銀座開化おもかげ草紙 著者名:松井今朝子(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.09
ISBN :9784101328713
今、話題の直木賞作家・松井今朝子氏。何だかとっても面白そうな受賞作は文庫になるのを待つとして(セコい)、既刊文庫本の中から、初読み作品として何をセレクトするか・・・。
ということで、「WEB本の雑誌」で書評員各氏の評価が高かった本作を購入。単行本時のタイトルは『銀座開化事件帖』。若干ネタバレ。
激変の「御一新」からまだ間もない明治7年。かつては旗本=バリバリの幕臣の家の次男坊・久保田宗八郎、30歳。明治の御世に未だ馴染めず世捨て人のような自分とは対照的に、すっかり新しい時代に適応した兄の仲介により、易断が得意な大実業家・高島嘉右衛門の知己を得た彼は、高島と兄の依頼で銀座煉瓦街で暮らすことに。
元は大垣藩の分家の若様で洋物を扱う九星堂の主人・戸田。耶蘇教(キリスト教)書店の十字屋を営む元与力の原。薩摩藩出身・警視庁二等巡査の市来。宗八郎は、自分よりもずっと若く、新時代を積極的に生きる個性的な隣人達に囲まれて、図らずも殺人などの事件解決に協力することになる。
実は、宗八郎は維新後しばらく、ほとぼりが冷めるまで北海道に潜んでいた。何のほとぼりかというと、維新で勝利した薩摩藩の将校で石谷という男が、幕府側の彰義隊士の死体を切り刻んで面白おかしく蹂躙する様に行き会って、腕に覚えのある宗八郎が成敗したのだが(峰打ち)、なんとこの石谷が新政府で市政裁判所権判事に出世し、追われる立場になってしまったのだ(素性は割れてない)。で、東京に戻ってからも、内縁の妻とひっそり暮らしていたわけ。
しかし、関わる事件の先々で石谷の影がチラつく。遂には義憤に駆られた宗八郎はかつての気概を取り戻し、新政府から死刑に処される覚悟で、石谷と対決する道を選ぶ。
やっと、盛り上がってきたぁ〜!
って、ここで終わりかい!
・・・みたいなラストを迎えるのだが、どうやら続きがあるらしいので、文庫になったらまた読もう。
全体的に地味な作品だったが、宗八郎をなぜか敬慕する武骨な薩摩隼人・市来が彼の前で見せる態度、宗八郎と石谷(というか新政府)の間で苦慮する姿は誠実かつ滑稽で、実に宜しい。つい、吹き出すこと数度。あと、宗八郎よりほぼ一回り年下で、まさに新時代の令嬢として登場する女学生・綾との微妙な関係も、この先気になる。
ま、とりあえず先行作品というか前日譚の『幕末あどれさん』を近々読もうっと。ちなみに「あどれさん」とは、フランス語のadolescente。「青年期」という意味らしい。
高島、戸田、原は歴史上の実在人物だそうだ。高島は“アレ”を作った高島で(もう上に答あるけど)、戸田と原は十字屋をアノ十字屋にした人らしい。へぇ〜。
次は、『The MANZAI 4』(あさのあつこ・著/ピュアフル文庫)。

