ユージニア 著者名:恩田陸
出版社:角川書店
出版年:2008.08
ISBN :9784043710027
町の尊敬を集める北陸の名家・青澤家。当主の還暦と母親の米寿を祝う宴で起こった大量毒殺事件。
第一章では、子供時代に事件に遭遇し、大学生になってから事件を振り返るルポルタージュ風小説を執筆して話題となった女性が、事件と作品を振り返って語る。犯人は逮捕されたのだが・・・。どうやら彼女は、青澤家唯一の生き残り緋紗子(ひさこ)を真犯人と疑っているらしい。事件当時は中1の、大人であれ、子供であれ、周囲の人間が特別な畏れや憧れを抱かずにはいられない盲目の美少女。緋紗子は彼女に言ったのだ。「今日は絶対に家に来てはいけない」と。
第二章は、第一章の彼女=雑賀満喜子の助手として、取材に同行した大学時代の後輩男性の語り。満喜子の書いた作品『忘れられた祝祭』の細部は、取材に応じた人たちの証言と微妙に異なるという。その意図は?「みんなが見るのもので、特定の人にだけメッセージを伝えたい時にはどうする?」彼女はそう言った。事実の改変は、真犯人へのメッセージなのか。
しかし、2人は誰に向かって語っているのだろう?(後で分かる)
第三章は、一転して当時に遡って、3人称視点で事件が語られる。“相澤”家で起こる大量毒殺。唯一の生き残りの名は“久代”。
・・・あれ?
ああ、そういうことか。この第3章は何か?気付くのに随分時間がかかってしまった。
第四章は、青澤家の家政婦を務めていた故人の娘の語り。
第五章は、事件を追いかけた刑事の話。
第六章は、満喜子の長兄の語り。
第七章は、犯人と接触した文房具店の若旦那の話。
第八章は、子供時代に犯人とされた青年と親しく接していた男の語り。
第九章は、タイトル通り『いくつかの断片』。誰の会話なのか?(後で分かる)
第十章は、満喜子の取材日誌と『忘れられた祝祭』編集者の語り。
第十一章は、再び事件を追いかけた刑事が登場しての語り。
第十二章は、自殺した満喜子の次兄からの手紙や、満喜子の死を伝える記事。
第十三章は、語りの“聞き手”と緋紗子の対峙。
第十四章は、満喜子の回想。
恐らく、真犯人はこの人で、事件の真相はこうだろう・・・と、ほとんどの人が思うだろう。しかし、意図された殺人なのか、別の解釈が成り立たないでもない。
「誰がはっきりした小説なんか書いてやるもんか!」という意気込みで書かれたというが、成功してるんじゃないだろうか。
3人称と1人称、現在と過去。登場人物たちの像が立体的に結ばれてくる。人間というものの多面性が浮かんでくる。
ミステリとしてどうのこうの言う以前に、僕は好きだ、この作品。
しかし、最後の「ユージニアノート」は蛇足のような・・・。
次は『のだめカンタービレ#21』(二ノ宮知子・著/講談社)。

