2008年03月22日

高城高全集1 墓標なき墓場


墓標なき墓場
著者名:高城高(著)
出版社:東京創元社
出版年:2008.02
ISBN :9784488474010


 日本のハードボイルド小説の歴史は、この人が1955年に発表した『X橋付近』に始まるそうだ。雑誌『宝石』の懸賞で江戸川乱歩(!)の目に留まり、入選1位となった作品だそうである。

 その後、いくつかの短編と唯一の長編である本作を発表するも、1970年以降は沈黙(本業=新聞記者が忙しいとか、いろいろ理由はあるらしい)。幻の作家となっていたとか。

 ところが昨年、地方の出版社から過去の作品を集めた短編集『X橋付近』が刊行され、『このミステリーがすごい!』と『ミステリが読みたい!』でベストテン入り。37年ぶりの新作も発表されて復活!とのことである。

 文庫本の著者紹介によれば、1935年生まれというから、70歳を越えるわけである。スゴ。

 で、本作。


・内容
昭和33年、夏、北海道。未明の北の海で殿村水産所属の運搬船、天陵丸が沈んだ。乗組員6人は全員死亡。その朝、花咲港に入港した一隻のサンマ船が岸壁に衝突した。海難事故と不審なサンマ船の衝突事故に疑問を抱いた不二新報釧路支局長江上武也は独自の取材を進めた。単なる事故か、それとも事件か・・・。だが、何者かの策謀によって江上は釧路を逐われる。それから3年。かつての関係者が次々と疑惑の死を遂げる釧路の街に、江上は帰ってきた ― 。
(文庫本扉の解説より)


 ま、この作品に関しては「いわゆるハードボイルド」という感じは、あんまりしない。だから、そういう「いわゆるハードボイルド」(的な雰囲気)がお好きじゃない方も安心して読める。

 推理小説としては、ここまで錯綜した事件の構図(よく出来てる)を、この程度の調査と論理(と言えるかどうか“勘”と言った方がいいかも)で、見抜けるとは思えない・・・。

 少々地味だし、特別面白いということはないかな。

 ただ、身長を尺や寸で表したり、現代の読者のために注釈が施されていたりするものの、端正な文章は古臭さを感じさせない。読んで損したという気は全然ない。

 それにしても、この時代の小説に“プリーツスカート”とか“フローリング”なんて言葉が使われているんだなぁ・・・と妙なところに感心。

 巻末の解説や著者本人の言葉からすると、短編にこそ本領がある作家らしいので、5月刊行予定の第2巻(『X橋付近』も収録)も、一応買ってみよう。たまには、こういう歴史を押さえておくのも悪くない。


 次は、『弥勒の掌』(我孫子武丸・著/文春文庫)。
posted by ふくちゃん at 20:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ハードボイルド
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