白い息 著者名:佐藤雅美(著)
出版社:講談社
出版年:2008.02
ISBN :9784062759632
約3年ぶりのシリーズ第7弾。刊行間隔が長いんだよなぁ・・・。
佐藤雅美氏はメジャー作家といえるかどうか微妙な位置にいると思うが(失礼)、昔TVドラマ化された本シリーズは代表作(NHK。主演は舘ひろし)。時代物が好きな方で、未読の方はぜひ!他の作家とはまた全く違う独自の魅力がある。
シリーズ当初から前作まで、紋蔵の所属は一貫して奉行所の例繰方(れいくりかた)である。すなわち、過去の様々な民事・刑事事件の顛末や判例を記録・収集・管理している部署だ。華やかな捕物とは縁がない。
元々は花形の常廻りを志望ながら、本人の意思や性向とは無関係に突然居眠りしてしまう奇病 − 巻末の解説によると「ナルコレプシー」=「日中において場所や状況を選ばず起きる強い眠気の発作を主な症状とする神経疾患(睡眠障害)」<Wikipedia> − のために、若くして閑職に回された紋蔵。
しかし、のっけから閑職に追いやられた挫折経験から報われぬ人の心の痛みを知り、まじめにキャリアを積んで誰よりも過去の事件に精通した紋蔵は、今の江戸で起きる数々の厄介なトラブルに対して関係者全員が納得できる解決法を提示し、やがて上司や同僚、果ては御奉行にさえ一目置かれる存在になる。
そして、遂には前巻の終わりで、定廻りへの転属が決まったのだった。
このシリーズを読み進むうちに、なんとなく物書同心=例繰方と思い込んでいたので、定廻りになったらタイトルはどうするの?と思っていたが、「物書同心」とか「年寄同心」とかいうのは、「役目」ではなく身分を現すに過ぎないのだそうだ。なるほど。
他の捕物帳には登場しないような独創的な事件。当時の法令である「御定書」の法解釈や過去の事件や判例を参考にした解決など、独特の魅力は楽しい。ただし、ミステリ・チックな鮮やかな結末を期待する人には不向き。でも、当時の現実の捕物って、こんなもんだったんじゃないかな。
ただ、定廻りになったことで、手下の岡っ引きとの捕物が中心になり、役所という組織の理不尽や紋蔵の鬱屈、しかしながら常に静かにベストを尽くす紋蔵・・・という魅力がやや減少。準レギュラーたちの登場も減り、寂しい。
と思っていたら、巻末では再び例繰方に戻されることに。定廻りとして大方の予想を越える活躍ぶりを示していた紋蔵だが、彼が抜けた後の例繰方がどうにも頼りなく、やはりあの部署には紋蔵がいなければ・・・と上が判断した次第。今度は左遷ではない。
ようやく長年の希望が叶って定廻りになり、実入りも良くなって、一家の暮らしも楽になったのに・・・。しかし、例繰方を離れたことによって、紋蔵もそのあり方を改めて考えたらしい。泣き言を言わずに異動を受け入れ、理想の例繰方を作ろうと考えている。
いや、なかなかどうしてカッコよいのだ、紋蔵は。
次は、『ティファニーで朝食を』(トルーマン・カポーティ著/村上春樹訳/新潮社)。

