動物園の鳥 著者名:坂木司(著)
出版社:東京創元社
出版年:2006.10
ISBN :4488457037
『青空の卵』、『仔羊の巣』に続く第3弾にして、「ひきこもり探偵」シリーズ最終作。前2作は連作中短篇集、本作は長編である。
このシリーズの個性は、まず主人公2人の設定とその関係性にある。
誰にも媚を売らずに、独り静かに自分の足だけで真っ直ぐ立っているような生き方(これには彼の生い立ちが関係している)と、その切れる頭ゆえにいじめに遭い、孤立した苦しい日々を過ごした中学時代のトラウマで極度の人間嫌い・外出嫌い、仕事も人と接する機会が極端に少ない在宅のコンピュータプログラマー、探偵役の鳥井真一。
周囲から浮かないように妥協と迎合を繰り返す平凡で「お人好し」の自分とは違う鳥井に憧れ、いじめられていた彼にただひとり手を差し伸べたクラスメイト、そして今や鳥井の唯一絶対の親友であり、彼を外の世界とわずかに結ぶ窓口、外資系保険会社に勤めるサラリーマンで、鳥井の元に自分の身の回りの「事件」を持ち込む坂木司。
普段の鳥井は相手が誰であれ(坂木であっても)、そしてその人の地位や年齢がどうであれ、愛想もなく、敬意もなく、クールでぶっきらぼうな言動を貫いている(それは虚飾の無さであると同時に、生きるための仮面でもある)が、坂木に元気がなかったり、その原因が自分にあるのではないかと思ったりすると、不安のあまり一気に子供のような状態に退行する。
坂木は大学卒業後、そんな精神的な脆さを抱える鳥井の側に少しでも長くいることができ、彼の社会復帰のために一緒に外出する時間をなるべく多く持つことができる、つまり仕事さえきっちりこなしていれば長時間労働とも無縁で休みもしっかり取れる、現在の勤め先を選んだ。坂木が同僚や顧客の「事件」を鳥井の元に持ち込むのは、その頭脳が頼りになるからだけでなく、それが鳥井と外の世界との新たな接点になると思うからだ。
この何はともあれ、お互いを最優先させる2人の関係は、単なる「友情」だとか「親友」だとかを超えて、一種の「共依存」のようでもある。これには拒絶反応とまでいかなくても、ちょっと引いてしまう読者もいるかも知れない。僕もそうだった。
しかし、本作では、その要素はかなり薄くなっている。それは、第1巻から様々な事件に関わり、そのひとつひとつを解決するたびに新たな友人を獲得し、2人だけだった狭い世界が広がりを持ってきたことによるものだ。
この毎回新たな人物が登場し、しかもその多くがその後もずっと2人に関わり続けるという点が、本シリーズの魅力のひとつである。それも老若男女多彩なキャラクターである点がまた良い。チャキチャキの江戸っ子で昔気質の職人・木村栄三郎(鳥井は彼を「じじぃ」とか「栄三郎」とか呼ぶ)のファンになる読者も多いだろう。もちろん、僕もそのひとり。
こうして多くの人との出会いを通じて、坂木がある決断に至り、2人の関係が共依存ではない真の友人関係へと変わる予感、そして鳥井が外の世界に踏み出す予感を漂わせて、このシリーズは終わる。
と書くとネタバレになりそうだが、この結末自体は当初から予想されることなので、シリーズの面白さを損なうことにはならないだろう。
扱う「事件」はいわゆる「日常の謎」系だが、その論理や着眼は確かだし、人間心理の襞、人間関係の綾を切り取る手並みは鮮やか。著者は僕より2歳年下だが、少し気恥ずかしいぐらいの、生きることへの前向きでピュアな感性(ご本人も「青臭い」ところがあると認めておられる)がそこかしこに顔を出す。ここで描かれる人間観・人生観にどこまで共感できるかで、読む人の精神的な真っ直ぐを測ることができる気がする(気がするだけだ)。
あと、鳥井の作る料理が毎回美味しそうだと思っていたら、巻末に厳選レシピの特別付録。これは嬉しい。「黒七味のペペロンチーノ」「梅酒が隠し味のドレッシングのサラダ」はぜひやってみたい(この特別付録にもさらに仕掛けが・・・。それは読んでのお楽しみ)。
僕にとって、料理が美味しく描かれている作品は、それだけで満点。先日挙げた僕の「時代・歴史小説オールベスト」の中の『鬼平犯科長』『剣客商売』『初ものがたり』もそういう作品である。
長くなった。
次は、『真相』(横山秀夫・著/双葉文庫)。


完結編、わたしも買いました!
ただ、まだ読んでないんですー。
開いてすらいません(笑)
厳選レシピの特別付録なんてあるんですね。
これを機に読もうかなー。
未衣名さんのサイトに書かれていた「一歩間違えればBLにいきそうだわ」という言葉。
僕もそう思いました(笑)。
巻末に厳選レシピがついてるんですか?!
うわ、それは気になります!なんだか本文よりもそっちが気になります!(笑)
早いとこ3作目を買いに行かなきゃ…!
シリーズものって、次を読むまでに間が空いてしまうとなかなか手が伸びなくなるんですけど…これはもう、最後まで刊行されてるのでさっさと買って気持ちが冷めないうちに読んでしまいたいです。
ぜひ、読んで感想を聞かせて下さいね。
読み終わった時、とうとう終わっちゃったーという残念に思う気持ちと、坂木も一歩を踏み出したなぁっていう満足感とがごっちゃになった、そんなちょっと複雑な読後感でした。
でもとても気持ちが良かったので、シリーズ最後まで読んでよかったな♪って幸せな気分になりました。
巻末レシピ、どれも美味しそうですよね!
黒七味のペペロンチーノ、とても気になります。
作ったら是非、感想を聞かせてください☆
黒七味、検索しました。
どうも京都のお店が有名みたいですね。
買います。
作ります。
お楽しみに(?)。