居眠り磐音 江戸双紙 龍天ノ門 著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2003.05
ISBN :9784575661460
またまた2冊連続で読んでしまった。ついつい、刊行済みの23巻まで一気に行きたくなるな。困ったもんだ。著者は、このシリーズ50巻まで書くつもりらしいけど。ゆっくり読もう、ゆっくり。
『龍天ノ門』
かつての許婚・奈緒は吉原随一の花魁・白鶴となる。1000両の値が付いては、磐音のごとき素浪人に身請けは不可能。懇意の両替商・今津屋は金子(きんす)を用立ててくれようとするが、返す当てのない借金で奈緒を取り戻しても幸せにはなれないと考える磐音は断る。私事で今津屋の善意に甘えることはできないと。そして、一生妻を娶らず、吉原の外から奈緒の息災を祈り見守りながら生きていこうと決意する。一方で、磐音はかつて自分が仕えていた豊後関前藩とその国家老となった父のため、逼迫した藩財政を立て直すため、今津屋の協力を仰ぎつつ、国元の物産の江戸での販路を開拓しようと奔走する。
『雨降(あふり)ノ山』
今津屋のお内儀・お艶の体調が思わしくなく、しばらく実家に戻って療養することに。今津屋主人で夫の吉右衛門、奥向きを取り仕切る女中・おこん(磐音にホの字・・・死語か)、小僧の宮松、そしてこのために職場である鰻の宮戸川から休みを貰った磐音が付き添う。しかし、お艶の本当の病状は・・・。
正月早々、初湯に誘われた磐音と幸吉の会話。
幸吉「浪人さん、お捻り(おひねり)を用意したかい」
磐音「お捻りとはなにかな」
幸吉「まだ深川暮らしが半端だな。(中略)十二文を半紙に包んで番台に積み上げるのが習わしだ」
幸吉「浪人さん、今年の願いはなんだい」
磐音「息災に過ごせればそれでよい」
幸吉「息災ってのは、元気に暮らすということかい。夢がねえな」
磐音「幸吉どのの願いはなんだな」
幸吉はまだ少年である(笑)。だが、江戸暮らしの先輩であり、先生でもあるから、磐音の接し方はどこか低姿勢。こういうところに気さくで偉ぶらない彼の性質が出ている。長屋の女房連には「子供に江戸暮らしを教わっているようじゃ。今年も前途多難だねぇ」などと言われるが、それもまた愛嬌なのである。
剣の腕前は超一流、人品は卑しからず。ついでに男前。そんな御武家が訳あって、貧乏長屋でその日暮らしの浪人暮らしで、用心棒稼業に精を出す・・・のは「藤沢周平」風。
江戸庶民の日々の暮らしが活写される中、主人公が町民や町方、他の貧乏侍に慕われながら、メインのストーリーとは平行して大小様々な事件を解決していく・・・のは「池波正太郎」風。盗賊稼業を表す池波正太郎氏の造語“おつとめ”という言葉も出てくるし。
「パクリだ!」
・・・と言いたいのではなく、偉大な先達が築いた良き伝統を受け継いでいると言いたいのだ。池波正太郎氏「剣客商売」、藤沢周平氏「用心棒日月抄」「よろずや平四郎活人剣」が好きななら、ぜひこのシリーズも!その逆もまたしかり。
なにせ、剣客モノでは、諸先輩の作品と比較しても、主人公の造型はピカイチだと思うな、個人的には。『雨降ノ山』で、用心棒稼業で睡眠不足に陥り、鰻の宮戸川の仕事を寝坊してしまったりするのは人間味あるし、お艶を思って、磐音が旅先で取るある行動には素直に感動する。こんなイイ男、なかなかおらんで。
んで、いろんな強敵との剣戟シーンも、(磐音が勝つと分かっていても)なかなか良い(多少、パターン化されてる部分もあるけど)。大体が悪逆非道な相手が多いが、『雨降ノ山』では、下士の身分ながら強すぎて、家老の息子(これも相当の剣客)を試合で殺してしまい(ただ真面目に闘っただけ)、藩にいられなくなった男・釜崎の挑戦を受ける。この場合は、磐音の強さを認め、尊敬するからこそ尋常な勝負を挑まれるわけだ。この釜崎、いつかまた出てきそうだな。
とりとめない話になってしまった。
居眠り磐音 江戸双紙 陽炎ノ辻/寒雷ノ坂
居眠り磐音 江戸双紙 花芒ノ海/雪華ノ里
「居眠り磐音 江戸双紙」公式サイト
http://inemuriiwane.jp/
次は『水滸伝・十四 爪牙の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。

