2007年04月25日

猿曳遁兵衛 重蔵始末3


猿曳遁兵衛
著者名:逢坂剛(著)
出版社:講談社
出版年:2007.03
ISBN :9784062756679


 火付盗賊改方といえば、池波正太郎氏の『鬼平犯科帳』とその主役=火盗改長官・長谷川平蔵(実在の人物)が有名だが、この作品の主人公・近藤重蔵も火盗改の与力(そこそこ偉い人)。平蔵と同時代の実在の人物である。

 しかし、平蔵とは違う組の人なので、当作品には平蔵は名前ぐらいしか登場しない。

 組が違うというのは、北町奉行とか南町奉行は各1名しかいないわけで、北町奉行が同時に2名、南町奉行が同時に2名存在するということはないのだが、火盗改は本役だけでなく加役(臨時職)というのがあって、長官を筆頭とする組織が同時に2つ、つまり長官も2人同時に別々の場所に存在したりするのである。


寛政の江戸を跋扈する悪党どもに立ち向かう、若き火盗改・近藤重蔵。猿遣い名人、お高祖頭巾の大年増、鍵言葉に突っ転がし、さらに、重蔵なじみの飯屋に因縁の謀が。世を騒がせる怪事件を、冴え渡る推理で解決する。そして、重蔵の身辺に忍び寄る女の影…。痛快無比、大評判の傑作時代小説シリーズ第三作。
<目次>
第1話 突っ転がし
第2話 鶴殺し
第3話 猿曳遁兵衛
第4話 盤石の無念
第5話 簪
(「BOOK」データベースより)


 でかい図体と優れた頭脳。武器とする鞭の腕の冴え。傲岸不遜とも言えるほど率直な物言いと強い押し出し。重蔵は、一歩間違えば嫌なキャラになりかねないが、そのギリギリ手前で踏み留まって、豪快な傑物という感じ。年齢が上というだけで年下より偉いと思っている人間、世渡り上手なだけの人間には、不倶戴天の敵キャラである。

 だが、表面的ではない、表面には出そうとしない優しさがあるからこそ、部下達は信頼して共に頑張るわけだし、馴染みの店<はりま>の夫婦も彼を慕う。

 いわゆる「捕物帳」と呼ばれる小説には、犯罪・犯人を暴く過程よりも、江戸の風情や人情を描くことに重点が置かれている作品が多いけど(それはそれで大好き)、このシリーズはミステリ要素が強くて、そこが魅力になっている。

 密室とかトリックとか、嵐の山荘とかは出てこないが・・・(笑)。筋運びは本当に上手い。

 この第3巻では、第2巻で取り逃がした美貌の女盗賊おりよが、チラホラ登場して事件を起こし、重蔵たちはあと一歩でいつも捕縛できない。そして、ラストはちょっと衝撃。ミステリとしての衝撃じゃなくて、重蔵の恋人が○○してしまうことが。重蔵、気の毒。だが、重蔵とおりよの対決が加速していくことになりそうで、続きが楽しみだ。


 次は、『砂の城の殺人』(谷原秋桜子・著/創元推理文庫)。
posted by ふくちゃん at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・時代小説
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