震度0 著者名:横山秀夫(著)
出版社:朝日新聞出版
出版年:2008.04
ISBN :9784022644350
『クライマーズ・ハイ』が堤真一主演で映画化される横山秀夫氏。
「横山秀夫の警察小説」といえば、安心のブランドである。何作も読むうちに、初めて出会った頃の「!」という気持ちはどうしても薄らぐが・・・それでも、常に一定以上の水準で楽しませてくれる。
本作も例外ではない。
阪神大震災の前日、600km離れたN県警で警務課長・不破義仁が失踪した。仕事は優秀で、県警の内部事情に通じ、上司・同僚・部下のいずれからも人望の厚い不破が、どうして誰にも何も語らずに消えたのか?
N県警1のキャリアではあるが、出世の行先は見え始めた本部長の椎名(46)。N県警2のキャリアで、こちらは将来の警察庁長官の座を争うと目されるやり手の警務部長・冬木(35)。準キャリアで、不破には個人的に恩義を感じているN県警3=警備部長・堀川(51)。地元の叩き上げ(ノンキャリア)で自分こそが3、どころか冬木にも対抗心を燃やす刑事部長の藤巻(58)。そして、同じくノンキャリアで、次の刑事部長の座を狙う、生活安全部長の倉本(57)と交通部長の間宮(57)。
主に彼ら、N県警幹部6人の視点から描かれる物語と人物造型には、奥行きがある。
不破が消えたことによる県警内のパワーバランスの崩壊。彼らの抱える野心・権力欲・競争意識・セクト主義・自己保身・相互不信・過去の傷・裏の顔が交差する。
部下と妻たちの思惑や人間関係も絡む。
やがて、辿り着く不破失踪の哀しい真相。
脇役陣を描き切れていないこと、阪神大震災を絡めた効果がほとんど感じられないことには、やや残念・・・。
しかし、毎度ワンパターンの感想ながら、組織と人間を書くのが上手いし、読ませる。
次は、『花まんま』(朱川湊人・著/文春文庫)。

