銀河英雄伝説 2 野望篇 著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.04
ISBN :9784488725020
どうやら、正伝だけではなく、外伝もすべて刊行されるらしい。楽しみ。
中央集権国家・銀河帝国。その宇宙艦隊司令長官・元帥まで上り詰めた「常勝の天才」ラインハルトは、腐敗した旧権力=貴族の実力による排除に乗り出す。
一方、民主主義国家・自由惑星同盟では、反戦平和主義者や堕落した政治家の排除と秩序の回復、そして銀河帝国打倒のため、一部軍人による首都制圧=クーデターが勃発する。
実は、このクーデター=内紛は、銀河帝国内の権力闘争に集中するべく、ラインハルトが巧妙に仕掛けたもの。そうとは気付かずに「自らの意思」「自らの崇高な愛国心」による行動だと思い込んでいる軍人たち。民主国家の専制国家への勝利のために民主主義を破壊し、軍事力による専制体制を敷く自己矛盾、その滑稽さ。
以前から今回のクーデターを予測していた、自由惑星同盟が誇る「不敗の魔術師」ヤン・ウェンリーは、任地イゼルローン基地から首都星ハイネセンへ、自らの艦隊を率いて鎮圧へ向かう。
最終的には銀河帝国内ではラインハルトが勝利して自らの権力を固め、自由惑星同盟内ではヤンが勝利して民主体制が復活するのだが・・・。
ラインハルトは、貴族への平民の離反を決定的にするため自らの意に染まぬ作戦を決行したことにより、幼馴染+無二の親友+最高の腹心=キルヒアイスとの間に微妙な距離が生じ、遂には悔やんでも悔やみきれない後悔を背負うことになる。
ヤンは、大義名分のもと暴走する軍部というものに、自分も軍人であることに、そして美辞麗句を並べる政治家に、改めて辟易することになる。
歴史小説スタイルで書かれたSF『銀英伝』。
銀河帝国と自由惑星同盟、その両方に武器を供給して漁夫の利を得つつ、実質的に全宇宙を牛耳ろうとする経済国家フェザーンの三国志。さらに、かつての人類の故郷・地球を復興させて全宇宙の盟主たらんと画策する怪しげな宗教団体「地球教」。
戦略・戦術。知略・謀略。理想・信念。組織と人間。戦争と平和。
ラインハルトとヤン。2人の周囲に集まる優秀な人材。魅力的なキャラが多くて楽しいし、読み応えがある。
あと、身に沁みる、身につまされる印象的なセリフや記述も実に多い。
例えば“善行をする者はひとりでやりたがり、愚行をおこなう者は仲間をほしがる”とか。確かにそうかも・・・自戒、自戒。
銀河英雄伝説1黎明篇
次は、『Q&A』(恩田陸・著/幻冬社文庫)。

