水の伝説 著者名:たつみや章(著)
出版社:講談社
出版年:2007.07
ISBN :9784062757904
たつみや章氏もちょっと前から気にかかっていた作家だが、今回晴れて(?)初読みとなった。
結論から言うと、読んで良かった。児童文学って、ホント馬鹿にできない。
“自分で言うのは変かもしれないけど、ぼくはグズでドジな弱虫男だ。みんながそう言ったからってだけじゃなくて、自分でもそう思う。何か意地悪なことを言われても言い返せないし、何をやってものろのろおそいし、成績もよくない。”
女性的な(中性的な)風貌もあって、東京の小学校では苛められていた6年生の光太郎。
“ぼくは毎日、ぼくってなんてだめなやつなんだろうと思いながら暮らしてて(略)”
アァ分かるなぁ、この気持ち。俺も中1のときの1年間だけ苛められたことがあったから。長く続くと、そのうち劣等感のカタマリになっちゃうんだよな。
で、光太郎は学校ではどうすることもできず、心配する両親と顔を突き合わせなきゃならない家庭も辛くて、ド田舎の白水村に山村留学してきた。
幸いにして村の下宿先の一ノ関家の長男で同級生のタツオとは結構仲良くなって、わりに楽しい日々。でも、自分に自信のない光太郎は、内心「嫌われたらどうしよう、嫌われたくない」とビクビクしてる。
村ではしばらく大雨が続いていたが、一ノ関家の山が土砂崩れを起こして、木材として一家の収入源となるはずだった杉林がダメになってしまう。それでもなお降り止まない雨は、村を危険に晒す。
そんなある日、タツオに頼まれて2人だけのヤマメ釣りの穴場・乙女ヶ淵が無事かどうかを確かめに行った光太郎は、増水した川で流木に挟まれて動けなくなったカッパを助ける。どうやらカッパに見込まれた光太郎は、そうとは知らずカッパの引き合わせにより、乙女ヶ淵で美しい盃のようなものを見つけて持ち帰る。
その盃は、村が祀る龍神様の「嫁」=生け贄となる人が持つ印で、昔々乙女ヶ淵には「嫁」が放り込まれていたらしい。そうと分かった日から、なぜかタツオが光太郎に冷たくなる。
タツオの態度に絶望した光太郎は思い悩んだ末、これまで仲良くしてくれたタツオやお世話になった一ノ関家の人々、大好きな村のために生け贄になり、龍神様に雨を止めてもらおうと決意する。
弱虫だった少年の成長物語をメインに、人間と自然の共生のあり方までを問う、爽やかなファンタジー。
これは他の文庫化作品(『ぼくの・稲荷山戦記』『夜の神話』)も読まねば。
次は、またまた児童文学で『おれがあいつであいつがおれで』(山中恒・著/角川文庫)。

