陽炎ノ辻 著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2002.04
ISBN :9784575661262
佐伯泰英氏は今最も売れている時代小説作家。といっても時代小説を書き始めたのは99年からで、それ以降“8年半で10シリーズ100冊、合計1500万部間近!”(『佐伯泰英!』〔宝島社〕)、しかもどのシリーズもまだ完結しておらず、並行して執筆しているというから恐れ入る。
中でもこの『居眠り磐音 江戸双紙』シリーズは一番人気らしく、現在22巻で累計470万部。第1巻の『陽炎ノ辻』はNHKでドラマ化されて、現在放映中である(ドラマでは『陽炎の辻』)。
しかし、あまりに著作が多い。
粗製乱造じゃないの?
どれどれ、どの程度の作品か読んでやろう・・・などとちょっと意地悪な思いを抱えつつ、第1巻を読み始めた。
字がデカイぞ、双葉文庫。創元推理文庫の1.5倍はあるな。
サクサク読める。
第1巻読了後、我慢できず第2巻『寒雷ノ坂』を購入。これまたあっという間に読み終わった。
・・・オモロイがな。
坂崎磐音は江戸藩邸での3年勤務を終えて、幼馴染の小林琴平、河出慎之輔と3人で豊後関前藩に帰着する。磐音は藩の中老の嫡男であり、琴平・慎之輔らと共に若い力で藩政改革に取り組もうと意欲に燃えていた。
ところが、妻・舞(琴平の妹)に不義の疑いがあるとの流言に惑わされた慎之輔が舞を手打ちに。それに怒った琴平が慎之輔や流言を撒き散らしたその叔父らを斬殺。藩は琴平の上意討ちを決定、磐音が琴平を斬る羽目に。
こうして兄弟以上の仲だった親友であり、藩政改革を志す同志であった2人を一度に失った磐音。しかも、琴平は許婚・奈緒の兄である。磐音は藩政改革も奈緒も諦めて脱藩する。
浪人となり、江戸に舞い戻った磐音は貧乏長屋で食うや食わずの極貧生活、人足仕事などで糊口を凌ぐ。剣の腕前は一流、ふとした縁で両替商・今津屋の用心棒を引き受けるが、幕府の屋台骨を揺るがす陰謀に巻き込まれ・・・。
で、その陰謀を暴き、解決する磐音の活躍を描くのが『陽炎ノ辻』。
心に傷を抱えつつも、のほほんと穏やかに、庶民の中で飾り気なく生きる(なにせ普段の仕事は「鰻割き」)磐音のキャラが良い。「居眠り」の異名は、日頃の春風駘蕩ぶりだけでなく、春の陽だまりで居眠りする猫のようにつかみどころがなく、相手のどんな豪剣も真綿でくるむように受け流す彼独特の剣技に由来するもの。
第2巻でも磐音は様々な人間に雇われ(ヤクザ同士の争いでその片方の用心棒になってしまったり)活躍するわけで、しばらくはこのまま延々とそういう話が続くのかな・・・と思っていたら、琴平・慎之輔・磐音の斬り合いは偶発ではなく、藩政改革に抵抗する守旧派勢力の陰謀らしいことが判明。磐音と関前藩守旧派の闘いも始まるようである。
人物も剣技も優れた主人公が藩の揉め事で脱藩→江戸で用心棒をしながら貧乏暮らし→藩の陰謀との闘い・・・というパターンは藤沢周平氏の『用心棒日月抄』シリーズと同じ。
ま、藤沢氏や池波正太郎氏よりも優れているとは思えないが、十二分に楽しめる。
今津屋の奥女中で長屋の大家の娘・おこんと、奈緒、磐音はこの先三角関係になるのではないかな。そこも気になる(笑)。
3巻も読みたいが、そのままズルズル22巻まで行ってしまいそうなので、いったん置いて『雪沼とその周辺』(堀江敏幸・著/新潮文庫)を読む。

