2007年12月29日

銀河英雄伝説6飛翔篇


銀河英雄伝説 6 飛翔篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.12
ISBN :9784488725068


 ヤン・ウェンリーとの直接対決では敗北寸前にまで追い込まれたラインハルトであったが、優秀な部下たちの機転により、国と国の戦いには勝利。全宇宙は新銀河帝国として統一される。

 新銀河帝国の皇帝となったラインハルトは内政改革に努め、その属国と化した自由惑星同盟ではヤンが念願叶ってようやく望み通り退役。元副官フレデリカとの優雅な年金&新婚生活を送っていた。

 だが、新銀河帝国の全権代表として、自由惑星同盟首都ハイネセンに在るレンネンカンプ提督は、自身を含めてこれまで戦場で散々煮え湯を飲まされてきたヤンを警戒して監視を強化。将来の禍根とならぬようヤンの排除さえ画策する。

 一方、そのヤンに何度も危急存亡の機を救われたはずの同盟首脳は、智略と人望あるヤンが単調な引退生活に耐えられず、いずれその才能にふさわしい野心(=同盟を掌中に納めて帝国と戦う)に突き動かされる時が来るのでは・・・と疑心暗鬼に駆られ、やはり監視を付ける。

 確かにヤンは後日に備え(個人的野心のためではなく自由民主主義を回復するため)、密かに手を打っていたのだが・・・。

 レンネンカンプの圧力に耐えかねた同盟政府により、遂に証拠もないままヤンは逮捕・監禁される。だが、まさに処刑前の間一髪、かつての部下達の実力行使により救出される。

 ヤンは、同盟首脳には「私たちはレンネンカンプを人質として、惑星ハイネセンを離れます。同盟政府は、脅迫されたというかたちで、私たちを追わずにいただきたい。帝国にたいしては、私が争乱のすべての責任をおいます。同盟から帝国にたいして、どうかヤン・ウェンリーを討伐、逮捕してほしいと頭をさげれば、帝国にたいしても弁解が立つのではありませんか」と策を授け、その言葉通りにレンネンカンプを拘束、ハイネセンを脱出し、秘密裏に温存しておいた同盟軍艦隊に合流する・・・。


 一連の事件について、帝国首都オーディーンに参集した帝国軍幹部たちが、ヤンや同盟政府よりもレンネンカンプに対して批判的であるところが面白い。わざわざ和平を打ち壊して、徒に争乱の火を付けたと酷評するわけである。

 当シリーズにおいては、度々民主主義陣営の政治家たちの自己保身や権力に爛れた姿と、専制国家に生きる軍人たちの清新さが対比される。かと言って、専制体制を賛美するものではもちろんない。

 この巻でも、ヤンの考えが、次のように書かれている。

新皇帝ラインハルトがその強力な政治力によって宇宙に平和と繁栄を招来し、維持させたとき、人々が政治を他人まかせにすることに慣れ、市民ではなく臣民となってしまうのが、ヤンにとってはたえられない気分なのだ。専制君主の善政というものは、人間の政治意識にとってもっとも甘美な麻薬ではないだろうか、と、ヤンは思う。参加もせず、発言もせず、思考することすらなく、政治が正しく運営され、人々が平和と繁栄を楽しめるとすれば、誰がめんどうな政治に参加するだろう。(略)だが、人々が政治をめんどうくさがるとすれば、専制君主もそうなのだ。彼が政治にあき、無制限の権力を、エゴイズムを満足させるために濫用しはじめたらどうなるか。権力は制限され、批判され、監視されるべきである。ゆえに専制政治より民主政治のほうが本質的に正しいのだ。

 あ。

 何だか、小難しい小説だと思った?

 本質的にはエンタメ作品。


 では、最後に、今回の印象的な場面。

「法にしたがうのは市民として当然のことだ。だが、国家がみずからさだめた法に背いて個人の権利を侵そうとしたとき、それに盲従するのは市民としてはむしろ罪悪だ。なぜなら民主国家の市民には、国家のおかす罪や誤謬にたいして異議を申したて、批判し、抵抗する権利と義務があるからだよ」そうユリアンにヤンは語ったことがあった。(略)不当な待遇や権力者の不正をうけいれ、それに抵抗しない者は、奴隷であって市民ではなかった。自分自身の正当な権利が侵害されたときにすら闘いえない者が、他人の権利のために闘いうるはずがない。

 ・・・あぁ、耳イタ。

 でもエンタメ作品。

銀河英雄伝説1黎明篇
銀河英雄伝説2野望篇
銀河英雄伝説3雌伏篇
銀河英雄伝説4策謀篇
銀河英雄伝説5風雲篇


 次は、『少女には向かない職業』(桜庭一樹・著/創元推理文庫)。

 年内の投稿はこれにて終了。

 皆さん、良いお年を!
posted by ふくちゃん at 21:53| Comment(2) | TrackBack(0) | SF

2007年12月27日

水滸伝・十五 折戟の章


水滸伝 15
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2007.12
ISBN :9784087462395


 20万の宋の大軍を相手に驚異的な粘りで応戦する梁山泊。量に質で対抗する戦いである。しかし、物量の差は如何ともしがたく、限界が近付く。すでに多くの将兵を失い、どの寨が崩れてもおかしくはない。そして、どの寨が崩れても、そこから梁山泊は潰滅する。

 ここで、元は関勝の軍師、今は梁山泊の実戦での軍師・宣賛が乾坤一滴の大勝負に出る。すなわち、梁山泊総攻撃のため、がら空きになっている北京大名府を占拠することで宋軍を引かせ、終戦に持ち込むのである。大量の軍費を消費し、戦争継続が苦しいのは、宋も同じなのだ。

 そして、終戦後は講和の余地もありと見せかけて、態勢回復への時間を稼ぐ。

 問題は、梁山泊には北京大名府へ派遣できる、まともな軍勢が無きに等しいこと。そこで、宣賛が考え出した秘策とは・・・。


 長く苦しく、激しい戦闘はこの巻でいったん終息する。しかし、梁山泊本隊のあの男(B)が戦場で鮮烈に散る(好きなキャラだった)。あの男(S)も、あの男(G)も、兵站を守る戦いの中でギリギリまで戦い抜いて、世を去ってしまう。そして、北京大名府攻城戦では、あの男(R)が。流花寨を巡る攻防では、あの男(S)とあの男(O)も。

 ああ、辛ッ。

 宋側でもBとの戦いの中、紙一重の差で、生の世界に踏みとどまる男がいる(生死が逆でもおかしくなかった)。S将軍も果敢に死ぬ。

 ああ、熱ッ。

水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章
水滸伝・十一 天地の章
水滸伝・十二 炳乎の章
水滸伝・十三 白虎の章
水滸伝・十四 爪牙の章

 次は、『銀河英雄伝説6飛翔篇』(田中芳樹・著/創元SF文庫)。
posted by ふくちゃん at 20:43| Comment(2) | TrackBack(1) | 歴史・時代小説

2007年12月26日

PLUTO 5


PLUTO 5
著者名:浦沢直樹(著)
     手塚治虫(著)
出版社:小学館
出版年:2007.11
ISBN :9784091815569


 そういや、第4巻を読んだときに記事を書いてない。

 ま、いいか。

 ・・・ほぼ1年ぶりの第5巻。

 刊行間隔が長く、前のストーリーを忘れてしまうので、最新刊を買うたびに1巻目から読み返すハメになる。
 
 説明するまでもないかも知れないが、原作というか元ネタは手塚治虫氏の『鉄腕アトム』で、その中の1エピソード『地上最大のロボット』を浦沢直樹氏が膨らませてリメイクしたのが本作。

 そもそも僕は『鉄腕アトム』をちゃんと読んだことがないし、アニメは一応観ていたが(どのバージョンかは不明)、どんなエピソードがあったか全く覚えてない・・・。手塚治虫といえば偉大な日本漫画の古典(?)だから、読んでおきたいんだけど、どの作品も未だに中途半端にしか読んでいないのだった。

 もっとも、本作は元ネタを知らなくても独立した作品としてちゃんと読める(知ってる方がより楽しめるに違いないが)。 

 まだまだ謎ばっかりで、話の行く先はなかなか見通せない。

 そこが面白いんだけど。

 浦沢直樹って読み応えのある漫画書くよね(これまた中途半端にしか読んでないけど)。

 会社勤めさえしていなければ、もっと漫画を読む時間も取れるのに・・・。でも、買う金が無くなるか。二律背反。困ったもんだ。


 次は、『水滸伝・十五 折戟の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。
posted by ふくちゃん at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画

2007年12月24日

自分の感受性くらい


自分の感受性くらい 新装版
著者名:茨木のり子(著)
出版社:花神社
出版年:2005.05
ISBN :9784760218158


 詩集なんて久し振りに買った。

 表題作の『自分の感受性くらい』。

 この素晴らしい一編の詩を手元に置いておきたい。

 ただ、その理由だけで。

 全文を引用して紹介したいところだが、著作権法上、問題がある。なので自粛するが、ぜひ一度立ち読みすることをお勧めしたい。

 ぱさぱさに乾いてゆく心を
 ひとのせいにはするな
 みずから水やりを怠っておいて

という冒頭から、最後までシンプルで無駄のない、力強い言葉が胸に突き刺さる。

 いくじなしは いくじなしのままでいいの
 泣きたきゃ 泣けよ
 意気地なしの勁さを貫くことのほうが
 この国では はるかに難しいんだから
(『夏の声』より)

とか、他の詩も良いが(『知命』という詩が先日金八先生の授業シーンで使われていた)、やっぱり『自分の感受性くらい』が、断トツで最高である。

 もうひとつ有名な『倚りかからず』も手元に置いておきたいな。


 次は『PLUTO(5)』(浦沢直樹・著/小学館ビッグコミックス)。
posted by ふくちゃん at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2007年12月23日

愚か者死すべし


愚か者死すべし
著者名:原りょう(著)
出版社:早川書房
出版年:2007.12
ISBN :9784150309121


 『そして夜は甦る』、『私が殺した少女』、『天使たちの探偵』(これだけ短編集)、『さらば長き眠り』以来9年ぶりに再開された新・沢崎シリーズ長編3部作の第1作が、ようやく文庫化。

 前のシリーズが結構好きだったので、2004年の単行本発売以来、待っていた。

 『誰か Somebody』の記事で、同作を“『このミス2008』の書評子の座談会で、今の日本でリアリティのあるハードボイルドを書こうと思えばこういう作品になると評していた”と紹介したが、確かに今の時代の日本で、沢崎シリーズのような正統派ハードボイルドがリアリティを獲得するのは難しいかな。外国のことは分からないが。

 沢崎のような探偵、いや、沢崎のような男は、おそらく今のこの日本にはいない。ひょっとするといるのかも知れないが、絶滅危惧種に違いない。

 己の矜持に殉じて孤高を貫く・・・憧れはしても実践はほぼ不可能。だからこそ、この主人公に痺れるか、虚構を感じてしまうか、ビミョーなところではある。

 あと今回、特に気になったのは女性キャラのリアリティの無さ。登場する女性がほとんど美人ばっかり・・・というのはご愛嬌?だとしても、彼女達の口調が堅いというか、不自然というか、こういう喋り方をする女性は今の日本には存在するまい。ひょっとするといるのかも・・・以下同文。

 う〜ん。

 まぁ、新作が出たらまた読むとは思うけど。


 次は『自分の感受性くらい』(茨木のり子・著/花神社)。
posted by ふくちゃん at 00:11| Comment(0) | TrackBack(1) | ハードボイルド

2007年12月18日

このミステリーがすごい!&ミステリが読みたい!


このミステリーがすごい! 2008年版
著者名:
出版社:宝島社
出版年:2007.12
ISBN :9784796661461



ミステリが読みたい! 2008年版
著者名:ミステリマガジン編集部(編集)
出版社:早川書房
出版年:2007.11
ISBN :9784152088758



 年末恒例のランキング本。

 『ミステリが読みたい!2008年版』は今年創刊。『このミステリーがすごい!』との違いは、業界関係者(作家・書評家・書店員・ミステリサークルetc)だけでなく、一般読者の投票も加味したランキングであるということ。そして、自社作品も対象とすること。2006年10月1日〜2007年9月30日までの刊行作品で、『このミス』の1ヵ月前倒し。発売も1ヵ月早い。同時に発売すると売れないと思ったんだろうな。ビジネスとしては妥当な判断(笑)。

 とりあえず、国内編の上位10作品を比較しておこう。

 じゃ、『ミス読み』(勝手に略)から。

1)楽園(宮部みゆき)<8>
2)赤朽葉家の伝説(桜庭一樹)<2>
3)首無の如き祟るもの(三津田信三)<5>
4)離れた家(山沢晴雄)<6>
5)サクリファイス(近藤史恵)<7>
6)果断(今野敏)<4>
7)悪人(吉田修一)<17>
7)ノーフォールト(岡井崇)<―>
9)X橋付近(高城高)<10>
9)密室キングダム(柄刀一)<16>

 次、『このミス』。

1)警官の血(佐々木譲)<―>
2)赤朽葉家の伝説<2>
3)女王国の城(有栖川有栖)<―>
4)果断<6>
5)首無の如き祟るもの<3>
6)離れた家<4>
7)サクリファイス<5>
8)楽園<1>
9)夕陽はかえる(霞流一)<―>
10)X橋付近<9>
10)インシテミル(米澤穂信)<13>

 <>内は、相手(というのも変だが)ランキング内での順位。

 『夕陽はかえる』は2007年10月刊行ということで、『ミス読み』のランキングに入らないのは当然だが、『警官の血』『女王国の城』がベスト20にも入らない。不思議。

 一方、『ミス読み』ランキング7位の『ノーフォールト』は、『このミス』では21位以下にも登場せず。もっとも『ミス読み』の投票結果でも識者の投票は0点(=投票者ゼロ)であるが(笑)。

 僕が読みたいのは、『楽園』『赤朽葉家の伝説』『サクリファイス』『果断』『警官の血』『女王国の城』『インシテミル』かな。早く文庫にな〜れ。
posted by ふくちゃん at 22:52| Comment(2) | TrackBack(1) | ガイド本

2007年12月16日

誰か Somebody


誰か
著者名:宮部みゆき(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2007.12
ISBN :9784167549060


 久し振りの宮部みゆき本。

 僕は世評高い『理由』も『模倣犯』も、もうひとつ楽しめなかった。登場人物のディテールを徹底的に書き込む手法が好きになれなかった。詳細を書くこと=リアリティを究めるではないと思う。饒舌な作品も決して嫌いじゃないが、あの2作品は書き過ぎの感があった。

 そういう意味で、今作は納得。本筋に直接関係のない登場人物の過去の人生の詳細とか、無駄な(と僕には思える)書き込みが無くても、ちゃんとキャラは立っていて、その表情や佇まい、どんな風に生きてきたかが見える気がするから。


・内容
今多コンツェルン広報室の杉村三郎は、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たちの相談を受ける。亡き父について本を書きたいという彼女らの思いにほだされ、一見普通な梶田の人生をたどり始めた三郎の前に、意外な情景が広がり始める―。稀代のストーリーテラーが丁寧に紡ぎだした、心揺るがすミステリー。
(「BOOK」データベースより)


 ミステリと書いてあるから、ミステリにカテゴライズしたものの、ミステリを読んだ感じはしない。人は死ぬけど、トリックも動機も名推理もない。『このミス2008』の書評子の座談会で、今の日本でリアリティのあるハードボイルドを書こうと思えばこういう作品になると評していたが、まさにそんな感じ。

 典型的なハードボイルドの感触は、会話にも文体に皆無。暴力も血の匂いもない。組織と一匹狼の戦いもない。いかにもクールでタフ・・・というわけでもない主人公は、ごく普通のサラリーマン。だが、他人の人生と関わる際の真摯で出しゃばり過ぎない姿勢、他人から不躾に浴びせられる言葉や思いへの受容態度は、確かにハードボイルドのそれである。

 人間の浅はかさ、卑しさ、不可解さを見せ付けられるような苦い味の残る話ではあるが、それでも主人公とその妻の誠実さや優しさが温かさを感じさせてくれる、そんなちょっといい話でもある。

 というわけで、久々に好きな宮部作品となった。同じ主人公の『名もなき毒』の文庫化が楽しみだ。


 で、次は典型的というか正統派というか、ハードボイルドで『愚か者死すべし』(原寮・著/ハヤカワ文庫)。

※「寮」は正しくはウかんむり無し。
posted by ふくちゃん at 21:54| Comment(2) | TrackBack(0) | ミステリ

2007年12月09日

グリーン・レクイエム/緑幻想


グリーン・レクイエム,緑幻想
著者名:新井素子(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.11
ISBN :9784488728014


 1980年に刊行された新井素子氏の代表作『グリーン・レクイエム』とその続編で1990年に刊行された『緑幻想』を1冊にまとめた新装版である。良い装丁だ。

「BOOK」データベースの紹介文(=文庫本裏表紙の紹介文)はこう。

子供の頃の記憶。まよいこんだ夕刻の山道。ピアノの音を頼りに辿りついた草原の先には古びた洋館と温室があり、そこで彼は“緑色の髪をした少女”に出会った―。彼は長じて植物学者への道を歩み始めた。そして彼女との再会は、彼らを思いもよらない悲劇へと導く。著者の初期代表作にして星雲賞を受賞した「グリーン・レクイエム」と続編「緑幻想」を併せ、初の一巻本として贈る。

 新井素子氏による新たな「あとがき」が付いている。ちなみに、今年の5月に日本標準というところから刊行された『グリーン・レクイエム』の紹介文は、こう。

信彦が七つのときに出会った緑の髪の少女。十八年後、信彦が公園で見かけた、陽のあたるベンチに坐っている明日香がその少女にそっくりだった…!緑の長い髪をもつ明日香と、彼女を愛してしまった信彦。明日香の正体は?二人の恋の行方はどうなるのか…?!美しいピアノの調べにのって展開する切ないラブストーリー。小学校高学年から。
(「BOOK」データベースより)

 ・・・別に意味はない。とりあえず載せてみた(笑)。

 新井素子氏は初読みである。

 その存在自体は高校生の頃から知っていたのだが。

 当時、角川の角川による角川のための月刊誌、または角川3人娘(薬師丸ひろ子・原田知世・渡辺典子)および角川映画の宣伝誌、『バラエティ』を愛読していた。そもそもは原田知世嬢が好きで、途中から渡辺典子派に移行したのだが、それ以上に角川とは何の関係もない各種雑多な連載記事が好きだった。

 今でも読めるものなら、また読みたい(古本・古雑誌でなく)。南伸坊、泉昌之、関川夏央、呉智英、糸井重里、鏡明などなど、連載陣やら、そのゲストやら、今思えば知る人ぞ知る豪華メンバーによるヨタ記事(?)が楽しかった。

 その中に、新井素子氏が日常の出来事を書き、それを題材に吾妻ひでお氏が漫画を描く『吾妻ひでおと新井素子の愛の交換日記』という連載があったのだ。これもわりに好きだった。

 新井氏のイメージは、今でも吾妻氏の漫画で描かれたものから更新されていない。

 で、何となく旧知の作家だったのだが、1980年当時(13歳)も高校生の頃も読書家でなかった僕は、そして長じて読書好きになってからも最近までSFをあまり読まなかった僕は、彼女の作品を全く読んでいなかったのだ。

 それに、あの何とも言えない独特の文体を敬遠する気持ちもあった(エッセイはともかく、小説としては)。

 だが、今回を機に中身を読まずに(普段、初読み作家は立ち読みして、その文章が受け入れられそうか確認して買う)レジへ持って行った。

 で、感想。

 やはり、文体はちょっと辛い。時に脚本のト書きみたいだったり、繰り返しが多かったり。『グリーン・レクイエム』が、こんな短い作品だと知らなかったので、そこにもビックリ。

 とにかく、新井氏が、コバルト文庫(中学生の頃、周りでも流行った。僕もドキドキしながら読んだ^^;)などジュニア小説界で人気を博し、ラノベの元祖的存在とも言われることには、何となく納得。

 SFというよりファンタジーと呼んだ方がピッタリ来る。

 僕は、「男性だから・・・」「女性だから・・・」という物言いはしない主義の人間なのだが、殊この2つの作品に関しては、少女的感性(良い意味で)を保ち続けている女性には(もちろんその全員にとはいえないが)受けそうだ。

 やんさんには誠に申し訳ないながら、僕には・・・ちょっと。

 しかしながら、『緑幻想』には、人間が引き起こす環境問題・自然破壊に対する、現代にも通じる指摘があり、膝を打つこと数度(いや、心の中で)。

 「自然破壊」など無い。自然はいつでもどんな状態でも自然である。人間が破壊しているのは自然ではなく、自分達が安全・安心・快適に生存しつづけられるはず環境である・・・とかね。ほかにも・・・まあいいか。興味のある人をお読みを。『チグリスとユーフラテス』も読んでみるか。


 次は、『誰か Somebody』(宮部みゆき・著/文春文庫)。
posted by ふくちゃん at 22:30| Comment(2) | TrackBack(0) | SF

2007年12月06日

おまけのこ


おまけのこ
著者名:畠中恵(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.11
ISBN :9784101461243


 人気の『しゃばけ』シリーズ第4弾。先日のTVドラマは予想通りイマイチだった。宮迫氏の“屏風のぞき”は良かったが・・・。おかげで『おまけのこ』を読む間、脳内劇場の“屏風のぞき”は、あの姿。あと、谷原氏の仁吉もイメージに近いかな。


・内容
一人が寂しくて泣きますか?あの人に、あなたの素顔を見せられますか?心優しき若だんなと妖たちが思案を巡らす、ちょっと訳ありの難事件。「しゃばけ」シリーズ第4弾は、ますます味わい深く登場です。鼻つまみ者の哀しみが胸に迫る「こわい」、滑稽なまでの厚化粧をやめられない微妙な娘心を描く「畳紙」、鳴家の冒険が愛らしい表題作など全5編。
(「BOOK」データベースより)

 
 さて、第3弾の『ねこのばば』の記事(コチラ)で書いたとおり、好きなシリーズなのだが、今回はチト不満。

 収録の5編のうち、『こわい』では、慈悲深いはずの仏様からも、他の妖(あやかし)達さえからも忌み嫌われるように生まれ付いてしまった“孤者異(こわい)”の怒り・哀しみ・孤独に。『畳紙(たとうがみ)』では、自分を表に出すことが怖くて、親代わりの祖父母や許婚の前でさえ素顔を見せられない、お雛の心の揺れに。著者の筆は迫り切れていないのだ。もちろん様々な描写を通じて、読者に伝えようとはしている。しかし、物足りない。また、いたずらに結論付けず、投げ出すような終わり方は構わないが、余韻がない。

 このあたり、全てを書き尽くさず、読者の想像の余地を残しながら、そこはかとなく、でもしっかりと登場人物の心情が立ち上がってくる北原亞以子氏の『慶次郎縁側日記』シリーズとは、かなりレベル差がある。

 続く『動く影』も中途半端だ。結局、若だんなが幼い頃こんなことがありました・・・という話に留まっている

 あとの2編『ありんすこく』『おまけのこ』も・・・単なる“お話”だ。

 好きなシリーズなだけに誠に残念。前3作も、ひょっとしてこんなモノだったのだろうか?物珍しさに喜んでいただけで。それとも、こちらの期待値が異常に高すぎたのか?あるいは、4作目にして、そろそろレベルダウンか?

 第5弾での巻き返しを期待したいところだが、そのうちヒマを見つけて、もう一度いちばん最初の『しゃばけ』を読んでみよう。


 次は『グリーン・レクイエム/緑幻想』(新井素子・著/創元SF文庫)
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2007年12月02日

フラッタ・リンツ・ライフ


フラッタ・リンツ・ライフ
著者名:森博嗣(著)
出版社:中央公論新社
出版年:2007.11
ISBN :9784122049369


ずっと二人で空を飛んでいても、決して触れることはない。彼女の手を、彼女の頬を、僕の手が触れることはない―「僕」は濁った地上を離れ、永遠を生きる子供。上司の草薙と戦闘機で空を駆け、墜ちた同僚の恋人相良を訪ね、フーコのもとに通う日々。「スカイ・クロラ」シリーズ急展開。
(「BOOK」データベースより)

 『スカイ・クロラ』シリーズ第4弾。

 戦争代行会社のトップ・パイロットであったクサナギ(♀)は、今や大尉で、とある基地の管理職であり、自らが飛ぶことは少なくなっている。シリーズ2作目『ナ・バ・テア』以来の部下・クリタ(♂)は、相変わらず飛んでいるが、ボンネットに猫マークの敵機とだけは交戦せずに退避するよう指示されていた。その機体は、クサナギ以前のトップで、今は敵の会社のエース・ティーチャのもの。クサナギは自らの手で倒したいのか?

 この巻では、遺伝子制御剤によって生まれたキルドレ(永遠に自然死しない子供)を普通の人間に戻す技術が開発されたことが明らかになる。だが、クサナギは既にキルドレではなくなっていた。

 で、えーと。

 説明が困難だな・・・。ストーリーをなぞるだけじゃ何も伝わらんしなぁ。

 大体話の全貌が分からない。ま、次の最終巻『クレィドゥ・ザ・スカイ』を待とう。そして、全部読み返すのだ。ま、単行本やノベルズ版を既に読んでいる人達の話では、これ読んでも結局謎だらけのようだ。誰か謎解き本出してくれぇ。

 ・・・いつか、作者本人に種明かしをしてほしいが、そんなことはありえやろうなぁ。

 押井守監督による『スカイ・クロラ』を映画化が楽しみだ。

ダウン・ツ・ヘブン


 次は、『おまけのこ』(畠中恵・著/新潮文庫)。
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2007年12月01日

The MANZAI 4


The MANZAI 4
著者名:あさのあつこ(著)
出版社:ジャイブ
出版年:2007.11
ISBN :9784861764554


 過去3巻で140万部。書き下ろしとはいえ、よく売れている。『ピュアフル』文庫というネーミングは少々気恥ずかしい・・・^^;。

不登校が原因で喧嘩した父親とそれをなだめようと車で一緒に出かけた姉を交通事故で亡くした男子中学生・瀬田歩。160cm・50kgの小さな細身の体、女性的な綺麗な顔立ち。そして、自分に自信が持てず、他人と関わることをどこかで恐れる歩。母の故郷の街の中学校に転校してきたそんな歩に、「お前に一目惚れしたから、一緒に漫才やろ」と熱烈ラブコールを贈る次期サッカー部キャプテン、ゴツイ体の秋本貴史。嫌がる歩だが、強引で、でもどこか憎めない貴史と関わっていくうちに友達の輪が広がり、ほんの少しずつだが確かに変わっていく。そして、文化祭。2人は遂にステージで漫才を・・・。明るく楽しく繊細でほんわかする青春ストーリー。

・・・というのが、最近まったく更新していない、もうひとつの読書サイトで書いた「The MANZAI 1」の簡単レビュー(ちょっと改訂版)。

 自分も思春期の頃イジメにあって、己の存在に自信が持てなくなり、息苦しい世界で生きてきた(1年だけやけど)。でも、ちょっとした自分の勇気(って言葉も気恥ずかし!)と幸運な出会い、そこから始まる新しい人間関係の中で、誰かが自分を認めてくれて、最初は恐々やがて少しずつ自然に自分が出せるようになって、「この世界に居てもいいんだ」と思えた瞬間の幸せ。だから、喜びも戸惑いも、歩の気持ちは自分のことのように理解できる。

 4巻まで来ると、すっかり地元の人気者で、クラスの中心的メンバーとも仲良くなり、秋本との日常会話での掛け合いも(嫌々ながらも)絶好調。「だって、瀬田君がいちばん目立つんやもの」とクラスメイトに言われて、平凡で目立たないことをモットーとしてきたはずの歩は戸惑う。でも、戸惑いながらも、少しずつ成長する歩の姿。友情や初恋(=失恋)。眩しいなぁ・・・と思う。

 もちろん、思春期は生易しいものじゃない。美しいだけじゃない。苦しくて、醜くて、惨めで、不恰好で、滑稽でもある。そこもかなりリアルに押さえられている。

 秋本のボケと歩のツッコミは時にスベッてるところもあるが(でも、プロ級だとリアルじゃないな)、総じてなかなか面白い。僕は電車の中での読書が多いので、笑いを我慢している。能面のように(?)無表情でいることが、時々ツライ(笑)。

 映画化が決定しているらしい。2人を初めとして皆を誰が演じるのか楽しみだ。完結していない作品を映画するのは如何なものか・・・と一方では思うのだが。


 次は『フリッタ・リンツ・ライフ』(森博嗣・著/中公文庫)。
posted by ふくちゃん at 00:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 青春小説