水滸伝 16 著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2008.01
ISBN :9784087462517
登場人物一覧の梁山泊戦死者リストも随分増えた第16巻。
限界まで戦い抜いたあの戦から1年半。偽りの講和工作で時を稼ぎながら、順調かつ急速に態勢を回復しつつある梁山泊。
武松(ぶしょう)と李逵(りき)は、隣国・遼の反政府勢力・女真族から武器などを購入するために、蔡福・蔡慶と共に潜入する。
梁山泊が運営する街・済州では、肉屋と食堂を営みながら物流監視・情報収集に当たる孫二娘(そんじじょう)のもとに、段亭と名乗る男が現われる。元は、人身売買や闇の妓楼・金貸しの経営者であったが、それを承知の上で、今の段亭は信用できると認めた孫二娘は、彼が済州内で肉を卸すことを許可、梁山泊の主要メンバーの一部とも引き合わせる。だが、この男はあの暗殺者Sの完璧なる変装。そして、孫二娘の亭主で済州を仕切るH、兵站の総責任者Sが命を落とす。
だが、暗殺者Sも、あの日以来、彼を探し続けてきた梁山泊飛竜軍の劉唐に倒される。Sの臨終間際の2人の会話が良い。もし、敵同士でなかったなら・・・。
暗殺なら梁山泊も負けてはいない。公孫勝は遂に青蓮寺のE(隠したことにならんなコレ)を仕留める。そして、ほぼ同時、少し離れた他の場所での、燕青<梁山泊>と洪清<青蓮寺>、体術の達人同士の息詰まる勝負。
公孫勝とE、燕青と洪清の遣り取りもまた良し。
敵・味方を超えた「漢」と「漢」の心の・・・。
一方、先の大戦で疲弊したのは宋も同じ。地方軍を適切な人員削減と綱紀粛正で建て直し、担当の各軍管区の守りを徹底させる。軍費の捻出にも余念がない。
禁軍(中央軍)の元帥・童貫は、梁山泊が自ら屠るに相応しい強さを得るまで待ち続けていたが、遂に腰を上げる。わずか5千の軍で移動中、6千の梁山泊―史進率いる調練中の遊撃隊―を捕捉。一方、史進も童貫軍を一足先に捕捉(と思っていた)。まさか自分達の存在に気付いてはいないと踏んだ史進は、千載一遇のチャンスとばかりに襲撃するも完敗。
童貫軍は宋軍最強と言われながら、君側の軍として、梁山泊との戦いの最前線には全く出てこなかった。そのため実際の強さは未知数、ひょっとしたら意外に大したことないのでは・・・との憶測もあったが、梁山泊の誇る精鋭が一敗地にまみれたのである。軽いぶつかり合いとはいえ・・・。落ち込む史進。しかし、童貫もまた彼の軍の強さを認めていたのだが。
Eの遺志により、青蓮寺の総帥には李富が就き、帝とEの約束に基づき、帝の耳目として暗躍してきた李師師(りしし)という女が李富のパートナーとして下げ渡される。絶世の娼妓でもあるが・・・「青蓮寺の使命を李富殿と果たします」「(青蓮寺に)考える者はいない。私は、李富殿の共に考えます」「私が加わることで、青蓮寺は以前よりも厚みを増します」「梁山泊は、宋にとって憂慮すべき存在です。しかし、考え方を変えれば、国が再生するいい機会でもあります」「梁山泊を、この世から消しましょう」・・・得体の知れない女である。
巻末の解説は、なんと吉川晃司氏。下手な文芸評論家よりずっと宜しい。報われる苦労なんて苦労じゃないんだと。いいこと言うやん。
水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章
水滸伝・十一 天地の章
水滸伝・十二 炳乎の章
水滸伝・十三 白虎の章
水滸伝・十四 爪牙の章
水滸伝・十五 折戟の章
次は、『隠蔽捜査』(今野敏・著/新潮文庫)。

