精霊の守り人 著者名:上橋菜穂子(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.03
ISBN :9784101302720
今回の新潮文庫版は大人向けに漢字の量などを増やしてあるそうだが、元々は児童文学。上橋氏の作品は『狐笛のかなた』を単行本で読んだのが初めてで、他の作品も文庫になったら読みたいと思っていた。
ゆえあって、亡き武術の師ジグロと幼い頃から放浪しつつ腕を磨き、今は用心棒としての稼ぎで生きる30歳の女性、バルサ。偶然、新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムが牛車から川に転落する場面に遭遇して助け出したことから、チャグムの母・ニノ妃から皇子を護って欲しいと懇願される。川に落ちたのは事故ではなく、これまでにも何度か危ない目にあっているというのだ。
ニの妃の話によると、星の運行から全てを読み解く星読博士のガカイがチャグムの体に得体の知れないものが宿っていることに気付き、そのようなモノに宿られた人間が神の子たる帝の子孫であるはずがなく、威信を護るため帝自らが暗殺を命じているらしい。
チャグムを連れて逃げるバルサ。秘密を知ったバルサを殺し、皇子を奪い返すために放たれた追手「狩人」たち。
チャグムの体に産み付けられたものは、かつて新ヨゴ皇国の開祖トルガル帝が倒したはずの水妖なのか?その正体と意味するところを探る薬草師のタンダ(バルサの幼馴染)と師匠の呪術師トロガイ、そして星読博士のシュガ。
どうやら、新ヨゴ皇国創世の神話とこの地の先住民ヤクーの伝承にカギがあり、事はチャグムの命はもちろん、新ヨゴ皇国全体の危機にも繋がっている。
やがて辿り着く真実。バルサ、タンダ、トロガイ、シュガ、狩人たちは、チャグムと新ヨゴ皇国を救えるか ― 。
エンデの『モモ』や『ネバー・エンディング・ストーリー』、ル・グウィンの『ゲド戦記』のような深遠な哲学や思想ではなく、エンタテインメント寄りの作品。チャグムという少年と成長物語(としては弱いか)としても読める。
なかなか面白かった。日本ならではの世界観・舞台設定の異世界ファンタジー。『ハリポタ』よりはよっぽど優れてる。
“なぜ、と問うてもわからないなにかが、突然、自分をとりまく世界を変えてしまう。それでも、その変わってしまった世界の中で、もがきながら、必死に生きていくしかないのだ。だれしもが、自分らしい、もがき方で生きぬいていく。まったく後悔のない生き方など、きっと、ありはしないのだ。”
次は『静かな黄昏の国』(篠田節子・著/角川文庫)。

