2010年08月22日

新・御宿かわせみ


新・御宿かわせみ
著者名:平岩弓枝(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2010.08
ISBN :9784167710156


 ついに明治編。これまでの主人公・神林東吾は、幕末〜明治維新期に榎本武揚と艦船に乗り込んだまま、行方不明。相棒の同心・畝源三郎は探索中に賊に拳銃で撃たれて落命。その賊とは麻生宗太郎・花世親子の留守中に麻生家を襲い、宗太郎の父・源右衛門、妻・七重、息子・小太郎の命を奪った謎の連中であり、源三郎が探索していた相手である。


・内容(「BOOK」データベースより)
時は移り明治の初年。時代の混乱は、「かわせみ」にも降り懸かっていた。東吾は、戦乱で行方不明、源三郎は凶賊の手にかかり落命、麻生家も源右衛門ら3名が殺害された。だが、麻太郎、花世、源太郎ら次代を背負う若者たちは悲しみを胸に抱えながらも、激動の時代を確かな足取りで歩き出す。大河小説第2部、堂々のスタート。


 幕末〜維新の争乱や、いずれ年寄りになる東吾や源三郎の姿は書きたくない。でも、江戸の香りが残る時代は描きたい。そんな理由で選ばれた舞台設定だが、魅力的な登場人物が一気に消えるというのは、やはり寂しい。amzonの書評でも、賛否は割れる。

 しかし、まだ「かわせみ」の女主人にして東吾の妻・るい、番頭の嘉助、女中頭のお吉、岡っ引きだった長助と仙五郎、東吾・源三郎の無二の親友にして医者の麻生宗太郎たちがいる。

 新シリーズの主人公である神林麻太郎(医師/東吾の兄で奉行所与力だった通之進の養子、東吾の実子)、畝源太郎(探偵/源三郎の息子)、麻生花世(『銀座開化おもかげ草紙』にも登場するA六番館女学校に在学、「かわせみ」に下宿)には残念ながら、前シリーズの東吾・源三郎・宗太郎ほどの魅力はない。特に花世は、ずうずうしく生意気なだけのキャラのようで、ちょっとガッカリである。でも、彼らなりの魅力が生まれるまで、もう少し待ちたいと思う。


 次は、『阪急電車』(有川浩・著/幻冬舎文庫)。
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2010年08月19日

蒼路の旅人


蒼路の旅人
著者名:上橋菜穂子(著)
出版社:新潮社
出版年:2010.07
ISBN :9784101302799


 『守り人』シリーズの中で、新ヨゴ皇国の皇太子チャグムを主人公とする「旅人」シリーズの2作目。『守り人』シリーズの第1巻で、女用心棒バルサに救われた時は、幼い子供だった彼も、今では宮中のみならず、一般庶民の期待をも集める次代の英主である。


・内容(「BOOK」データベースより)
生気溢れる若者に成長したチャグム皇太子は、祖父を助けるために、罠と知りつつ大海原に飛びだしていく。迫り来るタルシュ帝国の大波、海の王国サンガルの苦闘。遙か南の大陸へ、チャグムの旅が、いま始まる!−幼い日、バルサに救われた命を賭け、己の身ひとつで大国に対峙し、運命を切り拓こうとするチャグムが選んだ道とは?壮大な大河物語の結末へと動き始めるシリーズ第6作。


 しかし、強大なタルシュ帝国の侵攻という国難が近づく今、父である帝とその側近たちにとって、あまりに人望あるチャグムは、自分たちの地位を脅かす存在でもある。

 帝はチャグムを死地に追い遣るため。チャグムは新ヨゴの国と民を守り、タルシュを迎撃するため。大提督トーサ(チャグムの母方の祖父)率いる新ヨゴ皇国海軍が、チャグムと共にサンガル王国の救援に向かう。

 だが、覚悟していた通り、サンガルからの救援依頼は、既にタルシュの軍門に下った彼らが止むに止まれず仕掛けた罠であった。

 チャグムは囚われの身となり、タルシュの皇子の下に送られる・・・。

 この巻はファンタジーというより、歴史小説のような趣き。父親であるよりも権力者であることを優先している帝の冷徹さ(チャグムが死んでも次の皇子がいるし、チャグムとトーサが勝てばそれも良い)・愚かさ(タルシュ帝国との力の差を理解しておらず、最後は自らを守護する神に祈れば勝てると思っている)と、チャグムの宮中人らしからぬ人柄の対比も面白い。

 シリーズ最後の長編3部作『天と地の守り人』への導入となるらしい本書だが、これ単体で十分な読み応え。


 次は『新・御宿かわせみ』(平岩弓枝・著/文春文庫)。
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2010年08月16日

果ての花火 銀座開化おもかげ草紙


果ての花火
著者名:松井今朝子(著)
出版社:新潮社
出版年:2010.07
ISBN :9784101328720


 明治維新の前後にしろ、第2次大戦の前後にしろ、それまでの価値観が大きく覆される時代に生きるってのは、大変だったんだろうな。


・内容(「BOOK」データベースより)
命を賭して信じる道に突き進めぬ者が、どうして士族を名乗れようか。久保田宗八郎は、虚しさを感じていた。株式会社、開かれた言論、徴兵制度。西南戦争前夜、すべてが急速に欧米化してゆく。銀座煉瓦街で親しく交わる、若様、巡査、耶蘇教書店主。そして、深い縁で結ばれた元遊女比呂と、互いに恋情を確かめ合った可憐な綾−。名手が、時代に翻弄される人びとの哀しみを描く。


 時代の変化に身を任せる、あるいはもっと積極的に時代の変化を楽しむ、先取る。そういう生き方が出来ないのが、本作の主人公・久保田宗八郎。抗い難い時代の波に揉まれる彼の運命はどうなるんだろうね。

 シリーズ前作を読んだときに「とりあえず先行作品というか前日譚の『幕末あどれさん』を近々読もうっと」と書いているのだが、すっかり忘れていた。PHP文庫、マイナーなので、ついつい見過ごしちゃうんだよな。


 次は、『蒼路の旅人』(上橋菜穂子・著/新潮文庫)。
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2010年08月11日

退出ゲーム


退出ゲーム
著者名:初野晴(著)
出版社:角川書店
出版年:2010.07
ISBN :9784043943715


 またひとつ、「学園ミステリ+日常の謎」タイプの楽しみなシリーズが誕生した。


・内容(「BOOK」データベースより)
「わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない」−穂村チカ、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみのホルン奏者。音楽教師・草壁先生の指導のもと、吹奏楽の“甲子園”普門館を夢見る2人に、難題がふりかかる。化学部から盗まれた劇薬の行方、六面全部が白いルービックキューブの謎、演劇部との即興劇対決…。2人の推理が冴える、青春ミステリの決定版、“ハルチカ”シリーズ第1弾。


 文庫になるのを待っていた。

 チカとハルタの三角関係とは、この2人が両想いだけど付き合っていないところに誰かが入ってきて・・・と思ってたら・・・。チカとハルタの好きな人が同じってことだった。そりゃ、チカとしては、「わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない」と言いたくなるよな。

 全4篇の謎と解決は、それほど魅力的なモノとは思えない、僕の好みに照らせば。謎の立て方が自然ではないのだ。でも、独自性は買う。『退出ゲーム』の中の「退出ゲーム」というゲームの面白さは、よく理解できないけど。

 登場人物たちの会話やチカのモノローグ(ツッコミ)が面白い。特に最後の『エレファンツ・ブレス』は、その点で最高。

 続編『初恋ソムリエ』も楽しみ。


 次は、『果ての花火 銀座開化おもかげ草紙』(松井今朝子・著/新潮文庫)。
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2010年08月08日

遠まわりする雛


遠まわりする雛
著者名:米澤穂信(著)
出版社:角川書店
出版年:2010.07
ISBN :9784044271046


 単行本最新刊『ふたりの距離の概算』と時を同じくして文庫化された古典部シリーズ第4弾は、初の短編集。


・内容
省エネをモットーとする折木奉太郎は“古典部”部員・千反田えるの頼みで、地元の祭事「生き雛まつり」へ参加する。十二単をまとった「生き雛」が町を練り歩くという祭りだが、連絡の手違いで開催が危ぶまれる事態に。千反田の機転で祭事は無事に執り行われたが、その「手違い」が気になる彼女は奉太郎とともに真相を推理する−。あざやかな謎と春に揺れる心がまぶしい表題作ほか“古典部”を過ぎゆく1年を描いた全7編。
(「BOOK」データベースより)


 この短編集の時間軸は、過去3作の長編とほぼ同時進行というか、過去3作の狭間というか。続編ではないのである。

 ああ、そんな事件があったなぁ・・・と思い浮かべながら(と言っても、ほとんど忘れてる)、千反田えると奉太郎の距離が少しずつ、微かではあるが確実に縮まっていく様子が楽しめる。奉太郎自身の変化も。

 作品ひとつひとつに散りばめられた謎も、解決も楽しい。

 やっぱり、好きだなぁ、「古典部」シリーズと「小市民」シリーズ。どちらも高校生を主人公にした青春ミステリでありながら、「爽やかさ」とは遠く、なのにちゃんと青春してるところが。


 次は『退出ゲーム』(初野晴・著/角川文庫)。
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2010年08月06日

ボックス!(上・下)


ボックス! 上
著者名:百田尚樹(著)
出版社:太田出版
出版年:2010.03
ISBN :9784778312053



ボックス! 下
著者名:百田尚樹(著)
出版社:太田出版
出版年:2010.03
ISBN :9784778312060


 市原隼人、高良健吾主演で映画化された、『永遠の0』百田尚樹氏の作品。


・上巻内容
アホでおちゃらけだが天才的ボクシングセンスを持つ鏑矢義平。彼の所属する恵比寿高校ボクシング部に幼なじみでいじめられっ子だった木樽優紀が入部した。特進コースで成績トップクラスの木樽の入部は周囲を驚かせる。木樽には強くなりたい理由があった。大阪の下町を舞台に2人の少年の成長と挫折を感動的に描き出し全国の読者を感動の渦に巻き込んだ傑作青春小説、待望の文庫化。
(『BOOK』データベースより)

・下巻内容
ボクシング部で憧れの鏑矢の背中を追って地道な努力を続ける木樽。周囲も驚く成長にともない鏑矢との関係には微妙な変化が忍び寄る。最後に勝つのは誰なのか!?女性教師・耀子、マネージャー・丸野、監督・沢木、孤高のライバル・稲村、個性的な部員たち他、多彩な人々との出会いを背景に少年たちの友情を感動的に描き出したスポーツ青春小説の金字塔!本当の強さとは何か。
(「BOOK」データベースより)


 展開はある意味予想通り。今回は、ここから若干ネタバレ。

 ひ弱だった木樽には、実は鏑矢にも劣らない「天性の才能」と、鏑矢にはない「努力する才能」=「とことん地道かつ愚直に反復練習に打ち込める才能」があった。やがて、自らのヒーローであった鏑矢をリングの上で倒し、かつて鏑矢も倒せなかった高校最強チャンプ・稲村との戦いに挑む。

 幼い頃から自分が守り続け、ボクシングに導いた木樽に追い抜かれてしまった鏑矢。木樽こそが天才だったと素直に認め、そのレベルに付いて行ける部員は自分しかいない、自分の代わりに稲村を倒してもらおうと、ちゃらんぽらんな練習態度を改め、木樽とのハードなトレーニングに打ち込む。

 木樽に敗れた後の涙と木樽を認めて祝福する鏑矢のセリフ。

 潔い、そして意外にも健気な姿に、グッと来る。そして、木樽は強くなり、自信を手にしても、決して尊大にはならず、相変わらず鏑矢を尊敬して慕い、一緒にトレーニングしてくれることに感謝している。2人の真っ直ぐな友情が快い。

 木樽とのトレーニングは、鏑矢の「天性の才能」を真に磨き上げていくことになるのだが・・・。

 元ボクサーの教師とボクシング素人の女性教師を部の監督と顧問に据えたことで、ボクシングと無縁な人にも丁寧に分かりやすくルールや技術の説明を加えながら、一気に読めるリーダビリティを保つことに成功している。

 映画は観ていないが、鏑矢=市原という配役はイメージ通り。でも、予告編で観た「俺にはボクシングしか、あらへんのに・・・!」みたいなセリフを吐きながら鏑矢が泣くシーンや、顧問の女性教師(?)が鏑矢に「一度ぐらい本気で闘いなさいよ!」みたいなセリフを吐くシーンは、この原作には無い。

 映画はどうも、より分かりやい=安っぽいストーリーに改変されているような気が・・・。


 次は、『遠まわりする雛』(米澤穂信・著/角川文庫)。
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2010年08月02日

陰の声 重蔵始末(五)長崎篇


陰の声
著者名:逢坂剛(著)
出版社:講談社
出版年:2010.07
ISBN :9784062766920


 前作『嫁盗み』のレビューで、

正直、『鬼平犯科帳』以外で火付盗賊改モノは珍しいから(というか他にある?)という理由だけで、これを読んでいたから、江戸篇が終わって残念。で、長崎篇にはそれほど興味もないし、この巻では大きな事件も起こらないし(次巻で繰り広げられるらしい大バトルへの伏線はあるが)、長崎篇序章という感じで、もうひとつ読み応えに欠ける。

と書いた。


・内容
長崎奉行手附出役として、天領・長崎で縦横無尽に事件解決に当たる近藤重蔵。そんな重蔵の前に現れたのは、江戸の地で最愛の人、音若を無残にも殺した仇敵りよだった!りよはなじみの悪党・喜兵衛の一味と行動を供にし、長崎でも悪事の限りを尽くす。重蔵は音若の仇を討つことが出来るのか。傑作時代小説シリーズ第5弾。
(「BOOK」データベースより)


 でも、この第5巻は1篇1篇、趣向が凝らしてあって、楽しかった。

 第1話『かどかわし』では、重蔵が懇意にする漁師の女房が誘拐され、身代金10両を要求される。どうせ危険を冒すなら、金持ちを誘拐して大金を狙いそうなものなのに、なぜ貧乏な漁師の女房を?その裏にある意外な真相。

 第2話『仇敵』では、遭難船で唯一生き残った漁師の言動に僅かな不審を感じて探索した結果、薩摩藩による「抜け荷(密貿易)」疑惑に辿り着く。さらに、そこには、江戸で重蔵の愛する女性を殺害した女盗賊・りよとその親方・喜兵衛らの影が・・・。

 第3話『おとり』では、残忍な盗賊・喜兵衛&りよ一味と重蔵の智略を尽くした騙しあい。真の『おとり』は誰か。それが最後に明らかになる構成が上手い。

 第4話『島抜け』、第5話『陰の声』も、重蔵、薩摩藩、喜兵衛&りよ一味、3つ巴の攻防が息も付かせぬ、練りに練られた展開。

 ミステリとして、時代アクションとして、ハードボイルドとしての面白さを堪能できる。


 次は、『ボックス!』(百田尚樹・著/大田出版)
posted by ふくちゃん at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・時代小説

2010年07月28日

白鳥異伝(上・下)


白鳥異伝 上
著者名:荻原規子(著)
出版社:徳間書店
出版年:2010.07
ISBN :9784198931841



白鳥異伝 下
著者名:荻原規子(著)
出版社:徳間書店
出版年:2010.07
ISBN :9784198931858


 神々が人々の身近にあった『空色勾玉』から時は下り、狭也と稚羽矢の物語は、この時代ではもはや古い伝説である。


・上巻内容
双子のように育った遠子と小倶那(おぐな)。だが小倶那は“大蛇の剣”の主となり、勾玉を守る遠子の郷を焼き滅ぼしてしまう。「小倶那はタケルじゃ。忌むべきものじゃ。剣が発動するかぎり、豊葦原のさだめはゆがみ続ける・・・」大巫女の託宣に、遠子がかためた決意とは・・・?ヤマトタケル伝説を下敷きに織り上げられた、壮大なファンタジーが幕を開ける!日本のファンタジーの金字塔「勾玉3部作」第2巻。
(「BOOK」データベースより)

・下巻内容
嬰(みどり)の勾玉の主・菅流(すがる)に助けられ、各地で勾玉を守っていた“橘”の一族から次々に勾玉を譲り受けた遠子は、ついに嬰・生・暗・顕の4つの勾玉を連ねた、なにものにも死をもたらすという“玉の御統(みすまる)”の主となった。だが、呪われた剣を手にした小倶那と再会したとき、遠子の身に起こったことは・・・?ヤマトタケル伝説を下敷きに織り上げられた、壮大なファンタジー、いよいよ最高潮。
(「BOOK」データベースより)


 遠子は狭也、小倶那は稚羽矢に対応するキャラクターであり、物語の骨格は『空色勾玉』と同じ。

 狭也と稚羽矢と同様に、遠子と小倶那が辿る運命もまた切なく、辛い(最終的には大団円だが)。そこに、菅流というやんちゃで強く魅力的な男の子をもう1人の主人公として据えたこと、舞台を北海道や九州にまで広げたことで、『空色勾玉』よりも物語の構造が大きくなり、リーダビリティがパワーアップ。

 非常に面白かった。上下巻一気読み。第3弾も期待。


 次は、『陰の声 重蔵始末(五)長崎篇』(逢坂剛・著/講談社文庫)。
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2010年07月25日

永遠の0


永遠の0
著者名:百田尚樹(著)
出版社:講談社
出版年:2009.07
ISBN :9784062764131


 じわじわ売れ続けて32万部という。著者は関西人なら誰もが知る人気番組『探偵!ナイトスクープ』の構成作家だそうだ(今は違うのかな?)。


・内容
「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、一つの謎が浮かんでくる−。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。涙を流さずにはいられない、男の絆、家族の絆。
(「BOOK」データベースより)


 実の祖父=宮部久蔵は天才的なゼロ戦パイロットだった。その卓越した操縦技術と臆病とも評されるほどの慎重な戦いぶりで、撃墜されることなく終戦近くまで生き永らえながら、なぜ最後には特攻で散らねばならなかったのか?そして、ずっと実の祖父だと思っていた今の祖父と宮部の関係は?

 実在の人物の名前も登場するが、フィクションであり、架空の存在である宮部という男の生き方が迫ってくる。

 戦争とそこで無くなった命を美化することなく、かといって貶めることもなく、フラットに書かれているが、根底には戦争に対する怒りが流れている作品だと思う。


 次は、『白鳥異伝』(荻原規子・著/徳間文庫)。
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2010年07月21日

めぐらし屋


めぐらし屋
著者名:堀江敏幸(著)
出版社:新潮社
出版年:2010.06
ISBN :9784101294759


 凄く気に入るか、全く楽しめないか、1作ごとに評価が両極に分かれるのが、僕にとっての堀江作品。


・内容
長く疎遠だった父、その遺品の整理中に見つけた大学ノートには、表紙に大きく「めぐらし屋」と書かれていた。困惑する娘の蕗子さんに、折も折、当のめぐらし屋を依頼する見知らぬ客からの電話が舞い込む。そして、父の独居暮らしに淡い輪郭が与えられるたび、蕗子さんの遠い記憶は小さくさざめくのだった。地方都市を舞台に、温かで端正な筆致で描く、飾りない人びとの日常光景。
(「BOOK」データベースより)


 今回は何度も「ここから面白くなりそう・・・」と思わせられつつ、一向に盛り上がらぬまま、読了。

 え?ここで終わり?

 う〜ん・・・。

 このアンチ・エンタテインメント、アンチ・クライマックスぶりは、ある意味凄いかもしれん。


 次は『永遠の0』(百田尚樹・著/講談社文庫)。
posted by ふくちゃん at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 純文学