2007年09月30日

犯人に告ぐ(上・下)


犯人に告ぐ 上
著者名:雫井脩介(著)
出版社:双葉社
出版年:2007.09
ISBN :9784575511550


 下巻の途中までは「面白い!映画も絶対観るぞぉ〜!!」と、ページを繰るのもモドカシイほどの勢いで読んだ。


闇に身を潜め続ける犯人。川崎市で起きた連続児童殺害事件の捜査は行き詰まりを見せ、ついに神奈川県警は現役捜査官をテレビニュースに出演させるという荒技に踏み切る。白羽の矢が立ったのは、6年前に誘拐事件の捜査に失敗、記者会見でも大失態を演じた巻島史彦警視だった ― 史上初の劇場型捜査が幕を開ける。第7回大藪春彦賞を受賞し、「週刊文春ミステリーベストテン」第1位に輝くなど、2004年のミステリーシーンを席巻した警察小説の傑作。
(上巻/「BOOK」データベースより)

犯人=“バッドマン”を名乗る手紙が、捜査本部に届き始めた。巻島史彦は捜査責任者としてニュース番組に定期的に出演し、犯人に「もっと話を聞かせて欲しい」と呼びかけ続ける。その殺人犯寄りの姿勢に、世間および警察内部からも非難の声が上がり、いつしか巻島は孤独な戦いを強いられていた―。犯人に“勝利宣言”するクライマックスは圧巻。「普段ミステリーや警察小説を読まない人をも虜にする」と絶賛された、世紀の快作。
(下巻/「BOOK」データベースより)


 まず、上巻の第1章では、6年前の誘拐事件の顛末が語られるのだが、捜査失敗の責任は決して巻島一人に帰せられるものではないし、彼の抱える家族の問題、正義面したマスコミによる糾弾などと相まって、胸が苦しくなるような、腹の煮え立つような気持ちに・・・読み応えあり。

 組織って、生け贄を必要とするもの。マスコミも、分かりやすい構図を求めるもの。

 ・・・などと思いながら。

 だが、連続児童殺害事件の捜査の停滞を受け、左遷された田舎の署で実績を挙げ続けてきた巻島が呼び戻される。無論、そこには上層部の温情などなく、捜査成功の目算もないが、(表面的には心の傷を隠し)より不敵さを増した巻島は、それを承知で新たな捜査責任者を引き受ける。

 ここで、6年前の巻島の苦渋を知っている読者としては、彼に肩入れしたくなるわけ。

 で、捜査責任者がTVで呼びかけるという異例の捜査方法で、どう真犯人に辿りつくのか・・・俗物年下上司の邪魔だてにイライラ、「巻島がんばれ」とドキドキしながら、先を読んでいく・・・。

 しかし、ある偶然に始まって、地道な方法(ケレン味もあるけどさ)で犯人逮捕へ・・・という結末は、地味過ぎるなぁ。これが最初から(良い意味で)地味な警察小説ならともかく、大きく広げた風呂敷の畳み方としては、やや肩透かし。

 ま、現実にもこういう偶然は起こり得ると思うし、捜査なんて実際地味なもんだろうし、じゃあ他にどんな解決方法があるんや?と言われると困るし、文句言う筋合いもないのだろうが、ちょっとラストの展開は物足りなんなぁ。


 次は、地味な警察小説の第一人者による『臨場』(横山秀夫・著/光文社文庫)。
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2007年09月25日

水滸伝・十二 炳乎の章


水滸伝 12
著者名:北方謙三(著)
出版社:集英社
出版年:2007.09
ISBN :9784087462081


 日本でもわりに最近まで塩の専売制が残っていたように、古来、塩というものは国家の財源確保の重要なツールであり、それゆえ国家権力の象徴でもあった。

 ・・・らしい(知ったかぶり)。

 だからこそ、梁山泊が蜂起の準備段階から力を入れて張り巡らせた「闇塩の道」は、宋という国の権力・権威を脅かすものであり、梁山泊を宋に対抗する「国」として運営していくために不可欠なのである。

 その全貌を知るのは、頭領の晁蓋でも宋江でもなく、ただひとり北京大名府の商人・盧俊義(ろしゅんぎ)のみ。全体像を知る者が多いほど、情報漏洩の可能性も高まるからだ。

 青蓮寺は徹底した調査で、闇塩の頭目の可能性のある北京大名府の人間を盧俊義を含む18名まで絞り込むが、そこから先へは進めない。しかし、ここで思い切って、その18名全員を捕縛し、拷問にかけるという荒業に打って出る。

 そして、拷問に対する反応などから、遂に盧俊義ひとりに的を絞った。過酷な拷問に身も心も毀れかける盧俊義・・・。闇塩の道はとうとう暴かれるのか。

 一方、盧俊義捕縛の報を受けた梁山泊。

 盧俊義の従者・燕青(えんせい)は大急ぎで北京大名府に戻り、飛竜軍の王英らと共に捨て身の奪還作戦を敢行。そして、梁山泊は盧俊義の救出と闇塩に関わる全ての痕跡を消し去るべく、北京大名府占拠のため、ほぼ全軍で出動する。

 しかし、北京大名府奪回の命を受けた将軍・関勝率いる3000の軍が、防備の手薄となった梁山泊に密やかに侵攻し・・・。

 ・・・というのがメイン・ストーリー。

 関勝は、秦明や花栄、呼延灼と同様、地方軍の優秀な将軍で、これまた登場人物一覧表では初めから梁山泊側になっているから、いつどんなきっかけで官軍を離れて梁山泊に合流するか・・・と思っていたら、なかなか味のある展開。

 さて、前巻で梁山泊に大打撃を与えた史文恭(しぶんきょう)。どうやら、今度は金貸し&闇の妓楼の経営者として、梁山泊が宋から奪って運営している街に紛れ込むつもりらしい。理想や志に燃える梁山泊の兵を「欲望」の力で堕落させること、そして中心人物をまたも暗殺することを考えているのだ。そのイヤラシイ怖さ・・・。

 北方水滸伝の楽しさは、敵味方問わず、数多くの登場人物ひとりひとりの心や人生模様にキチンとスポットライトが当たること。次の巻は誰の物語かな?

水滸伝・一 曙光の章
水滸伝・二 替天の章
水滸伝・三 輪舞の章
水滸伝・四 道蛇の章
水滸伝・五 玄武の章
水滸伝・六 風塵の章
水滸伝・七 烈火の章
水滸伝・八 青龍の章
水滸伝・九 嵐翠の章
水滸伝・十 濁流の章
水滸伝・十一 天地の章


 次は、豊川悦司主演で映画化の『犯人に告ぐ(上・下)』(雫井脩介・著/双葉文庫)。
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2007年09月24日

キラレ×キラレ


キラレ×キラレ
著者名:森博嗣(著)
出版社:講談社
出版年:2007.09
ISBN :9784061825550


 『カラ兄』同様、森氏の作品は会話中心で進んでいく。しかし、文字数の密度は圧倒的に薄いので、すぐに読み終わる。

 貶しているわけじゃないよ。

 この人の紡ぎ出す会話、好きなんだなぁ。クセになる。ミステリとしてどうのこうのよりも、それを読むのがもはや楽しみ(子供の頃、赤川次郎氏にハマっていたときと同じだ)。特に探偵役の人物(今シリーズの場合は鷹知ではなく真鍋の方)の思考回路そのもの(≒森氏の思考回路?)が結構好きだ。


「この頃、話題になっている、電車の切り裂き魔なんだけれど―」30代の女性が満員の車内で、ナイフのようなもので襲われる事件が連続する。“探偵”鷹知祐一朗と小川令子は被害者が同じクリニックに通っている事実をつきとめるが、その矢先、新たな切り裂き魔事件が発生し、さらには殺人事件へと―。犯行の異常な動機が浮かび上がるとき、明らかになるものとは…。Xシリーズ第2弾。
(「BOOK」データベースより)


 今回はミステリ読者としては低級な僕にも、わりとすんなりと理解できた。ミステリとして驚きはないけど納得はできる。しかし、ミステリとは言えんかな・・・狭義においては。

 また最後の方では第1弾に続き、西之園萌絵が登場。この作品の舞台は那古屋(名古屋じゃない)ではなく東京で、萌絵はW大学で勤務(助手?助教授? ― 今は准教授か ― 教授?じゃないよな、いくらなんでも)しており、中断しているGシリーズよりも時系列的には後の話らしい(第1弾で気付けよ)。

 この後、2008年1月にXシリーズ第3弾『タカイ×タカイ』が出て、それからGシリーズに戻るらしいが、Xシリーズは6作、Gシリーズは12作の予定ということだから、またリンクしてくるんだろうな。でないと、わざわざ同時並行で書く理由が分からない。

 となると、Xシリーズにもいずれ真賀田四季が絡んでくるのか?

 ・・・森作品をフォローし続けている人でないと全く理解できない話で、すんません。

イナイ×イナイ


 次は、『水滸伝・十二 炳乎の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。
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2007年09月23日

カラマーゾフの兄弟4&5


カラマーゾフの兄弟 4
著者名:ドストエフスキー(著)
     亀山郁夫(訳)
出版社:光文社
出版年:2007.07
ISBN :9784334751326


 古典としては異例の売れ行きを記録中の『カラ兄』シリーズ。4巻、そして一気に最終5巻を読了。

 といっても、5巻は短いエピローグだけ。

 しかし、4巻は、いやあもう、歯応えのある大長編で、またまた読み終わるのに時間がかかってしまった。どんなに長くてもスラスラサクサク読める現代小説とはエライ違いである。いや、そもそもほとんどが会話や独白(鬼気迫る饒舌!)中心の作品だし、優れた訳業のおかげもあってガンガン読めるのだが、密度が濃すぎるので(笑)、どうしても時間がかかるのだ。

 で、全部読み終わって振り返ってみるに、ここに描かれんとしたことを十全に理解したという自信は全くない。だが、理解できる範囲は限られてはいても、この異様な迫力と熱さは凄い。表面的な壊れ方なら、もっと過激な人物やシーンが登場する作品はいくらでもあるだろうけど、内実のレベルが違う。


11月初め。フョードル殺害犯として逮捕されたミーチャのまわりで、さまざまな人々が動きだす。アリョーシャと少年たちは病気の友だちを見舞い、イワンはスメルジャコフと会って事件の「真相」を究明しようとする。そして裁判で下された驚愕の判決。ロシアの民衆の真意とは何か。
(第4巻 「BOOK」データベースより)

 ・・・『カラ兄』ってミステリでもあったんやね!

「エピローグ」では、主人公たちのその後が描かれる。彼らそれぞれに、どんな未来が待ち受けているのか…。訳者・亀山郁夫が渾身の力で描いた「ドストエフスキーの生涯」と「解題」は、この至高の名作を味わうための傑出したすばらしいガイド=指針となるにちがいない。
(第5巻 「BOOK」データベースより)

 ・・・5巻の詳しい解説は読書の大きな助けになる。これを踏まえてアタマから再読すれば、より作品を楽しみ、理解することができるだろう。


カラマーゾフの兄弟1
カラマーゾフの兄弟2
カラマーゾフの兄弟3


 でも、読みたい本が目白押しで先を急ぐので、次は『キラレ×キラレ』(森博嗣・著/講談社ノベルズ)。
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2007年09月10日

居眠り磐音 江戸双紙 花芒ノ海/雪華ノ里


花芒ノ海
著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2002.10
ISBN :9784575661347


 また2冊続けて読んでしまった・・・。

 1冊読んだら、購入済みの『カラマーゾフの兄弟』の4巻&5巻に突入するつもりが、たまたま昼休みに『花芒ノ海』をほぼ読み終わって、帰りの電車で読む本が無くなったのと、もうしばらくこの世界に浸りたい気持ちで、会社帰りに『雪華ノ里』を買ってしまった。

 ドラマ放映をきっかけに読み出して、ハマる山本耕史(磐音役)ファンの女性も増えているそうだ。

 第1巻で磐音と親友たち、そして許婚の奈緒を不幸のどん底に追い遣った事件は、やはり偶然ではなく、磐音たちの藩政改革を潰すために国家老・宍戸一派が仕組んだことだった。で、第3巻『花芒の海』では、江戸の知己たちの手を借りて宍戸一派の不正と陰謀を暴き、改革派の藩士たちと共に国許に戻って、宍戸派を権力の座から除くまでの磐音の活躍を描く。

 第4巻『雪華ノ里』では、磐音が国許に戻る前に、病に斃れた父親の治療代を工面するために女衒に身を売り、長崎の遊郭に連れた行かれたという奈緒を追いかける。しかし、長崎から小倉、赤間関(下関)、京都、金沢と『転売』されていく奈緒とは、いつも一足違いで会えない(このあたり出来すぎと思いつつも磐音が不憫に思えてくる)。

 途中様々な事件に巻き込まれつつ、奈緒の足跡を追って江戸へ舞い戻る磐音。しかし、転売される度に奈緒の「値段」は吊り上り、ついに江戸の吉原では一千両。もとより藩に戻るつもりのない貧乏浪人の磐音には、身請けできるような金額ではない。

「奈緒どのがこの吉原で生き抜こうというのなら、(中略)里の外からその身を案じて見守ります。ですが、奈緒どのが吉原からいつの日か抜け出たいと申すなら、それがし、なんとしてもその金子を作りたいと思うております。(後略)」

 あらすじだけ取り出すと重いが、そこはそれ、磐音のキャラのおかげでわりに軽妙に読める。小藩とはいえ元は中老職の嫡男である磐音の育ちの良さ(?)からくる丁寧な物腰 ― 長屋暮らしの“師匠”幸吉少年、大家の金兵衛、鰻屋の宮戸川(ここが貴重な定職の場)の親方など普通の町民はもちろん、博徒であれ、敵であれ、どんな相手に対しても ― が、時に爽やかで、時に巧まざるユーモアを醸し出すから。

 飯を食っているときは、誰の話も耳に入らず、何も見ず、ただ食べる幸せだけに集中しているのも笑える。今回はこれに関して、『花芒ノ海』で思わず吹き出す絶妙のシーンがあった。電車の中なので、傍から見ると気持ち悪かったろう・・・。

居眠り磐音 江戸双紙 陽炎ノ辻/寒雷ノ坂


 で、昨日から『カラマーゾフの兄弟4』(ドストエフスキー・著/光文社古典文庫)を読み始めたところ。
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2007年09月05日

銀河英雄伝説4策謀篇


銀河英雄伝説 4 策謀篇
著者名:田中芳樹(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.08
ISBN :9784488725044


 あぁ・・・最近ミステリを読んでいない。いかん。


 銀河帝国では、第3勢力フェザーンの協力を受けた旧体制派貴族の生き残りが、ラインハルト打倒のため幼い皇帝を“救出”。自由惑星同盟へ逃れ、その庇護の下、帝国正統政府と自称する亡命政権を発足させる。

 だが、フェザーンの帝国駐在弁務官ボルテックは、あらかじめ帝都防衛指令部に、この“誘拐”を密告。誘拐者である門閥貴族と彼ら犯罪者を匿う自由惑星同盟への懲罰を口実に大規模攻勢をかけることをラインハルトに提案する。これまで両陣営のバランスの中で、独立した経済国家として繁栄してきたフェザーンであるが、自治領主・ルビンスキーが銀河帝国側に付くことに決めたのだと。つまり、貴族どもはただ駒として利用されただけ。

 ・・・もっとも、フェザーンの真の目的は別のところにあり、そのバックには人類のかつての盟主・地球において隠然たる力を持つ宗教勢力「地球教」の存在があるのだが・・・。

 地球教の存在を明確には掴んでいないものの、裏があることを承知でフェザーンの策に乗せられたフリのラインハルトは、イゼルローン要塞には帝国軍の双璧・ロイエンタールの大艦隊を派遣して、最大の強敵ヤンを足止め。

 と同時に、これは帝国と同盟を結ぶ唯一の回廊(とされている)イゼルローンさえ守っておけば大丈夫と同盟政府に思わせるための陽動。実は、ルビンスキーを追い落として自治領主に据えてやるとラインハルトに約束されたボルテックの裏切りにより、これまでフェザーンを拠点とする独立商人しか使えなかったフェザーン回廊を通過して電撃的に同盟に攻め入る作戦だったのだ。

 ラインハルトは、まんまとフェザーンを占領。同盟に攻め込むための充実した補給基地を手に入れた。しかし、ルビンスキーもそこは一筋縄ではいかない男、帝国軍の捜査の網を抜けて雲隠れ。そして、同盟政府の嫌がらせでヤンの元を離され、フェザーンに駐在武官として赴任していたユリアンも、なんとか逃げ出す。

 一方、相変わらず卓越した洞察力で、ラインハルトの作戦の全貌を見抜いていたヤンであったが、フェザーン回廊に注意!という警告は弛緩しきった政府には無視され、イゼルローンからは動きたくても動けず・・・。

 同盟最大のピンチは目前。


 いやぁ・・・このほかにも『策謀篇』というタイトルに相応しく、権謀術数の乱れ打ち状態である。どういう展開になっていくのか・・・楽しみ。

 ・・・って、大体昔観たアニメで知ってるけど・・・でも楽しい。

 では、印象に残ったフレーズを。

 “権力の座というものは、それじたいが精神上の病巣であって、そこに安住しているかぎり、視野の狭窄と思考の利己化とは必然の病状となるのだろうか。”

銀河英雄伝説1黎明篇
銀河英雄伝説2野望篇
銀河英雄伝説3雌伏篇


 次は『居眠り磐音 江戸双紙 花芒ノ海』(佐伯泰英・著/双葉文庫)。

 あぁ・・・最近ミステリを読んでいない。
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2007年09月03日

クレイジーフラミンゴの秋


クレイジーフラミンゴの秋
著者名:誼阿古(著)
出版社:ソフトバンククリエイティブ
出版年:2007.02
ISBN :9784797340600


学校なんかバッカみたい。先生もバッカみたい。クラスの子たちもバッカみたい。ママもパパもバッカみたい。そして、そんなことばっか考えてる自分が一番、バッカみたい。…ってなこと思ってる晴ちゃんは13歳、中1の女の子。もちろん、だからって変な子って呼ばれて浮きたくないし、教室の隅っこで地味に一般庶民やってたのに、たった13票で学級委員になっちゃった。文化祭前の騒がしい学校でやる気のなさそな担任と無意味なやる気だけいっぱいのクラスメイトを抱え、新米リーダーは無視され嫌われこき使われて、もう泣きたいことばかり。おまけに、なんだか最近、気分まで変。ずっと昔の中学で、ちょっと変わった1年生の、今も昔も変わらない「おんなのこものがたり」。
(「BOOK」データベースより)

 『クレイジーカンガルーの夏』の続編。とはいえ、主人公は前作の男の子4人ではなく、うち2人の同級生の女の子(その2人の男の子は主要人物として、残りの2人もチョイ役で登場)。ストーリーも直接の関連はないので、姉妹編と呼ぶのが相応しい。

 で、前作はまだしも「ひと夏の冒険」的要素があったが、今作で描かれるのは一層平凡な中学生の日常である。

 しかし、小説としての完成度はこちらの方がずっと上で、不安定で、ミジメで、嫌らしくて、息苦しくて、それでいてかけがえのない思春期という時間をリアルに思い出させてくれる。登場する音楽 ― ビートルズやサイモン&ガーファンクル、サラ・ヴォーンetc. ― も、前作はただ登場するだけで、ストーリーにマッチしないというか、必然性がない感じだったけど、今作は効果的に(言い過ぎか?)使われている。

 文化祭で行われるクラス対抗の合唱コンクールで、なかなか盛り上がらなくて、まじめに練習しないヤツがいて、皆がまとまらなくて、でもスッタモンダの末に最後には良いものができて・・・というエピソードは、僕も中学時代に合唱&合奏コンクールで経験していたので ― 放課後の練習中、小太鼓担当のトっちゃん(今も友達)がダラダラした雰囲気にキレて途中で帰ってしまい、音楽室で残った全員で緊急学級会して、その結果をトっちゃんに僕が電話で伝えて・・・とか ― 他人事とは思えず(笑)、面白かった。

 まあ、主人公の女の子が担任の先生に恋して云々・・・という終盤はやや陳腐な気もしたが、実際そういうこともあるだろうから、一概にリアリティがないとは言えない。

 それにしても、GA文庫という、おそらくは“その筋の人”以外にはマイナーな文庫に、こういう普通の小説がラインナップされているのは、このシリーズにとっていささか不幸な気がするけどな・・・。集英社文庫あたりに入れてもらいたい(なんとなく・・・)。


 次は『銀河英雄伝説4策謀篇』(田中芳樹・著/創元SF文庫)。
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2007年09月01日

NO.6 #3


NO.6 #3
著者名:あさのあつこ(著)
出版社:講談社
出版年:2007.08
ISBN :9784062758017


 紫苑(しおん)と同じエリートコースを生き、紫苑がネズミとの出会いからエリートの住む街《クロノス》を追放された後も、友人として紫苑と変わらぬ態度で接してきた唯一の少女・沙布(さふ)。

 交換留学から戻った沙布は、紫苑が犯罪者として矯正施設に収容されたという報道を信じられず、彼の母・火藍(からん)の元を訪れ、紫苑が今は《西ブロック》にいることを知る。

 紫苑を想う沙布は、彼に会いに行こうと決意するが、火藍の家からの帰途、何ゆえか治安局に捕らえられ、矯正施設に送られる。

 ・・・というのが#2の終盤で、その事を知らせる火藍のメモを受け取ったネズミと共に、紫苑が矯正施設へ乗り込んでいく話になるのかと思いきや、ネズミはそのメモを紫苑には見せない。

 矯正施設に乗り込むなど無謀極まりないことであり、にも関わらずメモを見せれば紫苑が後先考えず行動に移ることは明らかだからだ。

 だが、紫苑の無防備な真っ直ぐさは、ネズミを始めとして、己以外は信じられない、他人に情けはかけられない、他人に弱みは見せられない、そんな生き馬の目を抜くような《西ブロック》に生きる住人達 ― 《NO.6》の高官相手に売春で生計を立てる元新聞記者の力河(りきが)、犬を毛布代わりに貸し出す商売のイヌカシ ― の心を少しずつ揺さぶっていく。

 ・・・ここが#3の読みどころか。

 やがて、沙布の件に偶然気付いた紫苑は、このことを知らないであろう(本当は知っている)ネズミに黙って1人で矯正施設に赴こうとするが、追ってきたネズミに引き止められる。

 力河やイヌカシの集めた情報(イヌカシは闇で囚人の持ち物を流したり、残飯や食物を買ったりするなど矯正施設の役人とのつながりがある)を元に矯正施設へ潜り込む方策を検討する紫苑とネズミ。

 チップを埋め込まれ、24時間完全監視下にある矯正施設で、自由に動き回れる唯一の例外・・・それは「人狩り」に遭うことだった。

 で、「人狩り」って何?というところで、#3は終了。

 #4の文庫はいつ出るの?

NO.6 #1
NO.6 #2


 次は、『クレイジーフラミンゴの秋』(誼阿古・著/GA文庫)
posted by ふくちゃん at 16:21| Comment(0) | TrackBack(0) | SF