2007年06月29日

グラスホッパー


グラスホッパー
著者名:伊坂幸太郎(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.06
ISBN :9784043849017


 嫌味なほどに上手い(笑)。

 かなり面白い。

 でも、何も残らない(笑)。


「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに―「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説。
(「BOOK」データベースより)


 類稀なるリーダビリティは保証。

 教訓も思想も理屈も文学性も必要ない、ただどこに転がるか分からない物語を楽しみたいときにどうぞ!


 次は、やっと出た(ような気がしてしまう。待ち遠しくて)『水滸伝・九 嵐翠の章』(北方謙三・著/集英社文庫)。
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2007年06月26日

幸福な食卓


幸福な食卓
著者名:瀬尾まいこ(著)
出版社:講談社
出版年:2007.06
ISBN :9784062756501


 瀬尾まいこ氏は初読み。この作品が原作の同名の映画はなかなか良かった。だからこそ、読む前は少々不安(って大袈裟か)だった。

 先に映像化された作品を観て気に入ると、原作を読んでも「なんか違うな、無駄が多いな」と思ってしまったりする。逆に原作を先に読んで気に入った場合は、映画やドラマを観て「役者がイメージと違う」だの、「おいおい、そこを省略(改変)か」だのと・・・。

 全く勝手なものである。

 今回も多少そういう面があった。でも、主役の佐和子と大浦君の2人は原作と映画でイメージぴったりだ。佐和子の両親は、映画では羽場裕一と石田ゆり子なのに、小説を読んでいる間はなぜか長塚京三と手塚理美だった。

 まあいい。

 他にも、映画と原作では色々細かい違いもあるのだが、それも今回は気に障ることなく、むしろ楽しめた。

 多分、原作そのものがちゃんと心に届く作品だからだ。


佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて…。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。吉川英治文学新人賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)


 一風変わった話だが、家族の絆とか、生き辛さとか、思春期のアレコレとか、愛する者を永遠に失う哀しみとか、越えられそうにない哀しみを何となく乗り越えていく人間の柔らかな強さとか、そういうものが確かに描かれてる。

 恋愛小説としても、『セカチュー』の10倍は良い。

 ただ、エンディングの余韻という点では、映画に軍配。でも、小説ではあの終わり方は無理だから、仕方がない。

 とにかく、また1人、継続して読みたい作家が増えた(増える一方で困ったもんだ。金と時間が足りん・・・)。知っている人も多いと思うけど、瀬尾氏は現役の中学国語教師である。実作者に習う国語の授業って楽しそうで、生徒が羨ましい。


 次は、『グラスホッパー』(伊坂幸太郎・著/角川文庫)。
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2007年06月24日

桜花を見た


桜花を見た
著者名:宇江佐真理(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2007.06
ISBN :9784167640071


 宇江佐真理氏は、お気に入りの時代作家の1人である。特に『髪結い伊佐次捕物余話』シリーズが好きだ。とにかく江戸の市井もの・人情ものを書かせると、上手すぎるぐらい上手い人である。

 だが、この『桜花を見た』は、そんなイメージとは異なる作品集。

 表題作の『桜花を見た』は、遠山の金さんこと遠山左衛門尉景元とその隠し子(町人)の一瞬の邂逅と情愛を描いた物語。

 そのほかの作品も、葛飾北齋の娘・お栄(『酔いもせず』)、浮世絵師・歌川国直(『別れ雲』)、松前の(円山)応挙と呼ばれた蛎崎波響(『夷酋列像』)、北方探検家・最上徳内(『シクシピリカ』)と、全て実在の人物に中心に据えた中篇小説集。

 金さんと最上徳内以外は、全然知らなかったが。

 『酔いもせず』、『別れ雲』、『夷酋列像』は画という題材で、『夷酋列像』と『シクシピリカ』は松前藩と蝦夷の叛乱という題材でリンクしているのは、なかなか面白い趣向。

 ただ、宇江佐氏の本領は、やっぱり市井・人情ものだな、と思った次第である。

 余談だが、金さんの出てくる場面、僕の脳内劇場では金さん=西郷輝彦氏だった。


 次は、『幸福な食卓』(瀬尾まいこ・著/講談社文庫)。
posted by ふくちゃん at 22:00| Comment(2) | TrackBack(1) | 歴史・時代小説

2007年06月19日

首を斬られにきたの御番所 縮尻鏡三郎


首を斬られにきたの御番所
著者名:佐藤雅美(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2007.06
ISBN :9784167627133


 その昔『物書同心居眠り紋蔵』シリーズがNHKでドラマになり(主役は確か舘ひろしだったか・・・?)、最近では『八州廻り桑山十兵衛』シリーズもドラマ化されたが、その作風からか地味な印象が拭えない時代小説作家・佐藤雅美(♂・さとうまさよし)氏。

 ちょっと変わったタイトルの本書は『縮尻鏡三郎』シリーズの第2弾。随分久し振りだと思って確認してみたら、第1弾の刊行は2002年だった(文庫版)。


評定所留役としてエリート街道を驀進していた拝郷鏡三郎は、幕閣内での政争に巻き込まれて失職。いわゆる縮尻後家人となってしまう。上役の勘定奉行の世話で、現在は捕縛した者を取り調べる「大番屋」の元締だ。出世の道から外れたものの、江戸に暮らす人々のよろず相談事が持ち込まれ、大忙し。好評シリーズ第二弾。
(「BOOK」データベースより)


 氏の著作の中では『居眠り紋蔵』シリーズがかなり好きで、今も新刊が出れば読む。『判次捕物控』シリーズも悪くない。直木賞を獲った『恵比寿屋喜兵衛手控え』もなかなか面白かったと記憶している(内容忘れた・・・)。でも『桑山十兵衛』シリーズは途中で離脱。

 人気のある時代小説(あるいは時代小説作家)って、人物造型・人物描写、風景描写・情景描写が本当に上手い。だが、どうもこの人の作品は、そこんとこが弱い気がする。文章も硬いというか艶がない。

 ・・・て、素人が(自分の文章を棚に上げて)言うのも生意気なのだが。

 ま、でも堅実なんだけど、やっぱ地味なんだよなぁ。

 『居眠り紋蔵』シリーズの場合は、主役の紋蔵を始め、主要キャラの造型がユニークだから、それだけでも十分楽しめる。

 対照的に『縮尻鏡三郎』シリーズは、どの人物ももひとつキャラが立っていないので、感情移入しにくいんだな。


 次も時代小説。『桜花を見た』(宇江佐真理・著/文春文庫)。
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2007年06月17日

みんな元気。


みんな元気。
著者名:舞城王太郎(著)
出版社:新潮社
出版年:2007.05
ISBN :9784101186320


 なんじゃ!こりゃー!!

 訳が分からん!

 とんでもないことが次々と、とんでもなくないように淡々と描かれるのがとんでもない。

 深いのか浅いのかもよく分からない。

 相変わらず多少スプラッタ。

 こんな無茶苦茶な話でもいいなら、自分にも書けるのではないかと一瞬思ってしまった。


夜中に目ざめると、隣の姉が眠りながら浮かんでいた―。あの日から本当に色んなことが起きた。竜巻が私たちの町を襲い、妹の朝ちゃんは空飛ぶ一家に連れさられてしまう。彼らは家族の交換に来たのだった(表題作)。西暁町で繰り返される山火事と殺人の謎(「矢を止める五羽の梔鳥」)。単行本『みんな元気。』から3篇をセレクト。
(「BOOK」データベースより)


 ・・・と紹介されているが、こんな説明で何が分かる。

 ・・・と文句を言っても仕方がない。ストーリーの説明のしようがないし、仮に説明できても何ことやら読まなければ分からない小説だ。それどころか、読んでもやっぱりよく分からない(笑)。読んで時間の無駄だったと怒り出す人もいるのではないか。

 でも、なんか読ませるんだよなぁ。

 単行本『みんな元気。』の残りの作品に書き下ろしを加えて、6月末に文庫本が出る。また買っちゃうだろう。


 次は時代小説で、『首を斬られにきたの御番所 ― 縮尻鏡三郎』(佐藤雅美・著/文春文庫)。
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2007年06月14日

のだめカンタービレ#18


のだめカンタービレ #18
著者名:二ノ宮知子(著)
出版社:講談社
出版年:2007.06
ISBN :9784063406481


 『みんな元気。』より先にこちらを読み終わったので。


【千秋がのだめと別居!互いの音楽を見つめるため、パリ市内中距離恋愛開幕。】
音楽に没頭するため、千秋がアパルトマンを出ることを決意。のだめもサロン・コンサートが決まり猛特訓をはじめる。離れて暮らすふたりは、この先どんな音楽を奏でていくのか!?また、Rui(ルイ)やフランクたちもそれぞれの道で迷っていたが……?
(以上 講談社公式サイトより)


 千秋がアパルトマンを出て行くのは、自分とのすれ違いから・・・だと思ってショックののだめだが、誤解が解けて一安心。

 だが、のだめのサロン・コンサート当日、千秋は来ない。千秋は会場に向かう電車の中で偶然にも恩師ヴィエラに再会し、彼が指揮する楽団のリハ見学に誘われたのだ。のだめに心の中で詫びつつ、仕事で急用ができて行けないとメールを送って、途中下車する千秋。

 千秋が来ないことを残念に思いながらも、のだめの頑張りでサロン・コンサートは大成功。

 ・・・でも、なんだかこのラストはまた不穏な・・・。やっぱり千秋がいないとダメなのか、のだめ?

 Ruiやフランクのそれぞれの悩みやそれがなんとはなしに解消されるエピソードは良かった。脇役をきっちり描くというのは、良い長編作品の必須条件だよな。

 ところで「のだめ」がDSに続き、PS2でもゲーム化されろことに。買っちゃうかも・・・。
posted by ふくちゃん at 16:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画

2007年06月13日

村田エフェンディ滞土録


村田エフェンディ滞土録
著者名:梨木香歩(著)
出版社:角川書店
出版年:2007.05
ISBN :9784043853014


 今日は珍しく、平日に仕事休み。というわけで、こんな時間からPCに向かっている。関西も明日には梅雨入りしそうということだが、今日もじっとり暑い。

 そんなジメジメ、ジトジトを忘れさせてくれるような清涼な一冊が『村田エフェンディ滞土録』。

 てっきり“村田エフェンディ”という名前なのかと思っていたら、「エフェンディ」とはトルコ語(?)で、学問を修めた人への敬称とのこと。ま、“村田先生”みたいなものか。

 この村田君は、同じ著者の『家守綺譚』の「木槿(むくげ)」の章に“土耳古(トルコ)に行っている友人の村田から便りが届き・・・”と間接的に登場するあの村田君である。最後には『家守綺譚』とリンクするので、そちらから先に読んでおくのがベターかな。

 本書は、明治維新後の近代化を急ぐ日本を代表して、考古学研究のために招請・派遣された村田の少し不可思議な土耳古滞在録。

 時は1899年、舞台は土耳古のスタンブール(イスタンブール)。下宿先の主人である英国人のディクソン夫人、土耳古人の召使ムハマンド、下宿人の3人の考古学者=村田&独逸人のオットー&希臘(ギリシア)人のディミィトリス、そして「悪いものを喰っただろう」「友よ」「いよいよ革命だ」「繁殖期に入ったのだな」「失敗だ」の5つの言葉だけを絶妙に皮肉なタイミングで発する鸚鵡(おうむ)。彼等の日常生活や交流を、大英帝国の植民地支配や忍び寄る第1次世界大戦の影を遠景に置きながら、静かなユーモアや小さな祈りや哀しみを湛えつつ、清楚な美しい文章で描き出す。

 決して派手ではないけど、心に残る大切な物語だ。

 ・・・しかし、“土耳古”や“希臘”って普通の変換で出るんやなぁ。

 で、次は『みんな元気。』(舞城王太郎・著/新潮文庫)を読む。
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2007年06月11日

小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所


小説こちら葛飾区亀有公園前派出所
著者名:大沢在昌(著)
     秋本治(原著)
出版社:集英社
出版年:2007.05
ISBN :9784087804669


 別に『こち亀』の熱心な読者でもないのだが、面白い企画だなと思って読んでみた。

幼な馴染み(大沢在昌)
『新宿鮫』シリーズの鮫島、恋人の晶(しょう)、鑑識課の藪が両津勘吉とコラボ。『新宿鮫』シリーズ本家の緊張感は微塵もない(笑)。ま、別に悪くはないのだが、この作品集の中ではこれがいちばん低評価かな・・・。

池袋−亀有エクスプレス(石田衣良)
僕も好きな『池袋ウエストゲートパーク』(IWGP)シリーズの主人公マコトが登場。本家IWGPシリーズそのままの雰囲気ながら、両さんとのコラボも違和感なく読める。

キング・タイガー(今野敏)
両さんは最後の最後でほんのちょっと登場するだけだが、短篇小説としての完成度はこれが一番。かつて「男の子」だった人なら誰でも心ときめくものがある。今野敏氏の作品は読んだことがないが、一度読んでみたいと思った。

一杯の賭け蕎麦―花咲慎一郎、両津勘吉に遭遇す(柴田よしき)
柴田よしき氏も読んだことがない作家。『RICO 女神の永遠』を少し立ち読みして買わなかった過去がある(笑)。両さんの意外に深みがあるような、やっぱりないようなキャラが上手く出ていると思う。

ぬらりひょんの褌(京極夏彦)
さすがは京極氏(未読やけど)というべき、妖怪がらみの一篇。『こち亀』フリークならより一層楽しめるんだろうなと思わせる小ネタ(愛あるツッコミ)がチラホラ。両さんの上司・大原と両さんの過去の意外な因縁が明らかに。

決闘、二対三!の巻(逢坂剛)
プロローグとエピローグの使い方というか、構成の上手さに感心した。それにしても金が絡んだときの両さんの策略は天才的で、『こち亀』にありそうな話である。

目指せ乱歩賞!(東野圭吾)
両さんが乱歩賞で一攫千金を目指す。その手法は無茶苦茶(笑)。『こち亀』だから許される話で、ハチャメチャ度は1。


 『こち亀』の熱心な読者ではないと最初に書いたが、どの作品も両津というキャラの様々な側面をちゃんと活かして書かれていてさすがである。作家たちの『こち亀』への愛情も伝わってくる。

 ただ、『こち亀』を全く読んだことがない人には楽しめるかな・・・?


 次は『村田エフェンディ滞土録』(梨木香歩・著/角川文庫)。
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2007年06月07日

夢館


夢館
著者名:佐々木丸美(著)
出版社:東京創元社
出版年:2007.04
ISBN :9784488467036


 『崖の館』『水に描かれた館』に続く<館>3部作の完結編。

 前作2作の印象が“ビミョー”だっため購入を迷ったが、乗りかかった船で最後まで読むことにする。

 『水に描かれた館』の記事では、コメント欄に「完結編の『夢館』はこれら2作の前日譚のようですよ」と書いた。なぜなら、本作のヒロイン・千波は、過去2作において既に死んだ人として描かれていたからだ。

 しかし、本作の紹介文を読んで仰天。なんと前日譚ではなく続編ではないか。しかも、読んでみると『水に描かれた館』から結構時間が経っているらしい。これはどういうことなのか・・・?


崖に聳えるガラスの館。かつてそこで命を落とした少女、千波は再びの生を得て、青年学者の吹原と出会う。しかし二人の前世からの縁(えにし)と、吹原の一族に潜む愛憎がもたらす過去の悲劇が、千波に新たな試練を課した。前世の思い出を映す未来に導かれるように、千波は崖の館をめざし、歩きはじめる。少女と館を巡る三つの物語、完結。単行本未収録作品「肖像」を併録する。
(「BOOK」データベースより)


 『崖の館』は幻想的な色合いながら、まだ推理小説のテイストが強く漂っていた。『水に描かれた館』では推理小説の要素は大きく後退し、『夢館』は完全に幻想小説だ。創元推理文庫だから「ミステリ」にカテゴライズしたものの、推理小説ではない。

 千波の苦難にイライラしながら読んだ。これは悪口ではなく、それだけ入り込んで読めたということである。そう、3部作の中ではいちばん面白かった。もっとも前2作があるゆえの面白さなので、これから読む方には最初から読むことをお勧めする。

 少女趣味と紙一重で赤面しそうなフレーズも多々あるが、ロマンチックかつ不思議で美しい佳作。昼メロドラマ(観たことないけど)が好きな人に受けたりして。


 次は珍しく単行本、話題の(?)コラボ小説集『小説 こちら亀有区葛飾公園前派出所』を。
posted by ふくちゃん at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2007年06月05日

空を見上げる古い歌を口ずさむ


空を見上げる古い歌を口ずさむ
著者名:小路幸也(著)
出版社:講談社
出版年:2007.05
ISBN :9784062757362



 最近話題の小路幸也氏のデビュー作。初読みだ。タイトルが良い。

 ・・・まあ、さすがはメフィスト賞受賞作というべきか、奇妙奇天烈なミステリである。

 というか、厳密な意味でのミステリではない。本来の意味での殺人もトリックもないのだから。人は結構死ぬし、謎はあるが。


みんなの顔が“のっぺらぼう”に見える―。息子がそう言ったとき、僕は20年前に姿を消した兄に連絡を取った。家族みんなで暮らした懐かしいパルプ町。桜咲く“サクラバ”や六角交番、タンカス山など、あの町で起こった不思議な事件の真相を兄が語り始める。懐かしさがこみ上げるメフィスト賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)


 プロローグとなる最初の章の語り手は、自分の息子が「みんなの顔が“のっぺらぼう”に見える」ハメに陥ってしまった凌一。「〜だったんだ」を多用する語り(文体)がどうも気になった。

 その後は凌一の前に20年ぶりに姿を現した兄・恭一が、自らの少年時代を回想して語っていく。実は恭一も小学校5年以来、まわりの人間の顔が“のっぺらぼう”に見えるようになってしまい、それが家族と離れる原因にもなったのだ。

 興味を削ぐので詳しく説明できないが、ファンタジックなホラーというかスリラー(というほど怖くはないが)の趣きもあるし、昭和を生きる少年少女の世界 ― 秘密基地、怪談話、クワガタ、ポン菓子 ― を描いたノスタルジックな物語でもある。

 ・・・面白くないことはないが、スッキリしないものは残る。独りよがり一歩手前の作品という気もしないでもない。でも、クドイようだが、面白くないことはないのである。

 ちなみにパルプ町は北海道旭川市に実在する町名で、グーグル・マップでもちゃんと表示される。絶対に架空の町名だと思っていたから(住民の方、すいません)、なんか不思議。


 次は、『夢館』(佐々木丸美・著/創元推理文庫)。
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2007年06月04日

チルドレン


チルドレン
著者名:伊坂幸太郎(著)
出版社:講談社
出版年:2007.05
ISBN :9784062757249


 昨日「GシリーズとXシリーズは、なぜ『G』や『X』なのか分からない」と書いたところ、未衣名さんより「X」は「イナイ×イナイ」の「×」ことだとコメントを頂いた(シリーズ次巻のタイトルは「キラレ×キラレ」)。

 ・・・なるほど、そうだったのか。

 ちなみにGシリーズの「G」はGreek(ギリシア語)に由来するらしい。シリーズ各巻のタイトルにギリシア文字が使われているからだ。

 ・・・なるほど、そうだったのか。

 言われてみれば簡単なことだ(恥)。こんなことにも気が付かないなんて、ミステリ読んでるわりには、いつまで経っても犯人を当てられないし、トリックも見破れないハズだ。頭がカタイ・・・。

 ちなみに森博嗣氏は他人の作品を読んでいても、たいてい途中で真相が分かっちゃうらしい。ミステリ作家って、皆そうなんだろうか。


「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々―。何気ない日常に起こった五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。ちょっとファニーで、心温まる連作短編の傑作。
(「BOOK」データベースより)


 ・・・上手いなぁ。幸太郎(敬称略)!

 第1話『バンク』は陣内19歳(大学生)、銀行強盗に遭遇した時の話を、一緒に巻き込まれた友人・鴨居の視点で。のっけから、陣内の自己チューな傍若無人ぶり全開。人質として出会った永瀬が推理する銀行強盗事件の意外な真相も面白い。この銀行強盗の方法は使えるかも!(おいおい)

 第2話『チルドレン』は、非行少年を更正させる家裁調査官として働く陣内31歳を、後輩調査官・武藤の視点から。こんなメチャクチャな家裁調査官って・・・。しかし、主任調査官曰く、「陣内君くらい調査官に向いている人はいないよ。けれど彼のやり方をまねしては駄目だよ」、武藤自身も調査官の中で「陣内さんほど少年達に慕われている人は見たことがない」と。何となく納得できるから不思議。

 第3話『レトリーバー』は陣内22歳、大学4年生で家裁調査官目指して勉強中。永瀬と恋人(?)の優子、そして陣内が遭遇する不可解な状況とその真相を優子の視点で。

 第4話『チルドレン2』は陣内32歳。「俺たちは奇跡(=少年の更生:ふくちゃん注)をやってみせるってわけだ。ところで、あんたたちの仕事では、奇跡は起こせるのか?」、「そもそも、大人が恰好良ければ、子供はぐれねえんだよ」・・・何か知らんけど恰好ええがな陣内・・・。音楽小説としても読める、ええ〜話。

 第5話『イン』は陣内20歳。これは説明しがたい話だなぁ・・・。永瀬と優子、鴨居ももちろん登場して、永瀬の視点から。『チルドレン2』の中で、陣内が父親への軽蔑や憎しみを吹っ切るために、父親を「真正面から」「正体がばれないように殴った」と語るが、その経緯と方法が明らかに。

 年齢順ではなく、20代と30代の話が交互に描かれるのは、最後にまた何かとんでもないドンデン返しがあるからに違いない・・・と思いながら読んでいたら、そうでもなかった(笑)。

 「五つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ」という説明文はどうかと思うが、面白いと思うなコレ。「活字離れのあなたに効く、小説の喜び」という帯の言葉がピッタリくる。

 ・・・ところで、19ページから20ページにかけての“平にご容赦を、と鴨居に頭を頭を下げる思いだった”は“平にご容赦を、と鴨居は頭を下げる思いだった”の間違いだよね?


 次は、『空を見上げる古い歌を口ずさむ』(小路幸也・著/講談社文庫)。
posted by ふくちゃん at 23:25| Comment(2) | TrackBack(1) | その他

2007年06月03日

イナイ×イナイ


イナイ×イナイ
著者名:森博嗣(著)
出版社:講談社
出版年:2007.05
ISBN :9784061825314


 Gシリーズも完結しないうちに、新シリーズ=Xシリーズがスタート。

 S&MシリーズやVシリーズは、なぜ「S&M」で「V」なのか分かったが(誰でも分かる)、GシリーズとXシリーズは、なぜ「G」や「X」なのか分からない。どなたかご教示を。

 今シリーズの探偵役は、椙田泰男事務所でボランティアバイト?(ただ働き)をしている大学生・真鍋瞬一のようだ。彼はGシリーズにも椙田泰男と共にチョイ役で登場していた。そして、森ファンなら先刻ご承知、椙田はVシリーズの○○○の別の姿である(実は忘れてた)。もっとも、今作品では遠景に退いている感じで、活躍の場面はない。


「私の兄を捜していただきたいのです」美術品鑑定を生業とする椙田事務所を訪れた黒衣の美人・佐竹千鶴はこう切り出した。都心の一等地に佇立する広大な佐竹屋敷、美しき双子、数十年来、地下牢に閉じ込められているという行方不明の兄・鎮夫。そして自ら“探偵”を名乗る男が登場する。旧家で渦巻く凄惨な事件の香り…。新章開幕、Xシリーズ第1弾。
(「BOOK」データベースより)


 相変わらずの軽妙な会話や不可能状況は楽しめるが、過去のシリーズに比べて薄味の作品という気がした。それでもエピローグには森サーガに欠かせないあの女性キャラが登場して、ファンには嬉しいオマケ。単なるゲストなのか、シリーズの進行とともに本格的に絡んでくるのか・・・興味津々。

 そういった点も含めて、(独立した作品として読めるけど)過去のシリーズを読んでおく方が楽しめると思う。

 でも、そうなると初めて読む人は、S&M10作品、V10作品、四季シリーズ4作品、Gシリーズ6作品(現在のところ)、それに短篇集も読んでおかないと・・・。まあ、結構サクサク読めるので、興味のある方は挑戦を(笑)。

 どこかで「森博嗣は現在の赤川次郎か?」というコメントを見かけたが、確かにそうかもしれないな。


 次は、『チルドレン』(伊坂幸太郎・著/講談社文庫)。
posted by ふくちゃん at 20:52| Comment(18) | TrackBack(0) | ミステリ