2008年08月19日

弥勒の月


弥勒の月
著者名:あさのあつこ(著)
出版社:光文社
出版年:2008.08
ISBN :9784334744564


 『バッテリー』のあさのあつこ氏、初の時代小説。


・内容
小間物問屋遠野屋の若おかみ・おりんの水死体が発見された。同心・木暮信次郎は、妻の検分に立ち会った遠野屋主人・清之介の眼差しに違和感を覚える。ただの飛び込み、と思われた事件だったが、清之介に関心を覚えた信次郎は岡っ引・伊佐治とともに、事件を追い始める…。“闇”と“乾き”しか知らぬ男たちが、救済の先に見たものとは?哀感溢れる時代小説。
(「BOOK」データベースより)


 藤沢周平氏に憧れて、時代小説を書いたというあさの氏。初期の藤沢作品を思わせるような、どちらかといえば暗い色彩の時代小説だ。

 主人公の信次郎は、若いながらも優れた同心だが、心のうちに渇いた虚無を抱え、いつもどこか尖っている。少しでもバランスを崩せば、破綻しそうな危うさも感じさせる。はっきり言って、僕には共感しにくいキャラ。

 その手下の岡っ引き・伊三次・・・じゃなくて、伊佐治(いさじ)は、信次郎の父・右衛門(えもん)にも仕えていた大ベテラン。人間味に溢れていた右衛門と信次郎の落差に戸惑いながらも、信次郎をしっかり支える。伊佐治と信次郎の時に軽妙な(しかし、どこか緊張を孕んだ)遣り取りが、この作品の重たさを辛うじて緩和してくれるのだ。

 そして、妻の死の調べを信次郎に頼む遠野屋主人・清之介は、実は凄絶な過去を抱えた“修羅”である。闇の世界から普通の世界へと自分を導いてくれた大切な人を、過去の亡霊に奪われた彼は何処へ行くのか・・・。

 気になる終わり、続きがありそうな終わり方・・・と思ったら、案の定。この後、『夜叉桜』という続編があり、さらに続くようだ。

 あさの氏曰く、まだ信次郎、伊佐治、清之介たちの全貌が掴めない、だから書きたいということらしい。

 なかなか面白い。

 既にして、他の時代小説とは異なる個性がある。好き嫌いは分かれそうだが(って何でもそうだが)大したものだ。


 次は『六とん2』(蘇部健一・著/講談社文庫)。
posted by ふくちゃん at 23:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 歴史・時代小説
この記事へのコメント
ただいま・・・ですw
すっかりご無沙汰してしまいました。

ちょこちょこ覗いては
あ〜ふくちゃんさん、今こんなの読んでるんだ〜と思いながらも・・・テヘヘッ(*゚ー゚)>

さてこの弥勒の月、個人的には結構好きなタイプです。
この作家の現代ものは読んだことないし
読もうとも思ってはいないのですが
(タイムスリップできない性質なのでw)
言葉の端々が好きです。
夜叉桜どうしますか( ̄ー ̄)ニヤリッ
ハードカバーでは手が出そうにないので
文庫本待ちなんですけどね^^
Posted by やん at 2008年09月09日 00:47
>やんさん。
続編、読みますよ。
僕も文庫になってから・・・ですが(^^)。
Posted by ふくちゃん at 2008年09月09日 19:35
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