蠱猫 著者名:化野燐(著)
出版社:講談社
出版年:2008.03
ISBN :9784062759892
書店で書物に呼ばれることがある。
そして、全く見たことも聞いたこともなかった作家の知らない作品を買うことがある。
これもそんな一冊。
・内容
妖怪を具現化する力を持つ禁断の書、『本草霊恠図譜』。図書館の片隅の古びた土蔵から、美袋小夜子がこの書を発見したことで、学園都市は戦いの舞台へと変貌する。“蠱猫(こねこ)”とは?“有鬼派”とはいかなる者たちか?穏やかで近代的な学園都市が激しく凄惨で果てない対決の嵐の中に。妖怪伝奇小説登場。
(「BOOK」データベースより)
文庫本の4ページに、『版画・妄想記述言語』というものが載っている。本編を読むと分かるが、どうやら妖怪を具現化する際に使用する文字のようだ。むろん架空の言語で、製作は著者自身、清書は京極夏彦氏。
化野燐氏は在野の妖怪研究者だそうで、巻末には多くの興味深げな参考文献。
ノベルズでは既に7巻刊行されているシリーズの第1作である。
な〜んか面白そう・・・。
と思って、読んだのだが。
主人公の1人、美袋(みなぎ)学園創始者・玄山の血を引き、今は美袋玄山記念図書館の司書として、玄山が土蔵に残した夥しい古今東西の博物館学的知の集積を整理・分類する美袋小夜子が、何か良からぬことを企んでいそうな有鬼派たちから『本草霊恠図譜』を守るために、自らに取り憑いた蠱猫の化身に変化して闘い始める第1章はまだ良い(一文なが!)。
そこからいったん時間を遡って(第2章のかなり後までそのことに気付かなかったが、そういう書き方もどうかと思う)、もう1人の主人公、美袋学園文学部人類学研究室の学生・白石優が登場する第2章。これが長いわりに話が進まない。ダラダラ長い。テンポ悪い。
この白石が(傍からは全くそう見えないのに)相当なコンプレックスの持ち主で、ネガティブなのは、まあ良い。人間誰でもそういう面はあるし、主人公だからといって、いつも前向きである必要もないだろう。
でも、すぐに『ぼくはダメ人間なのだ』と心の中で独白する(しかも何度も)のが、腹立つ(笑)。作家として、彼のそういう思いをもう少し別の形で表現する方法はないものか。
で、白石は友人たちと共に挫折とはとてもいえないレベルの出来事で挫折して、ひとり自転車で旅に出る。でも、あの程度の出来事が挫折とはどうしても思えないので、全く共感できない。この旅が後々の伏線になるならともかく(続刊を読んでないので分からない)、そうでないならほとんど無駄な(しかも長い)描写である。
さらに、特に気になったのが描写の重複。
例えば、371ページ。
あの光景が、死に近づいた瞬間に見えるというまぼろしのようなものだったのか、それとも、からだを脱け出た魂が本当にどこかをさまよって眼にしたものだったのかは、今もってわからない。
あるいは・・・。
ただの夢だったのかもしれない。
そして、419ページ。
あの断片が、死に近づいた瞬間にみえるというまぼろしのようなものだったのか、あるいは、からだから脱け出た魂が本当にどこかをさまよって眼にしたものだったのかは、今もってわからない。
あるいは・・・。
ただの夢だったのかもしれない。
次に、425ページ。
視界が目まぐるしく移動した。
早送りビデオのように素早く、融通無碍に視界が切り替わった。
物理的な制約から解き放たれた視線だけが、あちこちを彷徨った。
部屋から部屋へと。
襖を突き抜け、次の部屋へ。
天井をすり抜け、二階へ、さらに上層へ。
やがて・・・
ぼくは大広間にいた。
で、428ページ。
視界がふたたび目まぐるしく移動した。
早送りビデオのように素早く、融通無碍に視界が切り替わった。
物理的な制約から解き放たれた視線だけが、あちこちを彷徨った。
部屋から部屋へと。
襖を突き抜け、次の部屋へ。
床をすり抜け、二階へ、さらに下層へ。
やがて・・・。
ぼくの眼は、見覚えのある部屋にいた。
・・・この重複は何かの効果を狙ったものだろうか?その意図は僕には理解できない。
というわけで、冗長の見本のような作品だと思った。
辛口だなぁ。。。我ながら。。。
でも多分、次も買うと思う。それで面白いと思えなかったら、このシリーズから離脱するだろう。
次は『水滸伝・十八 乾坤の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。

