


真夜中の五分前
著者名:本多孝好
出版社:新潮社
出版年:2007.07
ISBN :9784101322513



真夜中の五分前
著者名:本多孝好
出版社:新潮社
出版年:2007.07
ISBN :9784101322520


 ブログを更新しそびれている間に、sideA、sideB両方読み終わったので、まとめて。

 ネタバレあり。

 
 sideAでは広告代理店に勤めている主人公の「僕」。学生時代、交通事故で恋人を失ったが、愛していたはずの彼女を失っても、自分が何も失わず、ただ呆然とするだけで、決して心の底から哀しんではいないことに、今も混乱している。自分は彼女を愛してはいなかったのではないかと。

 そんなある日、プールで偶然知り合った女性・かすみとプラトニックともいえるデートを重ねるようになる。彼女には一卵性双生児の妹・ゆかりがいる。そして、ゆかりには裕福で非の打ち所のない好青年の婚約者・尾崎がいる。

 実は、かすみも尾崎を愛している。ゆかりと彼女は、思考も志向も嗜好も完全にシンクロしてしまうのだ。なぜ、自分と尾崎ではなく、ゆかりと尾崎なのか?そんな想いから逃れるために、僕と交際(のようなもの)を続け、僕もそれを受け入れてる。

 やがて、僕とかすみは互いの混乱の中で寄り添い合い、結ばれる・・・。

 sideBは、sideAから2年後。僕は転職して、閑古鳥の鳴く店をリニューアルして繁盛店に変えるプロデューサーのような仕事をしている。そして、かすみは冒頭から死んだことになっている(これには結構驚いた。同時にまたこのパターンかよ、とも)。1年半前、ゆかりと2人で行った海外旅行で事故に遭遇したのだ。ゆかりの方は何とか無事で、現在は尾崎と結婚している。

 しかし、ある日、尾崎が僕を訪ねて来て「ゆかりと会ってほしい」と言う。「彼女が本当にゆかりなのか、それともかすみなのか確かめてほしい」と。


 本多孝好は若い頃から上手い作家だった。まだ20代の頃に出版された『MISSING』や『Alone Together』などは好きな小説である。

 今作も上手いことは上手い。

 洒落た文体、洒落た会話。

 だか、どうしても読みながら「しゃらくせぇ!」という想いを禁じ得なかった。やや虚無的で、でも優しげな主人公の性格・言動や仕事内容、双子の登場、かつての死んだ恋人・・・村上春樹の安っぽいパクリを読んでいるようだった。

 これはアカン。


 次は『闇の守り人』(上橋菜穂子・著/新潮文庫)。
posted by ふくちゃん at 00:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 恋愛小説

2006年10月01日

孤独か、それに等しいもの


孤独か、それに等しいもの
著者名:大崎善生(著)
出版社:角川書店
出版年:2006.09
ISBN :4043740034


 大崎善生氏の小説で文庫化されたものは、今のところ全部(と言っても4冊だけ)読んでいるが、いちばん良くなかった。

 特に「八月の傾斜」「だらだらとこの坂道を下っていこう」「孤独か、それに等しいもの」の3篇は、技巧的に過ぎるというか、こねくり回したような文章表現や比喩があり、ちょっとそこが辛かった。無理して独自性の高い表現を使おうとしているように思えた。自然な表現を使えばもっと良くなるのに・・・。
 
 あと、「だらだらとこの坂道を下っていこう」はタイトルが良くないと思う。このタイトルのおかげで読み出してすぐ、どんな感じの結末になるのか予想できてしまって、もったいない。

 最後の2篇「シンパシー」「ソウルケージ」はgood。


 大崎氏の文庫作品4冊の僕の中での順位は、

1位 パイロットフィッシュ
2位 九月の四分の一
3位 アジアンタムブルー(映画化!)
4位 孤独か、それに等しいもの

というところ。


 「喪失感」漂う大崎作品は、村上春樹氏の初期作品が好きな方なら、気に入るのではないだろうか。
posted by ふくちゃん at 21:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 恋愛小説