2007年10月16日

M8


M8
著者名:高嶋哲夫(著)
出版社:集英社
出版年:2007.08
ISBN :9784087462005


 月9の『ガリレオ』の1回目を観た。イマイチだった。やっぱ原作の方が良い。

 さて、『M8』。

 こちらはかなり面白かったぁ〜。約550ページと結構長いが、一気読みである。


 瀬戸口誠治。28歳。東都大学理学部地球物理学科大学院博士課程を修了したポストドクター(博士研究員)。高校時代に阪神・淡路大震災で親兄弟を亡くした震災孤児で、現在は地震予知を専門とする。

 彼のコンピュータ・シミュレーションは、1ヵ月以内に東京直下でマグニチュード8クラスの巨大地震が起こることを示していた。この危機を何とかしたいと思う瀬戸口だが、同僚の研究者もボスである教授(地震学の重鎮)も、同じく親兄弟を亡くした高校時代の同級生 ― 防災に熱心な議員の秘書を務める亜紀子、災害救助にあたる自衛隊施設大隊の尉官・松浦 ― も本気では取り合わない。

 ある日、瀬戸口は1人の男と偶然出会う。それは、瀬戸口のシミュレーションの基となる理論と公式を構築したかつての地震学の世界的権威でありながら、阪神・淡路大震災を予知することができず、震災後袋叩きに合い、神戸大学教授の地位を追われ、失踪していた遠山であった。

 遠山の協力・指導の下、さらに精密なシミュレーションを続ける瀬戸口だが、その精度が上がる度にXデイは現在時点に近付き、あと3日以内にほぼ100%の確率で東京直下型大地震の発生することが判明する。

 あらゆるルートを使って、この「事実」を政府や東京都に伝えようとする瀬戸口と遠山。遂には東京都知事が動く。しかし、もはや「その時」は目前に迫っていた・・・。


 「いつか来るとは思っていたが、今日来るとは知らなかった」というコピーの映画が昔あった(1980年『地震列島』)。現実に、東京直下型、東海、東南海、南海地震はいつかは必ず起こると言われている。

 だが、阪神・淡路大震災から時は流れ、酷い被害を直接受けなかった僕らの危機感は早くも風化しつつある。それに、小説内の表現を借りるなら、仮に東海地震の「警戒宣言」が発令された場合、あらゆる経済活動はストップし、それだけで実際に地震が来なくても、1日に3450億円の経済損失が生まれるという。実際に大地震が来た場合の損失はそれどころではないはずだが、もし来なかった場合のことを考えると、容易に「警戒宣言」は出せない・・・。でも、やっぱり地震が来たら・・・。このジレンマは悩ましい。

 だから、政治家も科学者も、小説内のほとんどの人物が ― 地震の恐ろしさを身に沁みて理解し、防災や被災者救済のために働きたいと考えている亜紀子や松浦でさえ ― 地震が本当に来る可能性から目を逸らそうとする気持ちは分かる(一方で、もどかしさが募り、先が気になって、ドンドン読んじゃう)。かつての遠山もまた、己の名誉も含めて、予知が外れた場合のリスクに囚われ、阪神・淡路大震災の発生を十分に察知しながら、そのことを断言することが出来なかった(そのために震災で妻と子と数人の教え子を喪い、今も深い後悔に苛まれると同時に、同じ過ちは繰り返さないという強い気持ちを抱えている)。

 地震が起こった後の、自衛隊や消防の必死の闘いには、思わず目頭が熱くなったりした。ただ、主要人物がほとんど死なないのは、出来すぎかも(笑)。

 それにしても、エンタメとして十分面白く(現実化はしてほしくないが・・・いや、その考えこそ現実逃避か)、しかも考えさせられる本。地震予知は難しいらしいけど、諦めずにもっとお金をかけて研究すべきじゃないだろうか。そして、地震予知が外れても喜びこそすれ、嘘つきやがって!なんて怒っちゃいけないな。

 根底に著者の熱い気持ちを感じる一冊。


 次は、もちろん『走ることについて語るときに僕の語ること』(村上春樹・著/文藝春秋)。
posted by ふくちゃん at 00:22| Comment(0) | TrackBack(0) | その他
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