夜に猫が身をひそめるところ 著者名:吉田音(著)
出版社:筑摩書房
出版年:2006.12
ISBN :9784480422873
大好きなクラフト・エヴィング商會の最新文庫は、『夜に猫が身をひそめるところ Think ミルリトン探偵局シリーズ1』と『世界でいちばん幸せな屋上 Bolero ミルリトン探偵局シリーズ2』の同時刊行。
これまでも、ちくま文庫の『クラウド・コレクター〈手帖版〉』(クラフト・エヴィング商會)、『すぐそこの遠い場所』(クラフト・エヴィング商會)、『つむじ風食堂の夜』(吉田篤弘)で楽しませてもらっていたので、刊行時に書店で見かけたときは「よし、今度来た時に2冊まとめて買おう!」と心に決めて、他の本を購入して帰った。
で、それから数日後、ジュンク堂書店に勇躍乗り込んだら、平積みだったはずが『2』は品切れ、『1』も残り数冊になっていた・・・。
仕方が無いので、『1』だけを購入。
あの時、この2冊を買えば良かった。
・・・しくしく。
主人公は著者の吉田音(よしだ・おん)。中学生。
クラフト・エヴィング商會名義で著作・装丁を手がける吉田篤弘・浩美夫妻の娘さんということである。夫妻はクラフト・エヴィング商會の三代目、音さんは四代目ということであるが、虚実ないまぜの話っぽいので、初代・二代目が存在するかどうかは・・・???
音さんの住む町には、猫がたくさん。
両親と暮らす彼女の家の庭も、たくさんの野良猫が行き来したり、まどろんだりしている。最近登場した新入りの黒猫は、
“まっくろで、まだ小さいが、なかなか姿かたちがいい。黒いからそう見えるのか、どんな狭いすき間でも、すいすい抜けていく。すいすいと抜け、またどこからか、するするとあらわれ、今度は庭のまん中あたりで立ち止まって腰をおろし、目を閉じ、何やらじっと考えこんでいる様子。”
であるが、ご近所に住むお父さんの古い友達、円田(つぶらだ)さんの家で居候を始めたらしい。「考える」風情の猫だから、円田さんが付けた名前が「シンク(Think)」。
で、このシンク、夜な夜な散歩に出かけるのだが、必ず「おみやげ」持参で帰参する。最初は小さな青いボタンで、毎日1個ずつ16個。それから小さな鳥の羽根とか。
シンクはいったいどこへ出かけて何をしているのか?音さんと円田さんは、「おみやげ」を眺めて考える。推理する。でも、シンクを尾行したりしない。できない。だから、ただ考えるだけで「謎を解かない」。それが2人による「ミルリトン探偵局」である。
最初の章で、シンクが拾ってくる「おみやげ」はキレイな「釘」、「光沢ビス・・・五十」という文字が読める破れた紙袋の切れ端、古い折れ曲がった「釘」、吸いかけのタバコ「ゴールデン・バット」、「謎の白い粉」、「箱舟」という古い映画のチラシ(「おみやげ」の写真がまた良い)。
円田さんは「安楽椅子探偵」よろしく、これらの断片からシンクの行き先がどこかの大工さんの家であると考え、その人となりまで推理してみせるのだが・・・。
次の章は、その解答編とも言える物語。
こんな調子で、シンクの「おみやげ」の元の持ち主の人物像に関する推理の章が3つ(猫だけが行ける場所/川を眺める/11時のお茶)、そして解答編の章が3つ(久助/奏者/箱舟)、交互に登場する。
解答編の3つの物語は、独立した作品としても読める上に、静かな余韻の残る「久助」、ユーモラスな「奏者」、神話的な「箱舟」というように、それぞれタッチが全く異なる。そして、推理編を含め、全ての章が微かに共振するように触れ合うのである。
単行本の1999年刊行。著者略歴によると吉田音さんは1986年生まれ。弱冠13歳で発表した作品ということになるが、これが本当なら・・・つい疑ってしまう。だって虚実ないまぜのクラフト・エヴィング商會だもの・・・ちなみに円田さんは別の作品に出てくる架空の人物・・・大したモンである。羨ましい。
早く増刷してくれぇ〜!!
ただいまは通勤電車で『水滸伝・四 道蛇の章』を熱い気持ちで(笑)、読破中。自宅で読んでいる『ラギッド・ガール』はようやく半分ほど読了というところ。

