水滸伝 10 著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2007.07
ISBN :9784087461855
長い物語も折り返し地点。これまで1ページに踏みとどまっていた巻頭の【前巻までの梗概】もついに2ページ体制に(笑)。
今回のメイン・ストーリーは、呼延灼(こえんしゃく)と晁蓋の激突。
呼延灼は宋の敵国・遼との国境を守備する代州軍の将軍で、既に梁山泊入りした楊志・秦明に匹敵する地方軍の雄である。
と同時に、腐敗した中央(帝・政府・軍)への反発や疑問を内心に抱えながら、軍人として命令に従うことを優先している点も、かつての楊志や秦明と共通している。
そんな呼延灼に中央軍(禁軍)の童貫元帥から、梁山泊本隊と戦うよう命令が下る。呼延灼は「一度だけ勝つということで良いなら、必ず勝てる」と言い、引き受ける。
向かい合う、呼延灼・代州軍1万と晁蓋・梁山泊軍8千。
何日もの間、開戦のタイミングを見計らいながら陣立てを動かす2人。その対峙の中で、お互いを認め合い、それゆえに本気で戦うことになる。
まぁ、第1巻の登場人物表からずっと梁山泊側に名前のある呼延灼との戦いだから、安心して読んでいられる、ひょっとしたら盛り上がらない戦いになるかも・・・と思っていたら・・・。
全然、そんなことは無かった。呼延灼の独創的かつ果敢な攻撃の前に、梁山泊軍は官軍相手に初めての大敗を喫することになるのだ。
・・・書いちゃった。
でも、事前にそれを知っていても面白さは損なわれないはず。勝ち負けという結果よりも、戦いの最中の描写そのものがキモだから。
で、なんで勝った筈の呼延灼が梁山泊に加わることになるのか?それは読んでのお愉しみということで。
もちろん、この戦でも梁山泊の何人かが死ぬ。登場するときは皆それなりに書き込んでもらっても、死ぬときはあっさり死ぬキャラと死に際もがっつり書いてもらえるキャラと・・・落差が激しい(笑)。こんだけ登場人物がいると仕方がないけど。
ちなみに、今回は本筋とは関係ないところで、印象に残る文章があった。
“風流を好み、さまざまな石を全国から集め、それで国力が疲弊するほどだった。戦になど、もともと関心を持ってはいないのだ。それが、口に出してなにか言う。帝の口から出る言葉だけに、始末が悪いのだ。(略)高球(注:帝におもねり利用する奸臣/正しくは人偏に求)など、どうでもよかった。あの帝がいる限り、第二、第三の高球が現われる。この国の不幸が、帝という名の愚か者ひとりによって、救いようのないものになっていくのか。”
なんで印象に残ってるかって?それは言えん・・・(じゃ、書くな!)。
水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
次は、『星月夜の夢がたり』(光原百合・著/鯰江光二・絵/文春文庫)。

