わたしを離さないで 著者名:カズオ・イシグロ(著)
土屋政雄(訳)
出版社:早川書房
出版年:2008.08
ISBN :9784151200519
『このミス2007年版』の海外編で10位にランクインした作品であるが、ミステリと呼ぶには違和感あり。
確かに謎めいた物語であり、徐々にその謎が明らかになってくるところに妙味があるのだが、別に論理的な謎解きがあるわけじゃない。“謎”はストーリーテリングの道具であって、作品の本質は別のところにある。ジャンル分けにどれほどの意味があるかはさておいて、やはりミステリとかエンタメというより、純文学と呼ぶにふさわしいだろう。
・内容
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。
(「BOOK」データベースより)
ネタバレになるので詳細は書かないが、上の「内容」を読んで、どういう世界設定の物語か、想像つく人もいるだろう。
で、このような設定は、別の小説や映画でも例があり、それ自体に衝撃や驚きはない。しかし、その設定が活かされているという意味では、素晴らしい。
こんな世界はやっぱり嫌だよ。辛すぎる。
心震える青春小説。命の意味、人生の意味を静かに問いかける1冊。読後、もの凄く切なくなる。
次は『銀河英雄伝説10落日篇』(田中芳樹・著/創元SF文庫)。


確かにこのミスにランクインしているのを見て「カズオ・イシグロがミステリ?」となったのを思い出しました。
青春小説と呼ぶにふさわしいのにその奥にある命の重さと残酷さに言葉も詰まります。
残酷で、だからこそ美しく切ない、情感ある小説ですね。
現実だったら、美しいなんて絶対言えませんけど。