2009年06月30日

風が強く吹いている


風が強く吹いている
著者名:三浦しをん(著)
出版社:新潮社
出版年:2009.06
ISBN :9784101167589


 この秋、小出恵介・林遣都主演で映画化されるらしい。


・内容
箱根駅伝を走りたい − そんな灰二(ハイジ)の想いが、天才ランナー走(カケル)と出会って動き出す。「駅伝」って何?走るってどういうことなんだ?十人の個性あふれるメンバーが、長距離で走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく・・・風を感じて走れ!「速く」ではなく「強く」 − 純度100パーセントの疾走青春小説。
(裏表紙より)


 約660ページ。わりにボリュームがあるが、テンポよく一気に読んだ。

 最初のうち、いつになったら灰二や走と共に箱根駅伝を闘う陸上部の面々が出てくるのかと思いながら読んでいたが、こんなことになるとは・・・!この設定が面白い。

 トップ・アスリートであれ、そうでない者であれ、スポーツを通じて肉体と精神の限界に挑む者たちだけに見える世界。その一端を垣間見せてくれる。

 スポーツ小説としての密度という点では、『DIVE!』の方が上(林君はコレの映画にも出てた)、という気はするが、ひたすら爽やかな青春小説。


 次は、『終末のフール』(伊坂幸太郎・著/集英社文庫)。
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2009年06月28日

世界は村上春樹をどう読むか


世界は村上春樹をどう読むか
著者名:柴田元幸(編集)
出版社:文藝春秋
出版年:2009.06
ISBN :9784167753894


 珍しく読みたい小説が途切れたので、ツナギで購入。


・内容
村上春樹氏の作品は、初めて海外に紹介されてから20年以上経ち、今や30カ国を超える言語に翻訳されている。2006年には日本で村上作品をめぐる国際シンポジウムが開かれ、17カ国の翻訳家、作家、出版者が各国での「ハルキ事情」を縦横に語り合った。本書は、村上作品の魅力が多面的に語られたこのシンポジウムの全記録である。
(「BOOK」データベースより)


 アメリカの作家リチャード・パワーズ氏による基調講演が難しくて挫折しそうになったが、「パネル・ディスカッション 翻訳者が語る、村上春樹の魅力とそれぞれの読まれ方」や「ワークショップ 翻訳の現場」など、村上春樹氏の文体や比喩を活かすべく、各国の翻訳者がどのように工夫しているか、興味深く読んだ。

 日本人の作家が同時代的にアジアや欧米などでも高く評価され、多くの読者に受け入れられていることを、とても誇りに思う。


 次は、『風が強く吹いている』(三浦しをん・著/新潮文庫)。
posted by ふくちゃん at 19:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ノンフィクション

2009年06月25日

秀吉の枷(上・中・下)


秀吉の枷 上
著者名:加藤廣(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2009.06
ISBN :9784167754037



秀吉の枷 中
著者名:加藤廣(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2009.06
ISBN :9784167754044



秀吉の枷 下
著者名:加藤廣(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2009.06
ISBN :9784167754051


 話題作『信長の棺』は、僕にとっては、それほど面白くは無かった。結局、どこかで聞いたことあるような話(勘違いかもしれないが)に思えたので。

 だから、コレ買うのは迷った。でも、上巻を読んでみたら面白かったので、そのまま一気に読んだ。


・上巻内容
「殿は、いつまでもあの『覇王』の手先であってはなりませぬ」。死を目前にした軍師・竹中半兵衛は、病床で秀吉に4つの忠言と秘策を授けた。天正7年(1579)六月、蜂須賀小六、前野小右衛門ら播州から駆けつけた異能集団“山の民”を伴い、秀吉は密かに天下取りに動き出す。大ベストセラー『信長の棺』に続く本能寺3部作、第2弾。
(「BOOK」データベースより)

・中巻内容
「例の本能寺に通じる抜け穴を、本能寺の古井戸から至近距離で封鎖するのだ」。光秀の謀反を察知した秀吉は、前野将右衛門に命じた。その光秀を天王山に破り、秀吉は後継者争いのトップに躍り出る。やがて信長の遺児や嫡流を葬り去ると、信長の姪、茶々に触手を伸ばす。独裁者となった秀吉の心に広がる、消えることのない闇とは。
(「BOOK」データベースより)

・下巻内容
「わしは天子様から、跡継ぎのお子を頂戴する」。九州を制圧し、仇敵・家康を関八州に追いやり、さらには明遠征にまで乗り出す秀吉。豊臣家安泰のために、子作りと朝廷工作に励む秀吉を、絶望の底に陥れた“淀君の陰謀”とは一体何なのか。壮絶な後半生をあますことなく描いた、加藤版・秀吉一代記ついに完結。
(「BOOK」データベースより)


 『信長の棺』は、この『秀吉の枷』の前段に過ぎない(と決め付ける)。

 秀吉が元々は信長を心から尊崇しながら、徐々に齟齬を感じ、自分の方こそ天下を取るに相応しい器だと思うに至る過程。

 本能寺の変を予測し、乗じるために手を打ち、変後に即応して天下を固める手管。

 天下を取った後、なぜああも無残で、無茶苦茶で、好色な後半生を送るハメになったのか。

 全て納得できる。

 背後に淀君(茶々)の陰謀があったというのも面白い。そして、徳川家康のしたたかさも。

 滑稽で哀れで憎めない、秀吉という人間の波乱万丈の人生。読み応えあり。


 次は、『世界は村上春樹をどう読むか』(国際交流基金・企画/柴田元幸、沼野充義、藤井省三、四方田犬彦・編/文春文庫)。
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2009年06月19日

モノレールねこ


モノレールねこ
著者名:加納朋子(著)
出版社:文藝春秋
出版年:2009.06
ISBN :9784167673031


 僕の中では、加納朋子氏=ミステリ作家だったのだが・・・。


・内容
小学生のぼくは、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。ある日、ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えたが…。表題作の「モノレールねこ」ほか、ザリガニの俺が、家族を見守る「バルタン最期の日」など、夫婦、親子、職場の同僚など、日常にさりげなく現われる、大切な人との絆を描いた8編。


 この作品はミステリじゃなかった。何だか肩透かしをくらった気分。

 ちょっと良い話、ほっこり温かい話・・・のオンパレードだが、少々気恥ずかしいかな。

 好みではなかった。

 

 次は『秀吉の枷(上・中・下)』(加藤廣・著/文春文庫)。
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2009年06月18日

半七捕物帳(一)


半七捕物帳 1 新装版
著者名:岡本綺堂(著)
出版社:光文社
出版年:2001.11
ISBN :9784334732295


 北村薫氏&宮部みゆき氏によるアンソロジー『読んで半七!』、『もっと半七!』が最近書店に並んでる。

 この2人が強くお勧めするなら、読まねばなるまい。

 で、どうせなら、アンソロジーよりも、ちゃんと最初から全部読んでみるかと思い、タイミング良く(って商売上当然だが)増刷された新装版の第1巻を購入。

 巻末解説の都筑道夫氏曰く、「捕物帳という連作推理小説のスタイルは、岡本綺堂の『半七捕物帳』がつくりあげた」のであり、ジャンル開発の功績は計り知れないと思う。

 さらに自身も捕物帳をものにした都筑氏は、岡本綺堂氏以降多くの作家が捕物帳を書いたものの、『半七捕物帳』を越えた作品はないと言う。

 しかし、僕としては、あまりに一話一話が短すぎて、余韻がないと感じた。都筑氏の言によれば、それは捕物帳の本質には無関係だということになろう。でも、主人公である半七を始め、登場人物のキャラも立っていないし、やっぱり不満である。

 ということで、全6巻ではあるが、これにて読了とする。


 次は『モノレールねこ』(加納朋子・著/文春文庫)。
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2009年06月13日

八朔の雪 みをつくし料理帖


八朔の雪
著者名:高田郁(著)
出版社:角川春樹事務所
出版年:2009.05
ISBN :9784758434034


 捕物帖でも剣豪モノでもない、料理と人情の時代小説。「狐のご祝儀 ぴりから鰹田麩(かつおでんぶ)」、「八朔の雪 ひんやり心太(ところてん)」、「初星 とろとろ茶碗蒸し」、「夜半の梅 ほっこり酒粕汁」の4篇を収録。


・内容
神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「つる家」。店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。大坂と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で日々研鑽を重ねる澪。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、名料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてきたが・・・。料理だけが自分の仕合せへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!


 澪は江戸の長屋で、かつての奉公先であった大坂の名料理屋・天満一兆庵のご寮さん(ごりょんさん=女将さん)・芳と二人暮らし。

 大坂の天満一兆庵本店は火事で消失、頼って出てきた江戸店の若旦那は行方知れずで店は潰れていた。

 旦那・嘉兵衛は失意のまま、暖簾の再興を天性の味覚を持つ澪に託して死去。澪は今、小さな蕎麦屋「つる家」で奉公しながら、若旦那の行方を探している・・・。

 連作が進むに連れて、まだ少女ともいえる(18歳)澪の哀しい過去も明らかになり、読者としては彼女を応援せざる得ない。芳も、「つる家」の主人・種市も、ひょんなことから知り合いとなった医者・源斉も、料理に辛口のアドバイスを贈る謎めいた客=浪人・小松原も、長屋のご近所も同じ気持ちなのであろう。

 いささか涙に流れすぎる甘さは目につくが、なかなか読ませる。料理も旨そうだし。巻末の鰹田麩、心太、茶碗蒸し、酒粕汁のレシピは本格的過ぎて、やってみようという気にはならないが(笑)。

 しかし、こういう江戸界隈の美味しい料理とそのお店を載せた番付表って、当時本当にあったのかな?グルメガイド本の走りだな。

 若旦那の行方、小松原の正体、天満一兆庵の再興・・・などなど、まだ続きがありそう。続編を楽しみに待つ。


 次は『半七捕物帳(一)』(岡本綺堂・著/光文社文庫)。
posted by ふくちゃん at 23:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・時代小説

2009年06月10日

1Q84 追記

 全ての読書記録を綴って・・・と言いつつ、雑誌は割愛している当ブログ。

 先日「柴田元幸責任編集 monkey business 2009 Spring vol.5」を買った。理由は、古川日出男氏による村上春樹ロングインタビューが掲載されていたから。

 その中で村上氏は、こんな言葉を述べている。

“人の精神というのは、地表の部分を高くしようとするほど、地下の部分も同じだけ呼応して深くなるわけです。つまり人が善を目指そうとすれば、悪というのは補償作用として必ずその人の中で、同じぶん伸びていきます。つまり、人が健康になろうと思えば思うほど、地下にあるその人の不健全な部分は深くなっていくはずなんです。そしてそれが行き過ぎると、分裂的な傾向が出てくると思うんですね。”

 これが『1Q84』のひとつの主題のよう。

 もちろん、どんな読み方をしても良いのだが。
posted by ふくちゃん at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2009年06月08日

1Q84


1Q84 BOOK1 4月−6月
著者名:村上春樹(著)
出版社:新潮社
出版年:2009.05
ISBN :9784103534228



1Q84 BOOK2 7月−9月
著者名:村上春樹(著)
出版社:新潮社
出版年:2009.05
ISBN :9784103534235


 公式発売日の前日に購入して、昨日ようやく読み終わった。

 いつものことだが、久し振りの作品だから、ゆっくりじっくり味わって読みたいという気持ちと、早く先を知りたいという気持ちがせめぎあって、読むペースは上がったり、下がったり(笑)。

 今回は先入観なしで読んで欲しいという著者の意向により、内容に関する告知・前宣伝の類は一切なし(それでも、というか、それだからよく売れる)。

 だから、僕も著者と販売元の意思を尊重して、中身には“ほとんど”触れないことにする。

 正直、BOOK1からBOOK2の最初のあたりまで、村上春樹史上最大の駄作かも・・・とドキドキしながら読んだ。

 DV、幼児虐待、カルト宗教。

 現実の社会世相があまりにも普通に取り入れられており(あくまで春樹氏にしては・・・だが)、妙に通俗的な気がしたのだ。それにあの華麗な比喩が鳴りを潜めているのも寂しい。

 でも、BOOK2で、青豆(これ名前)があの男の下へ乗り込んだところは緊張と不安に追い立てられながら読んだ。青豆(女性)と天吾の軌跡が接近するあたりは胸苦しい思いで読んだ。

 あまりに単純な感想で恐縮だが、読後は青豆が可哀想で仕方が無かった。

 放り出された謎や伏線が多いが、これはミステリではないし、律儀に回収する必要はない。むしろ未回収であることで、この作品は読者に開かれてる。人によって、いろんな解釈が可能だろう。

 何年か経ったら、また読み返したいと思う。


 次は、『八朔の雪 みをつくし料理帖』(高田郁・著/ハルキ文庫)。
posted by ふくちゃん at 23:35| Comment(4) | TrackBack(0) | 純文学

2009年05月31日

居眠り磐音 江戸双紙 捨雛ノ川


居眠り磐音 江戸双紙 捨雛ノ川
著者名:佐伯泰英(著)
出版社:双葉社
出版年:2006.06
ISBN :9784575662429


 今回も大きな事件はなし。


・内容
大晦日を間近に控えた深川六間堀。金兵衛長屋に住む坂崎磐音は身過ぎ世過ぎに追われていた。そんな磐音が、品川柳次郎らと訪れた地蔵蕎麦で、南町奉行所定廻り同心木下一郎太に請われ、賭場の手入れに関わることに…。春風駘蕩の如き磐音が許せぬ悪を討つ、著者渾身の書き下ろし痛快長編時代小説第18弾。
(「BOOK」データベースより)


 改築工事中の佐々木道場の土地から掘り出された二振りの古い剣(『土中の甕』)。南町奉行の手入れ先の賭場に一足早く忍び込んで大金をチョロまかそうとする竹村武左衛門(『おこぼれ侍』)。佐々木道場の住み込み師範・本多鐘四郎の哀しい過去と心温まる新しい恋(『鐘四郎の恋』)。江戸の剣豪を次々と死に至らしめた唐手(空手)家と磐音の勝負(『履と剣』)。そして、過去の恋との決着をつける鐘四郎(『面影橋の蕾桜』)。

 幸吉の幼馴染で、縫箔職人への弟子入りの前に1年間下準備として今津屋で奉公してきたおそめは、いよいよ江三郎親方の下へ。

 というように、大きなうねりは無いけど、小さな事件と日々の何気ない生活が続いて行く。

 ドラマチックな“大きな嘘(フィクション)”も楽しいけど、こういう話がやっぱり好きかな。


 次は、もちろん『1Q84(a novel BOOK1/BOOK2)』(村上春樹・著/新潮社)。
posted by ふくちゃん at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・時代小説

2009年05月28日

金春屋ゴメス 異人村阿片奇譚


金春屋ゴメス異人村阿片奇譚
著者名:西條奈加(著)
出版社:新潮社
出版年:2009.04
ISBN :9784101357720


 村上春樹氏の新作『1Q84』。アマゾンでの予約数が凄いらしく、発売前に増刷決定とか。いよいよ明日29日発売だが、都内の一部書店では27日から先行発売らしい。くそォ〜。

 さて、SFファンタジーと時代モノの融合小説『金春屋ゴメス』の第2弾。単行本時の『芥子の花 金春屋ゴメス』より改題であるが、元のタイトルの方が好きだ。


・内容
ときは近未来、ところは日本領土内、鎖国状態の「江戸国」。上質の阿片が海外に出回り、江戸国は麻薬製造の嫌疑をかけられる。極悪非道で知られる長崎奉行ゴメスは、異人たちが住む麻衣椰村に目をつける。辰次郎が想いを寄せる女剣士朱緒の過去が絡み合い、事態は思わぬ展開を見せるが − 。「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作の続編。
(「BOOK」データベースより)


 前作の感想で、“普通の時代小説として、つまり実際の江戸時代の江戸を舞台にして書いても良かったんじゃないか。江戸国の周囲が現代(←小説中では)日本であること、日本から入国して来たばかりの人間と長く江戸で暮らしている者の価値観の違い・・・なんかは十分に活かされているとは思えない”と書いたのであるが、今作ではこの設定が活かされつつある。

 阿片製造の黒幕が最期に語ったところによれば、江戸を潰そうという陰謀が日本や国連で画策されているらしいのだ。次回作以降の展開が楽しみである。


 次は、『居眠り磐音 江戸双紙 捨雛ノ川』(佐伯泰英・著/双葉文庫)。


〔追記〕

夕飯の買い物の前に、近所の書店に寄ったら、『1Q84』BOOK1&BOOK2が並んでた!もちろん、即購入!とりあえずBOOK1だけね。
posted by ふくちゃん at 14:57| Comment(2) | TrackBack(1) | ファンタジー・幻想文学