2007年03月10日

銀河英雄伝説1 黎明篇


銀河英雄伝説 1 黎明篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.02
ISBN :9784488725013


銀河系に一大王朝を築きあげた帝国と、民主主義を掲げる自由惑星同盟が繰り広げる飽くなき闘争のなか、若き帝国の将“常勝の天才”ラインハルト・フォン・ローエングラムと、同盟が誇る不世出の軍略家“不敗の魔術師”ヤン・ウェンリーは相まみえた。この二人の智将の邂逅が、のちに銀河系の命運を大きく揺るがすことになる。日本SF史に名を刻む壮大な宇宙叙事詩、星雲賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)

 初めて『銀英伝』を知ったのは数年前。CATVのとあるアニメチャンネルでだ。本伝の(全110話)の途中からだったが、偶然見つけて何とはなしに見出したら面白くて、結局最終話まで見た。

 で、それから原作を読み始めた。そもそもは徳間ノベルズで1982年〜1989年に発刊されたそうだが、僕が手に取ったのは徳間文庫版。ところが、ある巻がどの書店に行っても見つからない。しばらくして、どうやら在庫は書店に並んでいる現品限りで、増刷していないらしいことに気付いた(1996年〜1998年の刊行であったよう)。

 そこで、とあるネット書店で検索してみたら、なんと徳間デュアル文庫版で全巻揃っているようではないか!装丁も巻数も全然違うので、再び第1巻から買おうと数冊発注したが、家に届いた現物を見てがっかり。どう見ても新品ではない。古本を購入したわけでもないのに!しかし、奥付を見て納得。これも現品限りで、もはや増刷はされていなかったのだ・・・。

 そんなわけで、いつか増刷されるまで待とう・・・と思い至り、読書は中断と相成っった。

 ・・・念のために申し添えておくが、この作品が増刷されていないのは「面白くないから」「売れていないから」ではない。ノベルズ版は100刷を越えているそうだ。実際、アニメも原作も面白い。だからこそ、わざわざ文庫版の欠品らしき巻を探し回り、デュアル文庫版も頭から買い直そうとしたのである。

 ところが、先日書店に行って新刊コーナーの平積み台をチェックすると、『銀河英雄伝説1』とあるぢゃないか!心の中で「おお!」と叫び(きっと瞳孔が一瞬開いたと思う)、手に取った。装丁が違うぞ・・・と思ったら、徳間ではなく、創元SF文庫である。

 創元SF文庫は、これまで海外作品オンリーだったのだが、国内作品も刊行することになり、その第1回配本のひとつが『銀英伝』となったらしい。待った甲斐があった!エライゾ!東京創元社!隔月刊行らしいが、ぜひ外伝まで刊行してもらいたいものだ。

 やたら前置きが長くなったが、『銀英伝』はSFの衣を纏った「歴史大河小説」であり、そういうジャンルが好きな人はハマるだろう。自由民主主義的な国家「自由惑星同盟」と中央集権的・封建的な国家「銀河帝国」、2つの政治体制の衝突。だが、自由惑星同盟=善、銀河帝国=悪などという単純な二元論、勧善懲悪ではない。どちらの国家にも、方法論や考え方は違えど己の理想に忠実に生きようとする人間や、権力欲や保身に取り付かれた醜悪な人間がいる。それぞれの体制内での相克も描かれる。

 戦争シーンも互いの戦略・戦術がぶつかり合い、リアルだ。『宇宙戦艦ヤマト』のように、地球連邦艦隊を全滅させるような強大な敵が、たった1隻のヤマトに屠られる・・・みたいなことは起こらない(笑)。まあ、ヤマトは大好きだけど。

 その戦争において互いの中心にいるのが、全くタイプの異なる卓越した指揮官、自由惑星同盟のヤン・ウェンリーと銀河帝国のラインハルトである。

 そのタイプの違いは、次のようなセリフにも現われている。

「あいつらは今日の地位を自分自身の努力で獲得したのじゃない・・・権力と財産を、ただ血がつながっているというだけで親から相続して、それを恥じらいもしない恥知らずどもだ。あんな奴らに支配されるために、宇宙は存在するんじゃない」

 貧しい下等貴族の出ながら、燃えるようなハートに、類稀なる軍事的才能とリーダーシップを兼ね備え、銀河帝国皇帝はおろか全宇宙の支配者になってみせるという野心を、幼馴染の親友であり、腹心の部下でもあるキルヒアイスの前では隠さない、ラインハルト。彼は第1巻で早くも上級大将から帝国軍三長官のひとつ帝国宇宙艦隊司令長官へ、貴族としても「伯」から「候」へ昇進する。

「どいつもこいつも全然、わかっていやしないのさ」
「魔術だの奇術だの、人の苦労も知らないで言いたいことを言うんだからな。私は古代からの用兵術を応用したんだ。(中略)うっかりおだてにのったりしたら、今度は素手でたったひとり、帝国首都を占領してこい、なんて言われかねない」
「戦い続けていれば、いつかは負ける。そのとき掌が返るか、他人事ならおもしろいがね(後略)」

 歴史学者を志していたのに、食うために仕方なく軍人となり、できれば今も辞めたいと考えつつ戦功を立ててしまい、意に反して出世していくヤン・ウェンリー。彼もまた、准将から大将へと昇進する。

 第1巻では、この2人が初めて戦場で相まみえ、互いに優れた敵と認め合うことになるわけで、今後も彼等を中心に物語は動いて行く。

 組織の中に生きる人間としては、身につまされるシーンも多い。ビジネスマンにもオススメ。登場人物がいい男揃いなので(原作でもそう描かれているが、より具体的にはアニメ版を参照)、女性にもオススメ。

 ところで、僕はいまだにアニメの初めの数話と外伝(全52話)を見ていない。今WowWowで全162話を順次放送しているらしいが、加入してないしな。DVDを買うべきか?

アニメ公式サイト「銀河英雄伝説ON THE WEB」
銀河英雄伝説Wikipedia

 次は、もう読み終わった『影踏み』(横山秀夫・著/祥伝社文庫)を。
posted by ふくちゃん at 22:11| Comment(0) | TrackBack(0) | SF
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