| 枯葉色グッドバイ |
 | 著者名:樋口有介(著) 出版社:文藝春秋 出版年:2006.10 ISBN :4167531046 |
樋口有介氏は、決してメジャーな作家ではないと思うのだが、どうだろう?
樋口氏には、私立探偵兼フリライターの柚木草平を主人公とする『彼女はたぶん魔法を使う』(90年)、『初恋よ、さよならのキスをしよう』(92年)、『探偵は今夜も憂鬱』(92年)という作品がある。一応は人気シリーズと言われ、TVドラマ化(いわゆる2時間サスペンスだったと思うが・・・)されているのだが。
その昔、『彼女は〜』と『初恋よ〜』を読んで(かなり甘めのハードボイルド・ミステリだったと記憶しているが・・・)、結構良かったと思うのだが、世間的にはこのシリーズも、その後の様々な著作もあんまり話題になっていないような気がする。僕自身もこの2作以外は読んでいないか、読んだとしても忘れている。
で、本作である。
まず、文庫本裏面の紹介文を読んで、興味を思った。
「誰もがなりたくないと思い、それでいて誰もがなれてしまう。そこがホームレスの面倒なところだな」。代々木公園のホームレスで元刑事の椎葉明郎は、女性刑事、吹石夕子に日当二千円で雇われ、一家惨殺事件の推理に乗り出す。考えるホームレス、椎葉の求めた幸せとは?ハートウォーミングな長篇ミステリ。
警視庁きっての優秀な刑事だったのに、ある不幸な事件で世を捨ててホームレスになった男が主人公、という設定が面白そうだなと。
今までにない設定の探偵である。いや、あるかも知れないが・・・。僕はとにかく知らないので、新鮮な設定だった。
あと、巻末の池上冬樹氏の解説によると、著者自ら最高傑作と言っているということだったので。
余談だが、池上氏は僕のあまり好きじゃない(ハッキリ言うと嫌いな)評論家の1人である。評論家の中には、書評や文庫本の解説で歯の浮くような賞賛・絶賛の文章を書く人が何人かいるのだが、池上氏もその1人。あくまで僕の感性では、ということだが。
で、とにかく読んだ。
当たりだった。
謎も伏線もあるが「ミステリ」というよりも、やはりハードボイルドという感じだ。ジャンルなんて便宜的なものだから、どうでもよいと言えば、どうでもよいが。
優れたハードボイルドには、良いセリフ・良い会話(お洒落orクスッと笑える)、ほどよい感傷、主人公独特の哲学がある。
「ふーん、今日はずいぶん、化粧が濃いじゃないか」
「紫外線よけのファンデーションです」
「女も歳をとると小道具に金がかかるな」
「どうせ素面(すっぴん)では、女子高校生には敵いませんよ」
「小皺も肌のくすみも、人生の哀感がにじみ出て、お洒落だぞ」
「そんなもの、にじませたくありません」
「年齢の澱(おり)は天国への通行証、無駄な抵抗はせず、運命に身を任せることだ」
・・・まあ、実生活ではこんな会話はなかなかできそうにない。しかし、これが小説のよいところである。リアルだけを求めるなら、小説を読む必要などないのだから。
この作品、これ一作で終わるとしたら、ちょっとモッタイナイ。ぜひシリーズ化して欲しいものである。
ところで、最近『彼女は〜』と『初恋よ〜』が、創元推理文庫から再刊された(元は講談社文庫)。ハードボイルド嫌いの人にもわりと取っ付き易いと思う(保証せず)ので、ご一読を。
次に読むのは、バッテリーシリーズで人気(僕も愛読)の、あさのあつこ氏によるSF(かな?)、『NO.6』(講談社文庫)。
posted by ふくちゃん at 23:49|
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