瑠璃の契り 著者名:北森鴻(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2008.01
ISBN :9784167717582
店舗を持たず、競り市で仕入れた美術品を、他の骨董品業者や蒐集家に転売して利ざやを稼ぐ「旗師」として、生き馬の目を抜く世界で生きる宇佐見陶子。手元に持ち込まれるいわくつきの品々に秘められた謎や因縁を解き明かしていくミステリ。
読んでいる途中で、裏表紙の説明を読んだら、「人気シリーズ第2弾」と書いてあった。
え!?まだ2作目?
もっと読んでる気がするけど・・・。
と思って、思い出した。
文春文庫からの連作短編シリーズは確かに2冊目だけど、講談社文庫から長編シリーズ(『狐罠』『狐闇』)が2冊出てて、そっちも読んでたのだ。
だけじゃなく、冬狐堂シリーズにちょこちょこ登場する下北沢の骨董屋・雅蘭堂店主・越名が主人公の『孔雀狂想曲』も読んでいるし、『蓮杖那智』シリーズにも宇佐見陶子は登場する。
なので、実際の作品数よりも沢山の冬狐堂シリーズを読んでいるような気がするんだな。
ついでに触れておくと、『香菜里屋』シリーズのビア・バー<香菜里屋>&池尻大橋のバー<香月>も、実にさりげなく登場。で、僕がまだ読んでいない『親不孝通り』シリーズの登場人物も出てくる。
こういったシリーズ作品同士のリンクが北森作品の楽しいところ。それでいて、他のシリーズを読んでいなくても、そのシリーズ単体でちゃんと読めるのもイイ。
今回の収録作は・・・
素晴らしい出来にも関わらず、購入者の家族が怯えるためにいつも返品されてくる和人形の謎を解く「倣雛心中」。
20年前、陶子の美大時代、天才的な技量を持ちながら火災で命を落とした同級生・杉本深苗。その追悼画集の復刻版が陶子の元に送られてくる。有名な画家でもない杉本の画集を、誰が、何のために、今になって復刻させたのか?その答に迫る「苦い狐」。
北九州・小倉の立ち飲み屋で偶然見つけた美しい瑠璃ガラスの切り子椀。その椀を見た相棒のカメラマン・横尾硝子のただならぬ反応。切り子椀に隠された制作者の想いと硝子の想い出を追いかける「瑠璃の契り」。
陶子の美大時代の師にして、かつての夫・Dが巻き込まれた、黒髪の少女の生き人形に込められた怨念の物語。消えたDと人形に秘められた謎を追う「黒髪のクピド」。
・・・の4篇。
こう紹介すると、ホラーチック(?)に思われるかも知れないが、そういう要素は一切なし。どれを取っても、地味(良い意味で)ながら、端正なミステリ。
よくもまあ、こんな話を考え付くものだ。日頃は窺い知れない骨董業界の一端も覗けて、楽しい。
また、長編もやってほしいな。
次は『アラビアの夜の種族』(古川日出男・著/角川文庫)

