消滅の光輪 上 著者名:眉村卓(著)
出版社:東京創元社
出版年:2008.07
ISBN :9784488729028
傑作SF「司政官 全短編」の続編。
前作は、宇宙の他の星系・惑星に進出した地球人類が、独自の生態・文化・文明を持つ先住生命体と融合・協調しつつ、自らの植民と先住生命体の教導をスムーズに行うために送り込んだ“司政官”と“ロボット官僚群”の活躍を、司政制度の草創期から確立期、さらには衰退期まで様々な時代・惑星を舞台に描いた連作短編。
で、今作は、司政制度の形骸化・崩壊がさらに進み、司政官の権威・権力も相対的に低下した時代の、ある植民惑星を舞台にした1000ページの長編。
・内容(上巻)
植民星ラクザーンでは、人類と瓜二つの穏和な先住民と、地球人入植者が平和裡に共存していた。だがその太陽が遠からず新星化する。惑星のすべての住民を、別の星に退避させよ ― 。空前ともいえるこの任務に、新任司政官マセ・PPKA4・ユキオは、ロボット官僚を率いてとりかかかるが・・・。《司政官》シリーズの最高作にして眉村本格SFの最高峰。泉鏡花文学賞、星雲賞受賞作。
・内容(下巻)
司政官マセは太陽の新星化を公表し、緊急指揮権を確立する。だが退避計画の遂行は困難をきわめた。移住先を決定する住民投票、脱出のための宇宙船運行の手配・・・。しかも計画が進むにつれ住民たちの反撥も高まってゆき、ついには大規模な暴動となってマセを襲う ― 。さらに奇妙にも先住者たちは、誰ひとりとして退避勧告に従おうとしない。空前の計画は完遂されるのか?
司政官マセは、まず太陽の新星化=惑星ラクザーンの消滅を公表してから、退避に必要な全ての計画を実行するという方法は取らない。新星化を発表した時点でパニックが起こり、金のある連中から勝手に逃げ出し、そうでない人は取り残されるからである。
そこで、ギリギリまで新星化の事実は伏せたまま、退避費用捻出のため、住民に重税を課する(地球連邦にもその費用を拠出する余裕はない)。
また、退避先での新生活に必要な資金を配賦するため(という理由も当然伏せたまま)、他惑星で高く売れるラクザーンの海藻を、採取業者を束ねて大量採取する(これまで海藻の取扱を牛耳ってきた連邦直轄企業との対立を覚悟で)。
この他にも熟慮を重ね、目的を秘し、あえて周囲の反発・非難も織り込んだ上で、次々と細かく、手練手管を尽くし、ある意味非民主的に(民主的に事を進める時間などないのだ)手を打つ。すなわち、太陽の新星化と惑星の消滅を明らかにした時点では、退避計画は完璧に準備され、あとはその通りに進めば良いという状況を作り出すことでパニックを防ぎ、全員を平等に退避させようと。
とにかく緻密に作りこまれた物語。
地味と言っても良い作品なのだが、マセ(とロボット官僚)の仕事ぶり、次々と立ちはだかる問題と障害、様々な謎・・・。果たしてマセの計画は実現されるのか?人々の頂点に立つ為政者の矜持と重圧と孤独。読み応えあったわぁ〜。
次は『闇の子供たち』(梁石日・著/幻冬舎文庫)。

