2008年09月23日

魔王


魔王
著者名:伊坂幸太郎(著)
出版社:講談社
出版年:2008.09
ISBN :9784062761420


 ドラマの『魔王』とは無関係。

 文章上手いなぁ。

 会話やちょっとした描写のセンス。思わずニヤリとしてしまい、電車の中で笑いを噛み殺す。巧まざるユーモア。

 絶対にありえない一種SF的な、ファンタジックな設定も違和感なく読ませる。

 ああ、この筆力が海堂氏にあれば・・・(笑)。


 この本に納められた『魔王』とその5年後を描く『呼吸』が書かれたのは、2004年と2005年。小泉氏が郵政選挙で圧勝する前のこと。

 にも関わらず、まるでその時の、そして今の日本を書いているような作品である。

 ムードに流され、自分の頭で考えない国民(自分含む)。威勢の良い言葉、小気味の良い言葉、耳に心地よい言葉に酔い。

 喉元過ぎれば熱さを忘れ。


 世の中をダメにする『魔王』とは・・・。

 筋の通った(ある意味危険な)直言を述べる人気の政治家・犬養なのか。その言葉に流される国民全体なのか。それとも、犬養が作り出そうとする世の中の流れに、独り己の特殊能力で抵抗を試みる普通の会社員・安藤なのか。5年後、自分の特殊能力に気付いた安藤の弟・潤也なのか。

 洒脱で安穏とした心地よさに包まれながらも、ここに書かれていることは、実に怖い話である。国もそこで暮らす人間も、時に「正論」や「正義」や「誇り」や「自尊心」のために暴走してダメになっていくのだ。そうと気付かぬうちに、何気ない日常に紛れながら。

 この作品から50年後の日本、“検索”によって監視される社会を描く続編『モダンタイムス』が10月下旬に発売される。読みたい!でも文庫本になるまでガマン(笑)。

 あ、そうそう。この作品には『死神の精度』のあの人が登場するのだ。これにもニンマリ。


 次は、『居眠り磐音江戸双紙 探梅ノ家』(佐伯泰英・著/双葉文庫)。
posted by ふくちゃん at 10:42| Comment(3) | TrackBack(4) | その他
この記事へのコメント
 こんにちは。
 トラバ飛ばせてみましたが、うまく飛びますか少々不安。なんせはてなですから^^
Posted by 樽井 at 2008年09月25日 11:50
某金城くんを探すために、この本を買ってしまいました。
読んでも面白い小説なので、満足です。
井坂氏のようなスタイリッシュな小説は本来苦手なのですが、死神つながりで楽しく読んでいます。
Posted by kinkacho at 2008年10月08日 12:47
>樽井さん。
今さらですが(すいません^^;)大丈夫です。

>kinkachoさん。
スタイリッシュ過ぎると嫌味な感じになりますが、伊坂氏はその加減が絶妙だと思います。
Posted by ふくちゃん at 2008年10月08日 21:25
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※半角英数字のみのコメントは書き込みができないようになっています。

この記事へのTrackBack URL

※半角英数字のみのトラックバックは受信されないようになっています。

「魔王」 伊坂幸太郎著
Excerpt:  「魔王」です。  シューベルトでも、ダンテでも、ルシフェルでも、韓流ドラマでも、ましてや週刊少年サンデーに連載のそれでもなく、伊坂幸太郎の「魔王」であす。  (だって、検索で真っ先に伊坂幸太郎さん
Weblog: 樽井さんの読書&電化よもやま日記
Tracked: 2008-09-25 11:36

『魔王』 伊坂幸太郎
Excerpt: 『魔王』 伊坂幸太郎なんだか薄ら寒いお話しでした。小説というのは読み始めると同時に別世界に飛び、読み終わると同時に現世界に戻ってくるのが常ですが、この『魔王』の舞台はまさに現在私たちが暮らしている現実...
Weblog: 勝手に装丁室
Tracked: 2008-09-26 11:40

魔王、伊坂幸太郎
Excerpt: 装幀は松田行正。小説現代特別編集「エソラ」2004年12月・第一号、2005年7月・第二号掲載。表題作と「呼吸」からなる連作中編鮮.
Weblog: 粋な提案
Tracked: 2008-09-27 01:42

魔王
Excerpt: 魔王 伊坂幸太郎著何かにつけて思案を巡らせる安藤兄は、自分に不思議な能力が備わっているのでは無いかと、ある日発見する。そして、行??.
Weblog: slow match
Tracked: 2008-09-29 00:01