猟犬探偵 著者名:稲見一良(著)
出版社:光文社
出版年:2006.09
ISBN :4334741258
宝島社の2006年版「この文庫がすごい」で堂々の第2位となった中短篇集『セント・メリーのリボン』。その表題作『セント・メリーのリボン』で登場した「猟犬探偵」竜門卓と狼のような風貌をした相棒の犬ジョーの仕事ぶりを描く連作集である。
「竜門猟犬探偵舎」が請け負う仕事は、何らかの理由で失踪した猟犬を探し出すこと。祖父の死により相続した大阪府能瀬の3万5千坪の山の中で貧乏暮らしをしながら、自身も猟を嗜む。寡黙で、タフで、弱い者に優しく、長いものには巻かれない。体を鍛え、自らに課した規範に則って、プロの仕事に徹するが、自分の矜持を守り、他人の誠実さに応えるためには、時にビジネスを超えて行動する・・・。
竜門はくたびれた中年男でもあるが、男のひとつの理想像だと思う。女性の読者には意外に受けないような気がするが、どうだろう?
「狩猟」をモチーフにした、ハートウォーミングなハードボイルド『猟犬探偵』は、『セント・メリーのリボン』共々10年ほど前に新潮文庫から一度発刊されたものである。著者の稲見一良氏は1994年にガンで逝去されているので、このシリーズの続きを読むことはできないが、地味ながらも上質な物語が再び我々の前に現われたのは幸福というほかはない。
『野生動物への愛惜、銃や武器への執着、野外自然への憧憬をこめて、ぼくは狩りの話を書いていきたい。<狩猟小説>という呼び名があるかどうか知らないが、ハードボイルドの厳しさと感傷を底流にした闘争の話を書こう』
デビュー作『ダブルオー・バック』(未読)のあとがきでこのように語ったという著者の、山本周五郎賞を受賞した『ダック・コール』(ハヤカワ文庫)は、まさにこの言葉通りの珠玉の作品集である(3度読み返した)。ぜひ、併せてご一読を。
稲見氏の他の作品も、ぜひ再刊していただきたいものである。
さあ、次は『脇役 慶次郎覚書』(北原亞衣子・著/新潮文庫)を読むぞ。


『ダックコール』は本当に素敵な作品集ですよ。
お読みになられたら、ぜひブログで感想をお聞かせ下さい。
「セント・メリー」も良かったですが、この連作集もすごく良かったです。
どの物語も最後の一文で何故だか涙が出てきて・・・。
はじめまして。
もう稲見氏の新作が読めないのは残念ですね。
他の本の復刊はないのかなぁ・・・。