ブラフマンの埋葬 著者名:小川洋子(著)
出版社:講談社
出版年:2007.04
ISBN :9784062756938
ある出版社の社長の遺言によって、あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に仕事場を提供している“創作者の家”。その家の世話をする僕の元にブラフマンはやってきた―。サンスクリット語で「謎」を意味する名前を与えられた、愛すべき生き物と触れ合い、見守りつづけたひと夏の物語。第32回泉鏡花賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)
ブラフマンという名は、入れ代わり立ち代わりやって来る様々なアーチスト ― 作家、詩人、翻訳家、哲学者、画家、デザイナー、指揮者、装丁家、カメラマン、歌手、染色家、映画監督、バイオリニスト、表具師、舞踏家、クラリネット奏者、レース編み作家、ホルン奏者など ― と違って、“創作者の家”で唯一住み込みのような状態で仕事をしている碑文彫刻家が付けた名前だ。
「謎」という意味の名にふさわしい架空(だよな?)の小動物。水掻きのある短い四本の肢。フック状の爪。肉球。黒いボタンのような鼻。ひげ。首の付け根あたりに申し訳程度に存在する耳。胴体の1.2倍の長さの尻尾。
姿形を表す言葉だけを並べても、可愛いとは思えないかもしれないが、「僕」との触れ合い・交情と仕草がなんとも愛らしいのだ。ペット好きな人も、そうでない人もきっと好きになると思う。
ストーリー自体は、とりたてて何もない。作品のタイトルが示すとおり、愛すべきブラフマンとの出会いから「埋葬」までの、すなわち看取るまでの、ひと夏の短い物語だ。雑貨屋の娘に向ける「僕」の淡い恋情のようなものはあるが、それも作品の主題ではない。
主題。
いったいこの作品の主題はなんだろう。
・・・そんなことはどうでも良くなってしまう。この静かで、小さな、いとおしい世界。それだけを感じていれば幸せなのだ。
次は『水滸伝・八 青龍の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。

