2006年10月15日

家守綺譚


家守綺譚
著者名:梨木香歩(著)
出版社:新潮社
出版年:2006.09
ISBN :4101253374


 梨木香歩氏の著作は読んだのは『西の魔女が死んだ』が初めてで、その次が『裏庭』。少女の祖母との交流と成長を描いた前者、やはり少女を主人公にファンタジー色の強い後者、どちらもとても良かった。

 で、3冊目が、この文庫最新刊の『家守綺譚』。前に読んだ2作とは全く違う作風だったので(心が「しん・・・」とするような静謐さを感じさせるという共通点はあるけど)、「こんな作品も書けるんだぁ」と感心。

 
 舞台は100年前の滋賀県のどこか。しがないモノ書きである主人公・綿貫征四郎は、学生時代に亡くなった親友・高堂の実家に、「家守」として住むことになる。年老いた高堂の両親は、嫁いだ娘の家で厄介になることにしたのである。「家守」だから、少ないながら月々のお金も頂戴できる。

 意に染まぬ英会話学校の講師など辞めて、文筆業に精を出せるとばかりに、征四郎は早速この話に飛びついた。

 ある日、床の間の掛け軸の中から、死んだはずの高堂がボートに乗ってやってきた・・・。


 登場するのは征四郎と高堂のほかに、怪しげな長虫屋、近所のお寺の和尚、隣の家のかみさん、妙に人間味のある犬・ゴロー、そして征四郎に「懸想している」サルスベリ、河童、小鬼、人魚、人を化かす狸などなど。

 不可思議で幻想的な出来事が次々と起こるが、筋立てらしい筋立てはない。なぜ、そんなことが起こるのか、登場人物たちも大して気にしないし、作者も説明しない。ストーリーはどこにも行かないし、教訓もメッセージもない。誤解を恐れずにいえば“感動”もない。

 それでいて、モノ静かで、のびやかで、なんとなく心楽しい物語である。

 ちなみに、この作品は征四郎が書いた文章という体裁を取っている。もちろん、実際の作者は梨木香歩氏だが、読んでいるうちに何だかそのことを忘れてしまい、本当に征四郎の文章を読んでいるような気持ちになってくる。

 各章のタイトルには「白木蓮」「都わすれ」「南蛮ギセル」「葛」「南天」「サザンカ」など植物の名前が使われ、その章の中でその植物が印象的に描写されているのも良い。

 梨木氏は、イマジネーション豊かな作家である。残りの作品も全部読んでいこう。


 お次は『手紙』(東野圭吾・著/文春文庫)だ。
posted by ふくちゃん at 00:29| Comment(6) | TrackBack(5) | ファンタジー・幻想文学
この記事へのコメント
TBありがとうございます。
梨木さんの本をまともに読んだのはこの本が2冊目です。
「マジョモリ」がもう一つの本。
「りかさん」と「からくりからくさ」は挫折して、
読み途中の「裏庭」はそのまま積読されてるし……。
「家守〜」を読んで梨木さんの良さがわかったので(ホント良かった)、近いうちに「裏庭」を読みきろうと思ってます。
Posted by 未衣名 at 2006年10月15日 23:28
>未衣名さん。
コメントありがとうございます。
「裏庭」もなかなか良いですよ。
ぜひ、読了して下さい。
Posted by ふくちゃん at 2006年10月15日 23:43
はじめまして。TB先に送らせていただきました。
ご丁寧にご訪問ありがとうございます。

>それでいて、モノ静かで、のびやかで、なんとなく心楽しい物語である。

まさしくふくちゃんさんのおっしゃるとおりの本だと思います(^_^)

またお邪魔いたしま〜す♪
Posted by caho at 2006年10月31日 19:46
>cahoさん。
コメントありがとうございます。
ぜひ、またお越し下さい。
僕も遊びに行かせて頂きます。
Posted by ふくちゃん at 2006年10月31日 22:53
こんにちは。これはとても良かったです。『西の魔女・・・』も好きでした。どちらも子供にも読ませたい作品です。
『からくりからくさ』は、各場面はとても良いのだけれど、ちょっと冗長な感じでした。
もう少しいろいろと読んでみようと思っています。
Posted by milesta at 2007年05月15日 08:47
>milestaさん。
『西の魔女〜』も、とっても良いですよね。
『からくりからくさ』未読ですが、必ず読むつもりです。
Posted by ふくちゃん at 2007年05月16日 23:05
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※半角英数字のみのコメントは書き込みができないようになっています。

この記事へのTrackBack URL

※半角英数字のみのトラックバックは受信されないようになっています。

梨木香歩【家守綺譚】
Excerpt: 江戸時代と明治時代の境目で、人々はどうやって気持ちを切り替えたんだろう?私がその時代に生きてたら、「皆さん、今日から明治時代です! 洋服を着ましょう!」と言われても、意地になって着物を着つづけるかも。
Weblog: ぱんどら日記
Tracked: 2006-10-15 09:22

家守綺譚/梨木香歩・著
Excerpt: 「家守綺譚(いえもりきたん)」という本をご存知でしょうか。2005年本屋大賞の第3位にも選ばれた本で、装丁の美しさといい、美しい日本語と各章に出てくる様々な植物や小さな動物たちとの四季折々のお話がここ
Weblog: こころいろ
Tracked: 2006-10-30 21:06

『家守綺譚』
Excerpt: 家守綺譚 梨木 香歩著単行本読む前に文庫が出てしまった。梨木果歩の本は新潮文庫で揃えてたのでやっぱり文庫も買った。なんというか独特な雰囲気。好みが分かれそうです。時は明治。学友・高堂の生家に、家守とし...
Weblog: 読書の時間
Tracked: 2006-11-06 00:16

梨木香歩著『家守綺譚』(感想)
Excerpt: 美しいファンタジーの世界。。。梨木さんの作品は何冊か読んできましたが、この美しいファンタジーの世界にぐっと吸い込まれていきます。同時にこのファンタジーの世界の中に梨木さんの思想というものが現れており、
Weblog: 夕螺の読書ブログ
Tracked: 2007-04-04 13:02

『家守綺譚』 梨木 香歩
Excerpt: 家守綺譚梨木 香歩 (2004/01)新潮社この商品の詳細を見る「お酒はお好きですか?」と聞かれたら「日本酒は好きです。」と答える。苦みや酸味のある味は好きではなく、甘みと辛みで成り立っている日本酒
Weblog: 本からの贈り物
Tracked: 2007-05-13 11:34